1月七日 セキエイ高原・ポケモンリーグ前。そこに・・・その地方に雪が降るのは何年ぶりだろうか。






カントー地方には雪が振る事など殆ど無い。カントーから一歩も外に出ないのなら、一生に一度、見れるか見れないかだ。
子供は勿論、大人も上を見上げ、はしゃぐ子供の相手をする。

今一番忙しい時期のポケモンリーグの社員とて、例外ではない。窓から身を乗り出し、降り積もる雪を珍しげに見つめていた。


・・・だからこそ見えなかったのかもしれない。セキエイ高原にある、たった一本の木の元に4人の人影が合った事に・・・・


いや、訂正しよう。気づかせなかったの方が正しい。その四人は約一時間前からそこにいて言葉を交わしていた。その時から一歩も動いていないその姿は、まるで木と一体化しているようだった。





「本当に・・・大丈夫なんですか?」

4人の中の紅一点である人物が赤い帽子をかぶっている人物に声をかける・・・その紅一点の美しい水色の髪は、ある程度後ろに一本に縛られ地球の重力を完全に無視する形をしていた。



「何度も言ったはずだ、このチャンスを逃がしてどうする。」

赤帽子の男が静かな、しかし、はっきりとした声で反論する。
「で、でも・・・あ!そうだ!チーム収集以外の事はレオさんにハッキングしてもらえば・・・」

赤いバンダナの様な物を頭に巻いた少年が慌てたように言う。・・・・・ハッキングをする事自体犯罪だと思うのだが・・・・・

「・・・あの時はどうしても足らない情報を埋める必要があったから仕方なくだ。」

「「で、ですがファイアさんにもしもの事があったら・・・」」

赤バンダナ少年と水色髪の少女の声がかぶる。この赤防止の少年を相当慕っているようだ。

「その気持ちは嬉しいけど・・・・・俺のもしもの事を無くすのがおまえらの役目だろ?心配無し!信じてるぜ、カヅキ、ヒナタ」

赤帽子の少年は明るくそう言うと、その場から一瞬で消えてしまっていた。

「あ〜あ、またテレポートされちゃいましたね」
ヒナタと呼ばれた少女はその場にへなへなと座り込む。

「レオさんも何か言ってくださいよ!第一、もう一度覚悟があるか確かめに行くって最初に飛び出したのはレオさんでしょ!」

カヅキが木の根元に立っている青年に声をかける。レオと呼ばれたその青年はその体を全く動かさず口だけ動かす。

「・・・・・俺は別にあいつの実力の心配はしていない、それに作戦に予定外が出たとしてもあいつなら・・・・・俺たちのリーダーならすんなりかわせるはずだ。」

「「え?じゃあなんで・・・・・」」

レオは雪雲で曇った空を見上げながら言葉を発する



「・・・・・作戦日のこの天気が、あいつにとって最悪の傷をうずかせるだろうからな・・・ま、運命って奴かもな。」


レオはそう言うとモンスターボールに手をかけ、中から幼い頃からの相棒の一匹、エーフィーを繰り出す

「お前らもさっさと取り掛かれ、・・・・・ちなみに言っとくが・・・・・間に合わなかったらどうなるか、分かってるよなあ?」

まるで死に神のような目と声に二人の脳内が一瞬凍る。そして、キャプチャ済みのキルリアのテレポートで、逃げるようにその場から消えた




・・・・ただの冬に振った綺麗で華麗な綿雪、変わったところと言ってもカントー地方に振ったというだけ、珍しくもないただの雪。


だがこの雪こそが、世界を巻き込む大きな戦いへの幕開けであった事を知る人は少ない。


            「・・・・・ゆき・・・・・か。」             

               
少年ファイアが呟いた。
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