午後9時45分・・・・・・・・・・・・とある楽屋
もうそろそろ、夜のドラマが終わりニュースがやりそうな今日この頃・・・・・。
優磨は誰もいない楽屋で一人椅子に座り腕を組み足を組み顔を下にし、まるで眠っているような姿をしていた。
そして、しばらくして部屋のドアの向こうから走ってくる音が聞えドアが開いた。入ってきた奴は軽く息を切らしている。
未来だ。
「ハァ;優磨さ〜ん、指紋などの情報仕入れてきましたよ〜;;」
未来がそう問いかけても優磨は何の反応も見せずただ黙っていた。
未来はムッとしたのか顔を少し膨らまし優磨に近づき頭をグーで殴った。
優磨は「いて〜〜」と唸りながら頭を押さえた。未来は満足したのか怒った様に鼻で「フン」と言った。
「か弱い女の子が彼氏のために一生懸命に情報を仕入れてきたのに寝てるなんて酷いです!」
「・・・殴った事は100歩譲って許してやる。だが、お前の彼氏になった覚えは無いし、お前の何処がか弱い女の子だ。嘘もたいがいにしろ」
優磨は頭を押さえ顔を怖くしながら未来に言った。未来は「確かに優磨さんが私の彼氏ではないのは分かってます!」と否定した。
自分はか弱くない事を否定しないんだなと優磨は思った。
「はぁ〜〜〜。で、どうだった?」
「普通の収穫ですよ。だって、凶器のナイフに犯人の指紋が付いてるかどうかの奴ですもん」
まだちょっと怒っているのか強く言葉を言い放つ。優磨は頭をかいた。
「普通でもいい収穫だ。で、どうだったんだ?」
「凶器には指紋は勿論、手の油さえ付いてませんでしたよ」
「だろうな」
「優磨さん、これがなんの役に立つんですか?もう犯人が分かったなら速く犯人をここに連れてきてちゃちゃっと解決しましょうよ」
「バカか、物事には順番という物がある」
「指紋の情報が何番に入ってるんですか?」
「それは、すぐに分かる・・・・・」
未来が「んもぅ、でまかせを言って」と言おうとした瞬間、部屋のドアが開いた。未来はそれに驚き後ろを向き少し驚いた。
入ってきたのは・・・・・・・田宮竜彦だった・・・・。
「さて、推理ショーの始まりだな」
優磨はそう呟くと席から立った。
「・・・僕に何か用かな?」
と言って来た。最後に僕は色々と用があるから手短に、と付け足した。
未来はあわわと声を震わせ、優磨にかけよった。
「ゆ、優磨さん!何時の間に、竜彦さんを呼んだんですか!?」
と小声で優磨の耳もとで言った。
少し首を横に傾け、うるさそうな顔をした。どうやら少しうるさかったようだ。
「お前が人を脅して、情報を手に入れている時にだ。何か問題でも?」
「問題ありすぎです!よりにもよって、目の前にいるだけで眩しい竜彦さんを私の前で連れてくるなんて私を殺す気ですか!?」
「全然眩しくないぞ?それにお前は例え100tトラックにひかれても死なないだろう」
「あぁあぁあ!今酷い事いいましたね!!」
「別に酷いことじゃないぞ?当たり前のことを言ったまでだ。あと、お前人を脅しての部分はツッコマ無くて良いのか?」
「世にはびこる悪を退治するには、脅しはいたし方ありません」
「お前も世にはびこる、悪の一人だ」
「ねぇ、痴話喧嘩はそれくらいにして本題に入らないかい?」
未来が優磨をピコピコハンマーで殴ろうとした時に、頭を掻きながら少し怒っているような顔で二人を見ていた。
優磨は、未来の攻撃を振り切り前に出て竜彦を見た。
「あぁ、悪い悪い。待たせたな・・・。話が長くなるから椅子に座ってくれ」
まるで友達に話しかけるような口調で言い椅子を指差した。
竜彦は椅子をひき座った。
「さて・・・・話というのは何かな?」
「あぁ、今回の事件についてアンタに問いたい所があってな」
「今回の事件について?それは君に話す事ではないだろう、君は刑事なのかい?」
竜彦は薄ら笑いを浮かべて、優磨を見た。
「いや、刑事じゃない。単なる高校生だ。事件を解決しようともってな」
「フッ、高校生が警察の真似事かい?事件を解くだなんて冗談はやめてくれよ」
嫌な笑みを浮かべて言い放った。
正論だ。何処にでもいる単なる高校生が、国家のために日夜働いて何十個何百個いや、何千個もの難事件を解決しようとしている警察の真似事をして事件を解こう等と、冗談にも程がある。
だが、優磨は少し微笑みながら竜彦を見た。
「これでも、一つ事件を解いた。二度あることは三度ある、の原理でこれも解けないかと思ってやったら、ものの見事に辻褄が合い解けてな・・・」
「それで、自分の推理を言いたいと。フッ、良いだろうその君の推理とやら聞こうじゃないか」
また嫌な笑みを浮かべまた嫌味な口調で言った。
さすがに怒るだろうと思われたが優磨はそれに動じず、目を閉じすぐに目を開き微笑んだ。
そして「アンタが不利になっても知らないぜ」と言った。未来はその言葉に少し疑問を覚えたが優磨の推理の方に集中した。
「まず、事件のおさらいをしよう。
今回の事件の被害者の西園寺鉄文、かの有名な西園寺グループの総裁で今日のピアノのコンサートの主催者だ。そいつが今日の未明、何者のかに鋭利な刃物、まぁ簡単に言えばナイフだな。それによって背中を5箇所刺さされた。幸い、傷があまり深くなかったのでその場では即死しなかったが今はどうなっている分からない」
一通り話し終えると、テーブルに右手をつけ寄りかかった。
すると、竜彦が口を開いた。
「・・・何でナイフだなんて分かるんだい?」
「実際に発見された。ナイフは鉄文の背中に突き刺さったままだった」
「じゃあ、指紋は?鑑識の人たちが取ったんだろう?あったのかい?」
「あぁ、埃さえついてなかった」
竜彦は質問を終えたと単に、驚いた顔をし優磨を凝視し口を開いた。
「何で君が、警察しか知らない情報を?聞いたのか?」
「はいはーい。私のお陰で〜〜す!」
元気よく声を上げ手を上げニコニコしながら前に出た。優磨は溜息を吐きながら頭を掻いた。
「・・・・君がかい?」
「はいw私が優磨さんに情報を提供しました!」
「はいはい、話は終わりだ。後にしろ、話を戻す」
「えぇ〜〜まだ少ししか話してませんよ?」
未来が頬を膨らませ優磨にグチをたらしている間に優磨は話を進めた。
「犯行の時刻は不明、怪しい人物を目撃した人は誰もいない。凶器に指紋もついてない。これしか犯人の情報がない状態なので今警察も奮闘している」
「その警察が奮闘しているのを見かねて君が解くだね?」
「半ばどっかの誰かさんに強制的にやらされているが、まぁそんな所だな」
後ろから殺気がふんだんに盛り込まれた物と冷たい物が入り混じった物が背中に突き刺さるような感覚がするが、構わず優磨は話を進めた。
「さて、これから俺の推理を話す。出来るだけ茶々を入れないでくれよ。さて、この事件を解くキーワードは、三つ。1、DMの謎。2、証言の矛盾。3、血痕の三つだ」
優磨は左手をだし三本指を上げ竜彦を軽く睨んだ。竜彦は、少したじろいだが何時ものペースで口元を緩めた。
「なんだい、2のDMの謎って。MDプレーヤーの親戚かい」
「DMとはダイイングメッセージの略だ。決してMDプレーヤーの親戚ではない。それよりちゃちゃを入れるな」
はいはい、分かりましたよ、っとした顔をして竜彦は口を閉じた。
「まず、事件現場の鉄文が刺された場所とその場所の特徴を言おう。
鉄文が刺された場所は、関係者以外立ち入り禁止の奥の部屋。その部屋はスタッフはおろか娘の亮子さえもは入れなかった場所だそうだ。鉄文は仕事中に部屋に入られるのを嫌ってたり、騒がしいのが嫌いでその部屋に入り仕事をしていた、と言うのが考えられる。実際、パソコンがあってなにやら仕事関係のものを打っていた形跡がある。部屋は、亮子の楽屋より二畳ほど大きくした部屋。机が一個、椅子が一個の閑散としている部屋。その机の上にうつ伏せになって気を失っていた。そして、そのうつ伏していた下にパソコンのキーボードがあった。そのキーボードには血がついていた。ある特定キーに」
部屋の内部と部屋の特徴とキーボードの事を話した後、優磨はいつの間にかテーブルの上にある紅茶を飲んだ。恐らく未来が入れたのであろう。
「で、その特定のキーとは何かな?」
「Q、Z、X、Bの四つのキーに血がついていてディスプレイにもQZVBと言う謎の文が残っていた。恐らく、鉄文が気を失う直前に自分の血で打ったと考えられDMの可能性が高い。
ここで出てくるのが事件を解く鍵、キーワードの1、DMの謎だ」
指を一本たて、微笑んだ。まるで何かを悟ったように。
「QZVBの四つのキーに何らかの特徴があったり、犯人へのつながりがあるかどうか色々と考えたが何にもなかった。じゃあ、これは何なのか、もしかしたらDMではないのだろか。だが、真実への道は開かれた。
QZVBには絶対何らかの特徴がある。俺はキーボードーを見てひらめいた。キーボードには数字や英語のアルファベット、平仮名や記号があることを俺は忘れていた。キーボードにはシフトキーやエンターキーなどの物以外には二つ以上の文字、あるいは記号がある。そして、アルファベットの書いてある右下に平仮名がある。
例えば、Tのキーには「か」、Yのキーには「ん」とあるように全てに書いてある。そして、それをQZVBに当てはめる。すると、Qのキーには「た」、Zのキーには「つ」、Vのキーには「ひ」、Bのキーには「こ」。これを全て平仮名だけをつなげると・・・・・どう思われますか?「たつひこ」さん」
そこまで話すと、優磨は冷たい微笑を浮かべながら竜彦を見た。
未来は、目をこれでもかって言う位まであけ驚いていた。竜彦は睨むように優磨を見つめた後、口元に勝ち誇ったような微笑を浮かべ笑いを殺すかのように笑った。
「それだけで犯人にしようと言うのかい?確かにダイイングメッセージには本人が打てば信憑性があるが、もしかしたら他の誰かが僕を犯人に仕立て上げようとして、犯人自らが打った可能性だってあるんだよ?それだけで犯人にされちゃ困るよ」
笑いを殺していたが、言い終わった後には笑いは殺されておらず嫌味な笑い声をあげていた。確かに、竜彦の言っていることは理にかなっている。犯人が自分が犯人である事をなくすためにわざと、他の者の名前をDMに残していった、と言う可能性もある。
優磨は、嫌味な笑いには馴れたのかまったく屈せず、自分のペースを保ち竜彦を見ていた。そして、口を開いた。
「確かに俺もそれだけでアンタを犯人にはしないよ」
「だけど、僕には君が僕を犯人にしようしているように見えるよ?」
「あぁ、そうだけど?」
「ハッハッハッハ!君はさっき僕が言っていたことをもう忘れたのかい?もしかしたら犯人が僕を犯人に仕立て上げようとしているかもしれないんだよ?」
「あぁ、そうかもしれないな。だから、俺をまだこの時点ではアンタを犯人とはしていない。だが、この先俺が言う推理にはアンタが必ず犯人になる」
優磨はそれを言い終わると紅茶をまた飲んだ。竜彦はまた嫌味な事を言うと思われたが、顔を強張らせて優磨を睨んだ。
「キーワード2、証言の矛盾。これがアンタの犯人になる証拠の一つだ。アンタ、最初に警部の人に言った証言覚えているか?」
「あぁ、覚えているよ。確か、俺は亮子さんの演奏が終わった後に会いに行こうとした時に部屋のたまたま近くに来たんです。それで、」
「ストップ」
優磨は竜彦が証言を言っている最中に止めた。竜彦は、その言葉に反応して言うのをやめてしまった。
「なんだい?何で急に止めるんだい?折角人が教えてあげてたのに」
「本当にたまたま、アンタは鉄文のとこの近くに行ったのか?」
「あぁ、そうだよ」
「じゃあ、アンタの証言は嘘だ」
「え!?」
声を発したのは未来だった。
「ちょ、ちょっと待ってください!なんで、嘘と言う事になるんですか!」
「それを今から話す。悪いが黙っててくれ。何故、それが嘘かと言うと亮子の部屋と鉄文が居た部屋はとても離れているんだ。それなのにたまたま、部屋に行ったなんておかしいんだよ」
「何でですか?」
「話す前にアンタに聞きたい、亮子の部屋を行くのに何処を通ってきた?」
「何処ってそれは関係者以外立ち入り禁止の札がある所だよ。ほら、スタッフがいっぱい居ただろう?第一あそこ以外に亮子さんの部屋にたどり着ける入り口はそこしかないよ」
「そうか。アンタの証言が嘘だと言う事が今まとまった」
竜彦と未来は驚いた顔をして優磨を見た。優磨は、目を瞑り話を進めた。
「アンタが入って所から俺たちもそこから入った。それで奥に案内され亮子の部屋にたどり着いた。そして、その奥に鉄文の部屋があったんだ。それなのにアンタは亮子の部屋に行くのを目的に行ったのに、それを通り過ぎ鉄文の部屋に向かった。何故だ?」
「何故ってそれは・・・たまたまだよ、たまたま。ほら、あそこは迷路みたいだろ?だから迷ったんだ」
なぜか、竜彦は動揺した声を発している。今までは嫌味な口調で言っていたのだが今回は嫌味な口調ではなかった。
「あそこは一本道。曲がり角はあっても迷路と言うほどでもない。それに、亮子の居た部屋のドアには「西園寺亮子」と書かれていた。なのに、アンタは通り過ぎ、鉄文の部屋に行った。それはなぜか。
アンタは元々、亮子の部屋に行くのが目的なのではなく鉄文を殺しに行くのが目的だったんだ」
「だから、たまたまそっちに行ったといっているだろう!俺はやってない!」
「そして、アンタは何食わぬ顔をして亮子と会った」
「待て!それだけじゃまだ僕が犯人とは決め付けられない!物的証拠を見せろ!」
何時もの嫌味な口調と冷静さがどこかへ行き、凄い剣幕と怒鳴り声に似た声を発しながら立ち上がり優磨を睨んだ。未来はそれに驚き優磨の後ろへと隠れた。
優磨はそれに屈せず、微笑んだ。
「いいだろう、物的証拠を見せてやろう。事件を解く鍵、キーワード3、血痕だ」
「け、血痕だと?」
「あぁ、鉄文がナイフで刺された付近には多くの血が飛んでいて、常人なら目を背けたくなる位だ。恐らく、ナイフで刺して抜いてさして抜いてを繰り返しているうちに、周りに血が飛んだのでだろう。
それで何かに気付かないか?未来」
「ほえ?」
急に話を振られたたため、変な声を出してしまった。
「え、えっとですね・・・・・あ、そうだ!それだけ血が飛んでいるなら犯人にもきっと・・・・・!」
「そうだ。もしその血が犯人についているのなら・・・」
優磨は竜彦の手を取り、上に持ち上げた。すると、スーツの下に着ているワイシャツの袖が見えた。そして、その袖には・・・・・紛れもない、血痕がついていた。
「・・・これが物的証拠だ。警察に持て行って鑑識に回せば・・・・・。これで満足か?」
「う・・・・・・く・・・・・・・・!」
竜彦は優磨の手を振り解き、走ってドアの方へと走り逃げようとした。未来が「待て!犯人さん!」といって追いかけようとしたが優磨がそれを止め、「大丈夫だ、アイツは逃げられない」と未来に言った。竜彦がドアを思いっきりあけ逃げようとしたら、ドアの向こうには川原警部と警察の人が立っていた。
「・・・・話は全て此処で聞きました。署で詳しい話を聞きましょうか。間宮竜彦さん?」
そう言うと、竜彦は後ろにしりもちをつき頭を抱えてうなだれた。
優磨は竜彦に近づき、「完全犯罪は絶対に起こりえない。必ず誰かがその犯罪を解き、真実の扉を開く。覚えておけ」と言って部屋を出て行った。未来も優磨の後に続いて・・・・・・・・。
優磨はDMの謎を解き、証言の矛盾をなくし、物的証拠を見せ、全ての辻褄を合わせた。そして、また難事件の謎をといた。まるで、神の如く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
END
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