【コンテストランク】
ポケモンリーグにジムとリーグという2段階の強さがあるように、
ポケモンコンテストにはノーマル・スーパー・ハイパー・マスターという4段階のランク付けがある。
それぞれ、下のランクを優勝しない限り、上位ランクのコンテストには参加できず、
最高ランクのマスターランクで優勝することは、ポケモンコンディショナーにとって最高の名誉となっているらしい。


PAGE28.Song of destiny(1)


会場はお昼時という時間のせいもあってか、人はまばらだった。
そんな中でも、時間になればコンテストは始まる、ルビーは 会場の真ん中に立つと、モンスターボールを真上へと放った。
スポットライトの下モンスターボールが開かれると、飛び出したアクセントはステージ上をポンポンと跳ねまわる。
「STAND BY ACCENT,WE GOT VICTRY!!」
少ない人数からわぁっと声援が上がった。
スポットライトの下の1人と1匹は どこか輝いて見える。



『さぁっ、盛りあがってまいりました、ここ、ハジツゲタウンでおこなわれるポケモンコンテストスーパーランク!!
 最後のエントリー、ルビーさんとアクセントのアピールも終わり、いよいよ2次審査の開始となります!!』

1次の見た目審査をトップで踊り出て、ルビーの2次審査は真っ先に始まった。
しゃんしゃんとステージ上へと上がっていくと、どこともつかない方向を指差し、笑顔を作る。
「アクセント、『アンコール!!』」
ぽんっ、と軽く飛び跳ねると アクセントはまるで拍手でもするかのように両手・・・前足をパチパチと叩いた。
パチリとウインクすると、他の出場ポケモンたちから歓声があがる。
この場にルクスがいれば(強制的にモンスターボールの中に閉じ込められた)マッハ3で飛びつきそうなほどの可愛らしさだ。
その色気(?)にやられたのか、出場している1匹、2つ頭の鳥ポケモンが動けなくなる。
「ド、ドードン!? どうしたんだ、次はお前の番なんだぞ!?」
ふたごどりポケモン、ドードーのトレーナーが自分のポケモンの体を必死にゆする。
しかし、ポーッと目をハートマークにしたまま、ドードンはピクリとも動かない。

「ドードーはん、運悪かったなぁ。
 おんなじ『妨害』技でも、緊張させる技もあるんや、気をつけんと。
 ほな、クララ『すなかけ』!!」
妙に目のキラキラしたポケモンはコンテストのフィールドにかじりつくと、アピールの終わったポケモンに対し砂を吐きかけた。
それほど痛くもなさそうだがアクセントは驚き、ヒッと声をあげてしまう。
途端、アピールの成績を示していたハートマークが ピコピコピコ・・・と落ち込んだ。
「アクセント!?」
「堪忍なぁ、うちのクララも優勝狙うとるんや、どんどん『妨害』するんよ?」





サファイアはマユミに連れられ(誘拐されたらどうするとかいう考えはなかったらしい)川のほとりの小さな小屋へとやってきた。
木製のこれまた小さなドアを開け、中へと通される。
「ほ〜っ、ちっさい家やな〜・・・ぶしゅっ。」
「ウルサイわね、女1人で生活してるんだから、これで充分なの!」
やや乱暴にお茶を注ぎながら、マユミは苦笑して言い返した。
渡された麦茶を飲むと、サファイアは再び小さな部屋のなかを見渡す。
奥の方にパソコンが数台置いてある以外は、特に目立った個所もなく、こざっぱりとした女らしい部屋だ。

「・・・やー、でもこの部屋片付いててキレイキレイやな!!
 最近の女ん人っちゅうんは、なかなか片付けんで、部屋ん中散らかり放題になっとるんばっかりや。」
サファイアはケラケラと笑いながら うろうろと部屋のなかを歩き回る。
いかにも物置になっていそうな引き戸の押し入れを見つけると、扉をバンバンと叩きながらまた話し始める。
「うっちのオカンもええ加減でな、ぶえっくしゅっ・・・
 こういう押し入れとかを開けると、無理矢理積め込んだモンとかがドサーっと・・・・・・」

がららん、どさどさどさっ。

サファイアが引き戸を軽く開けた途端、作りかけの機械っぽいものや、洗濯物らしきもの、意味の判らない紙の束などが
一斉に津波となってサファイアの頭上に降りかかった。
あちゃあ、とマユミはそれを見てため息をつく。
「・・・な、なんやねん、これは?」
「悪かったわね、片付けの出来ない女で・・・・・・
 ここ数日研究ばっかりで忙しかったのよ。」
マユミはサファイアの上を占領する謎の物体ABCをどけると、またそれを端の方に押し込んだ。
その他の落ちてきた謎物体DEFを元の押入れに積め込むと、無理矢理引き戸を閉める。
他にも外に出てしまったらしい物体GHIなどが床の上に転がっているが、あまり気にしている様子はない。


「しっかし、夕方まで預かってくれるんはありがたいんやけど、マユさん、一体何しとる人なんや?
 『システムエンジニア』言われたかて、イマイチピンとこんのやが・・・・・・」
パソコンのスイッチを入れながら マユミはサファイアの方を向く。
トントン、とディスプレイの頭を指で叩きながら、自慢げにふふん、と鼻を鳴らして見せた。
「さぁ、一体なんでしょう?
 ポケモントレーナーのキミなら、すっごくよく使う、夢のようなシステムだと思うわよ〜?」
「モンスターボール(定価200円)を500円で売る機械やっ!!」
「そんな夢のない、夢のようなシステムがあるかいっ!」
ビシ、とマユミはジョウト風に突っ込む。
もう1度、完全に立ちあがったディスプレイをバンバンと叩くと、とても自慢げに切り出した。
「パソコンによるポケモン転送システム!! 及びポケモン預かりシステムホストコンピュータ!!
 アタシはその管理をやってんの、どーだ、すごいでしょー?」
「おぉっ!? もしや、『月刊成金情報』に載っとったインテリねーちゃんか!?
 そらすごいわ、なぁなぁ、マユさん異空間の研究してんねやろ?
 1個頼みがあんねんけどな、その未知の異空間パワーで・・・・・・・・・・・・」
サファイアは自分の頭の上を指差した。
高く上げられたモンスターボールのロゴ付きのバンダナの上で、ふわふわした綿のような羽根を持った
小さな鳥ポケモンが のうのうとくつろいでいる。
「こいつ、どかしてくれへん?」





「『なきごえ』!!」
アクセントの澄んだ声は 会場の隅々まで響き渡った。
多くなってきた人々から歓声が上がり、アクセントのポイントはまたポンポンと上昇していく。
最下位だった状況から一気に2位へ、ルビーの表情に変化はないものの、アクセントが他のポケモンへと向けて、自信ありげに笑う。
「すごいどすなぁ、おねえちゃん。」
「そりゃどうも。」
目のキラキラしたポケモンのトレーナーにいい加減な返事を返すと、ルビーはアクセントに『スパーク』の指示を出す。
運の悪いポケモンドードンと男ジンパチは悲鳴をあげ、せっかく取ったポイントを落とす。
動き1つで自分のポイントが左右されるので、大きなリアクションは取らないが、アクセントが影の方で小さくガッツポーズした。
「クララ、『すなじごく』や!!」
高い女の子の声で、再び地面が揺れる。
どういうしくみなのか地面が穴を作り始めるが、他の選手たちは冷静にそれをかわす。
代わりにあっけにとられたのが観客たち。

『す、すばらしい!!
 コウメさんのナックラー、『すなあらし』から『すなじごく』へとつなげました!! 見事なコンボです!!』

流れるように 目のキラキラしたポケモンのポイントが上昇していく。
あっというまに、アクセントもドードンも追い抜いて1位へ、他のポケモンに大差をつける。
「あらあら、これやとうちが1位で決まりどすなぁ。
 いくら妨害したかて、抜かすんは難しいんとちがいます?」
頭が盆(ぼん)のようになったポケモン、ハスボーのボーチャンと呼ばれているポケモンのアピールが終わり、
ルビーたちは次の順番を待つことになる。
妨害が重なり、2位から一気に最下位に転落、当たり前の話だが、あまり気分が浮かぶものではない。


ルビーは誰にも判らないように小さくため息をついた。
確かに、今のままコンテストを続けても、優勝には程遠く指の先も届かない。
アクセントがいち早く『それ』に気付き、ルビーを刺激しないよう、そっと目の前へと走り寄る。
途端、ルビーの膝が床につき、危うくアクセントは下敷きを間逃れる。
「きゅぴっ?」
うつむいたルビーの顔をアクセントがのぞき込もうとする。
その瞬間、アクセントは弾き飛ばされた。
ルビーが何を思ったのか、アクセントの頭を突き飛ばしたから。
自分が何をしたのか気付き、顔を上げたルビーと ぽかんとした顔のアクセントの視線が合う。
ちょっと乱れた毛並みを直すアクセントの瞳に映るルビーは まるで宝石のサファイアような、青い瞳を持っている。

「・・・・・・アク・・・セント。」
ルビーは彼女の反応を怖がるように、細い声でささやいた。
突き飛ばされたことを気にする様子もなく、アクセントは不思議そうに頭をかしげる。
胸に手を当て、ぎゅっと握るとルビーはアクセントを睨む。
「だ、誰だかわかんねぇんだけど、おっさんが誘拐されてる。
 義理なんてありゃしないけど、その誘拐してる奴ら、マグマ団っぽかった。
 『海の博物館』ってぇ場所を襲った、訳わかんない集団だよ、とにかく、そういう『映像』が見えた。」
何も言わないまま、アクセントは首を縦に2回振る。
「・・・・・・・・・行くよっ!!」





「・・・ぶえっくしゅ、ふぇっ、るぶえっくしゅ!!
 うぅ、さっきからこいつのせいで、くしゃみが止まらへん・・・・・・」
仕返し代わりに サファイアは頭の上のポケモンにポケモン図鑑をくっつける。
特に避ける様子もなく、水色のポケモンにぷよんと図鑑が接着すると、ピピっと音が鳴った。
「『チルット わたどりポケモン、汚れたものを見ると綿のような翼でせっせとふき取るきれい好きなポケモンだ。
  翼が汚れると川で水浴びをする。』?
 ・・・・・・ワシは汚れとるっちゅうことかいっ!!? 降りろや、アホンダラ!!」
本人は凄みをきかせているつもりなのかもしれないが、全くもって迫力なし。
頭の上から追い払おうと手をバタバタと動かすが、ちょうどギリギリ手の届かないところまで飛び上がられてしまい、
諦めて手を止めればまた、頭の上に落ちつかれる。
「気に入られてるねぇ〜。」
「マユさんっ、感心せんとき!!
 頭に米袋のせられとるみたいに重いんやからっ、あっ、あだだだだっ!!?」
何が気に入らなかったのか、頭に乗ったチルットがサファイアの髪をついばむ。
せいぜい抜けたのは5、6本だったのだが、鳥の不器用なクチバシがいじったものだから、髪はぐちゃぐちゃ。
「嗚呼っ(ああ)!! 髪は男の命やのにっ!!」
「チルちゃん、何だか女の子っぽい顔してるから、重いって言われたことに怒ったんじゃないの?
 よし、可愛いから捕まえちゃおう!!」
「話がつながってへん!?」

図鑑に写真くらいは載ったものの、頭のてっぺんが見えるわけもなく、サファイアにはチルットの姿はわからない。
せめて捕まえてやろうと頭の上にて 手をバタバタさせるが、またしても上に飛び上がられ、意味がない。
「捕まえられへん〜〜・・・・・・」
「なぁーにやってんの、キミ、トレーナー君なんでしょう?」
きょとんとしながら、サファイアは首を縦に振った。
マユミは サファイアの肩から下がっているリュックからモンスターボールを無理矢理引っ張り出すと、それをサファイアの頭の上に固定する。
「? ? ?」
「まぁ、見てなさいって!」

ことが落ちついたのを見計らって、チルットがまたサファイアの頭の上へと乗ろうとする。
「またか!?」とでも言いたげにサファイアは追い払おうとするが、それをマユミががっちりと拘束して止めた。
普通に両手を掴んだり肩に腕を回したりするくらいならまだいい、サファイア相手だと時々ロープでぐるぐるまきにしたり、
モデルガン(どこから取り出した?)でホールドアップさせたりする人間が出てくるのが困りもの。
今回もご多分に漏れず、マユミは押入れの中にあった研究材料うんぬんでサファイアを生き埋めにした。
動きの取れなくなったサファイアの上に チルットが安息の地を求め、降り立ってくる。
当然、さきほど乗せられたモンスターボールにヒット。
あっけないほど簡単に、チルットはサファイアのポケモンとなった。
「アホな〜・・・・・・」
「アホでもなんでも、捕まえられればOK!!
 さっそくニックネーム付けだ、新米トレーナークンっ!!」


サファイアにしては珍しく勢いに流されて、しぶしぶチルットのボールを開けた。
ぽわぽわとした羽根のくっついた、水色の小さな鳥ポケモンが 自分が捕まったことにすら気づかない様子でサファイアのことを見上げている。
「ぴよ?」
「ほな・・・おまえさんの名前は・・・・・・って、」
突然、チルットは窓の外へと飛び出す。
「待つんや〜っ!?」というサファイアの叫びも届かず(無視しているだけかもしれないが)、ふわふわと綿毛のように飛び交うチルットは
サファイアが マユミの家から少し離れたのを見計らうと、再びふわふわと降りて来て、また、頭の上へと着地した。
「一体、何がしたいんや!?
 何もせんと、人をおちょくっとるみたいに ふわふわふわふわとっ・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・!?」

サファイアのよく動く口が ぴたりと止まった。
しっかりと固定された彼の視線の先では、ルビーが、ものすごいスピードで走っている。
隣には、電気ポケモンのアクセントの姿。 走るスピードはぴったり合い、まっすぐに同じ方向を目指している。
「なにがどしたんや・・・? ルビーたちは今ごろコンテストの真っ最中のはずや・・・・・・あっ!?」
「ぴよっ。」
チルットが再びサファイアの頭から飛び立ち、ルビーたちの後を追う。
サファイアは一瞬 マユミの家の方を振り返ったが、その間にもどんどんチルットは離れていくので追いかけるしかない。
・・・と、いうのはサファイアの思い込みで、実は1度モンスターボールに入ったポケモンは トレーナーから100メートル以上離れることは出来ないのだが。







「てめぇらっ!!!」
ルビーは予想どおり大の大人を連れさらっている怪しい集団・・・マグマ団へと怒鳴りつけると、あいさつ代わりに攻撃をお見舞いした。
威力自体はたいしたことはないのだが、突然入った茶々(ちゃちゃ)に驚き、集団はルビーの方へと振りかえる。
やたらとごつい男が5、6人、女が2人。
「なんだ、このガキ?」
ルビーは何も言わず、モンスターボールを構えた。
まるでたかりに来た不良のように、ルビーのまわりへとマグマ団が集まってくる。

「あ、こいつ覚えてるぅ〜、トウカの森やカイナで邪魔してきたやつじゃん〜。」
マグマ団の中の1人の女がルビーのことを指差す。
フードで顔はよく見えないのだが、その脇から飛び出した、ボロボロになるまで染め上げられた髪。
ルビーには 見覚えがある。
「てめぇっ、トウカの森のチャラチャラ女!!」
「ひぃ〜どぉ〜いぃ〜、チャラチャラなんてしてないしぃ〜。
 それにぃ〜、あたしにはぁ、ちゃんとマグマ団のぉすず・・・」
「どうでもいい、まだ作戦は終了していないんだ、終わるまでこのガキにはすっこんでてもらわねぇと。」
体格のいい男Aが髪を染めた女を差し止め、ルビーへと歩み寄ってくる。
50センチと離れていないところまで近づき、立ち止まる。
3秒ほどして、ルビーは男の左側へと 飛ばされた。


「きゅぴぃっ!!?」
アクセントが大騒ぎしながらルビーのもとへと走ってくる。
2メートルほど離れたところまで近づいてきたところで、ルビーはアクセントを差し止める。
自分の力だけで置きあがると、その顔にはくっきりと赤い跡が残っていた。
「話し合う余地なんて・・・・・・」
「・・・なさそうだな。」
ルビーを張り倒した男の鼻から 赤い物が流れる。

「かかれっ!!」
5人の男が一斉にルビーへと向かってモンスターボールを放つ。
硬そうな背中から煙を吐き出す4本足のポケモン、ピカピカ光る、小さな鉄の固まりのようなポケモン、ただの石ころから腕の生えてきたようなポケモン、
昔からある人形のような、どんぐりに近い形をしたポケモン、そして、長い鼻に大きなキバをもつポケモン。

「コータス、『スモッグ』だ!!」
マグマ団の男Bが4本足のポケモンに命令すると、4本足のポケモンは背中に空いた穴から 黒い煙を出す。
ただでさえ 灰で喉がやられかけているというのに、こんなのを吸わされてはたまらない。
どうにか逃れようと迂回しながらマグマ団へと近づくと、今度は鉄の固まりのようなポケモンが進路を塞ぐ。

「『メタルクロー』を使え、ココドラ。」
アクセントへと向けられる攻撃を 勝手にモンスターボールから飛び出してきたルクスが代わりに受ける。

「イシツブテッ!!」
石ころのようなポケモンが地面を叩くと、崖の上から次から次へと岩が落ちてくる。
危うく味方(マグマ団)も巻き込みそうになっているものの、これでは反撃どころではない。

「次はオレさ、ヤジロン、『がんせきふうじ』!!」
落ちてくる岩が、今度は確実にルビーたちの退路を塞ぐ。
完全に逃げ道のないことを確認すると、ルビーは振りかえって反撃体勢に入る。
「ルクス、『てだすけ』!! アクセント、『スパーク』!!」
180度回転した直後、アクセントが人形のようなポケモン・・・ヤジロンと呼ばれていたポケモンへと向かって雷をまといながら突進する。
突進の途中から雷の量が増え、ヤジロンはなんなく反対側の壁へと吹き飛んだ。
そのまま、アクセントは真左にいるココドラを睨みつける。
「アクセント、もう1度『スパー・・・・・・!!」
ルビーの言葉が止まった。 瞳が凍りついたように動かなくなり、震える腕が自分の右肩へと伸びる。
その肩には 飾り立てられた、女の長い爪が食い込んでいた。



「さすが、マグマ団に立ち向かってくるだけあって、威勢だけはいいのね。
 でも、あなた震えてるわよ、もしかしてトレーナーなのに、『あのポケモン』が怖いんじゃなくて?」
ルビーの肩に食い込んだ爪が 深く突き刺さる。
耳元でささやくのは、以前ルビーとやりあったのとは違う、もう1人の女。
「その正義感は結構なことだけど、7対1だっていうことを忘れていたようね。
 所詮(しょせん)、あなた程度の心と実力では・・・・・・・・・」
「黙れっ!!!」
ルビーは女を突き飛ばし、攻撃の照準を女へと向けた。
途端、周りにいる男たちが自分のポケモンをモンスターボールの中へと戻す。
なにごとかとルビーが周りを見まわしたときには、既に遅かった。
「ドジョっちぃ、『マグニチュード』ぉ。。。」
突然、地面が揺れたかと思えば、ルビーの体は跳ねあがる。 地面へと大きくバウンドして、とても立っていられる状態ではない。
揺さぶられる視界のなかには、同じく立っていられる状態ではないアクセントとルクス。

それに、自分へと向かって地響きを上げる マグマ団の出してきた最後の1匹・・・
「同じ地面タイプなら、そうそう揺れに反応したりしないんだよ!!
 ドンファン、『つのでつく』!!」

ルビーの体が 大きく空へと飛んだ。
地面の上を跳ねて転がり、硬く閉じられた瞳は、開く気配がない。
「きゅぴぃっ!!」
アクセントがルビーへと走り寄り、その後をルクスが追う。
しかし、寸前でルビーがマグマ団の男に担ぎ上げられ、容態を知ることも叶わない。
何とか男から彼女を引き離したいのか、アクセントの体から 細かい雷撃が飛ぶ。
「・・・・・・やめな、オレに雷攻撃を当てたら おまえらのご主人も一緒にビリビリだぜ?」
 こいつを無事に返して欲しいんなら、おとなしくしてるんだな。」
アクセントのすぐ近くから パンッという音がして、細かい雷撃が止む。
ルビーの顔を見、マグマ団の男をものすごい形相で睨むと、アクセントは戦闘態勢を解いた。
「・・・てこずらせやがって。」
「お前たちもだ、たかが小娘1人に、いつまでかけている。 5人とも減給だ。」
「マジッすか!?」
「行くぞ。」
マグマ団は ルビーと気絶している男をそれぞれ1人ずつが担ぎ上げ、山の方へと向かう。
山のポケモンたちは、にわかに騒ぎ出した。
これから唄いだす、運命の歌に合わせて・・・・・・・・・


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