「な、なにこれー!?」
ジムに着いたアイナの眼に移るのは・・・・崩壊した、クチバジムの姿だった。
「一体何が・・?」
そのとき、ヤンヤンマが羽を震わせて鳴いた。
「ヤン!」
「どうしたのヤンヤンマ・・・!?」
そこに倒れていたのは、クチバジムのトレーナーらしきおじいさんだった。
「大丈夫ですか!?一体、何が起こったんですかっ!?」
「・・・うっ・・・いあい・・・ぎり・・・」
いあいぎり=Bその単語には聞き覚えがあった。塾で習った秘伝マシンのうちの一つだ。
「いあいぎり=E・・がどうかしたんですか?」
「ううっ・・・と、突然いあいぎり≠覚えたディグダを持った黒ずくめの男達がやってきて・・・ジムをめちゃめちゃに・・・」
「そんな・・・・ひどい・・・・」
すると、おじいさんははっとして立ち上がった。
「少佐・・・・マチス・・・・少佐はっ!?それに・・・いあいぎり≠フ秘伝マシンを持っているサントアンヌ号の船長は・・・・ぐっ」
「お、おじいさん!!」
「き、君・・・・私の、代わりに・・・・サントアンヌ号のほうへ・・・行ってくれ・・・・ううっ、あの桟橋に停泊している客船だ・・・」
「は、はいっ!ヤンヤンマ、貴方はおじいさんをおねがい!何かあったらソニックブームを出して!」
「ヤン!」
「・・・行こう、チコリータ。」
桟橋に着くと、そこには大きなサントアンヌ号があった。
「よし・・・いこう!」
「あーちょっと、君!ここから先は・・・」
「あ、あのっ」
「・・・・!?君、それはポケモン図鑑・・・・か?」
「は、はい」
「・・・いってくれ。頼む!」
船員の突然の態度の変化に、アイナは少し戸惑いを感じた。
「そんなに凄い人だったんだな・・・伝説のトレーナーって。」
船内はめちゃくちゃだった。破片やごみが散乱し、乗客は非難したようだった。・・・しかし、ひとりの人影があった。
「ううっ・・・」
「だ、だいじょうぶですかっ!?」
「き、きみ・・・非難命令を聞いていなかったのかね!?」
「い、いえ、わたしクチバジムのおじいさんに頼まれて・・・」
「!?何、クチバジム!?奴らはジムへ!?ジムはどう・・なった!?」
「・・・それが・・・ここみたいにめちゃくちゃで・・・・」
「なん・・・だと!?くそっ、私の力がふがいないばっかりに・・・・」
私の力・・?
「もしかして、船長さんですか!?」
「あ、ああ・・・」
「いあいぎり≠フ秘伝マシンは・・・まさか!」
「ああ・・・やつらに・・・黒ずくめの男達に奪われてしまった・・・。」
許せない。人々をこんな目に合わせて。物を奪って。アイナは心の中から何かがこみ上げてくるのを感じた。
「うう・・・・っ」
「・・・船長さん、わたし、秘伝マシン取り返しに行ってきます!」
「な・・・!?」
アイナは船長さんを船内から出した後、ジムの方へ走った。
「ヤンヤンマ!」
「ヤン!」
「ううう・・・君、船長は・・・?」
「おじいさん、やつらは・・・どこにいったんですか!?」
「・・・・ディグダの穴と呼ばれる・・・町の東にある・・・洞窟へ・・・・」
「・・・わかりました。」
アイナはすぐさま駆け出した。
「町の東・・・ここね!」
アイナは全く迷いも無くディグダの穴へと入った。
「・・・ヒヒッ、これさえあれば・・・」
「まちなさーい!」
「!?」
そこに居たのは、ディグダを引き連れた男だった。
「その秘伝マシン、かえしてもらうわ!」
「お、お前・・子供のくせに生意気な・・・っ」
「なによ!大人のくせにこんなことしてるなんて、子供以下よ!」
「ぐっ・・・言ったな!?おれたちゃ泣く子も黙るロケット団に向かって!?」
ロケット・・・団?
「きいたことないけど・・・・?」
「ち、近頃のガキは・・・」
「さあ、秘伝マシンを返して!」
「そう言われてはいはいそうですかと返す泥棒がいるかっ!いけっ、ディグダ!」
「チコリータ!」
二匹が対峙し、そしてバトルが始まった。
「ディグダ!ひっかく=I!」
「チコリータ、つるのムチ=I!」
ぱしっ、とチコリータはディグダの爪を叩くと、ぽきり、と折ってしまった。
「ああっ!!!お、おれのディグダのつめがああーっ!!!」
「とどめのはっぱカッター!!」
ひゅんひゅん、とチコリータのはっぱカッター≠ヘ旋回すると、一気にディグダにおそいかかった。
「・・・なんて、な!」
ふっ、とディグダは姿を消した。
「・・・?ま、まさか」
「いけディグダーっ!!!あなをほる!!」
「!?チコリータ、よけ・・・」
どぉん、と、チコリータにあなをほる≠ヘクリーンヒットした。
「チコリータッ」
「ヒヒヒヒッ!このディグダはこの穴で育った。いわば一番効果の発揮される場所!爪なんてすぐに生えてくる!!」
「そんなっ・・・」
「じゃああばよっ!」
そのとき、ぐぐ・・と、チコリータは立ち上がった。
「・・・そうよね、チコリータ。デルビルに立ち向かった貴方の根性は、そう簡単くじけるものじゃないわよねっ!!待ちなさい!」
「なっ?」
「まだチコリータは『ひんし』じゃないわ。まだバトルは・・・続いてる!」
「ひひっ、こりないお子様だ。ディグダ、もう一度あなをほる=I!!」
ディグダはまたぴょこんと地面にもぐった。
「チコリータ、天井にはっぱカッター=I!」
ひゅぴっ、とはっぱカッター≠ェ宙に舞った。
「そんなことをしても無駄だ!いけ、ディグダ!」
「・・・・・今よっ、つるのムチ≠地面に!」
「はっ、そんなものはまだ地面に出なければいいことだ!」
「・・・それは、どうかしら!!」
ピシッ、と地面が鳴った直後、ディグダが地面に顔を出すも――
「なっ、何ィッ!?」
チコリータは宙に居た。
「いまよ、たいあたり=I!」
すると、空中で旋回していたはっぱカッター≠ニともに、デイグダはダメージを喰らった。
「く、くそーっ!?」
「・・・さあ、秘伝マシンを返して!」
「ひ、ひいいーっ!くっそー、せっかくジムリーダーを・・・お、おぼえてろ!」
男はそういうと、去っていった。アイナは取り返した秘伝マシンを持つと、走り出した。
「はい、取り返してきました!」
「・・・・き、君がかね!?」
「はい」
「そうか。ありがとう。おれいに・・・これをあげよう。」
そう手渡されたのは・・・なにかのチケットだった。
「なんですか、これ?」
「【じてんしゃけん】だよ。これをハナダのミラクル・サイクルに持っていくといい。」
「あ、ありがとうございます!」
「でも・・・ジム戦は・・・・」
「え?」
「・・・マチス少佐がやつらにさらわれ・・・」
「おれがどうしたって?」
振り返ると、そこにはガタイのいい金髪のおじさんが立っていた。
「ま、マチス少佐!!さらわれたはずでは・・?」
「何、おれが!?・・・ガハハ、いやー最近はジムの挑戦が滅多にこねーから!」
一方の、ロケット団。
「な、こ、こいつは!?」
マチスを縛っていたはずの縄をといて、マチスの代わりにいたのは・・・
「め、メタモンだと!?」
「最近捕まえたんだが、おれに似てタフだからな。ま、すぐにもどってくるだろうさ。ガハハハハ!」
豪快な人だなあ、とアイナはおもった。
「ジム戦受けたいのはお嬢ちゃんか?」
「あ、はい!よろしく、おねがいします」
こうして、アイナの初のジム戦が始まろうとしていた。
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