「くくく・・・ぶわっはっはははははは!」
ギンザルの笑い声は止まらない。久しぶりに会ったミカドから聞いた話は止めることなど出来ないようだ。
「ありえん、ありえん!!!!サツに捕まるなんて!!!!」
「だから俺も言ってるんだろ!俺の居場所をサツに教えた情報はどっから来たのか!!!つかそこまで笑うかよ!」
しばらくは止めることなど出来なそうだ。ただギンザルが笑い疲れるのを待つしかない。


「あ、お父さんが笑った。」
家の地下室。そこにもギンザルの笑い声は響いていた。先ほど、砂だらけのミカドをみてシャワーをかしてくれた。 シャワーといっても、この家の地下室に流れ込んでいる地下水を浴びただけだが。それでも、砂は取れ、なんとか見れる顔になる。ミカドがギンザルと話している間、ナギは砂だらけの黒い服を洗っていた。その間、ギンザルの子ども達と話しながら。
「ギンザルさん・・・豪快ね・・・。」
「相当面白かったんだろうね。最近そういうことなかったら余計かも。」
子ども達のリーダー的なレイラは他の子ども達にも何か指示している。ギンザルがパイラの治安を良くするのに大変なことを分かっていて子ども達も協力しているのだろう。
「ミカドって変な造語は多いし、本当に失礼な話じゃなきゃいいんだけど。」
「ぞうご?」
「言葉を勝手に変えて作っちゃうのよ。それに風から言葉が聞こえるとか、不思議っ子よね。あ、本人にこのこと言っちゃだめよ。」
「うん。金髪ライオンのお兄ちゃんに不思議っ子は言わないよ!」
レイラから、ミカドと同じ種族の香りがした。


「で、端のアゲトまで届くような情報網か?」
やっと笑い終わったギンザルがまじめにファイルを取り出す。普段はおちゃらけてるミカドでも笑われたら面白くはない。
「ミラーボを追い出した君が有名になり、アゲトまで瞬時に伝わった、ってことは考えられるがな。」
ギンザルはファイルをしまった。
「一つだけ、そんな早い情報を伝えるのがある。」
「どこだそれは?」
「アンダー。」


「こちらスレッド、そっちで何か情報は?」
「こちらレイラ、またあの『金髪ライオン』がきたのよ!」
「本当か!?こっちに来る気配は?」
「あるかもしれない。」
「わかった、ヴィーナスの動向に気をつける。何かあったらまた連絡をいれる。」
「わかった、気をつけてね!」


「アンダーってどこだ?」
ミカドが当然のごとく問う。
「パイラタウンがまだ鉱山の街だったころ、労働者を泊めるための地下街さ。コロシアム前の吊り橋からずっと下を覗いても解らんだろうが、あの下にあるんだ。ただ、鉱山が閉鎖されてから、かなり経つからな、あの崖を伝って行くしか方法は・・・。」
「無理無理無理無理無理!!!!」
ミカドの脳裏に吊り橋の恐怖が蘇る。底の見えない真っ暗な崖の上を歩いたかと思うと、冷や汗が出てきた。
「そうか、じゃあ他には無理かもな。もう行く手段ってのが・・・。ああ、別に行くって決まったわけじゃないからいいのか。ま、どうでもいいがな。」
「どうでもいいって・・・。アンダーのやつが俺を売ったんなら俺はそいつにお礼参りしなきゃいけねえんだよ。もう少しでナギが危ないところだったっつーに。」
「その前に、お前自身が警察に行ったのが間違いだと思うが・・・。何よりもやめておけ。高所恐怖症じゃあ無理だ。全く、どこの世界に高いところが怖いから行けないなんて言う悪党がいるんだか。」
「俺は俺、悪党は悪党なの!ムガイならそうじゃないかもしれないけど!」
「ムガイ?あの一緒にいたやつか?」
「いやいやいや、そいつはほっしー。ほしのさふぃりす!あいつもあいつで、若いのに白髪になっちゃって。」
「あれは地毛なのか。本当に類は友を呼ぶというか、似たもの同士というか。そういえば、さっきその子に似た子が、街のごろつきに囲まれてたな。」
「は?どうしてそういうことを最初にいわな・・・」
「ところが、ほらあの、あの子は彼女だろ?ごろつきを突き飛ばしてどこかに走っていった。連絡はないのか?」
「ちょっとまって。」
音沙汰は無い。ギンザルの話が本当だとすると、安全なところで連絡をくれるはずだが・・・。
「あ、ちょっと待ってくれ。」
ギンザルが鳴り出したベルに反応し、受話器を取る。
「ああ、私だ。え?なに?」
ただ事ではないことを察知する。受話器をおいたギンザルから、ため息がもれる。
「大変なことになった。謎の一団が、バトル山を占拠し、人質をとって立てこもっているそうだ。私はこれからそこにいかなければならない。話すなら・・・。」
「バトル山?それはどこだ?」
「アゲトビレッジからが一番近い、あの火山だよ。ほら。」
「ああああ、あれってバトル山っていうのか。悪いがギンザルさんよ、あんたのがここの地理を知ってる。頼むからほっしー達を探して欲しい。俺達が、かわりに行ってやる。ナギ!」
ギンザルの返事も聞かないで、ミカドは地下室のほうへと入って行く。事情を聞いたナギがミカドと共に飛び出してくるのは、数秒とかからなかった。


 まだ半分濡れている服でも気にしないタイプのよう。それを笑うように、オーレの強い風が吹き付ける。それは、目の前に立つ妨害者を教えるように。
「よぉ、やっと会えたなあ、ミカド。」
「・・・ナギ、俺こんな光景あった気がするんだが、まあいいとして、目の前にいるの誰だか知ってるか?」
ミカドの影に半分隠れながらナギも解らないと言い出した。
「だろ。俺ってさあ、知らない人に絡まれる確率高くね?」
「それは元スナッチ団の上に腕がランキングトップだったからでしょ!」
「そうかあ。本当に俺って有名人だよな!」
漫才のようなやりとりに、相手はしびれをきらしたようだ。
「おまえら!ふざけてられんのも今のうちだけだぜ!?」
「だから、俺はお前知らないんだから、お礼参りされてもお礼の意味が・・・。」
「お前は俺からオオタチとってった挙げ句にエーフィのサイコキネシスで俺を壁に叩き付けただろ!」
ミカドの頭の中に変化が起きた。それは情報を得たシナプスが一気に脳の中でつなぎあった。
「ああああ、あの『俺は何もしらねえんだってよぉ』って警察にいっておきながら行った後で『けっ、お前なんかに話すことなんて何もねえよ!』って二重人格のやつか!いやいやいや、お前のオオタチまじで役にたってるよ、うん、まじで。」
噺家でもないのに、よく1人で何役も演じられるものだ。思わずナギは感心してしまう。
「まじで、じゃねえよ!俺はマサ。名前も忘れたのかこのやろう!!!」
「うーん、覚えて無いってことは多分そう。うん。まあいいじゃないの、俺がさあ、元スナッチ団でさあ、マサタチ以外とられなかったって思えば。」
マサをおちょくるように扱う。というより、ごろつきの扱いになれているというか。
「よくねえ!よくも俺が苦労してとったダークポケモンを取ったな!」
「ほうほう、ダークポケモンねえ、最近ねえ、ダークポケモンを普通のポケモンに戻す方法なんてみつかっちゃったりして、そのうちダークポケモンなんていなくなっちゃうかも〜。」
一体ミカドの中には何人住んでいるのだろう。今もミラーボの物まねをしている。それがよく似ているのだ。スナッチ団じゃなく、物まねのお笑い芸人をやっていたら、売れただろうに。
「ぐだぐだ抜かすんじゃねえ!とにかくお前には借りを返してやる!」
怒りの頂点に達した相手のボールから二つ。キルリア、それにゴーリキー。昔のくせで、反射的にキザトラ、バンダナのボールを投げている。
「さて、最近ダークポケモンにバトル任せてたキザトラ、バンダナ、お久しぶりのステージでございます〜。」
もう次の人格が入り込んでいる。今度は多分、手品師かなんか。一体、どれが本当のミカドなのだろう。
 ふとナギは思った。本当のミカドなどいないのではないだろうか?
いつも見せてる顔と、バトルの顔と、それだけでも違う。いや、違う人などごまんといる。それだけじゃない・・・。
「まさかね・・・。」
いつものミカドと変わらない、と言い聞かせてナギは黙って見守った。
 
 でも、いつものミカドが本当じゃないとしたら・・・?


「逃げ切れた?」
ガーネットは後ろを振り返り、改めて無事を確認した。サフィリスも息が上がって何も答えられない。パイラタウンも端のほうで、すでに発電力の風車が小さく見える。
「はぁ・・・。」
「どうした?らしくねぇ。」
「なんかオーレに来てから逃げ回ってばかり。ホウエンじゃあそれなりに強いって自負してたのに、なんでこうなんだろう。」
「そりゃ、くずきり風に言うなら『風があわない』んだよ。」
「は?」
「だから、お前がホウエンで強いっつーのは、ホウエンの風とお前があってるから。オーレの風とお前は相性が悪いってこと。くずきり風に言うと。」

続きを読む
戻る