この地方には伝説がある。

 カントー、ジョウト、ホウエン、どの地方にも伝説はあるのだけれど、このオーレ地方の伝説はどれをとっても違うものだ。
 
 困難を救うものに、栄光の勝利と、煌めく風が訪れる。
  

「ねぇ、まだ来ないの?」
ナギはミカドに問う。そのミカドは気温と合わないような長そでのコートをまくり、ゆっくりと答えた。
「あれから一週間だから、もう来てもいいころなんだがな。・・・強くなってるといいな、ほっしー。」
それだけいうと、ミカドは立ち上がった。子どものころからの、よく言えば仲のいい、悪く言えば悪ガキ仲間のほっしーに期待して。
「どういう関係なのよ?」
砂漠のオーレに適切とはいえないが、涼し気なミニスカートにジャケットを羽織りながら、ナギは聞きたかったことを聞いた。
「ま、幼馴染みってとこかなあ?悪いやつじゃねーんだけど、まあ、うん、変わったやつだ。」


 その数日前のこと。

 ホウエン地方のミシロタウンに住む青年のもとに、葛霧御門なる人物から手紙が届いた。ミカドのことだ。青年は、ミカドからの手紙を見て少し悩んだ。
「オーレ地方か・・・遠いんだよな。」
ホウエンからオーレは遠い。しかも、大変なことになってるから来てくれ、というところから、数カ月はあけなければいけない。そうすれば、せっかく許してもらえるようになってきたというのに、時間が空けばどうなるかは解らない。
「でも今回ばかりは・・・仕方ない、一応知らせるだけ知らせておこう。」
ポストに手紙を押し込む。そして、彼は大切な人へ知らせる為に、家を離れた。


「で、友達だったら助けてあげればいいじゃない。」
用件を伝えた彼に突き刺さった視線は、絶対零度以下だった。本当に殺されるかと思ったが、出てきた言葉はそうでもない。かまって欲しくてたまらない子どものような顔をして、彼女に飛びついた。いつもなら、そこでそのまま抱き返してくれるのだけど・・・。
「しつこい。」
と、なんとはね除けられてしまった。その衝撃で彼は後ろに2、3度転がる。頭を壁にぶつけ、やっと止まった。転がったせいで上手く立ち上がれず、おまけに頭をぶつけたせいでずきずきと痛む。
「そ、そんな怒らなくても・・・。」
「じゃあ何?反省してるとでも言うの?」
「いや、その・・・。」
「とにかくさっさと行くなら行きなさいよ。」
追い払うように襟首を持ち上げ、廊下へと引きずり出す。暴れて抵抗するが、彼女には通じない。
「な、なあ俺が悪かった!本当に悪かった!反省してるんだよ!だから、お前にこうやってちゃんと・・・一緒に行かないかって言ってるんだよっ!!」
すると彼女はいきなり手を放した。冷たいフローリングに膝から落ちる。頭も痛ければ、膝もずきずきと痛い。
「な、なあ、だから機嫌直せって・・・。それとも、俺と行くのが嫌か?」
「いや、別にそうじゃないけど・・・。」
視線は彼を見ていない。彼の目が輝いた。
「じゃ、決まりだな。行くぞオーレ。」
強引に彼女の手を引くと外へと連れ出す。二人は、ホウエン地方から、オーレ地方に向かい、旅立った。今までに体験した全ての事よりも大変なことが、あるかもしれないというのに。
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