金色の砂がうなりをあげて舞い上がる。その中をミカドは黒いバイクで追い掛ける。元々捨てられていたものを改造したオリジナルバイクであるが、何を血迷ったか、いろんな操作が逆になってしまっている。例えばアクセルとブレーキは普通のバイクと同じだが、メーターの指す方向や自動で動く部分などは全て逆である。いろいろ部品をいじってる間にこうなってしまったのだが、ミカドはつけなおす気力はない。
 さて、そんな自家製愛用のバイクと共にシルバの後を追い掛けているのだが、全く解らなくなってしまった。徒歩で行ける範囲は全て探した。すでにパイラタウンは見えなくなっている。ふと、ミカドは嫌な予感がした。
「ぼふぁっ」
としか表せない音と共に自家製バイクは止まってしまった。調子悪かったのに、あの変なオーラのポケモンとナギのせいでいじってるヒマなどなく、ついに故障。人を呼ぼうにも遠すぎる。ミカドの頭の中は真っ白になった。
「おいこの距離を歩きで帰れと?頼むよバイクちゃん。」
汗がにじむ。蜃気楼で遠くがもやもやとしたものが見えてくる。いや、あれは蜃気楼ではない。高い建物だ。助かった、とミカドはそちらの方に急いで行った。
「うっへえ、高い建物だなあ。」
近くに寄ればかなり高い塔のようなもの。砂漠のまん中にこんなものを建てる人物の気が知れないが、とりあえずミカドはさらに近付いた。
「おい兄ちゃん、そんなとこいたら危ないよ!」
安全第一の黄色いヘルメットをかぶったおじさんがたくさんいた。どうやらまだ工事中のようだが、建物自体は完成しているように見える。
「え、ああ、あの、そのバイク故障しちゃって、パイラまで帰らなきゃいけないんで、なんか余った部品とあとドライバーとスパナ貸していただけませんかね?」
工事中のおじさんに事情を説明する。仲間内で何やら相談した後、故障したと思われるバイクを見て、必要な部品を分けてくれた。
「そういえばおめえ、こんなのいらねえか?わけわかんねえボウズが捨ててったんだけどよ。」
「ん?何の歯車だこれ・・・・ってこれか!」
すれ違うシルバが持っていたでかい歯車。見覚えがある。これに間違いない。それにしても、徒歩でこんなところまで来れるなど凄い移動力だ。
「もらうもらう!ありがとおっちゃん!」
お礼もそこそこに歯車を受け取るとバイク修理に取りかかり、なんとかエンジンもかかるようになったと思った瞬間に、ミカドは砂煙をあげて走り去っていった。

「っていうわけだ。あんな子どもに気を使わせてまであんたは沈黙し続けるのか?」
サフィリスはシルバの行動をギンザルに訴えた。というより挑発に近い。後ろで見守るガーネットとナギがいつリアルファイトになるかというのを心配そうに見ていた。ナギの腕に抱かれたエーちゃんはこころ無しか楽しそうに見える。
「そうか、シルバが・・・。」
「シルバはあんたにこの街を仕切ってもらいたいが、あんたが変なミラーボに動かされてるのに我慢できないんだよ。分かってやれよそれくらい。」
「・・・コロシアムが出来てからだ、この街がおかしくなったのは。」
挑発が効いたか、サフィリスの説得が効いたのか、ギンザルは割らなかった口を少しずつ開いていった。コロシアムで勝ち抜きトーナメントが始まって以来、おかしなポケモンがうろついているという噂が立ち篭め、そのことをコロシアム設立の提案者、ミラーボに聞くとギンザルのポケモンを人質として取られてしまった、というのだ。
「ポケ質なんてとって恥ずかしくないのかしら。」
ナギがぽろっと言うが、サフィリスもガーネットもそれに賛成だ。どうやらミラーボというのは名前だけでなく、マトモな神経を持っているような悪党ではない。真正面から戦いを挑めないギンザルのことが痛いほど伝わってくる。
「この街の人間は全て顔が知られてしまってる。見ず知らずの人間に頼むのは無責任すぎる行為だと思うが、コロシアムで何が起きているか見てきてくれないか?」


「・・・・で、なんだ、頼まれたのかお前ら。」
シルバは逃がしてしまったが、歯車は無事戻ってきた。一応、シルバが外してしまった歯車を元に戻すために風力発電所に行き、そしてまたまた広場で囲まれ、ガーネットのギャロップ、シルクに助けてもらったのである。そして、ホテルにて作戦を打ち明けた。
「コロシアムの勝ち抜き戦かあ。誰が出るんだ?」
ミカドは聞いたが、3人の視線は自分に来ていた。誰を辿っても、自分を見ているとしか思えない。
「・・・おまえら〜〜〜〜〜人の了解もなしに引き受けたとかまじめに・・・。」
「あら、いつも腑抜けてるのはどっちよ。たまにはこういうときくらい真面目に戦ってみなさい。」
ナギに一喝され、ミカドは電源が切れたように大人しくなった。
「ま、俺が会場内で、ガーネットが裏方みてまわるから平気だって。」
「ああ、そう・・・ってナギは?」
「何言ってるの?ミカドが不正に人のポケモンとらないか見張るのよ。付き添いってことで。」
「スナッチマシンのことかよ!っていうかそういう道具なのになんで人のポケモン取るのが不正・・・。」
「不正は不正でしょ。社会のルールも知らないフリーターっていうかあんたの場合はニートのくせに私に説教なんて就職してから言ってごらん!」
またもやナギに一喝されてミカドは大人しくなった。みていたサフィリスは痛いほど、ミカドの気持ちが分かっていたようだ。

 さて、そのサフィリスを思わず共感させてしまう張本人は、明日の計画が練り終わった後、あの真っ黒ヌオーと遊んでいた。ただ、ナギにしか見えないため、ガーネットには普通のヌオーにしか見えない。ギンザルはこういったポケモンが溢れているといったが、違いが一向に見えないのだ。人を攻撃してくるということ以外。ただ、このヌオー、かなりガーネットに懐いているようで素直に言うことを聞く。
「おっ、かなり懐いたじゃん、ざくろちゃん。」
「・・・ってミカちゃん。」
馴れ馴れしくミカドに「ざくろ」と呼ばれた腹いせにちょっと可愛く呼ぶ。ナギに一喝されたのもあり、へこみ方はいつもの2倍。
「ミカちゃん・・・や、やめて。」
「じゃあなんて呼んでいい?」
「そういえば、今まであんまり喋ったことなかったよな。俺のことはミカドでいいよ。だからざくろたんって・・・ああああ嘘ですごめんなさい謝るからその拳おろして。ね?・・・でも、絶対学校でざくろとか呼ばれてただろ。」
「あ、まあね。誰が思い付いたんだか知らないけど。」
「じゃあいいじゃん?でも、ほっしーはざくろって呼んでないよな。なんで?高校の時の知り合いじゃないの?」
「え、一応、中学から。ま、最初に会った時が会った時だから自己紹介なんて悠長にしてられなかったけど。」
「へー。」
ヌオーがミカドに対して甘えてくる。本当に黒いオーラが出ているのかと疑うくらい。
「でさあ、ミカド君、本気でナギちゃんをとっておかないと後で後悔するよ?」
「ん、人間はスナッチできないんだけど。」
「ギャグかな?本気かな?」
「・・・すいませんギャグです。というよりも、ナギは別に関係ないだろう。なんか強引にさあ、ナギの言う通りに黒いオーラポケモンを取ってるけど、いつか終わるだろうし。」
俺はほっしーと全然立場が違う、と呟くとミカドは部屋に帰っていった。
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