PAGE102.POKEMON LEAGUE 〜Rhapsody


 『ゴローニャダウンッ、タイプの不利を みごと、くつがえしました!!
  シダケタウンのミツル選手、3回戦進出です!!』

ぐっとミツルが耳をふさぐと、ステージ上のバクオングは目いっぱい息を吸い込み、気の済むまで声を張り上げた。
耳のつんざけそうなスピーカーの音にも負けないほどの大音量が、会場の声援を一瞬だけかき消していく。
相手の納得しない顔は予想出来ていたので、たいして同情もしない。
そりゃあ負けてすっきりしないだろうが、この負け方では特に納得もいかないだろう。
初っ端に『メロメロ』をかけられたあげく、『いわくだき』を連発されて得意のはずのノーマルタイプに負けたとあっては。


大きすぎて目立ち過ぎるバクオングの『ぺぽ』をボールへと戻すと、ミツルは会場を背にしてあちこち寄り道をしながらポケモンセンターへと向かって歩いていた。
会場のあちこちに設置されたモニターには 今日の試合結果が映し出され、時折試合風景のVTRも放送されている。
どうやら、ご丁寧に この大会のためだけにテレビ局が専用チャンネルを作ってそれを会場内で流しているらしいのだ。
大人気なく圧倒的大差でいつかのダイゴがバトルに勝ち抜いた様子がモニターに映し出された後、テレビにはミツルが今日勝ち抜いたトーナメント表が表示される。
左から5番目にあるのはミツルの名前、他はダイゴを除けば、トシキ、マサピロ、アザミ、シオリ、タイチ等々、ミツルの知らない名前ばかりだ。
トーナメント表を上から下へと目で追って、明日の相手の名前をギリギリ確認すると、続いてモニターには今日の『四天王に挑戦!』の結果が映される。
一応勝ったことには勝ったようだが、サファイアのメンバーの中でも先発で戦っている斬り込み隊長のテッカニン『チャチャ』、
それに実際に戦っているところはほとんど見たことがなかったが、サファイアとグリーンの口ぶりからするにかなり重要なポジションを担っている
ネンドールの『コン』の2匹に×印がつけられていた。
他人のことを心配していられる身分でもないのだが、ちょっと考えるとサファイアは明日ポケモン2匹で『四天王』の大将に挑まなくてはならないことになる。
ただでさえ『四天王』のところまで辿り付ける人間もほとんどいないというのに(ミツルはそのうち『四天王に挑戦!』自体がなくなるのではないかと予想している)
2対3で戦うなんて聞いたこともない。
ついでに言えば当の2匹はといえば、サファイアのメンバーの中でも1、2を争う問題児。
(サファイアは)大丈夫なのかと自分に問い掛けたところ、「大丈夫じゃないだろう」と自分に返された。
眉と眉との間にしわを寄せながら、ミツルはポケモンセンターへの道を考え込みながら歩く。






 『おはようございまあぁーっす!! 昨日の雨もすっかりあがり、サイユウメインスタジアム、今日は絶好のバトル日和です!!
  ポケモンリーグも残すところあと2日となりました、『四天王に挑戦!』は本日が最終戦!!
  熱く行きましょうッ、挑戦するのはこの方! トレーナーネーム、サファイア選手です!!』

昨日よりも1時間早い試合開始に、サファイアは大口を開けてあくびしながらスタジアム内に入場する。
既にホルダーから外され、小さな手にしっかりと抱え込まれている2つの赤いボール。
眠そうな目をしてトレーナーゾーンへと入ると、真正面の扉が開き、威風堂々たる歩みで、先日出会った大柄な男がこちらへと向かってくる。
いつも屋外で特訓しているのだろうか、浅黒い肌に、深く被られた帽子に、昨日と同じ、重そうなロングコート。
老年の男が自分のために用意された場所へと案内され、ギラギラ光る瞳でサファイアを見る様は、肉食の動物を彷彿(ほうふつ)とさせるものがあった。

 『最後の『四天王』は、ドラゴン使いのゲンジさん!!
  ポケモンがポケモンと言われるよりも前からこの生物たちと共に生きていた、
  『トレーナー オブ デンジャラス モンスターズ』の1人ッ! その経験と豊富な知識で戦います!!』

「その呼び方を使うな!!」
怒りを込めた声で老年の男が怒鳴り付けると、実況席に立つ男は小さく跳ね上がってから四天王へと向かって頭を下げた。
鼻元にしわを寄せると、年老いたトレーナーは帽子のツバを下げ厳しい目つきでサファイアのことを見る。
何故この男が怒っていたのかもサファイアには判らない。
とにかく、今日のバトルに集中しようと すっかり体温の伝わりきったモンスターボールにぎゅっと力を込めると、小さな少年は相手をにらみ返す。
「お前、『蒼眼』か。」
「・・・そうやけど、何や?」
四天王のゲンジは目を細めると、低く太い声でサファイアへと尋ねる。
「戦う前に1つ尋ねよう、お前にとって、ポケットモンスターという存在は、一体何だ?」
サファイアは眉を潜める。
物心ついたころから父親はポケモンの研究者だったし、自分にとって何かなどと考えたこともなかったからだ。
ゆっくりと腕を上げながら、疑問も混じった視線でサファイアは相手のことを睨み返す。
「何変なこと聞いとるんや?
 ポケモンはポケモン、他の何でもないやろが。
 おっちゃん、それおっちゃんにとってワシは何やって聞いとるようなモンやで?」
ボリボリ頭をかきながらサファイアが答えると、ゲンジは少し意外そうな顔をしてから、口元だけで笑ったように見えた。
モンスターボールを取り出し、力強く握るとサファイアへと向けて構える。


 『さぁ、両者構えました。 今、審判のハタが振られます!
  ポケモンリーグ『四天王に挑戦!』ファイナルラウンド、スタートです!!』

ぐっと腰に力を入れると、サファイアはモンスターボールを力強く投げ上げた。
ほぼ同時に投げられたゲンジのボールを睨み、最初の指示を出すために構える。
「行くんや、ラン!!」
「チルタリス、『とっしん』!!」
「『カウンター』や!!」
バトルフィールドに入って早々、相手のポケモンは風を切って一気に小さなソーナノに接近する。
いつもよく見ていたふわふわ羽根に一瞬ランはひるむが、繰り出された攻撃を体全体を使って受け止めると、そのままチルタリスを抱え込み、地面へと叩きつけた。
自分が打った2倍の威力で叩き付けられ、衝撃でゆらめいたフィールドに観客たちが興奮し、大きな声援を送る。
ラン自身もふらふらだが、チルタリスが受けたダメージはその倍の量だ。
とても普通のポケモンが耐えられるものではなく、ゲンジのチルタリスはその場でぐったりと気絶する。

 『おーっと、早い!! サファイア選手、相手の『とっしん』に対し『カウンター』で対抗!!
  開始直後にゲンジさんのポケモンを倒してしまいました!!
  この驚きの戦法に対し、四天王の大将はどう対抗するのでしょう、ゲンジさん2匹目のポケモンは・・・フライゴンだー!!』

水面を石が跳ねるように普通のモンスターボールとは違う赤いボールが飛び、2つに開かれ新しいポケモンが呼び出される。
大きな緑色のポケモンは2枚の翼を広げると、ゴーグルのような赤い水晶体に守られた瞳でランのことを睨み付けた。
高速で羽根を動かし高い音を上げると、砂漠の聖霊と呼ばれるポケモンは太い2本の足に力を込め始める。
「『じしん』!!」
「交代や、クウッ!!」
痛いほどの勢いで戻ってきた赤いボールを右手に受け、反対の手でサファイアはもう1つのボールを出来るだけ狙いを外さないように投げ付けた。
赤いボールは地面の上を1度跳ね、ゲンジが出した1匹目のポケモンと同じ、水色の小さめの鳥を解放する。
綿のような雲にも似た、ふわふわの羽根を羽ばたかせるとクウは相手の攻撃を受けないうちに地面から飛び上がり、
技によって繰り出される地面の揺れを回避する。
間髪入れずにフライゴンが吐き出したオレンジ色の炎を受けると嫌がったように顔をしかめ、相手のポケモンを睨み付けた。
「クウッ、まだや!! 『れいとうビーム』使い!!」
自分が考えていたのと全く違う技を繰り出そうとしたクウにサファイアは大声を上げる。
空中で体勢を立て直すと、指示を受けた水色のポケモンは音も立てず羽根をばたつかせ 口から白い霧をまとう光線を吐き出した。
額(ひたい)から翼にかけてを一気に凍らせると、フライゴンは悲鳴を上げ、飛ぶ力を失って地面へと墜落する。
バランスの崩れたところにさらに追い討ちをかけられ、緑色のポケモンは完全に戦意を失った。


ゲンジはフライゴンを奇妙な紋様のついた赤色のボールへと戻すと、ひげのついた口元で笑う。
3個目のボール・・・サファイアが見たこともないような・・・を1度空中に投げると、もう1度それを手に取って、
サファイアのことをトレーナーと認めたような顔をしてにやりと笑いながら睨み付ける。
「始めから狙っていたな?」
「当たり前や! ワシかてクウとランだけで出たとこ勝負するほどアホやないで!!
 相談して作戦練るんに9時間かかったんやで、電話代16200円もしたんやからな!?」
涙目になりながらサファイアは声をひっくり返して言い返した。
わざわざ遠くまで電話して真夜中まで残ったポケモンだけで相手に勝つ方法を探していたのだから、ある意味狂気の沙汰とも言える。
それもこれもこの1戦を何とかして勝ち抜くため。
喜びに満ちた表情でサファイアを見つめると、ゲンジは手にした球体をフィールドの上へと放つ。
「・・・いいだろう、このワシを超えてみせよ! 若き使い手よ!!」
鋭い切れ込みのような紋様の入った赤いボールは 地につくとその小ささからは想像もつかないような 大きなポケモンを呼び出す。
赤い翼を大きく広げると、太い四つ足の、空の如く青い体をもったドラゴンポケモンは高く吼え、サファイアとチルタリスを威嚇(いかく)した。
ただポケモンが出てきただけだというのに、会場全体の空気がビリビリと振動する。


「・・・『ボーマンダ』・・・!」
ポケモン図鑑を開き、サファイアは繰り出されたポケモンのその名を呼んだ。
絵本の中だけの存在だと思っていたのだが、実際近くにいる、すぐ側で見てみればなんと迫力のあることか。
青い体を大きくうねらせ、地面を強く蹴り上げると神聖とも言われるドラゴンポケモンは大きな翼をはためかせ力強く空を舞った。
そのまま接近してくるボーマンダに攻撃の気配を感じると、クウは飛び上がり「来るな」とばかりに高い鳴き声を上げた。
よほどおかしな発声法を使ったのか音が2重になり、たった1匹でチルタリスは二重奏の歌を歌っているようにすら見える。
「『ドラゴンクロー』!!」
「『りゅうのいぶき』や、クウ!!」
太い爪がチルタリスの胸をえぐるように切り裂くと、クウは甲高い鳴き声を上げ口から吐き出したオレンジ色の炎で反撃する。
遠ざかりざまに放たれた炎は的確にボーマンダの羽根の付け根へと当たり、小さな電流を流して翼の動きを鈍らせた。
殺気に満ち溢れた視線を送る青いポケモンから遠ざかると、空の名を付けられたポケモンは胸の痛みに顔をしかめてトレーナーの指示を待つ。
「飛ぶんや、クウ!!」
サファイアは息を吸い込みもせず、一気にまくし立てるように次の指示を出す。
1度地面を蹴るとクウは自慢の綿雲のような羽根を羽ばたかせ、相手のボーマンダを睨むようにしながら一気に攻撃の届かない場所まで飛び上がった。
翼の動きを鈍らされた状態ではすぐに追い付くことも出来ず、青きポケモンはクウの飛び上がった先にビリビリ響く声で何かを怒鳴り付ける。
いつまでも上空にいるわけにもいかない、だが、降りれば1度攻撃を受けて頭に血の昇ったボーマンダの攻撃を受けるのは明らかなことで。
サファイアの敗北が決まったとも言える状況に観客たちが騒ぎ出す間もなく、小さなトレーナーはそれぞれのポケモンがいる下を見比べ
上へと向けた手を一気にボーマンダへと向けて振り下ろした。
「クウッ、『そらをとぶ』攻撃!!」
「『ドラゴンクロー』だ、ボーマンダ!!」
隠れた雲の中から飛び出し、クウは一気にボーマンダへと向かって攻撃する。
スピードも加わった攻撃は大きなポケモンの首筋をかすめるが、相手も相手とてやられっぱなしで許すわけがない。
胸から伸びた太い前足を振り上げると、硬い爪を思いきり振り回し、クウの体を弾き飛ばす。
強い力で一気に場外まで吹き飛ばされたクウは そのまま壁に叩き付けられると壁に沿うような形でずり落ち、地面の上へと伏して動けなくなった。

 『チルタリスダウンーッ!! これで残りは双方1匹ずつ、サファイア選手のソーナノも体力はほとんど残っていないッ!!
  ここから逆転の手を見出せるのか、これが最後の戦いです!!』

「・・・クウッ、戻れ!!」
壁の下に転がる自分のポケモンへと手を向けると、サファイアは力の限りに叫んで水色の龍を小さな球体の中へと避難させる。
ボールを受けた左手に取って代わって右の手を大きく振りかぶり、赤い球体を空へ届きそうなほどに高く投げ上げる。
空中で1度静止し、ゆっくりと落ちてきたボールは小さなポケモンを呼び出すと風に吹かれたろうそくの炎のようにその姿をくらました。
「ラン、頑張るんや!」
「なあぁ!?」
甲高い声を上げるソーナノに、青い体の大きなポケモンはしめたとばかりにニヤリと笑って見せた。
非情なトレーナーの瞳が、容赦なく幼いトレーナーとポケモンを突き刺し、その凶暴性をむき出しにする。
「行け、ボーマンダ!!」
「ランッ!!」
自分の3倍はあろうかという大きなポケモンが迫り、ランは高い鳴き声を上げて小さくうずくまる。
小さなポケモンの願い空しく、あっという間に接近したボーマンダは彼女へと太い爪を振り上げた。
攻撃を耐え切るだけの体力も残っておらず、避けることもせずにランは身を縮めると、突然、自分へと迫っていた攻撃がぴたりと止まった。
驚いてそろそろと顔を上げると、赤い翼を持ったポケモンは目を見開いたまま、その動きを止めている。
ランが疑問そうに相手を見上げながらゆっくりと下がっていると、まるで電池が抜けた機械人形のように、ボーマンダはその場に崩れ落ちた。
かすかに体が痙攣(けいれん)してはいるものの、とてもじゃないが戦える状態ではなさそうだ。
長く忘れていたかのようにサファイアが息を思い切り吸い込むと、止まっていた会場の空気が 突然、動き出す。

 『・・・・・・ボ、ボーマンダ、ダウンッ!! サファイア選手、辛くもバトルを制しました!!
  『四天王に挑戦!』突破です!
  新たな歴史の1ページが今、ここに刻まれました!!』

「・・・『ほろびのうた』や。」
ピィピィ鳴きながら戻ってきたソーナノを抱き上げると、サファイアは倒れたポケモン越しに対戦相手へとはっきりと話しかけた。
助けを乞うた人から言われたままに、まっすぐに背筋を伸ばし、その深く青い瞳を揺らぎもせず相手へと向けて。
ゲンジは負けてなお、王者たる堂々とした風格を崩すことなく振舞い、ゆっくりとフィールドの上を歩き戦闘不能となったボーマンダを古いボールの中へと戻す。
口元にかすかな笑みを浮かべると、まっすぐに勝者の元へとおもむき小さなトレーナーへと向かって手を差し出した。
「熱いな。」
差し出された手を、サファイアは力強く握り返す。
特別な存在である証明の瞳の青色の光は消えていたが、迷いなく相手を見つめる目にゲンジは喜びすら感じていた。
「ワシに勝って満足か?」
「・・・いんや、もっともっと強くなるで。
 超えたいモンもある、守りたいモンもある。 そんためにはな、ここで優勝する実力(ちから)があってもまだ足りひんねや。」
「・・・・・・辛いぞ?」
「そんなこた承知のすけや。」
喝采を浴びながら、サファイアはステージを降りる。
このままだと帰るのに6時間かかるという事情を飲み込めてきたのか、早々とやってきたスタッフに連れられながら、サファイアは会場の巨大なスクリーンをちらりと見やった。
サファイアとゲンジの試合結果が大きく映し出され、その脇には準決勝を勝ち上がったミツルの姿が映されている。
もう1人は1度トクサネ辺りで見た男(名前は忘れてしまった)と、全く知らない人間なのだが、こちらはまだ試合中のようで3匹のポケモン全に○×がつき切っていない。
じっと見ているとミツルのポケモンの詳細まで判ってしまうので、それはヤボだと思い、サファイアはあえて背を向け、足早に会場を後にする。
明日の試合のことだけに、神経を注ぎながら。






 『決まったァーッ!! ボスゴドラの『メタルクロー』、ケッキングダウンです!!
  Aブロック代表のツワブキ ダイゴさん、Fブロック代表のウコン選手を撃ち破り、決勝進出です!!』

宙をくるくると飛んでいたケッキングが、アナウンスの声が途切れると共に地面に落ち、それがポケモンの落下音だとは思えないほどの大きな音を立てた。
今しがたバトルを終えたあごヒゲを生やした肌の浅黒い老人は、敗北にさして動揺した様子も見せず、1度うなずいてから自らのポケモンをボールへと戻す。
傷ついたポケモンをいたわるかのように、ボールの赤い表面へと向かって悟りを開いたような笑みを向けると、
ゆっくりとステージに背を向け、杖に頼りながらも歩き出した。
勝者であるスーツの若者はその背中を見送るが、どうにも府に落ちないといった表情をする。
だが、トレーナーの頂点を決める戦いの場だ。 動揺する姿を見せる訳にもいかず、彼はボスゴドラをボールに戻すと準決勝のステージを降りた。

銀色の2つ折りにされたポケギアを開くと、決勝へと進むことになった男は短縮ダイヤルを利用しどこかへと電話をかける。
数回コールした後、電話相手は呼び出しに応じ、不機嫌そうな声を上げた。
「・・・ダイゴだ。」
電話先の相手はあまり喜んだ様子も見せず、自分を呼び出した相手へと用件を聞く。
辺りに人がいないのを確認すると、スーツ姿の若い男はゆっくりした足取りで控え室へと向かい受話器を再び耳に当てた。
「どう思う、今回のポケモンリーグ。 私は何かの企みがあって参加した人物がいると考えているのだが。
 ・・・・・・あぁ、そうだ。 『また』、『神眼』の能力者と当たった。
 ただの地方大会で補欠含めて参加人数486人に対し、『神眼』を持って参加した人数が13人。
 偶然にしては、数が尋常ではない。」
しばらく黙って、青年は電話相手の意見を聞く。
時間をかけて全てを聞き取ってから、男はポケギアを握り直し、電話先の相手へと返答した。
「ホウエン地方全体の人口はおよそ1500万人、年齢を考えず確率だけで言えば能力者は150人しかいないことになる。
 それも、能力を発動させられるのは子供のうちだけだ。 今日戦った相手は、確実に60を超える老人だった。」
少しの間沈黙すると、電話先の相手は何かを一言二言喋った。
うなずきながらそれを黙って聞いていると、スーツの男は銀色のポケギアへと向かって話しかける。

「あぁ、調査は君たちに任せる。
 私はもうすぐ始まる決勝戦に全力を注ぐことにするよ。
 心配するな、手は抜かない。 ・・・例え相手が、もうすぐ私たちの仲間になる人物だったとしてもな。」


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