【ジムバッジ】
ポケモントレーナーがジムリーダーに勝ったことを証明するバッジ。
これはポケモンリーグのシード権を得るための補助券にもなり、
また、1部のバッジは特殊な『技』を使うためのパスポートにもなる。
このジムバッジを集めることが多くのトレーナーの目標。


PAGE10.火蓋は切って落とされる


「・・・・・・いい、作戦を説明するよ、イ・・・」
カナズミジムの廊下の中、謎の男にもらった『オボンのみ』をアチャモにくくりつけながら、ルビーはアチャモへと向かって話し掛け、
そして、何かに気がついたように 口をふさいだ。
どういう心境なのかは 誰にも分からない、だが、その体は小刻みに震えている。
「・・・くけぇ?」
「聞いてるのかっ・・・聞いてないのかっ・・・わかんないけどさ・・・・・・
 とにかく、言うだけ言うからね!! アチャモ!!」





街中が水浸しになり、パニックを起こしている人々の間を2人の少年が駆け抜けていた。
先頭を走るのは黒い髪に金色の瞳の少年、名はコハク。
その後ろについているのは白い髪をロゴ入りのヘアバンドでまとめた少年、ニックネームはサファイアだ。
「・・・くそっ、走りにくーて しゃーないわ!! 一体誰や、こんな性質の悪い悪戯(いたずら)したんは!!」
「多分、『アクア団』。
 悪戯で済めばいい、大事になるまえに僕たちで何とかして止めるんだ!!」
水に足を取られながらも 4匹のポケモンが2人の後を追う。
1匹はサファイアのポケモン、ミズゴロウのカナ。
残りの3匹はコハクのポケモン、ライチュウのD(ディー)、ラルトスのI(アイ)、キモリのK(ケー)だ。

「せやけど、どうやって!?」
置いて行かれまいと必死で走りながらサファイアが尋ねる。
「これだけ大量の水が流れ出してるんだ、きっと大元からは相当の量の水が溢れ出してる。
 その『音』を聞きつけて・・・原因を叩く!!」
「んなこと出来るんか!?」
「『出来る』かどうかじゃなくて、『やる』の!!
 じゃなきゃ・・・・・・K(ケー)、左!!」
コハクの肩をジャンプ台代わりにしてK(ケー)が大きく飛びあがる。
着地地点にいるのは 青いぴっちりとした服を着た、いかにも『巻き込まれた』ではなく『巻き込んだ』らしい男。
向かい合っていた初老の男から 何かを奪おうとしていた男にキモリのK(ケー)は先制攻撃とばかりに『はたく』攻撃をしかける。
「・・・だっ!? なんだなんだ!!? この・・・・・・・・・ッ!!」
男に張りついたK(ケー)は無理矢理、叩き落とされるが、すでにひざの高さまで競り上がっていた水に助けられる。



「『アクア団』だねっ、何してるんだ!!?」
叩き落されたK(ケー)を拾い上げ、コハクは金色の瞳で青い服の男を睨み、モンスターボールを突きつけた。
「ナ〜ニしてるもないだろ、セイギのお仕事だよ。
 てめーみたいな お・こ・さ・まには、わっかんねーだろうけどな!!」
「わかりとぅもないな、強盗犯の気持ちなんぞ・・・」
指差されたサファイアが 呆れ半分で青い服の男をため息混じりに見つめる。
油断していたのか、サファイアが緊張を一瞬解いた瞬間、コハクに突き飛ばされ、水の上にしりもちをついた。
それまで彼が立っていた場所の水面が、音を立てて割れる。
「・・・!?」
「I(アイ)1度戻って!! サファイア、ただの使い手じゃないッ、油断してると真っ二つだよ!!?」
浅い水面を横切って行く 黒い影をコハクは睨む。
その様子を見て 青い服の男はコハクに向かって嫌な笑顔を向ける。
「へっ、てめぇこそ『ただの使い手』じゃねーな?
 オレ様の『油断ならねー奴リスト』に載せといてやるぜ、名前を言いなっ!!!」
「・・・・・・コハクッ!!! ポケモントレーナーだ!!!」
いつのまにかどこかへと行っていたキモリのK(ケー)が 真上から降ってきて水中の黒い影に向かって攻撃を仕掛けた。
弾けるように飛んだ水しぶきが サファイアの顔へとふりかかる。
「あぶないから、戦わないなら下がってて!!」
「・・・なっ、なんやて!?」
サファイアの顔を見ないまま コハクが足元の水を蹴り飛ばす。
そう たいして年も違わない少年に邪魔者扱いされ、サファイアはコハクと男の方を睨みつけた。
カナに合図し、青い服の男へと向かって戦闘態勢を取る。
その直後、男の真上から人が降ってきて、男を押さえつけた。
現れた人物に 辺りは騒然となる。
どこにでもいるような 14、5の少年に。




『・・・はい、盛り上がっているリーダーズバトル、午前の部、最後の試合となりました!!
 ここまで5人の挑戦者が現れて、ツツジさんを抜けたのはたったの1人!!
 午前の部、最後の挑戦者は なんと女の子!! ステージネーム、ルビー選手です!!』

会場の熱気もますます熱くなり、鼓膜(こまく)も破裂しそうな声援の中、凛とした姿勢でルビーはステージへと上がった。
他のトレーナーたちとは ほんの少しだけ違う、彼女の持つ独特の空気に
場内は一瞬だけ静まりかえり、また、変わらないやかましさを取り戻す。
「・・・少しは相性の良いポケモンを捕まえられました?」
無言のままルビーは首を横に振り、アチャモの入ったモンスターボールを差し出して見せた。
「それは可哀想(かわいそう)、でも、私はジムリーダー、手加減はしないからそのつもりでね。」
「・・・・・・当たり前だろ。」
ルビーは腰のポシェットの中から銀色のハーモニカを取り出すと、ゆっくりと息を吸い、それを口につけた。
バトル開始のゴングと同時に 一気に息を吹き出し、強いメロディを奏で始める(かなではじめる)。



「・・・・・・チャンプ?」
組み伏せられた青い服の男は上に乗っている少年を見て まるで幽霊でも見るかのような表情でつぶやいた。
黄色いキャップの少年は無言のまま、右肩に乗せた腕に力を込める。
「なんで、こんな所にてめぇがいる・・・・・・?」
「それはこっちのセリフです、どうしてあなたがこんなところで・・・アクア団なんかに・・・!!」
ささやくように喋った(しゃべった)少年の言葉は サファイアが聞き取るのでやっとだった。
その言葉に青い服の男は顔を引きつらせると、少年を突き飛ばし、山のほうへと向かって走り出す。
いや、逃げ出したと言った方が正しいか、とにかく、真っ先に男のことを追いかけ出したのは、意外にもサファイアだった。
その後にコハク、黄色いキャップの少年と続く。





アチャモが放った『ひのこ』はツツジのポケモン・・・ごつごつした石のようなポケモン、イシツブテを焦がした。
大きなダメージはなさそうだが、その攻撃方法にツツジは大きな瞳を瞬かせる。
「ハーモニカの音色で・・・技の指示をするなんて・・・!?
 綺麗(きれい)で張りもある声を持っていて どうしてそんな方法を取るのは分からないけど・・・・・・
 構わないわ、バトルをしている以上、同じこと!! コクヨウ、『いわおとし』!!!」
イシツブテが筋肉のついた腕で地面を叩くと 無数の岩がアチャモへと向かって降り注ぐ。
走り、転がり、飛びまわり、アチャモは必死でそれを避けようと逃げ回ったが、最後には2、3の岩の直撃を受け、足元をふらつかせていた。
ハーモニカの音色が響き、ルビーは指先でアチャモの首にくくりつけてある『オボンのみ』を指差す。
小さなひよこのようなポケモンが それをついばんで体力を回復するのと
イシツブテがふらつき、地面に1度腕をついたのは ほとんど同時だった。

「コクヨウ・・・・・・まさか、『ひのこ』でヤケドを負わせた・・・!?
 相性が悪いのも覚悟で、たった10分の1の確率に賭けたの!? どうなのよ、答えなさいよ!!」
ルビーはツツジの質問に答えず、再びハーモニカを口につける。
メロディが流れると、再びアチャモの『ひのこ』がイシツブテを襲い始めた。





「・・・・・・くそっ、なんで奴が・・・!?
 あり得ねぇ、奴が こんな所にこられる訳がねぇんだ・・・・・・!!」
青い服の、『アクア団』の男は山道まで逃げ込むと ぜぇぜぇと息を切らしながら言葉を吐き捨てた。
近くをガサガサと音を鳴らして複数の人間が走り過ぎて行く。
すぐに音が去っていったのを確認し、アクア団の男の口角が ゆるりと上がる。
「ククク・・・・・・ハハハッ!! 所詮は子供(ガキ)か、ろくに探しもしねぇ・・・・・・・・・」
「せやな、あんたが逃げ込むとこ見えとったから、普通探したりはせんわ。
 最近の子供じゃ、かくれんぼなんて幼稚すぎてやりもせん・・・・・・」
真上から声をかけられ、アクア団の男はオーバーリアクションで上に振り向いた。
どこから運んできたのか分からない 高く積まれた土の上で サファイアがカナと共にアクア団のことを見下ろしている。

「・・・・・・・・・てめぇ1人か?」
「知らん、コハクなら『おとりになる』言うて、あっち行ってもうたけどな。
 どやどや兄ちゃん、追っ手から逃げる言うんなら、このニョキニョキカンパニー特製の『忍者変身セット』っちゅーのは〜・・・¥¥」
「いらねーよ!! 大体なんだ!? ただの布っ切れに15000円って・・・!!
 ・・・・・・・・・じゃ、ねぇっ!? 降りて来い、ガキんちょ!!」
ほんの少し、バカにしたような視線を男に投げかけると、サファイアは「でっ!」と男へと向かって飛び降りた。
当然、男は避ける。 サファイアはバランスを失って ちくちくとした草の上にしりもちをついた。
「いぃ〜ったいなぁ〜・・・、悪人はんに遭遇すんのなんて、一生に一度あるかないかなんやから、
 ええカッコさせてくれたって ええやないか〜?
 ・・・・・・あ〜あ〜、靴が壊れてもうた、弁償してくれるか?」
「知るかよ、俺は てめぇみたいな新米トレーナーに構ってるヒマはねーんだ、お子様はお日様が沈まないうちにお家に帰っときな〜。」
「そおぉーっも!! いかへん!!」
サファイアは まるで何事もなかったかのように立ちあがり、カナと共に謎のポーズを決めて見せた。
目の前のアクア団の男は そんなサファイアを異形な物を見ているかのような視線で見つめている。
「せーぎの商人、サファイアとしては、街を滅茶苦茶にしよった悪人どもを許しておくわけにはいかへんねやぁーっ!!
 堪忍(かんにん)せぇ!! さもないと、カナの『みずでっぽう』が飛ぶでぇ!!」
「・・・・・・『堪忍』じゃなくて、『観念(かんねん)』、じゃねーのか?」
「そーとも言う!!」
「そうとしか言わねぇよ・・・・・・・・・」
あまりにも突拍子もないサファイアの行動に アクア団の男はふかぁ〜〜〜〜〜くため息をつきながら その場にしゃがみこんだ。
ふつうならバカにされていると考えるのだろうが、子供の浅はかさか、チャンスとばかりにサファイアは アクア団の男へとカナを近づかせる。
「っちゃ〜んすや!! 覚悟せぇ、悪党!!」
「・・・バカだろ、お前・・・」
男の足元から鋭い針が飛びだし、カナと、サファイアに襲いかかる。
右の肩と、左の腕が凍りつくように冷えて、左の手と、左の太ももが、どうしようもなく熱くなる。
何が起こったのかも判断つかないうちに サファイアは硬い草の上へと倒れこんでいた。
ぼぅっとする頭、かすむ視界。
その向こうでは青い色の何かが ぴくりとも動かなくなっている。


「・・・・・・ってめえっ!! 自分で何したのかわかってんのか!!?」
サファイアの耳に 若い男の声が響いてくる。
争う音、ポケモンとポケモンが戦う、聞き慣れ始めた効果音。
「てめぇこそ 何も分かっちゃいねぇ!! 今、このホウエンで 何が起こってるのか・・・!?」
「2人とも止めて!! ここで争ってても、何も変わらない・・・わあっ!!?」
ヘアバンドから覗いた白い髪を かすかな風がもてあそんで行く。
何かが墜落した音が サファイアの耳をくすぐる。
青い色の『何か』にサファイアは、無意識のうちに ゆっくりと手を伸ばしていた。
カナだと思った『それ』に手が触れた瞬間、それまでぼやけていたサファイアの視界が 急にはっきりと見えるようになった。
見えたのは、青い色のスーパーボールと、見知らぬポケモン。
詰まれた土の中から サファイアのことをじっと見つめている。

「・・・・・・・・・どうするの?」
何をするでもなく土の間から覗く白いポケモンを見ていたサファイアに 誰かが話しかけた。
振り向かずとも、その『誰か』がコハクだというのが分かる。
「カナちゃんなら、3メートル先で倒れてる。
 カナズミジムで戦ってた疲れが残ってたのもあるけど、さっきの『ミサイルばり』で決定打になったみたいだ、もう戦えない。
 疲れの溜まった状態で戦ったこと、相手の力量を見極められなかったこと、君のミスだ。
 『負けている』君は、この後 選択を強いられる。
 すなわち、『戻る』か・・・・・・・・・・・・」
「・・・もう1度挑んで、『進む』か、か?
 あんなぁ、ワシはこう見えて、結構負けず嫌いなんや、ここで むざむざ引き返すなんぞ・・・・・・・・・」
サファイアは手に持ったスーパーボールを白いポケモンへと押しつける。
一瞬の抵抗、もともとレベルが低かったせいか、すんなりと灰色のポケモンは青いボールの中へと吸いこまれた。
「プライドが許さん!!」



サファイアが立ちあがると 全く同じタイミングでコハクがD(ディー)を連れ、横に並ぶ。
金色の瞳がサファイアを見ることはないが、代わりに戦うべき相手を見つめて。
「分かった、それが君の『答え』なら、同じトレーナーからそんなサファイア君にアドバイス!
 君には『ポケモン図鑑』って強い武器がある。 それを最大限に活用して、相手の属性(タイプ)、レベルをしっかり確認するんだ。
 確認できたら、今度は自分のポケモンも同じことを確認する、そして『自分に出来ること』を探して!!」
言われるままにサファイアはポケモン図鑑を開き、2匹のポケモンのステータスを確認する。
いつになく冷静で、いつもどおり楽しそうで。
散々もめた後だというのに、欲しかった玩具(おもちゃ)が手に入った子供のような表情をしている。
「レベルはいっれぶ〜ん(11)の『サボネア』、やな? 草タイプ!!
 対して、こちらさんは〜、」
サファイアはスーパーボールの開閉ボタンを押し、地面へと打ちつける。
体力を削られることなく捕まえられた白いポケモンは 元気よく硬い草の上をカサカサと歩き回った。

「タイプは虫、地面、種類は『ツチニン』!! 行くんや、『きゅうけつ』攻撃!!」
「!!?」
キャップの少年との戦いに集中していた男は 突然の邪魔者に一瞬対応を遅らせていた。
『ツチニン』の鋭い口が『サボネア』へと突き刺さり、そこから急速に体力を奪う。
見た目によらず強い力で投げ飛ばされたサボネアは 2メートルほど飛ばされ、地面へとバウンドした。
「っしゃあ!! ワシの勝ちやぁ!!
 やったな、ツチニン・・・の・・・・・・・・・『チャチャ』!!」
慣れない様子でサファイアが自分のポケモンへと笑顔を向けると、『チャチャ』は、喜んだかのようにカサカサと動きまわった。
アクア団の男は睨むような表情をしながらサボネアをボールへと戻すと 小さく細く、息を吐く。


「観念せぇ、悪党!! 正義の商人サファイアが・・・・・・・・・ッ!!?」
正義の味方気取りでサファイアがアクア団の男へと指を突きつけた瞬間、突然、辺りが白い煙に包まれ3人分の視界がまるごと奪われた。
何が起こったのかも分からず、ただただパニックを起こすサファイア。
それを、コハクが何とか押さえるのが精一杯で、誰もその場から逃げ出す人物を追いかけることが出来ない。
ようやく煙が切れたとき、ずっとその場にいたはずのアクア団は既に 影も形もなくなっていた。
「・・・・・・逃げられた・・・?」
「みたいだね、『けむりだま』を使われて。」
不思議なほど静かになった空間に コハクとキャップの少年の声だけが響いた。
名前も分からない少年はサファイアにもかすかな音が聞こえるほど奥歯を噛み締めた。 それを コハクが肩を軽く叩いて諭す(さとす)。

「ありがと、多少落ちついたみたい。 それじゃあ、僕は、あっちの方追いかけるから・・・・・・・・・あ、そうだ、コハク・・・
 もうちょっとルビーとサファイアのこと、信用してやってもいいんじゃない?
 君が思ってるより・・・その子たち、弱くはないだろうから。」
キャップの少年に言われると、コハクは軽くうなずき、暖かい視線を向けた。
「そうだね、気をつけておく。
 相手は相当の手練だから・・・・・・『ゴールド』、君も、気をつけて。」
「了解、『ツー・クンフル』」
「『ツー・クンフル』、幸運を祈ってる。」







「・・・・・・コハク、結局誰や、あいつは!!?」
キャップの少年が見えなくなった後、サファイアは怒鳴りかけるようにコハクへと尋ねた。
あまり動じる様子もなく、ニコニコ笑顔を浮かべながらコハクは答える。
「僕の、『友達』だよ?」
どことなく、納得がいかず、再びサファイアが口を開きかけた時、声が響く。


「・・・サファイア!! コハク!!」
「・・・・・・ルビー・・・」
力のある足取りで1歩ずつ2人の元へと詰め寄ると、ルビーは黒い瞳でコハクのことを睨みつけた。
「一体どういうことなんだい!?
 気が付きゃ、2人ともジムの中からいなくなってるわ、外に出たら街中水浸しになってるわ・・・・・・・・・」
「あ、それはな・・・・・・」
「いきなり大雨が降り出して、2人で原因を突き止めてたんだよ。
 山の様子も見に行こうってことになって、探索してたら サファイア、新しい友達を見つけたんだよ!?」
まだ何か言いたそうにしているサファイアに、コハクは飛びっきりの笑顔を向ける。
「お祝いの言葉がまだだったよね。
 ルビー、サファイア、ジム戦突破おめでとう!!」
ルビーが大事そうに握っている『何か』に気が付くと、再び笑い、コハクは2人の手を引き、歩き出した。



〔やっと探し当てた『勇者』は、意地っ張りと、お調子者の子供たち。

 それでも、純粋で、ひたむきで、自分たちで何とかしようと頑張っている。

 歩いて行こうと思った。 守って行こうと思った。     ○○月○○日〕




「・・・・・・せっかく洪水起こしてPanic(パニック)にしたのに、失敗したデスカ?
 フガイないデスネ、カゲツ!!」
子供たちの追跡を振り切り、少々息を切らしぎみのアクア団へ、女が声を掛けた。
アクア団の男は 苛立った視線を向け、女を睨みつける。
「失敗はしてないっての、目的の物は手に入れた。
 あのガキどもは、気が付かなかったみたいだけどな・・・・・・・・・」
カゲツと呼ばれた男は 手の上で小さな物体をポン、と放り投げる。

「ソレならば、あの恥ずかしいメにあったこと、水に流してあげましょう。
 ダケド、次はないと思っておいた方がイイですよ〜♪」
「・・・・・・分かってるよ、俺たちの目的は、ガキに邪魔されたくらいじゃ、止められないっての。」


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