キザトラとバンダナは走る。その後を、ミカドとナギは追った。ポケモンには、解るのか、二匹は一目散に妖しい男に向かって。そこには、いかにも「悪い組織の人間です」というような男達がそれぞれ街の入り口をかためている。街から誰も出さないように、誰から言われているのだろう。
「ようよう、お前、ミカドじゃねぇか。」
と、青いヘルメットをかぶった「悪い組織の人間です」に絡まれる。見た目で名前が解るなど、どうやら裏世界のやつらのようだ。同族は、やはりまとう風で解ると、昔のことを思い出す。
「俺はブルーノ!そのスナッチマシン、もらおうか!」
ブルーノの袖から、ベトベターとアリゲイツが出てくる。瞬時に、キザトラとバンダナは反応した。特にアリゲイツの方に。ナギが何度も瞬きをしている。そしてアリゲイツを指し、叫んだ。
「ミカド!あのアリゲイツ、黒いオーラが出てる!」
「そうなのか?ナギが言うならそうだろうな!」
バンダナで挑発、キザトラで邪魔なベトベターを排除。そして、ベトベターの代わりに、バネブーが出てくる。
「よし、バンダナキザトラ動くなよ!」
スナッチマシンにボールが入る。それがサイドスローから放たれた。次の瞬間、ボールはアリゲイツを飲み込み、動かない。見とれる隙なく、バンダナがバネブーに向かって秘密の力を向ける。大地からの力に抵抗するかのごとく、バネブーも反撃としてサイコウェーブで攻撃。うねる波は、バネブーとバンダナにしか見えていない。後ろを見守る人間には伝わらない。波長を受けたバンダナには効果という効果が見えなかった。ミカドは続けざまに命令する。キザトラは手助け、バンダナの秘密の力。二匹の協力の前には、バネブーも倒れるしかなかった。
「くそ!なんなんだお前そのスナッチってのはよ!」
自分の悪行を棚にあげて、ミカドに喧嘩を売りはじめた。ところが、こういうやつらとのリアルファイトが後々面倒なことになるのを知っているため、「あの」調子でミカドは反応する。
「いやいや、知ってる通りだと思う、うん。」
「こうなったら実力勝負でいこうじゃねぇか!死ね!」
ブルーノの懐から、銀色に光る刃物が。まさかそう来るとは思っていなかったので、ミカドもキザトラに命令しそびれる。ヤバい、と思った時には、ブルーノは目の前まで来ていた。
「使い慣れないもの使うんじゃない!」
いきなりフェナスシティの外から、人影が飛び上がったと思うと、ブルーノにとび蹴り。格闘ポケモンかと思われたが、それが人間だということが判明するまでそう時間がかからない。
「もっとひどい怪我する前に、帰った方がいいんじゃない?今の、結構効いたと思うけど?」
髪の長い女が、ミカドより恐ろしい目つきでブルーノをおどしている。それには、さすがに怖かったようで、ブルーノは捨て台詞も残さず、傷めた右手を押さえて一目散に退散した。
「怪我はないですか?」
と、乱入してきた女に、ミカドは聞かれた。特に怪我はない。なんせ刺される前にこの女がとび蹴りしたのだから。そこそこに礼を言うと、その女からとんでもない単語が飛び出てきた。
「葛霧御門って人知ってます?」
「は?それは俺のことだが・・・。」
「ガーネット!こっち終わったぜ!」
ガーネットと呼ばれた女は、そちらの方向を振り返る。ミカドも、聞いたことあるような声に、反応した。
「ああ、お疲れ。」
「まあ、そんなに強い相手じゃ・・・。」
後から来た男の方は、じっとミカドの方を見ると、黙った。そして、無言で近寄る。
「その独特の髪型・・・。」
「そのコスプレっぽい服装・・・。」
ミカドは右腕を前に出した。同時に、相手も、右腕を前に出す。
「やっぱほっしーじゃねぇか!」
「なんだ!やっぱりクズキリじゃねぇかよ!」
ミカドが呼んだ助っ人、ほっしーこと星野青宝。ここでやっと、再会した。
「へぇ、黒いオーラ・・・。」
フェナスシティより西に行ったところに、パイラタウンというところがある。治安が激悪なことで有名な街だ。そこの、ホテルにて、呼ばれた用件を聞いていた。男二人で、部屋に閉じこもってこそこそと。ほっしーことサフィリスは、今までの経緯を聞いて、そこそこ理解できたようだ。
「俺には何も見えねぇんだが、ナギが見えるっていうからよ。んで、なんかいろいろ裏で計画が巡ってると思うわけ。だからほっしー呼んだんだ。お前なら、どうせマグマ団やってたし、そういう裏に詳しいだろ。」
「それはスナッチ団やってたお前にそのまま返してやるよ。」
冷静に返すと、腕についている時計を見た。すでにもう三時間は話し込んだ計算になる。
「ああ、もう夕方か。」
「そういえば、お前の連れてきたやつ、お前の彼女か?」
「それ以外に連れてくる理由あるかよ。もっとも、向こうがそう思ってるかどうかは別だな・・・。」
「そんなに暗くなるなって・・・。その時計も、どうせもらいものだろ?」
「一応ね・・・。誕生日にもらった。」
「うわすげぇな。これ名前まで彫ってあるし。」
ミカドは噂の腕時計を観察した。全体が銀色のそれの下に、小さく「Saphyris.H」と彫ってある。おそらく、特注だろうし、彼氏以外にそんな金かけてプレゼントするようなことはしないだろう。
「んで、そんな彼女を、どうやってゲットしたんだよ?告られた?告った?」
ミカドは意外にそういう話が好きである。しかも、相手が久々にあった友達なので、歯止めは効かない。
「いや・・・むしろ自然にそうなっていうか・・・そんな感じだよ。もういいだろそんなこと!」
それと、同時に、ドアの向こうから、声がした。
「さー!」
「ミカド!御飯だよー!」
二人はゆっくりと立ち上がると、声のする方に向かった。途中、ミカドが小声で「何お前、さーとか呼ばれてるの?」とからかうように。もちろん、彼だって望んでそう呼ばれているわけでは、ない。
泊まる値段の割りに美味しいものが食べられて、ミカドは満足して部屋に戻る。そしたら部屋の中で勝手にサフィリスのボールと、自分のボールが開いていて、お互いに格闘している。サフィリスの方は、ジュカインだが、こっちはナギいわく黒いオーラを出しまくっているアリゲイツ。
ジュカインのが有利なはずだ。それなのに、ジュカインはかなり傷付いていた。アリゲイツが、あの見たこともないような技を使って、ジュカインを攻撃しているのである。
「こら、やめろ!」
アリゲイツの首ねっこを持ち上げ、ミカドはボールにしまい込む。誰が開けたのか解らないが、取りあえずポケモン同士の喧嘩で、部屋が派手になってしまったのは確かだ。その次に入ってきたサフィリスが、ミカドのことを疑ったのは仕方ない。
夜遅く、ナギが風呂からあがり、部屋に帰る時のこと。ホテルのロビーにて、何やら会話が聞こえた。行ってみると、あのミカドの友達のサフィリスと、その彼女らしいガーネットの姿。二人とも、物凄い楽しそうに何やら喋っている。夕食前のガーネットの話だと、少しなんか分けありではありそうだけど。
じゃあ、その話の時、一瞬だけ見えた黒いオーラは・・・?
まさか、とナギは考えを否定し、邪魔せずにそのままミカドのところに行った。特に話すことは無い。ただ、なんとなくというだけで。
「ねぇ、ミカドは好きな人とかいないの?」
「俺?そうだなあ、前はいたけどなあ。」
またさり気なくはぐらかす。ミカドの常套手段だ。気まずいこと、都合の悪いことがあると、すぐそうやって逸らそうとする。フェナスシティにいたときはずっとそう。
「なんで答えてくれないの?」
「いや、別になぁ。いいじゃないか、それくらい。」
といった瞬間、ナギのパンチ。鼻に当たり、思いっきり骨に響いた。血が出てこなかっただけ、まだマシかもしれない。
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