「……旅に、でた?」
マサラタウンオーキド研究所現在午前7時。
言葉を発したのは、茶髪のツンツン頭の少年。
名はグリーン。
「そうじゃ、朝の……6時くらいだったか? 机の上にあったヒトカゲのボールと図鑑が無くての
それがあった場所に、代わりに手紙が置いてあった。レッドからだ」
取り残された一つのボールと図鑑が置いてある机を見ながら、レッドの置手紙を取り出すのはポケモンの権威、オーキド博士だ。
グリーンは隣にいた前髪パッツンの黒髪少女、ブルーを見てからその手紙を受け取った。
内容は、とても簡潔な物だった。
図鑑とポケモンを持って行った事、黙って行った事の謝罪や、ポケモン図鑑完成の手助けをすると書いてあった。
俺が思うに、最後のは建前だと思う。
昨日はキッパリ断ってたはずなのに。どういう風の吹き回しだろう?
「それを見て、どう思う?」
オーキド博士が、2人に問う。
「変だと思うな」
「変だと思います」
声が重なる、例え血が繋がってなくてもやっぱりいとこなんだなぁ
と、心の中でつぶやくグリーン。
「やはりそう思うか」
妙な、違和感。
この手紙に対しても、レッドの行動に対しても。
この研究所は、大体5時頃から研究員が忙しなく働きだすのだ。
少なくとも、皆4時起きで……警備員になれば24時間労働。
それなのにどうやって、誰にも気付かれずにポケモンと図鑑を持って行ったんだ?
それにこの手紙、最後に「今まで有難うございました」とある。
まるで、もうマサラに戻ってこないような……そんな感じの書き方だ。
「レッドの母さん、奈津さんに聞いたところ
朝5時には既にベッドはもぬけの殻だったそうだ」
「レッドって、そんなに早起きだっけ?」
お爺ちゃんに、呆れた視線を浴びせられ。ブルーには苦笑いされた。
……なんか変な事言ったっけ?
「まぁ、ここで考えても分からんもんは分からん!
という事でグリーン、ブルー……レッドに会ったら詳しい理由を聞いといてくれ」
まるで何も無かったかのように軽くそう言った博士。
飄々としてるなぁ。
いつもグリーンが思う事である。
彼、オーキド博士は本当にポケモンの権威なのか?
そう、疑ってしまうほど軽く、掴み所のない天真爛漫な性格だった。
「じゃあ、行ってくるよお爺ちゃん」
「時々電話しますね」
「ああ、行っておいで
ポケモン図鑑は程々でいいからな」
実際、ポケモン図鑑は殆どオーキド博士本人が埋めてしまっていて。
埋まってないのなんて、本当に珍しいポケモンぐらい。
オーキド博士は全部自分でデータを集めたいと言っていたが、グリーンの姉である夏美の『鶴の一声』で博士は諦め。
自分達にデータ収集を任せたのだ。
研究所の扉を開ける。
ぶわっ 優しくても力強い風が吹いた。
どこまでも続く草原、草花は朝日の光を反射してきらきらと輝く。
グリーンは、完全に地上から離れてしまった太陽を見上げた。
まだ完全に真上に上がりきっていないそれは、なんだかいつもより眩しくて。
思わず目を瞑った。
先に行ってしまった友人を思い出す。
自分より色素の薄い茶髪ははねていて、それを押さえつけるために白いヘアピンを付けている。
とても鋭くて、とても真っ直ぐな……紅い瞳。
スタートラインは一緒に切れなかったけれど
先を越されてしまったけれど。
いつか追いつこう
そう心に決めて。
白い世界から、一歩足を踏み出して。
To be continued.
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