「さて、まーしたし、ギンザルさんとこのポケモンらしきポケモンを探すか。」
すっかり気分がよくなったミカドは曲中のルンパッパのように踊り出す。謎の造語に突っ込む余地もなく、その後ろ姿をみてナギも探し始める。やがてナギは水流にまぎれて何かの鳴き声を聞き付ける。
「ミカド?なんか水の流れる音にまぎれて聞こえない?」
「ん?何が?」
さっきの曲のせいで耳が少々鈍くなっているようだ。ミカドには聞こえていない。ナギは聞こえる方に寄って行く。部屋の奥から聞こえる鳴き声は、はっきりとしている。空耳なんかじゃない。
「あっ、プラスル!」
檻に入っていたプラスルを見つける。鍵はしまっていて開かないが、ナギには普通のプラスルにしか見えない。
「ミカド!この子はダークポケモンじゃないわ!」
「ギンザルんとこのポケモンの可能性は高いな。よし、マクノシタ、クロスチョップで檻を破れ!」
プラスルが入っていた檻は無惨にも原形を留めずに折れ曲がった。プラスルは喜びと共に、ナギに懐いている。
「よし、じゃあプラスルも助けたし、コロシアムの謎も解けたし、とりあえず帰ろうか。」
「そうね。あ、でも待って。」
ナギは机の上にあるファイルを取る。ダークポケモンのことに関する資料のようだ。
『戦闘をしたり、戦闘中に呼び掛けたり、普通のポケモンと同じようにすると、ダークポケモンの心が少しずつ開いていくことが判明した。また、ダークポケモンが見える少女がいるとの報告も。至急、解明を。』
「戦闘マシーンとして作った割には戦闘すると心が開いていくなんて、かなり間抜けな開発者だな。」
「だから感心してる場合じゃないわよ!私のことまで知られてるんだから、ミカドだってこの先安全だって限らないし・・・。」
「なぁに、俺がついてる方が安全だって。よし、なんか変なのがダークポケモン使って何かしようとしてる証拠が少し集まってる、これを警察とギンザルに見せれば何か動くだろうよ。」
「そうか、そういうことが・・・。」
持ち帰ったダークポケモンの証拠、そしてコロシアムの裏工作の話。知らない間にパイラタウンが荒れた街になった真相にギンザルは怒りを押さえるので必死だった。さらに裏をまわっていたガーネットは驚くべき情報をもたらす。
「あそこは実力を試す場ではなく、優秀そうなトレーナーを選び、わざと4連勝させ、ダークポケモンを配るという計画だったようです。多分、ミカド君もその1人にカウントされていたのかと。なにせ、勝つことが決まる前から配るダークポケモンの話をしていたので。」
「そんなことが・・・。それにしても、よくそんな危険なところで情報を持ってきたものだ。」
ギンザルは感心していた。隣にいるプラスルが嬉しそうにギンザルに甘えている。
「これから警察にも行こうと思う。じゃ、これで一応頼まれたことは終わったから。」
ミカドが軽く手を振り、出て行こうとした時、ギンザルは思い出したように話し出した。
「ところで、シルバ知らないか?」
「あいつ、まだ帰ってきてないのか?」
シルバとは歯車を捨てにいった時にすれ違って以来、全く会っていない。工事現場まで行ったことは確実なのだが、それ以降の足取りは誰もつかめていない。
「そうか、見つけたら教えてくれ。あと、それとこちらも何かつかめたら連絡するから、連絡先教えてくれないか?」
「連絡先?ああ、今ポケデジ壊れてて、受信しか出来ないけど、それなら。」
ミカドの取り出したのはポケモンデジタルアシスタント、通称P☆DA。連絡用に持っているのだが、最近、水の中に入れて壊してしまい、メッセージの送信が出来なくなってしまった。
「ああ、それでもいい。とりあえず、見たらパイラまで寄ってくれると助かる。」
「わかった。じゃあ、そろそろいくからな。」
と、プラスルがいきなりギンザルの横からナギに飛びつく。
「プラスル?もう行くんだからここでお別れ、ね?」
「プラスルは一緒に行きたいようだ。自分をあんなところに閉じ込めておいたのが許せないんだろう。」
「ええ?いいのプラスル?」
プラスルはナギから離れない。
「いいみたいだから、どうだ?」
「あ、じゃあ・・・ありがとうございます。」
ナギは深々とお礼をする。ミカドが入り口近くで呼んでいた。迎えられるようにナギとプラスルは出ていった。
「で、パイラタウンでこんなことが起きてるわけで。」
次に行ったのは警察署。前回は相手にしてもらえなかったが、証拠がある以上、警察としても対応しなくてはならない。署長はしばらく悩んだ後、協力するという答えをもらえた。
「ところで、そんなポケモンを使っている妖しいやつらを捕まえたんだが、今留置場にいるから話を聞いてみるといい。」
「へ?さすが、対応早いねえ、警察。」
ミカドは薄暗い留置場の中を進む。ナギも一緒だ。腕にはプラスルもついている。
「あ!ミカドじゃねえか!」
留置場の中から何か叫ぶ。ただし、ミカドは誰だか解らない。大体、名前を知られてるのは解るが、相手の顔に見覚えはない。
「だれだお前?」
「だーーーー!!!忘れたのか!ヘボイと」
「トロイだ!」
冷静にミカドはナギの方を振り返る。
「ナギ知ってるか?」
「え、ごめん、知らない・・・。」
「お〜ま〜え〜ら〜〜〜〜〜〜〜!!!!!俺からマクノシタ取っていったじゃねえか!」
「そうだっけ?」
「こんな顔だったかしら・・・。」
二人は顔を見合わせて、覚えてる?と聞きあうばかり。話は進まない。
「とにかく!俺らはお前らのせいで捕まっちまったんだ!」
「・・・だってナギ。」
「ってか知らないし、悪いことしたから捕まったんじゃないの?」
「おまえらあああ!!!!」
「威勢だけはいいよな。」
「まあ、捕まった方が悪いんだし、そこはどうでもいいわよね。で、なにやってるの?」
プラスルがつまらなそうにあくびをする。ミカドも中々進まない話にうんざりしていた。
「お前らがダークポケモン持って行っちまったせいで、俺らはミラーボ様にあわせる顔なくて、戻ったら殺されるし、だからこうやって安全なところに逃げてるんじゃねえか!!!」
「・・・ミカド、帰ろう。なんかいてもつまらないし。ああ、それといっておくけど、ミラーボはどっか行っちゃったわよ。」
ナギの一言でヘボイとトロイの勢いが急速に静まり返るのが解る。それほど、ミラーボは仲間内から脅威だったことが知れる。ビルの屋上で部下の命を見捨てて逃走するような男だから、器と大体の性格はつかめていたが。
「じゃ、俺ら帰るからがんばれよ、へぼいのととろいの。」
「だ〜〜〜〜〜か〜〜〜〜〜ら〜〜〜〜ヘボイとトロイだっつーの!!!」
どっちでも同じだろ、と心の中で反論するが、ナギに呼ばれて構ってるヒマなどなかった。もしその名付け親がミラーボだったら本当によくつけたものだ。ただ、センスはミカドもしくはサフィリス以下になるが。
「で、どうするの?」
「さあ、どうするべか。」
情報は得られず、ミラーボがどこに逃げたかも解らない今、何もすることはない。することといったら、治安の維持。これは警察の仕事なのだが、なぜかミカドが担当している。当の本人は治安の維持というつもりではなく、歩いていると勝負を吹っかけられ、リアルファイトは吹っかけられ、仕方なく撃退しているうちに結果として治安がよくなるという、なんとも皮肉な状態だ。
「ミラーボは戻ってくる?」
「・・・風が変わった。当分は来ない。」
ナギとだいぶ歩いた。さっきからプラスルがナギだけでなく、ミカドにも懐いてくる。小さいポケモンというのは、キザトラやバンダナがイーブイの時以来、全く触れてもいなかったから懐かしい。
「なんでミカドは風で解るの?」
「ん?俺がさあ、スナッチ団いた時に、風で全部読めた。その日の獲物も、怪我の程度も。ある時、今までにないような凄い絶好の風が来たんだ。その日のうちに、キザトラはエーフィに、バンダナはブラッキーに進化した。」
ナギが見たところ、風の話をするミカドは今まで以上に嬉しそうで、輝いていたように見えた。
「なんか・・・ポケモンみたい。」
「わーるかったな。」
「別に、悪いっていってるわけじゃないけど。風で解るなんて・・・。」
「じゃあ聞くけど、なんでナギはダークポケモンが見分けられるんだ?ナギ以外、誰も出来ない。」
「それは・・・昔はよく森で遊んで、その時に・・・ってああああ!!!!」
ナギは急いで服についている全てのポケットを探る。
「ど、どうした?」
「や、ヤバい・・・。私、アゲトビレッジにいる、おじいちゃんのところに行く途中だったんだ!!!」
「な、なんでそんなこと今まで忘れてたんだよ!?」
「どうしよどうしよう?あまりにも時間経ち過ぎてるよね?よね?買い物ついでにフェナスシティに寄ったらからまれて・・・。」
今までに見たことがない、ナギの慌てふためく姿。落ち着かないナギに不審そうな視線が集まる。
「どうするって・・・行くしかないだろ。そのまま行方不明になるつもりか?オーレ地方じゃ珍しくないけどさ・・・おじいちゃん心配してるだろ。」
「えええ?でも・・・。」
「大丈夫、遅れた理由は俺が説明しておいてやるから。」
どうしていいかまだ混乱しているナギの手をひいてバイクを停めてあるところまで戻る。
「ああ、でもほっしーとかどうしよ。俺から連絡できねーしな。」
「いやいや、2人きりで邪魔しちゃいけないかなと思うけど、行くのやめとくか?」
「いやいやお気付かいなさらず・・・ってほっしーいたのかよ!!!」
サフィリスの準備は出来ている。知らない間に買い込んだ荷物と共に。
「ちっ・・・俺とナギのランデブーを・・・。」
「さっきお気づかいなさらず〜〜〜〜とか言ってたのはくずきりの方だよな。で、どこに行くんだ?」
「アゲトビレッジ。ここから北に、今から飛ばせば今日のうちにつくかな。あれ?お前ざくろどうした?」
「後から追い付くから心配ないって。この街でまだ何か用があるみたいだったな。」
「心配ないって・・・じゃあとりあえず、行くか、アゲトビレッジ。」
エンジンがかかる。ミカドが言う、風向きが変わったせいか、バイクの調子も絶好調。簡単に直しただけでこんなに調子がよくなるとは思いもよらなかった。
ミカドの性格からしてナギは簡単に想像がついていた。スピード狂だということくらい。移動の度に狂ったようなスピードで砂を巻き上げ、止まる時はドリフトなみの回転で止まる。慣れたと思っていたが、ナギはまだこのスピードに追い付いていけなかった。
「ミカド、もっとゆっくりいかない?ちょー怖いんだけど。」
「大丈夫大丈夫、俺に任せておきなって。」
「それが怖いんだけど・・・。」
プラスルがナギの足で出来た日陰で寝ている。そのかわり、ダークポポッコが砂漠の強い日差しを浴びて嬉しそうだ。ダークポポッコが喜んでいるのは、日差しだけでなく、このスピードもあるようだ。どうも、ダークポケモンとなると、荒い部分や攻撃的な部分が突出するよう。
「で、ナギ、さっき言いかけた、森で遊んでどうたらってなんだ?」
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