朝は強い風が吹いた。
パイラタウンの東にある砂漠から、強い風に運ばれて砂が舞い上がる。砂嵐ほど酷くないが、風が埃っぽい。こういう天気の時は、ミカドの運は最悪になる。窓の外を見つめてミカドは今日の勝負運を案じていた。
「なあ、キザトラ、バンダナ、今日勝てると思う?」
ソファにごろりとしていたキザトラはそっぽを向いた。バンダナも興味なさそう。
「お〜ま〜え〜ら〜ぁ!」
「なんだくずきり、お前ポケモンにバカにされてんじゃね?」
「なんだよほっしー、起きてたのか。」
「外の風に起こされた。」
「この地方は風強いからな。」
「まあ、名物に会えたってわけか。」
「それよりほっしー、今日のトーナメント変わってくんね?」
「それは昨日、トーナメント中のトレーナーも黒いオーラのポケモンを持ってくるとも限らないからお前とナギちゃんのコンビがいいよな、っていう結論になったんだぞ?少しは感謝しろ。」
「はあ?コロシアムのやつらもかぁ?」
風のオーレ地方も、嫌な世の中になっていくようだった。
「いーやーだぁーーーー!!!いきたくねーーー!!!!」
コロシアムの前に崖にミカドの声が響き渡る。コロシアムに行く為にはこの崖の上にある吊り橋を渡らなければいけないのだが、ミカドはすっかり腰を抜かしてしまった。
「なにいってんのよそれでもスナッチ団やってたの!?」
勇敢なナギに襟首をつかまれ、さらに吊り橋の上を引きずられる。情けないミカドの姿はコロシアムのトレーナーへの晒しもの。サフィリスは痛いほどミカドの気持ちを感じていた。
トーナメント戦の受け付けで、二手に別れた。ミカドとナギは選手入場口の前に立つ。この扉を開けた瞬間、連続戦は始まる。ミカドはドアに手をかけた。
「さて、挑戦者がやって参りました!その名はレオ!」
会場が沸き立つ。偽名を使っているので、しばらくはミカド本人だとバレないだろう。ここはすでにミラーボの配下にあると考えていい。会場はサフィリスが、裏はガーネットが押さえてくれているはずだ。
「よし、行け、キザトラ、バンダナ!久しぶりに暴れてこい!」
会場の客は、全てバトルに集中している。サフィリスはその中から妖しい、というよりも会場内のテンションから浮いてしまっている人を見つけた。人相でミラーボの仲間かどうか決めつけるのはおかしいが、どうもあの顔ではミラーボの手下には見えない。むしろ迷いこんでしまったという感じで、会場内をうろついている。
「あ、ちょっと・・・。」
話し掛けようとした瞬間、逃げるようにサフィリスから遠ざかっていた。ちらっとみた顔からして、まだ13〜14の少年のようだった。
「トーナメントはどうだ?」
関係者以外立ち入り禁止の看板が張ってあるところに、ガーネットは入っていった。もちろん、注意するガードマンやミラーボの手下と思われるのは片っ端からキノガッサのリゲルが眠らせていく。
「なんかレオとかいうやつが今、3人目に入ったみたいだぜ。」
「次はなんだっけ、オクタンだっけか?」
「ちげーよ、そのポケモンはもう配っただろ。次はあれだよ、最近ダークポケモンになったビブラーバ。」
「だっけ?今度のダークポケモンってマンタインじゃあ・・・。」
物陰にいたガーネットに気付いたようだ。これ以上の情報は収集できない。
「あ、あのぅ、すいません、トイレに行きたかったんですけど、迷っちゃって・・・。」
「普通のトレーナーのようだなあ?」
「おい、まずいぞ、聞かれてたら・・・。」
「そ、そうか、どうする?相手は女だぞ?」
「もちろん、黙らせるに決まってるだろ。」
話していた係員はガーネット1人と見るや否や飛びかかってきたのだ。目的はもちろん、口封じ。
「レオ選手!なんと4人目のトレーナーも倒してしまいました!4人抜きトーナメント制覇者にみなさん盛大な拍手をお願いします!!!」
キザトラとバンダナの息が上がっている。相当疲れたようだ。会場は盛り上がっているが、キザトラは今にも地面に座り込みそうだ。強さや連戦の回数などはそれなりで、他に対して不思議なところがあるわけでもなかった。そしてトレーナーの方も特に黒いポケモンを使ってくるわけでもなかった。
「特にないな、おかしいという話だけど。」
「レオ選手、賞品をお渡しいたしますのでこちらへどうぞ。」
係員に案内され、ミカドとナギはコロシアムの外に出て、違う建物の中に移動した。そこは廃虚のようなビルで、ここに賞品があるという。
「優勝賞品はなんと、あの強いと言われるダークポケモンです!」
「ダークポケモン?なんだそりゃ・・・。」
「ミカド・・・だめ、そのポケモン、黒いオーラが・・・。」
ナギが怖がっている。ダークポケモンと呼ばれたビブラーバから黒いオーラが出ているようだ。
「なっ、まさかお前、ミカドじゃあ・・・。」
「ちっ、バレたかな!さっそく、ビブラーバ頂くぜ。」
キザトラとバンダナを出すのは危険。アリゲイツとマクノシタのコンビが係員もといミラーボの手下を倒す。
「覚えていやがれ!」
「三日以内なら覚えてるかもな。」
ミラーボの手下が残していったビブラーバのボールを拾い上げ、ナギに見せる。やはり黒いオーラははっきりと見えるようだ。あいつらはこのビブラーバをダークポケモンと呼んでいた。
「ダークポケモンっていうらしいな。この黒いオーラを出すポケモン。やっぱりここには何かあるぜ。ほっしーとかと合流する前だけど、このビルを探すぞナギ。」
「うん。あ、ミカド・・・。これ・・・。」
書類がぎっしりと入っているファイルをみつけた。ポケモンの心を閉ざすことで完成した、完全戦闘型のポケモン。それがダークポケモンだということが、自慢気に書かれている。
「仕組みはよくわかんねえが、心を操れるってことだよな。」
「感心してる場合じゃないわよ!コロシアムの優勝者に配られてるってことは、この街の全員に行き渡っていても不思議じゃないわ。いい?このビルの探索が終わったら、この街を探索するわよ?」
「・・・そうだな。とりあえず全部回収して、それからどうするかは考えよう。ほっしーとざくろにも手伝ってもらえば、早く回収できるだろうし。ナギ、俺から離れるな。」
ミカドは走り出した。ここはミラーボの手下の集まり。慎重に行っては囲まれる。1人ならまだいい。しかし、後ろを来るナギのためにも、なるべく早く突破することが優先だった。
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