ミカドは普通に地下の建物が嫌いだ。送風口からくる風が、カビくさかったり、それに独特の匂いがだめらしい。本人曰く、地下は本当に生きてる風が吹かないと言う。そんなことを感じるのはミカドただ一人だけかもしれないが。
 サフィリスは別に気にも留めず、空元気のようだけど歩いてる。ナギもプラスルを抱いて歩ける。ただ、シナは日光がなくてへなへなしてる。キザトラとバンダナもあんまり出たくないらしい。
 
「ミカド、ここすごくない?」
ナギはその一言で全て語った。こんな地下にパイラコロシアムなみのものを作ってるのだから。しかもネオンや爆音が派手に飛び交う。ここでもパイラと同じようにしてダークポケモンが配られているのかと一瞬だけ推測が先に出た。そうなるとなにより早く特攻を仕掛けたくなる。
「パイラのコロシアムとつながってたりするのかな?どう思うよ?」
ミカドが言おうとしてたことをサフィリスに先取りされて少し悲しそうだった。一応うなずいておいたが、それがボケにとられたらしく、ナギのレッツゴーハリセンが炸裂する。食らえばわかるが、意外に痛い。特に精神的に来るのと、叩く快音が響くために音的にも痛い。
「ま、なんでもいい、こういうコロシアムってのは・・・。」
『臨時ニュースです!!!』
いきなりコロシアムの待合室全体に、けたたましいテレビ放送が入った。こういうテレビの臨時ニュースは、たいていよくないことばかり。もちろん、緊張感が走る。
『ええい、お退き!!!』
といきなり画面にうつっていたアナウンサーが消える。きれいなほどのとび蹴りだった。実はこれ格闘番組なのではないかとミカドは腕を組んで思っていた。代わりにとび蹴りをかました女は、毎年の年末の歌番組でド派手な衣装の大林幸子ばりの衣装で現れる。
『聞くのよ!どうやらこのアンダーにスパイが入り込んだらしいわ!スパイを捕まえた人にはわたくし、ヴィーナス様からのご褒美あげちゃうんだから!!』
ふとサフィリスの方を見ると、画面のヴィーナスに唖然として言葉も出ないようだった。ちなみにガーネットとナギは強いことに「ちょっと派手すぎるよね。」「30代いってるよね。」と冷静に会話してる。
『いいこと!必ず生きてヴィーナス様の元へと連れてくるのよ!をーっほほほほほほ!』
スパイはミカドたちのことと考えてもいいかもしれない。けれど、つかまってあんな高笑いを毎日聞かせられるのだけは耐えられない。だったら浮き上がれないダイビングやる方がマシだと思っていた。つかまらない、そうミカドは決意した。
「なあくずきり、コロシアムがあるってことは、地下の街があるってことで、そこがアンダーと考えていいわけだよな?」
「どぅしたよ?いきなり確認とるよーに言い出して。」
ミカドとサフィリスは顔を見合わせるが、たぶん考えていることは同じ。アンダーの街に3人を逃がして、2人だけでこのコロシアムを占拠してやるってこと。そうすれば、ヴィーナスの目がこっちに向き、3人は安全にできる。
「まーそういうことだからさあ・・・。」
「わかった。あ、ナギとざくろさあ、ちょっと俺たちこのあたりのトレーナーと戦ってくら。多分このまま真っ直ぐ行けばギンザルの言ってたアンダーにいけっから、先にいってホテルとっといて〜。」
ミカドは廊下を指してそういった。昨日のせいで眠そうなシズイもいることだ、ナギはそれを考えていくことにした。ここまでくればひと気もあることだし、そうそうシャドーに気配を悟られることもない。悟られたとしても何人もいる一般市民の中で狙いをしぼってくることはないだろう。
「わかった。・・・いっとくけど、ポケモン盗んだら・・・。」
「わーわかってますー!!!」
ナギの威力は絶大だった。やはりいいコンビだと眺めて、ふとサフィリスはガーネットの方を見た。ほとんど意識も体も眠ってるシズイを背負ってるガーネットは、親子みたいだなともやっとした気持ちに駆られる。4年前と同じことを言っているシズイを信じるとすれば、もしかしたら本当に助けてほしいのは母親の方の・・・。
「いくならいけば?」
そう思っていると、ガーネットから冷たい言葉が浴びせられる。昨日の夜、結局何も話さず、サフィリスを突き飛ばして去っていった。そんな彼女に何もできない自分がさらに嫌になってついイライラしてしまう。しかし、彼女に当たっても何の意味もないし、悪いのは自分だからと、負のスパイラルにどんどん陥っていた。
「え、ああ、じゃあちょっと行ってくる。」
優勝したトレーナーに賞品を与える部屋に入り、3人が去るのを待つ。完全に消え去った瞬間、2人の行動は始まった。


「それでは、ここでお待ちください。」
係員は優勝者を連れてきた。2人が隠れているとも知らず。もちろん、優勝者は何も知らないで、勝利の余韻に浸っている。優越どころか超越。パーフェクト勝ち、つまり一匹も戦闘不能にならずに勝っていたのだ。試合を全て。
「ヴィーナス様より賞品の授与がございます。」
係員は去った。離れていく足音を見て、サフィリスが影から動く。その動きは、腕が鈍ってないとの証拠。



「ねえ、ガーネットさ、サフィリス君と出会ったときに、マグマ団って知らなかったんでしょ?それなのにどうして認められたの?」
いきなりの質問にガーネットも少し答えるのに時間がかかる。
「え、別に・・・そんなこといったら、ナギだってそうじゃない?」
「いや、状況が違うっしょ。それに私は最初から知ってるつか、会ったときからハゲのおじさんに追いかけられてたから、別になれたっていうか、なんていうんだろう、気にならないんだけど、やっぱり後から知った方がショックだと思うんだ。」
「後から知ろうが、前から知ろうが、ショックなことはショックだと思うよ。それに衝撃なかったんなら、後からでもショックじゃなかったと思うけどね。」
ズリ落ちてくるシズイを再びあげる。
「ま、そういう人もいるよ。全員が全員、同じ受け止め方するわけじゃないし。」
シルクがガーネットの後ろを3歩下がって歩く。その距離をずっと置きながら。しかしガーネットが止まらないにもかかわらず、シルクは立ち止まる。ガーネットが振り向いた時、同じくしてナギが足元に光るものを見た。そして目の前を見ると谷底から吹き上げる風が強くたたきつけた。崖だ。パイラのあの崖がこんな地下深くまで続いている。下をみても暗い闇ばかりで、底が見える気配はない。案内板にはこの崖を越えればアンダーと出ている。
「なにこれ!?ディスク操作板?」
ナギが覗き込む画面には、ディスクを挿入してくださいという指示が出ている。光る足元をたどり、視線を遠くにおくと、うっすらと白く光る乗り物のようなものがある。
「あれをこっちに寄せて使うのかしら。」
「そうだと思うけど、ディスクなんて持ってないし・・・。」
飛び越えられればいいが、着地点がはっきりしない上に、光る物体は遠目にみても小さい。シルクがブレーキをかけるには狭すぎる。着地したとしても落ちる可能性の方が高い。
「ナギ、やっぱり鳥使いだから・・・。」
「ちょっとガーネットまで同じギャグ言わない!」
「だよねぇ。」
ガーネットはため息をついた。背負っているシズイがずり落ちないようにして、ポケットに入れてあるポケモンたちを見た。ギャロップ、ラグラージ、チルタリス、ヌオー。組み合わせればいけるかもしれないけれど、そんなこと教えたことがないので、できるはずがない。思い通りに動かすために日ごろからの訓練が大切なのは知っているがまさかこんなコンボが必要だとは思わなかった。
「って、前にも誰かいってたわけ?」
「そりゃもう。どこから知ったのか知らないけど。」
神様大行進。二人とも口を開くことなく、遠くにみえる物体を見つめていた。どうしたらこちらに寄せることができるか、それさえできればこの問題は解決したも同じなのに。
「飛びます・・・か?」
ガーネットの背中で、シズイがふと小さくいった。完全に眠気が覚めたわけでないようだが、目をこするとシフォンを呼ぶ。炎がさらに明るく照らし、そこだけ地上の真昼のごとく。
「シフォン、飛ぶよ。」
ガーネットの背中から降り、シフォンに命ずる。飛べ、と。ガーネットがとめようとしたとき、信じられないものを見た。


 静かに眠っている。デンリュウの電磁波で麻痺しているというのが正しいかもしれない。ダークモココのボールの中でいつの間にか普通のデンリュウになっていたポケモン。モココを出そうとして出てきたのがこれだから、驚いたのは当たり前だった。
「よし、後はマーガレット蘭子を待つだけか。」
隣でサフィリスのため息が聞こえた。
「もうさあ、いい加減、第一印象だけで名前つけんのやめろって。」
「いや、だってあれマーガレット蘭子だろ!?春風ダンシンはいないけど。」
再びため息が聞こえた。そして次の瞬間、彼らはある方向に警戒を強める。ヒールのある靴をはいた人間が、歩いてくる音がしたからだ。
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