「んで、そのミラーボがいきなりやってきてコロシアム乗っ取ったってやつか。」
「そうだ!だからコロシアムさえなければ・・・。」
シルバの背後に、大きな影が立つ。
「シルバ。余計なことを喋るな。」
「何をいってんだ!あのミラーボが来てから全部おかしくなったんじゃないか!」
「・・・喋るな。」
ギンザルはにらみをきかせた。シルバは黙って走り出す。サフィリスは視線でミカドに対して、追い掛けなくていいのかというメッセージを送る。それに何も言わないで、ミカドはギンザルの方を向いた。
「ミラーボに乗っ取られてボスは落ちぶれかよ。ざまあねえ。」
物凄く睨まれたが、ギンザルはそのまま戻っていった。さっきのこともあるし、今度は吹っ飛ばされるかと思ったが、そうでもなかったようだ。ただ、そっちを覚悟していたので、思いもしない睨みに心臓が凍り付いたのは事実。
「ミカド?ミカド?さっきの子、どうするの?」
ナギの言葉で我に帰る。何か起きそうな感じがしていた。スナッチ団にいたときに身につけた感。同じようなものをサフィリスも感じてるようで、男二人は追い掛けることにした。

 さきほどの広場を抜けたところで、間抜けなことに二人はシルバを見失ってしまった。人がいっぱいいすぎるのだ。おまけに、ミカドなんて相当な有名人らしく、ぞろぞろと喧嘩を売られてしまったのだ。一番手、ライダーのラプソ。
「なあほっしー、助けてくれるよねー友達だもんねーねー。」
「・・・そういうさあ、キラキラ目とか使ってもナギちゃんならともかく、お前じゃ意味ないから。ま、そんなこといってもとりあえず行くかね。エーちゃん、出番だ!」
相変わらずセンスないな、と思っていても、強いのを期待していた。しかし、ミカドの期待に反して出てきたのは・・・
「・・・エネコ!?エネコ!?」
二回も叫んでしまうほど驚いた。
「そうだよ、悪いか?」
「お・・・お前・・・お前・・・・。」
「なんでもいいから、タッグなんだからお前の相方によってエーちゃんへの命令かわるんだから出せよ。」
ミカドは初めてまける予感がした。よりによってエネコだとは思いもしなかったのだ。がっかりして見つめると、エーちゃんはミカドの方を向いて「にゃぁ」と鳴いた。
「・・・おーけー。エー様の為にがんばれよマクノシタぁ!」
魔性のエネコ。種族を超えてミカドのこころを掴んだようだ。この前捕まえたばかりのナギいわく「黒いオーラがちょっと弱まったようだけどまだ真っ黒」なポケモン。
 ところが、マクノシタが場に出た瞬間に、エーちゃんが激しく威嚇したのだ。隣で戦うことを嫌がっているというより、怖がっている。得体の知れないマクノシタが味方だとは思えないらしい。
「ああ、ナギってやっぱりすごいんだな。」
「エーちゃん、それは一応味方だ。攻撃するなよ。」
威嚇を止める。まだ気になるようだが、目の前に戦う相手が出てきてしまえばそちらを警戒するしかない。
「マクノシタ、あの技!」
「エーちゃん、捨て身タックル!」
技の名前が解らないため、とりあえず言ってみた。あの技の威力は凄い。マクノシタも抽象的すぎる命令の意味が分かったらしく、黒いエネルギーを放出して攻撃する。
「うお、なんだあの技!?」
「すげえだろ。ナギが黒いオーラ出てるっていうポケモンにしか出せない技らしいんだけどな。」
感心してる間に、エーちゃんはモココに攻撃をした。モココの隣にいるチョンチーがマクノシタに攻撃した。その後だった。モココがカウンターのように、マクノシタへ向けて黒いエネルギーを放ったのだ。
「お、おいまさか・・・。」
まさか、である。男が二人もいたが、お互いに言葉を失った。
「なにしてんだい、さっさとしてくれないかぁ?」
ラプソはいらだっている。迷っている暇はない。ミカドはスナッチマシンにボールを入れた。
「なっ、スナッチするつもりかい!?」
「ああ、そのモココをいただくぜ!マクノシタ、エーちゃん、動くなよ!」
スナッチボールと化したスーパーボールが飛ぶ。そこに吸い込まれるようにモココはいなくなる。抵抗し、あばれまわる。やがて大人しくなり、ミカドの手に戻ってきた。
「モココげっつ。」
「お前げっつって古いよな。」
「だって残念じゃないだろう。」
「まあそうかもな。それよりどうする、まだチョンチー倒してない。」
「エーちゃんの捨て身すごいからもう一回やって。」
「・・・だからそのキラキラ目やめろって。」
チョンチーの攻撃よりも先にエーちゃんの捨て身タックル。見た目からは想像できないほどの威力で、チョンチーは数メートル吹き飛んだ。
「おおすげっ。エーちゃん強いよ全くかわいいし。」
さっきまでいっていたことが嘘のように、ミカドはエーちゃんにはまってしまったようだ。そして、ラプソのリアルファイトを恐れて、二人は逃げ出した。

「なんか、全員がその黒オーラポケモン持ってるって感じだったぜ。くずきり全員分できるか?」
「一人一匹だったらな。だけど、何匹ももっていたら、俺だって無理だ。」
「だよな。」
「なあほっしー。」
「なんだ?別に見失ったことはくずきりのせいじゃないって。」
「ナギのことなんだが・・・ナギだけが、黒いオーラを見分けられるんだ。初めて会った時も、そのせいで変なやつらに狙われてた。それでもし・・・俺に何かあったら、ナギを守ってくれ。」
「・・・分かった。お前のまじめそうな顔、初めて見るな。」
「んで、肝心のシルバ君は〜。」
さっきまでのまじめさはどこへやら、ミカドの顔は緩みに緩む。広場の端まで来たが、全く見えない。
「こっちじゃなかったかなあ?」
適当にサフィリスは歩く。地理感がないから、どこに来ているのか解らなくならないように気をつけて。
「うわあああああ!!!!!」
締め上げたような悲鳴が聞こえた。それと同時に、シルバが何やらもってミカドとすれ違う。
「ほっしー、とりあえずあの中だ。シルバは後でいいだろ。行くぞ。」
小さな建物に入っていった。そして、そこには倒れている人が。
「何があったんだ?」
ミカドは駆け寄る。
「し、シルバが・・・。」
「シルバがどうしたって?」
「歯車もっていった・・・。あれがなきゃ、この街の電気が止まる・・・。」
「風力発電か・・・。シルバに聞きたいが、とりあえず歯車が先だ。」
ミカドが立ち上がった。鉄砲玉のように飛び出していったのである。シルバを追い掛けるために。

「暇だなぁ。」
ガーネットはあくびをした。待っていろ、といわれたのでそうしているのだが、ただ待つだけというのはとても暇なのである。ナギと話して時間を潰しているのだが、なんか面白いことはないかと考えていた。
「ねえ、ナギの上の名前ってなに?」
「え・・・笑わない?」
「うん、別に。」
「あ、あのね・・・神無っていうから・・・。」
「もしかして、みんなからかんなぎって呼ばれてたり?」
「よくわかったね・・・。」
「じゃあ、これからかんなぎ決定ね。」
「ええええ・・・まさかここに来てまで呼ばれるなんて思わなかった。」
「そう悄気ない。変な名前なんて世の中にもっといるから。」
例えばサフィリスとかね、と言おうとしたが、言う前に変なものが視界に入ってしまったのだ。
「お、美人二人でなにやってんだよ。俺とデートしねえ?」
ナンパしてくる変なやつ。かっこいいと思っているのか知らないが奇抜なファッションだ。
「俺はピックっていうんだ。どっちでもいいぜ、俺とあそばねえ?両方一緒でも・・・。」
「別にいいわ。」
ガーネットは冷たくあしらう。
「なんだと?」
「ごろつきのあんたよりかっこいい人が知り合いにいるから。」
「んだお前・・・調子にのりやがって。」
リアルファイトに持ち込めば確実にガーネットの勝ちだったが、意外に冷静なやつらしく、ピックはポケモンで勝負を仕掛けてきた。
「お前のようなやつは、俺の華麗なポケモンで打ちのめしてやるよ。」
「あ、そう。ダブルバトルあんまり得意じゃないけど、いいわよ。」
「ガーネット、大丈夫?」
「ああ、大丈夫大丈夫。ああいうのに限って実力ないから。」
向こうはキルリアとゴーリキー。こちらはシリウスことラグラージ、カペラことチルタリス。
「シリウスは地震、カペラは神秘の守り。」
飛んでいるから地震の影響を受けない。それをいいことにシリウスは暴れたい放題。しかも、キルリアの方は特に食らったらしく、倒れた。
「ほらね。」
「女ぁ・・・ミラーボ様にもらった、とっておきのポケモンで倒してやる!」
ピックが振りかぶった瞬間に出てきたのはヌオー。
「ヌオーなら楽勝じゃない。カペラ・・・。」
「ガーネット、そのヌオー、黒いオーラが出てる!」
「え?あの黒いオーラ?」
ミカドは今いない。ガーネットはカペラを引っ込め、リゲルことキノガッサを出した。
「リゲル、キノコの胞子!」
ヌオーを眠らせる。そして、シリウスはゴーリキーへマッドショット。ピックのポケモンは一匹となった。
「さて、ピックとかいったらしいね。そのヌオー、もらうわ。」
「な、お、お前・・・なにする気・・・。」
全ての言葉を言えずにピックはノックアウト。ガーネットのパンチが炸裂したのだ。ピックは華麗な弧を描いて背中から着地。起きたらとても痛いだろうな、とナギは思ったが、心配してなんていられない。
「ミカド来るまでこのヌオー、眠らせておくわ。まあいいわよね。」
「ガーネットって・・・いろんな意味で凄いね。」
「そう?」
「うん。なんか、ポケモンより強いんじゃない?」
「そんなこと・・・ああ、あるときはある。」
ナギは密かにサフィリスがいつもひれ伏している意味が改めて理解できた。
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