【ダイビング】
当然のことながら、海底にもポケモンは存在する。
だが、歩いて行かれるほど浅い場所ならともかく
深海(それでも人間が行かれる場所に限る)は危険なので、
講習、もしくはジムバッジによる登録が必要となっている。
ちなみに、潜水用具は店でライセンスバッジを提示すれば、比較的安価で買える。


PAGE50.星と出会った日


その日、意外に思えるほど早くミツルは目を覚ました。
事実を知ったのは、寝ぼけた目をこすりながらデッキへと上がってきた後。 夜明けの甘い藍色が太陽の光でかき消されていく。
青から赤へとグラデーションを作る空を見上げて、ミツルは息をのんだ。
デッキの上を歩く足音が聞こえても、それは変わらない。
「・・・・・・雨が降るか。」
コツン、と固い靴がデッキを叩く音がすると、低い女の声がミツルの耳を打った。
振り返ると、ミツルをここまで連れてきてくれた女、マオが赤く染まり始めた空を見上げている。
人形と見間違えそうなほどの腰まである長い髪は 頭の後ろで1つにまとめられ、動きやすいよう服の袖口(そでぐち)がリストバンドでまとめられていた。。
左の肩に、今までに見たこともないような よく判らない道具をぶら下げている。





「夜が明けたら、海底へと潜る。 決して海の状態が良いとは言えんがな。」
「雨が降るから・・・ですか?」
潜るというキーワードを持って、ミツルはマオの持っている『それ』が潜水用具だということを認識した。
黒の、大きめのゴーグルやら酸素ボンベやらをデッキのすみへと追いやると、マオは黒ずむ海面を凝視(ぎょうし)する。
何かあるのかとミツルが視線の先を見ると、彼女は操舵室へと向かって足早に歩き出した。
不自然にも思わず、光に染まる海に感動していると、誰かに後ろから腰を叩かれる。 振り向けば、寝起きであまり機嫌の良くない あいの姿。

「おはようございます。」
ミツルは知らないがキルリアの心を読む能力のせいだろう、自分のトレーナーが頭を下げるのと全く同時にあいも頭を下げる。
きちょうめんなのか、自分で自分の毛並みを整えてくれるから世話がかからない。
セロファンを通したような透明な赤へと色を変えていく空をずっと見つめていると、そのうちにマオが何かを抱えて戻ってきた。
重い音を鳴らして抱えてきた入れ物をデッキの上へと降ろすと、ぷぅんとすきっ腹に響く匂いが鼻をくすぐる。
アルミのような軽い金属音を鳴らし、マオがかぶさっていたふたを開けると、
湯煙をあげて、中から魚やらなにやらがぶつ切りにされた煮物が顔をのぞかせた。
皿にも椀(わん)にもなるような深く大きな入れ物にぶつ切り魚と煮込んでいた汁を入れ、マオはミツルにそれを渡す。
「早めに食し、ゆっくり休んでおけ。 この水温では身体が持つまい。」
「はい・・・って、ボクも潜るんですか!?」
「貴様『が』潜るのじゃ。」
さも当たり前かのように言い放つと、マオは生の肉らしきものを海へと放り込んだ。
ぱしゃん、と水の弾ける音が聞こえた後、水ポケモンの跳ね回る音が軽く船を揺らす。
少し不思議に思ってミツルが海面をのぞくと、ピンク色の流線形のポケモンが投げ入れられた肉にむさぼりついている。
「新種のポケモンじゃ、『サクラビス』と名付けておる。
 こやつに掴まって(つかまって)いけば、泳ぎの出来ない者だろうと簡単に海底まで乗り込める。」
ほぅ、と息をもらしながらミツルが海底からぎょろ目で見上げてくるポケモンを見つめていると、ポケットに何かを突っ込まれた。

「それは、くれてやる。」
ポケットの中に放り込まれたものを左手で取り上げると、中身の見えない赤白のモンスターボール。
何なんだ、とあいが近づいてくるまでボーっと『それ』を見つめ続け、ずいぶんと経ってからミツルは気がついたようにマオに振り返った。
頭の中が真っ白になって、らしくもなく早口になる。
「ちょちょちょ、ちょっと待って下さいっ! このモンスターボールポケモン入ってるじゃないですか!?
 そりゃお世話になってますけど昨日会ったばかりですし、受け取るわけには・・・・・・!!」
「ムロ(タウン)に行ったとき、たまたま捕まえたポケモンじゃ。 手持ちが埋まっておるゆえ、受け取らぬのなら捨て置く。」
「はい・・・じゃ、遠慮なく・・・・・・」
勢いに押されて ミツルは自分のものとなったモンスターボールをぺぽのボールの隣へと取り付ける。
すっかり昇ってきた太陽が身体を暖めるのを感じると、軽く身体を動かしながらマオを横目で見やった。
彼女は酸素ボンベの残量を確かめている。
「でも、どうしてですか? どうしてマオさんは、そんなにボクに良くしてくれるんですか?」
ゴーグルをミツルの頭に合わせながら、ほとんど無表情のままマオは潜水のための準備を進めていく。
鼻まですっぽりとおおう潜水ゴーグルが ひたいを押さえ付ける。
シダケに残してきた姉同然のいとこやトウカにいる母親のことを思い出しながら、もう1度「どうして」と尋ねようとすると、先にマオが口を開いた。
「・・・貴様は知らなくても良いことじゃ。」
強めに鼻先を押さえ付けられ、ミツルは小さく声をあげた。
背負わされた酸素ボンベは 足腰だけで支えられないほど重い。 よろよろと甲板に尻もちをつくと、重い背中をあいが自分の体で支えた。
マオはふらつくミツルを立たせ、船のへりに座らせる。
すぐに落ちないよう肩をしっかりと支えると、ぞっとするような目でミツルを見ながら手早く話した。
「酸素の持続時間は大体1時間じゃ、長引きそうなら無理せず戻ってくるが良い。」
「は、はい! あの、行ってきます。 あい!」
緑白のポケモンに手を向けると、ふっと宝石のような目をつぶってあいはモンスターボールへと変わりミツルの手の中に飛び込む。
しっかりとそれをホルダーに取り付けたのを見ると、マオはミツルを支えていた肩を離す。
海面を睨むように見つめると、ミツルは体全部のバランスを保っていた腕から力を抜いた。
酸素ボンベの重みで背中から海へと墜落する。 予想が出来ておらず、浮き上がったミツルは飲み込みかけた海水を吐き出した。
夏でもないのに海水浴は 冷たい。




「サクラビス、その子供を海底まで案内せよ。」
ぶわぶわとした服の感触を感じながら、モンスターボールがきちんとホルダーについていることを確認する、ポケットの中の石も。
ヘビのようにずるずると海の中をはいつくばって、ピンク色のポケモンはミツルの手の届くところまで泳いできた。
ボンベを口にくわえ、はぐれないようミツルがしっかりとサクラビスの胴(どう)を抱くと、水ポケモンは海中を滑るように動き出した。
どんどん深いところへ、太陽の差し込まないところへとミツルを連れていく。


静かな、静かな世界だった。 酸素ボンベ越しに息をする音以外、何も聞こえない。
サクラビスにつかまって結構なスピードで海底へと降りているというのに、それすらも忘れるほどに。
目に飛び込む光は、水色から青色へ、青色から藍色へ、藍色から全てを飲み込む黒へと変わっていった。
時々、2メートルはあろうかという大きな水ポケモンが頭の上を通過し、わずかな太陽の光をもさえぎっていく。
「・・・・・・・・・(なにをすれば、いいんでしょう・・・)」
声には出さず、ミツルはつぶやいた。
凍り付きそうとさえ感じていた水は、だんだん慣れてきて
出来れば、しばらくここにいたいくらいなのだが、『潜って来い』と言われた以上、何かを探さなければならない。
ゆっくりと、辺りを見渡すと暗がりのなかに 大きな岩にそったU字型の裂け目を見付ける。
何となくだが不自然に感じ、その裂け目を指差すと サクラビスはそこへと向かって泳ぎ出した。
両脇にそびえたつ岩肌に圧迫感を感じながらゆっくりと進むと、不意に大きな岩のはるか向こうから泡が吹き出す。
ほんの少し頭痛がするが、好奇心に任せてサクラビスを泳がせると、大きな岩の真ん中に ぽっかりと穴が空いていた。

「・・・?」
目を瞬かせ、ミツルは穴の空いている岩に触れる。
唐突に空いている穴は大人が1人、やっと通れそうなほどの大きさで、ミツル1人ならなんなく抜けられそうだ。
だが、もし肉食のポケモンの巣穴だったりしたら・・・そういう不安がたたって、中へと入り込む決心がつかない。
ちょん、ちょんと穴の周囲の岩に触れていると、ふと海底に残っているのが不思議なほど小さな凹凸(おうとつ)を見付けた。
似たような『感触』に覚えがある気がするが、寒さのせいか頭がにぶってどうにも思い出せない。
どうするべきか思考錯誤していると、不意に海底から大きな泡がせり上がってきてミツルにぶつかった。
大きなポケモンが、海底からゆっくりと姿を現してくる。
「―――ッ!!!」
叫びたくても叫べないが、代わりにボンベの穴から嫌というほど泡が吹き出した。
長く生きる間に体中にコケをつけた 2メートル近い青色のポケモンが赤く光る瞳でミツルを見つめている。
すぐにでも逃げ出したいが、体が動かない。 ホースのような口をただ見つめていると、その穴から泡がこぼれ出す。
「うわぁ―――っ!!?」
ポケモンの口から渦が吹き出され、大岩に空いていた穴へとミツルは吹き飛ばされる。
水の勢いにもみくちゃにされ酸素ボンベから口が外れる。 ポケットからこぼれおちそうになった石を必死になって掴んだとき、
穴の行き止まりだったのか 固い壁に背中を打ちつけ、ミツルは気絶した。


暗い雲が 空を覆い(おおい)尽くしていた。
先ほどから冷たい風が吹き始め、小粒ながらも雨が降り始めている。
小さく小刻みに揺れる船の上で 長い長い髪を1つに束ねた女は空を睨み付けた。
灰色の雲のその先の、小さな光を。








「・・・・・・・・・う・・・」

どれだけの時間が経ったのか、1分だけかもしれないし、2時間も3時間も経っていたかもしれない。
ミツルが意識を取り戻し、手を軽く動かすと ざらっという土の感触がした。
うっすらと眼を開けて置きあがると そこは乾いた土の上。 辺りを見渡そうにも失明したのではないかと思えるほど暗い。
手探りで辺りの様子を調べると、すっかり感触を覚えてしまった石に指の先が当たった。
そのときに気付く。 しっかり取り付けたはずのモンスターボールがその場所にないことを。
一瞬で不安になり、ミツルは喉を震わせながら狂ったように地面に手を当てた。
だが、暗闇のなかで握りこぶしほどのボールが簡単に見つかるはずもない、
心細くなってひざに手をつくと、ギリギリ飛ばされていなかったポケモン図鑑の感触がミツルをはげました。


「・・・・・・聞こえてくるよ、魔法のコトバ・・・」
不意に口をついた歌詞を歌い上げると、声はどこかへとぶつかって跳ね返ってきた。
ただ持っている黒い石を握り締めて もはや何も映らない眼をまぶたでふさいで空へと歌う。
不安を吹き飛ばそうと、ただ、歌う。

「勇気をくれる 炎を呼び出す・・・
 あふれてくるよ魔法のコトバ 光のような優しさくれる・・・・・・?」
次の歌詞を思い出す前に、右手から見たこともないような光があふれだす。
はじめは柔らかく、そして目も開けていられないほどの激しい光が。
絹(きぬ)のような光の糸が世界を貫くと、それらは1ヶ所に、小さく集まり出す。
恐る恐る 目を開くと、ミツルは息をのんだ。



「・・・・・・星?」
淡い金色の光が、ミツルの言ったとおり可愛らしい星の形にまとまる。
声を出すことも出来ず片腕に収まりそうなほどの光を見つめていると、不意にぼうっとした光が パンッと強く飛び散った。
花火のようにスッと消えていった光の真ん中に、うっすらと体の光るポケモンがいる。
レモン色をした星型の頭、その上3つの突起の先に薄緑の短冊のようなひらひらが揺れている。
その下に まるでおまけかとも思えるほど小さな白いからだ。 背中から生えた布のようなものが ひらひらと揺れている。
浮いていた。 そのポケモンは、不自然に宙に。
うっすらと涙のような模様のついた顔の、大きくつぶらな瞳がゆっくりと開いていく。
小さなポケモンは 震え出しそうな体を押さえるミツルをそっと見つめると、ふっと母親が子供を見るような笑顔を見せた。

『わたくしのことを、呼びましたか?』
「しゃべった!?」
鈴の転がるような声を、小さなポケモンが発す。 驚きのあまりミツルは本気で腰を抜かしてしまった。
宙に浮いたまま ゆっくりとミツルの視線の高さまで下降すると、小さなポケモンは上品に笑う。
『驚くことはありません、貴方(あなた)の歌う声が わたくしを眠りから呼び覚ましたのです。
 わたくしはジラーチと呼ばれる者、はるか太古よりこの星に生き、見守って参りました。
 表(おもて)を上げなさい、貴方の名を聞きたいのです。』
1つ、また1つとミツルは心臓の高鳴る音を無意識に数え出した。
時間が凍り付きそうなほどゆっくりと進む。 逃げ出したいのかどうかも自分では判らなくなっていた。
「ミ、ミツル・・・ボクは、ミツルです。」
全力の勇気を振り絞ったのにも関わらず、ところどころ声が裏返る。
使えない腰の代わりに腕で体勢を立て直すと、ミツルは目の前の常識外れのポケモンに淡く緑色に光る瞳を向けた。
自分をジラーチと言ったポケモンは 頭の割に大きな瞳を1度きり瞬くと、少しばかり哀しそうに笑う。
『・・・恐るるも無理もなきことです。
 侵入者であるわたくしたちは、昔から人間の仇(あだ)と化しているのですから・・・』
「ちっ、違います! そうじゃないんです!!」
必死になるあまりか、またしても声が裏返る。
泣きそうなほど赤くなる顔と 破裂しそうな心臓と格闘しながら、ミツルは1番の言葉を探し求めた。
ところが、意外にも頭で考えるより先に 口の先から言葉が飛び出してくる。

「あの、ポケモンがしゃべったから、ただびっくりしただけで・・・・・・
 怖いなんて全然思ってません! だって、ポケモンは・・・ポケモンは、ボクにとって・・・・・・」
『・・・ポケモン?』
ジラーチが聞き返してきたことによって、ミツルは『どういうこと』か突然思い付いた。
もしかしたら、このポケモンは人間とポケモンが共存を始めたことをまだ知らないのではないか、と。
ずれていた歯車が突然ぴったり回り出したように ミツルは自分でも驚くようなスピードで話し出す。
「7年前からあなたたちに名前がついたんです!
 ポケットモンスター、縮めてポケモンって。 ポケモンを使う人間のことを、ポケモントレーナーって!
 だから、あなたたちポケモンのこと怖がる人は、もうほとんどいないんです!!」
驚いた顔をすると、ジラーチというポケモンは少し考え込んだ。
うっすらと光る身体に、地面に転がったミツルのモンスターボールが反射する。
小さく声を上げると、ミツルは小さなポケモンの横をすり抜けて赤白のモンスターボールを拾い上げた。
1度胸に抱きしめてからジラーチへと向けて軽く投げる。
闇の奥から飛び出してきたような、真っ黒なポケモンが何も判っていない様子でキョロキョロと辺りを見回した。
宝石のようなピカピカ光る瞳を左右に振ると、ミツルを見上げてキィッと金属のすれるような鳴き声を出す。
マオから渡されたボールのポケモンだ、と思い、考えていたニックネームを口に出す。
「‘ゆえ’、種族としての名前は判りませんがこの子もポケモンで、ボクの・・・・・・
 ・・・・・・ボクたちと一緒に、生きています。」
『そうですか・・・』



新しい仲間の黒いポケモンが 散らばっていた残り2つのボールを集めてきてくれた。
受けとって開くと、あいもぺぽも 両方元気そうに暗い中で大きく手足を伸ばす。
「同じ仲間の、‘ぺぽ’と、‘あい’です。 シダケタウンで・・・・・・」
ミツルが言い切る前に、小さな地震のように地面が軽く揺れた。
身体を震わせて地面を思わずつかむと、まるでたいしたことでもないという仕草でジラーチは小さくあぁ、と声を上げた。
『どうやら、目覚めたときのエネルギーで いにしえの召喚獣たちを呼び覚ましてしまったようですね。
 案ずることはありません。 『彼ら』は強い力を持っていますが、とても臆病(おくびょう)です。
 それに、ここが貴方が言ったような世界なのならば、友として、やっていけるでしょう。』
闇以外、何も見えなかったがミツルは顔を上げる。
大きな力が空へと広がっていくのを感じ、本当に少しの不安を感じながら ミツルは笑った。
キルリアのあいにゴニョニョのぺぽ、それに真っ黒で宝石のような瞳を持ったゆえ、3人の顔を順々に見渡したあと小さくうなずくと、
ミツルは誰にも聞こえないほど小さく、「そうですね。」と応える。







「・・・・・・予想以上だね、こりゃ・・・」
噴きつける砂嵐のなか、ルビーは足を踏みしめながら独り言をつぶやいた。
行き場をなくしているライチュウ、D(ディー)もいつもは外に出しているが、さすがに今だけはモンスターボールの中。
吹き飛ばれそうなバンダナを頭から外し、砂が入り込まないように口に巻き付ける。
容赦なく吹き荒ぶ(ふきすさぶ)風は ルビーの焦げた髪をもてあそんだ。

「・・・何だよ、あれ・・・・・・?」
遠く金色に光る砂の向こうに、ひときわ光る物体を見付けルビーはゆっくりと歩み寄った。
ほんの数メートル先だったが それだけの距離を歩く間にも、何度も転ぶ。
3回転ぶと、光る物体はすぐ目の前だった。 手を伸ばしてそれをつかみ、砂の上に置きあがる、何とも複雑な顔で。
「・・・・・・捨て・・・ポケモン・・・・・・・・・?」
モンスターボールだ。 中にポケモンが入っているのは一目で判る。
ルビーは見つけてしまったことを もんのすご〜く後悔した。 連れていきたくもないけど、ここに置きっぱなしにも出来ない。
どうしたものかと考え込んでいると、突然地面が唸り(うなり)だし、ルビーは身構える。
他のボールやらアイテムやらが吹き飛ばないよう、手早くウエストポシェットを開き、青白のモンスターボールを砂の上へと打った。
出てきたばかりのタツベイのフォルテは 頭の重みからか、早々に転ぶ。
叱咤(しった)を飛ばそうとしたとき、真横の砂が吹き飛びルビーは固まった。
もはや、赤い瞳は何も見ていない。 恐怖の表情で砂嵐を見つめながら、ただ、じっと動かずにいる。


倒れた統率者を起こそうと、フォルテが彼女を揺さぶる横を 数え切れないほどの砂漠のポケモンたちが走り抜けていった。
ルビーのポケモンのなかでは1番の体力を誇る(ほこる)フォルテだが、こう砂嵐が吹き付けてきては
そう長い時間立ってはいられない。
どこか遠くから、大きな物体が近づいてくるような地響きは 段々と大きくなってくる。


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