【警察組織】
この世界の警察は人間のみ(トレーナーもいるが仕事には使わない)で構成された本家警察と、
数年前に結成されたTP(トレーナーポリス)の2つが存在する。
この2つは協力関係にあるが全く別の組織であり、お互いを監視する関係にある。
なぜこのような形になったかといえば、4年前にマフィアがラジオ塔を占拠した際、
警察内にマフィアの人間がまぎれ込んでいる可能性が危ぶまれたからだ。
PAGE73.神の眼を知る人間
120番道路をヒワマキ方向に走りながら、グリーンは嫌な予感をぬぐいきれなかった。
ナゾノクサや海から飛来したキャモメが飛び回っているのはまだ判る、どうしてゴーストポケモンが、近くの『おくりびやま』から溢れ出しているのか。
やたら殺気立ち、襲いかかってくる野生のポケモンを退けながらグリーンはとにかくミツルを追いかけるため走り続けた。
恐らく、ただの勘でしかないのだが、遠くで煙の立っている辺りが怪しいと考える。
見る限りかなり遠くであるが、走るのには自信があるため30分もかからないだろう、
そう思いながら走りつづけていると 高い土手の上の木の側に黒い固まりがあるのを視界の端にとらえた。
グリーンはそれを気にせず通り過ぎようとしたが、立ち止まってモンスターボールを構え 黒い固まり・・・ゴーストポケモンの群れへと向かって走り出す。
「・・・何で子供が襲われてるんだ!?」
強くボールを握ると、グリーンはそれを振りかぶって黒い固まりへと向けて投げ付けた。
中から出てきた1ぽんづのポケモンヘラクロスは グリーンが見たことのないポケモンの群れへと突進すると、自慢のツノを使ってそのうちの1匹を弾き飛ばす。
続いて2匹、3匹と投げ飛ばすのを見てグリーンが安心しかけたとき、突如として空気の刃がヘラクロスを襲い大きなダメージを与えた。
半分近く体力を削られたヘラクロスの代わりに前に出て攻撃の主を探すと、
黒いポケモンたちのすぐ側にいた 白い毛並みの4つ足のポケモンが息を荒げながらグリーンを一瞬睨む。
しかしそれもすぐに止め、そのポケモンは黒いポケモンたちの中心へと向かってまた別の攻撃を始め出した。
反射的にグリーンは空のモンスターボールを掴み、再び臨戦態勢に入ったヘラクロスへと向かって指示を出す。
「パンプキン、『つのでつく』!!」
物理攻撃の効かないゴーストポケモンたちをすり抜けながら、ヘラクロスは白い毛のポケモンを自慢のツノでなぎ倒す。
戦う術をほとんど知らない野生のポケモンはすぐに弾き飛ばされ、倒れたところにグリーンはすかさずモンスターボールを投げ付けた。
あっさりと捕まったのを見て、グリーンは満足げに手を叩き合わせる。
こちらはそれほどレベルが高くないであろうと判断した黒いポケモンたちを1匹ずつ引き剥がそうと木の影の方に目を向ける。
が、グリーンはその光景を見て動けなくなった。 一言で言うなら、『何もない』。
襲いかかられていた子供も、襲いかかっていた黒いゴーストポケモンたちも全てがいなくなっている。
焦りながらどうしたものか考えていたとき、全く別の方向から別の、今度は人間が走ってきて自分の数メートル手前で停止した。
見知った顔だ。
「・・・シルバー、来てたのか。」
グリーンの事は全く視界に入れず、シルバーは先ほどまで黒い固まりがあった場所に銀色の瞳を固定させ歩み寄ってきた。
少し珍しい毛色をした彼はグリーンを押しのけ、まっすぐにポケモンたちがたかっていた木の下を調べ出す。
「オィ、シカトか?」
「ここに女の子いただろう、どこ行った?」
え?と声を上げてグリーンは眉を上げた。
立ち上がって真っ直ぐに銀色の瞳を突きつけられると、今ではグリーンの方が見下ろされている。
血筋が自分たちと若干違うと聞いたときから、いつかそうなるのではと予想はしていたが。
肩を軽く上げると、グリーンは軽く息をつく。
「色気づいたもんだな、クリスのことはどうしたよ?」
「聞いているんだ。」
何故か殺気立つシルバーを見て、グリーンは先ほど捕まえた白い毛並みのポケモンのボールを拾いに行きながら軽くため息をついた。
土地柄か、それとも性格か。 こういう状態のシルバーに下手に逆らうのはあまり得策とは言えない。
「さぁな・・・ここでポケモンに襲われている子供みたいなのは見たが、消えちまってどこに行ったんだか・・・」
「襲われてた!?」
カバンからポケモン図鑑を取り出しながら、シルバーはふとグリーンの投げるモンスターボールに目をやる。
「・・・そのポケモンは?」
「さっき言った子供に襲いかかってたポケモンのうちの1匹だよ、他のは全然違う形してたけどな。
そういえばお前学者志望だったな、見るか?」
軽く投げたモンスターボールの中から、1メートル少しある白い毛並みの瞳の赤い、4つ足のポケモンが飛び出す。
これから進む先、ミナモシティの方向へと向かって鋭くひと鳴きすると白いポケモンは黒い顔でシルバーの方を何かを訴えるような瞳で見つめた。
何が起こったのか即座に理解し、シルバーはモンスターボールから首の長い黄色いポケモンを呼び出す。
「・・・・・・ちゃんとついてこいよ、フクシャ・・・!」
祈りに近い言葉をかけて、火の消えた草むらに一瞬銀色の瞳を向けてからシルバーはミナモ方向へと向かって走り出した。
バッグの小さなポケットから何かを取り出すと、それにライターで火をつけ空へと放つ。
ふらふらとゆらめきながら、取り出された『何か』は高く曇り空へと舞い上がってからパンッ!と爆発した。
大きな音と残った煙に、近くにいる人間のほとんどが注目する。
残ったアメタマたちに苦戦する、サファイアとミツルも。
「な、何や何や!?」
突然上がった花火の音に気を取られ、サファイアは襲いかかってくるアメタマに顔面に体当たりされた。
特別固いわけでもないが、やはり痛い。 やはり痛いがサファイアめげない。
「ウツル君〜、見て見て〜な〜・・・」
「だから、ボクはミツルですってば!? 何ですか!?」
「おしゃぶりぃ〜・・・」
サファイアの様子を見てミツルは固まった。 アメタマが数匹ぶつかってこようがお構いなしである。
さきほど自分にぶつかってきたアメタマの頭の先っちょをくわえ、サファイアが赤ん坊の真似をしているわけで。
もし、この場にルビーがいたら間違いなく『きあいパンチ』を加えていたに違いない。
「何やってるんですか・・・ボクたちこのポケモンたちに襲われてるんですよ!?」
「結構イケるで、こする君も1匹どや?」
「いりませんっ!!」
悲鳴のような声を上げながらミツルはゴニョニョの『ふみつけ』でアメタマたちを威嚇する。
なまじ数が多いために2、3匹本当に踏み付けられてしまっているのだが。
「本当にキリがないですよ・・・何か打開策とかないんですか?」
「そないなこと言ったかて・・・・・・・・・ちょい待ち・・・!」
次々と飛びかかってくる水色の丸型の奥に何か見た気がしてサファイアは目をこらした。
それが何かは判らないが、ポケモンが何か技を出そうとしているところだということが直感で判ると、サファイアはミツルの頭をわしづかみにしてしゃがみ込んだ。
一緒に戦っていたチャチャも抱え込んで、小さくうずくまる。
「息止めや!!」
「え!?」
「『ねむりごな』が来る!!」
突然縮こまった2人に狙いを定め切れず、頭の上でボンボンとぶつかるアメタマたちが急におとなしくなる。
まるで電池が切れたかのようにゆっくりと動かなくなり、頭の上にいたものたちはボトボトとサファイアとミツルの上へと落ちてきた。
降りかかった『ねむりごな』で辺りがすっかり静かになると、サファイアとミツルはアメタマの山の下からはいだした。
我慢していた空気を目いっぱい肺の中に吸い込んで、水を打ったように静かな平原をあらためて見回す。
「なあぁ!」
「なああぁぁぁっ!!?」
緑色の大きな葉っぱをパサパサと振ってミツルのゴニョニョより一回り小さいくらいのポケモンがサファイアとミツルのことを見上げている。
敵意はないものと判ったものの、大声をあげたのはサファイア。
少しの余裕とかなりの焦りで、2人はそれぞれポケモン図鑑を開き黒いカブのようなポケモンへと向ける。
「ナゾノクサ?」
「ナゾノクサ・・・?」
声がダブってサファイアとミツルは顔を見合わせた。
妙に静かな空気が数秒間流れるが、しばらくしてサファイアの方が「ん?」と妙な声を上げる。
「・・・なしてポケモン図鑑持っとんねん?」
「あ、はい・・・あの・・・シダケにいたとき、拾いました。 信じてもらえないかもしれませんが・・・」
パタン、と図鑑の表紙を閉じながら、気まずそうな顔をしてミツルはそれを胸に抱く。
「ほ〜ん」と鼻にかかった妙な声を出してサファイアは彼の指の間から図鑑を覗き込んだ。
基本的な構造は同じようだが、サファイアの図鑑とはずいぶんと形が違うようだ。
サファイアの図鑑よりずいぶんと角張っていて、真ん中にモンスターボール型のロゴがついている。
それの本当の持ち主が誰か考えながら折り重なったアメタマを片付けていると、ミツルが救世主ナゾノクサを見つめているのが青い瞳の端っこに映った。
1通り(といってもサファイアの行動だからアテには出来ない)見回ってルビーがその場にいないことを確認した時、
ミツルが無造作に大きなスポーツバッグの中からモンスターボールを取り出し、自分たちを助けてくれたナゾノクサをそのボールの中に収めた。
「ありがとうございます、これからもよろしくお願いします。
・・・‘りる’。」
新品のモンスターボールを大事に両手で抱え、ミツルは中のポケモンへと向けて一礼した。
そして、ミツルは今度こそ自分たちの用事を済ませようと サファイアへ緑色の瞳を向ける。
だがすぐに終わりそうにないことをその時ミツルは悟った。
真っ赤なシザリガーが磁石に引き寄せられるかのようにずるずると引っ張られていくのを サファイアが必死で追い掛けている姿を目撃すれば。
「ちょっと、サファイアさん!?」
「何や、話なら後にしてーなっ! フクシャ見失ったら迷子街道1本道やで!?」
「じゃあ走りながらボクの話聞いてください!!」
ワケも判らないまま3キロ先の主人に引きずられて行くフクシャを追いかけながらミツルは叫ぶ。
雪道を走るソリさながらのスピードに追いつけないゴニョニョのぺぽをボールに戻し、スポーツバッグをかけ直してジッパーを開いた。
飛んだり跳ねたり走ったりですっかり目を回している星の形をしたポケモンを中から抱き上げ、胸に抱く。
「サファイアさん、その目『蒼眼』ですね。 ポケモンと同じ物が見える、違いますか?」
「だから何や、ちゅーか、何で知ってんねん?」
シザリガーの滑るスピードが上がり、サファイアとミツルも走る速度を上げる。
「目、見て判ったかもしれませんが、ボクは『緑眼』なんです。
サファイアさん、その能力(ちから)もしかして、ここ2ヶ月の間に急に目覚めたんじゃありませんか?」
「だから、それがどうしたっちゅうねん!?」
「その能力が目覚めた原因作ったの、ボクなんです。」
「はぁ!?」
ミツルは一旦走るスピードを上げて先行し、腕に抱えたポケモンをサファイアへと渡した。
ソーナノのランよりも小さなそのポケモンは1度ふわりと浮き上がると、サファイアの肩につかまって振り落とされないようしっかりと体を固定する。
『お初にお目にかかります、ジラーチと申します。』
「しゃべりおった!?」
「彼女が、ボクたちの『神眼』の能力を引き上げているんです。
1ヶ月半前、偶然ボクが目覚めさせました。」
のんびり挨拶することもままならず、振り落とされないよう小さな前足に力を込めるジラーチを見ながらミツルは説明する。
あいが拾ってきた隕石を巡って怪しげな集団に追いかけられたこと、偶然にもそれが旅立ちに繋がったこと。
その日からポケモン図鑑に不思議な文字が現れるようになったこと、親切な人に手伝ってもらい、海に出たこと。
海の底でジラーチを目覚めさせたこと、その時弾みで別のポケモンたちも目覚めさせてしまったこと。
その後流れ付いたキナギタウンで世話になっていたということ。
「その町にいる間、ずっと本を読んでいました。
昔からある町だったからかどうかは判りませんけど、歴史文献が多くて・・・
色々判ったんです、『神眼』の能力のこととか、伝説のポケモンのこととか、今新聞などでよく見るマグマ団とアクア団のこととか・・・」
「・・・そないなことまで判るんか?」
「新聞記事と文献を照らし合わせたら何となく・・・っ・・・彼ら伝説のポケモンの・・・
・・・マグマ団は『グラードン』、アクア団は『カイオーガ』を目覚めさせると、それぞれ声明を出してます。
どちらもホウエンに眠る天候を操るポケモンなんですが、今のままだと・・まずっ・・・2匹とも目覚めることはないでしょうから・・・
もしかしたら彼ら強硬手段に出てくるかもしれません、だからっ・・・コハクさんに警告しに来たんですけど・・・」
少しずつフクシャのスピードが遅くなり、ようやく停止した。
追いつききれなかったため子供2人はぜぇぜぇと息を切らして、1番の被害者フクシャを囲みながら2人と数匹は休憩を取る。
「ポケモンとトレーナーが離れすぎっ・・・と『こういうこと』になるんやな・・・・・・
ところでミズギ君、『強硬手段』って何やねんっ・・・なして、コハ・・・ゴールドが、気をつけなあかんのや?」
聞き返してみたはいいが、ミツルは『ボクはミツルです!』と反論する余力すら残っていない。
シルバートレーナー歴5年、サファイア10ヶ月、ミツル2ヶ月、スタミナの差がこんな時にはっきりと現れている。
ほとんど無理矢理息を整えているミツルに代わり、サファイアの肩にいるジラーチが話を引き継いだ。
『グラードンとカイオーガ、彼らははるか地の底・・・海の底で眠っていますから、普通の方法では呼び覚ますことは出来ません。
ですが、『神眼』の力・・・とりわけ、ポケモンと呼ばれる者を直接支配する『紅眼』の能力を使えば、彼らは今すぐにでも目覚めるでしょう。
あなたの持つ『蒼眼』も、ミツルの持つ『緑眼』も、直接ではありませんが目覚めさせる恐れがあります。
故(ゆえ)に、そのことがアクア団、マグマ団と呼ばれる輩(やから)に気付かれれば狙われる危険があるのです。』
「さいか・・・・・・」
ひぃひぃ言っているフクシャの背中に寄りかかりながら、サファイアはふと1つの疑問に突き当たる。
「1個、ええか? さっきから『コハにコハに』言うとるけど・・・『神眼』って、赤青緑の3つだけやろ?
ゴールドの眼、金色しとるやん。 『神眼』ちゃうやろが。」
「・・・・・・光の三原色・・・」
絞り出すようにミツルの放った一言にサファイアは青い瞳を向ける。
一瞬前ほど真っ青な顔はしていないが、これ以上言葉を話すことは出来ないらしい、ジラーチが彼の言葉を引き継いだ。
『本当に稀(まれ)なことですが、『神眼』は重なるのです。
あなたたちの言うその人が瞳の色が変わるほど強い能力の持ち主で、その色が金色だと言うのなら、
恐らくそれは、金ではなく『黄色』。 『紅眼』と『緑眼』を併せ持っているのではないかと思います。』
「・・・ゴールドが、ワシらと同じ能力者・・・・・・?」
何度も目を瞬かせるサファイアに、ミツルが右手を差し出す。 正確に言えば、突きつけようとしたがしっかりと腕を持ち上げられなかったのだが。
人差し指だけ出して他の指を全部しまうと、ミツルは改めてその手をサファイアへと突き出した。
「・・・・・・つ・・・聞きたいことが・・・」
「何や?」
ごくんと つばきを1度大きく飲み込むと、ミツルは何度も言葉を切れさせながら続きを言う。
「先ほどから何度も『ゴールド』とおっしゃってますが・・・ボクたちが話しているの、コハクさんのことですよね・・・
『ゴールド』って、元ポケモンリーグ優勝者の人じゃないですか・・・どうして名前すり替えているんですか・・・?」
「密輸(みつゆ)君がコハクや思ってたのが、その『ゴールド』だからや。」
話の流れからある程度の予測は立っていたのだろうが、それでも小さな驚きの声はサファイアの耳に届く。
ミツルなら他にもらすこともないだろうと事情を説明するために次の話を頭の中で組みたて始めたとき、がくんと音が鳴って
フクシャがまたずるずると引きずられ始めた。
恐らく・・・いや、確実にシルバーが移動を再開している。
慌ててサファイアがフクシャにしがみつくと、真っ赤なシザリガーはサファイアを乗せたままずるずると速度を上げ始めた。
「おおっ、こりゃ楽ちんや!!」
「あっ、ずるい!!」
何だか抵抗する気すらなくしてしまったらしいシザリガーを乗り物に、『そり』に乗るように進んで行くサファイアを見てミツルが声をあげる。
はっきりと方向が決まったらしくマッハ自転車並みのスピードで走る(正確には走っているのはシルバー)シザリガー。
その上に乗っているサファイア、追いかけるミツル。
この1通りの構図が出来あがったかと思った瞬間、サファイア付きのシザリガー、フクシャがガクンと振動を受けた。
サファイアが先をよくよく見ると、進行方向下り坂。 それもかなり長く、傾斜もある。
マズイ、と思った瞬間にすでに『それ』は始まっていた。
「んぎょええぇぇぇ――――――っ!!!?」
もそっと生えた草むらに突っ込み、大岩小岩に4回半ぶつかり、野生のカクレオンをはね飛ばしてなおソリフクシャはスピードを上げる。
小さなこぶのある場所で3回転半ドロップスピンを決め、もうどうにでもなれとサファイアが諦めだした瞬間、
もっと大きなこぶにぶつかり、サファイアとフクシャは高く高く高く飛び上がった。
「あ、鳥だ!」
「飛行機だ!」
「UFOだ!」
「違う、サファイアよ!?」
「なああぁぁぁ―――っ!?」
「サファイアさん!?」
ミツルは別々の方向に飛んでいくサファイアとフクシャ、どちらを追いかけるべきか一瞬考え、サファイアの肩についているジラーチを追いかけることにした。
くるくると回転しながら左方向へ(ミツルから見て)飛んでいくサファイアを見失わないよう
ペリッパーの『みむ』を飛ばしながら走ると、そう時間を置かず1人と1匹(ジラーチのこと)はどこかへと着地したようだった。
案内をみむに頼み、息切れする体にムチ打って着地地点まで走ると、既にもう人だまりが出来ている。
未確認墜落物体に集まっている大人たちの間をぬってその中心点まで行くと、高く詰まれた干し草の中から黒いズボンをはいた足が覗いていた。
2メートルの山登りをしてからミツルはサファイアの体本体を干し草の山から引き抜く。
「大丈夫ですか!?」
「びっくりしたわ・・・」
「ジラーチ!」
ずっこけるサファイアをよそに、ミツルはまだ草の中に埋まっているジラーチを救出する。
草の奥から『大丈夫』というサインを出すと、ジラーチはぬいぐるみのフリをしてミツルに助けられた。
任務達成出来て満足げな みむを横に、干し草の上で一息つくと、サファイアとミツルは2人ほぼ同時に辺りを見回した。
すぐ近くにある大きな建物に書いてある文字が ミツルの緑色の瞳に映る。
「・・・・・・『サファリゾーン』?」
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