〜最終決戦・十三〜



 「6Vの美学です」

 
 ・・・・・・


 壁面から地面まで凍りついた、鍾乳洞のキューブ

 パワータイプのポケモン同士、激しい技の応酬が続いた
 一進一退、いやレッドの方がわずかに押しているようだ
 

 「ぶちかませぇ!!

 「ギャラ、ハイドロポンプ!」

 レッドがこの戦いにいて、最大の賭けそして機転を利かせたのはあまごい
 相手に氷を形成させる水を与えてしまうが、ギャラのハイドロポンプの威力を底上げ強行突破を狙った

 「しゃらくせぇ! イノムー、水なんて凍らせちまえ

 ハイドロポンプを凍らせて、放たれている口内まで凍らせ・トレーナー能力による衝撃でダメージを与えようとする
 しかしあまごいによって降る水はあまりにも断続的過ぎて、その降り注ぐあまごいから先に凍りつき照準が合わなくなる
 あまごいを散漫に凍らせてしまいエネルギーを浪費した結果、ハイドロポンプは凍りきれずにバンナイのイノムーに命中する

 「その調子で押せ! ギャラ!」

 連続でハイドロポンプ、重量級で鈍いイノムーは逃げきれない
 
 「イノムー、じしん!!!!

 その身でハイドロポンプを受けながら、巨体を持ち上げて地震を起こす
 ギャラには命中しないが、先程凍らせた雨粒が跳ねてレッドを襲う
 それに気を取られ視線がそっぽを向いたギャラのハイドロポンプの照準が甘くなり、バンナイはその隙を逃さない

 「フルパワーだ!

 あまごいの雨を丸ごと凍らせるような勢いの吹雪を放ち、ギャラとイノムーの間に洞窟の天井まで届く分厚い氷の壁が出来た
 その上雨雲まで凍ってしまい、あまごいは強制終了となる
 ハイドロポンプの軌道の、両者の間に突如として出来た壁にこれ以上の追撃は届かない

 急激に出来た故に白く濁った氷の壁はレッドに取っても狙い目だった
それに対し、ギャラがハイドロポンプを止めて壁に間近に迫っても気づかれない

 「だいもんじ!」

 至近距離でのだいもんじで溶かし、続けてのギャラの水をまとった大恩の報が当たった
 効果は抜群、当てた後は距離を取るように・とんぼがえりのように上空へ身体を逸らしながら宙を返る

 「イノムー、こんな小豆モヤシにひるんでんじゃねぇ! 特能技で片つけっぞぉお!!!

 「悪いけど、させないよ」

 イノムーの周囲に凄まじい冷気が収束されていくのがわかる、それに伴い溶けて出来た氷の壁の穴もみるみるふさがっていく
 このままだとレッドと、壁の向こうに行ってしまったギャラが完全に分断される
 しかしその前にぐるんと宙を一回転したギャラが、その勢いのまま尾を地面にたたきつける

 「じしんはあんたの専売特許じゃない」

 ギャラのじしんが炸裂する
同時にイノムーの足場だけがひび割れ、崩れた

 当たり前のように、イノムー周辺の地面は凍っていない
 だが、その他の周囲は凍っていて能力の影響を受けていること
地面は、岩盤は繋がっている
 度重なるじしん・倍にもなった衝撃で、氷で補強されていない地面がついに砕けてしまったのだ
 遠距離の氷技とその場で行えるじしんのコンボによって殆ど動かなかった重量級のイノムー故に、脆くなった岩盤が耐えきれなくなったこともあるだろう

 「もう一度大恩の報、これでラストだ!」

 その指示と同時に氷の壁が完全に修復され、ギャラの姿が見えなくなった
 足場が崩されたとはいえ巨体で安定感のあるイノムー、恐らくあの最悪の体勢でも放てる特能技であったのだろう

 ズズン、と氷の壁が震えるほどの衝撃とくぐもった音が聞こえて・・・・・・静かになった
 レッドが氷の壁に駆け寄り、だんだんと拳で叩いて呼びかける

 「大丈夫か、ギャラ!」

 分厚い上に白く濁った氷の壁でよくわからない
 だが、衝撃を倍加させる氷なのだから振動である声もよく伝わっているはずだ
 
 「無事なら、だいもんじで氷を溶かしてくれ。ギャラ」

 その指示を言って、すぐにレッドは氷の壁から離れる
 しんと静まり返った洞窟に、再び音が聞こえてきた

 ごぉぉおと氷を溶かす音だ

 レッドは安堵した
 座り込みたいところだったが、凍った地面でお尻が濡れそうだったのでやめた

 思いのほか時間がかかって、2分後にギャラは氷の壁に穴を開けて顔をのぞかせた
 その際にギャラのいる側の空間からぐぉぉおっと強く風が、レッドのいる空間へ吹き込んできた
 氷の壁で密閉された空間内、イノムーの収束した冷気がそれを丸ごと冷やしたからだろう
 即席の冷凍庫というわけだ
 あと数分もしたら、ギャラは何をしなくても凍り漬けになっていただろう

 レッドが穴から向こう側へ入ると、イノムーの下敷きになったバンナイがいた
 ギャラの二度目の飛行タイプ、速度重視のそれは巨体と相まってイノムーをバンナイごと吹き飛ばしたようだ
 バンナイの命に別状は無さそうだし、この冷凍庫のなかでも毛皮をまとった本人の身体と分厚い毛皮を持つイノムーが上に乗っているおかげか凍りついていない
 鍛え方も違うんだろうし、氷の能力者だから耐性があってもおかしくない

 放ってもよさそうだと思い、レッドは声をかけずにこのキューブを後にすることにした


 「幹部・十二使徒/亥、重戦車バンナイのキューブ」
 侵入者レッド、勝利


 ・・・・・・


 「!」

 部屋のパイプが宙に浮き、投げ飛ばされる
 ハッサムがそれらをはさみ斬り、グリーン達を守った

 「ヒャ、ハッ!」

 見えないハガネールの攻撃に翻弄される
 居場所が特定出来ない・・・

 「どっから攻撃してくんのよ、こいつは〜」

 「落ちつけ。まだわかりやすい攻撃しかしていない」

 直接的なまきつくかしめつける、それから周囲のものを投げつけるもの
 じしんの攻撃もしてきたが、これは全体攻撃ゆえに姿が見えなくても関係ない

 「その通りィ! ハガネール、『ボイナ』」

 パイプやチューブが飛び散り、風が吹き出しドドドドドとキューブ全体が震撼し始める
 じしんとは違う、聞いたことない技名・・・特能技だ

 「ヒャ、ハッ! 降るのは恵みの雨じゃねーけどな」

 ハガネールがどんな動きをしたのかが読めない、何をしたのか
 降り注ぐパイプ、チューブの雨は完全に防ぎきれそうにない
 いや、ハッサムやニドちゃんはそれらに当たる前によろけ、そのたびに風が強く吹き荒れる
 見えないハガネールによる攻撃を受けているのか

 グリーンはブルーをしゃがませてかばい、今起きている現状を把握しようとにらむ

 「わかるか、ブルー」

 「う、うーん、何となく。・・・・・・いや、でもハガネールじゃ無理だって!」

 ブルーが思い直して首を振る
 グリーンはそれでも、と問い質すと彼女は眉をひそめてつぶやくように喋る

 「あれよ、跳ねまわっている感じよ。ボールがびょんびょん跳ねまわって、当たり散らしてる感じ!」

 「・・・ああ、なるほどな」

 言われてみると、その通りだ
 超重量のボールが跳ねまわっていれば、こんな風になるかもしれない
 だが、そんなようにハガネールは動けるように出来ていないはずだ
 それこそステルス以外に、特殊な能力を持ち合わせていれば話は別かもしれないが・・・
 
 「試してみる、しかないな。ハッサム!」

 どがんどがんと宙を舞うパイプやらチューブが砕け、崩れた破片が天井を覆う
 呼ばれたハッサムがグリーンに近寄り、何かを話す
 話がついたのか、苦しそうな表情を見せるハッサムがぐっと左腕をつかむグリーンから離れる
 その様子がやけに気になるが、それどころではない
 
 そして遅れて落ち来る残骸を、皆から離れたハッサムはすべて浴びた
 慌てて駆け寄ったニドちゃんはグリーンを押しやり、ブルーの上に追いやって自らがその上に覆いかぶさってくれる
 ぱらぱらぱらとひとしきり破片が落ちた後も、なおハガネールの攻撃は終わっていない 

 ドガベキバキバヂッと派手な音を立て、ハッサムは立ちつくすまま自らの意思では動こうとしない
 ジャチョもそれに乗ったようで、無差別な見えない攻撃をお望み通りハッサムのみを的にし始めた
 ブルーはそれを見て、息を飲む
 
 「ちょ、何考えているのよグリーン」
 
 「・・・・・・」

 マゾというわけではなく、作戦なんだろうが・・・いたずらに体力を減らしているだけに見える
 為すがままに攻撃を受け続け、ハッサムが大きくよろけたところで身体がうっすらとサァァアと光った

 「ハッサム、離脱しろ」

 ボロボロのはずの身体で、軽やかな動きをしてみせハッサムは見えない攻撃を両腕で振り払い逃げる
 薄っすらと身体が光ったのは「オボンのみ」の効果、減った体力を回復させたのだ

 「ヒャ、ハッ!」

 「・・・・・・」

 ブルーが起き上がり、ニドちゃんと2人を見た
 そして驚く、グリーンの腕から出血している
 傷からして振ってきた破片や残骸によるものではない、これは・・・ハッサムのものだ

 「な、なんでアンタこんな怪我してんの」

 「問題ない。かすり傷だ」

 あの時、話だけではなく、こんなことまでしていたのか
 腕をつかんでいたのはこの傷、あのハッサムの表情も主人を傷つけた自責の念からだ
 確かに傷は浅そうだが、それは思いのほか大きな傷で結構な血が流れたに違いない

 「格好つけた甲斐が無かったなァ! ヒャ、ハッ!」

 ジャチョはこの状況がどういうことか、読めているらしい
 見た目以上に頭も切れる、厄介で危険な男だ

 「狙いはマーキング、だろォ」

 「!」

 ブルーはその言葉で気づき、グリーンを見た
 あきれて、ものも言えない
 ここが戦いの場でなければ、頭をはたいて説教してやりたいくらいだ

 グリーンは自らの血とハッサムの血で、ステルスで見えないまま接触攻撃してくるハガネールに印を付けようとしたのだ
 ハッサムの体色は赤だからグリーンの血もわかりにくい、ああやって無謀な的になったのもハガネールに接触を図る為

 「だが、つかなかった」

 「つかねぇんじゃねーよ、付いたら見えなくなるのさァ」

 ヒャ、ハッ!とジャチョが笑う、嘲笑う

 ステルスはマーキングすら無効にするようだ
 オボンのみという奥の手を使ってしまいながらも、無駄になってしまった

 「どうするゥ、次はもうねーのかァ?」

 「グリーン、アンタはちょっと引っ込んでなさい」

 勝手な行動したことに怒ったブルーが、グリーンを押さえこんで前に出る
 ハガネールVSニドちゃんと、タイプ相性は最悪なのだが勝機を見出せているのだろうか

 「ないわよ。でも、このままで済ませてたまるもんですか」

 『ギュア!』

 ニドリーナもやる気満々だ
 しかし、対処法はまだ完全にない
 このまま行かせれば、2対1のメリットを失ってしまう
 
 2対1
 こちらが2ということは同時攻撃もそうだが、1人が先行して戦うことで相手を消耗させそのデータをもう1人に提供することも可能だということ
 消耗した相手1体、対して万全な1体で相手のデータを持っている状態なら・・・・・・数の利はないが平常とは段違いの勝率が生まれる
 そういうことならこのままグリーンのハッサムが戦い続けた方がいい、もしニドちゃんが先にやられてしまっては勝ち目が無くなる
 そう言いたいだろう、グリーンの理屈はブルーもよくわかっている

 「いい? そういうのならね、弱点タイプなアタシが引き受けりゃ良かったの。
 アタシの能力忘れた? うってつけじゃない」

 フェロモンは同性異性関係なしに相手をメロメロ状態へ持っていける可能性がある
 だが、その情報は組織に漏れている可能性もあるし相手からのじしん攻撃では効果が出ない
 やはりグリーンの方が適していたといえる、それでもブルーは強気に前へ出る

 「行くわよ、ニっ」

 ブルーの声が止まった
 カハッと息を絞り出し、口を開けて首を押さえる

 「ヒャ、ハッ! おしゃべりが過ぎたなァ、隙ありすぎィ!」

 見えないハガネールで首を絞められている
 ニドちゃんが救い出そうとブルーの首に力を込めるが、どこも動かない
 知性を持ったハッサムが遅れて救い出そうと、その腕を振り上げた

 そのハッサムの足の動きが止まった、むなしくハサミがしゃきしゃきと動くだけだ
 全身の関節を何かが締めつけている、ハッサムが喘ぐように主人の方を振り返り見た

 「ッ、ああ」

 ブルーの口の端からよだれが垂れ、ニドちゃんは涙目になってブルーの首回りを攻撃するがびくともしない
 ジャチョはまだキューブの高みで笑っている

 「緊縛プレイはお好みですかァ、色っぽいぜェ。ヒャ、ハッ!」


 容赦も遠慮もない非情な攻撃にグリーンの瞳孔が開いた
 ぶち、と何かがキレた音がした

 「ブルゥウウゥウ!! ッ、キサマァアァァァアァア・・・・・・!!!」

 台詞ではそう言っているのだが、まったくそんな声になっていないほどに彼がぶち切れた
 声を張り上げ、目は見開かれ、どす黒い怒りの感情をぶちまけたような表情がグリーンの顔に張り付いた
 
 ハッサムがそれに呼応する

 グァッ、と目一杯ハサミを大きく開き腕を伸ばす
 届かない

 「ッッ!」

 届け! 動け! 斬れ!


 「・・・・・・!」

 ジャチョの目に映ったのは、気のせいだった

 
 空間に上下に尖った楕円が現れた

 そんな気のせい

 その楕円がクチバシのようにバンッと閉じると、事態は一変する

 ブルーが解放され、前に倒れるのをニドちゃんが受け止めた
 心配そうに抱えていると、彼女がせき込みながら笑ったのを見てほっとする
 それからブルーがグリーンの方を見ると、右目を押さえて彼がうずくまっていた

 「だ、だい」

 「無事か、ブルー」

 右目をヒクつかせ、顔面の筋肉が痙攣しているような表情をしながらグリーンがブルーの心配をする
 彼女は平気、と言うとグリーンがそんなわけないだろと返す
 お互い様よとブルーはのど元に手を当て、ふーっとゆっくり深呼吸した
 グリーンはまだ右目を押さえ、痙攣で唇を歪ませている・・・
 

 ジャチョは見た
 気のせいを感じた後、見えないハガネールの締めつけるが緩んだ事実を
 ハガネールでもない、ジャチョの意思でもなく・・・それはひるみに近い現象だったように思う

 今のは何だったのか、ジャチョにはわからない
 恐らくグリーンやブルーにもわからない

 彼が右目を押さえたまま、立ち上がった

 「ジャチョ、貴様だけは許さん!」

 「・・・どー許さないってェ? ヒャ、ハッ!」

 見えないハガネールのじしんが炸裂する
 ニドちゃんとブルーが尻餅をつき、グリーンも前によろける

 「ハッサム、切れ!」

 じしんのなかでハッサムが動き、周囲のパイプやチューブを乱雑に切り刻んでいく
 その手技は止まらない、微塵切りより荒いがとにかく力一杯に速い

 「ニドちゃん、アタシもいいから・・・ハッサムを手伝ってあげて」

 グリーンの意図が見えた、というよりあの首絞めで『正体』がわかった
 彼の方はまだそういった確証を得ていないのかもしれない、が対処は見えたらしい

 ニドちゃんのにどげりで叩き折っては粉砕し、ヘドロばくだんで融解させていく
 ジャチョは見るからに見当違いな攻撃に嘲笑う

 あらかたのパイプやチューブを破壊し、ハッサムとニドちゃんは周囲を警戒しながら立ちつくす
 ブルーもグリーンに正体を告げられ、そして彼女が彼に入れ知恵した

 しん、と静まり返ったキューブ内でジャチョが笑った

 「ヒャ、ハッ! それがどうしたっていうんだァ?」
 
 「・・・貴様の手品のタネはもう、割れた」

 ジャチョの特能技ボイナの際、あれほどの連撃を受けてはいたが一撃分にダメージ換算してみれば軽いものだったこと
 移動の際に何の痕跡も残さない、その理由も全てはそこにあった

 辺りに散らばるパイプやチューブ、それには何の反応も示さない

 ニドちゃんが、一点をにらんだ

 「そこだ、ハッサム! クロッシヴィ!」

 その指示に合わせ、ハッサムは跳び上がり上空を・宙を斬る
 ハッサムの斬撃に確かな手応えと反響音が聞こえた
 続け様にニドちゃがふぶきを食らわせる、タイプ的にはいまいちだがこの見えないハガネールにはよく効くことだろう

 「・・・ヒャッ!?」
 
 「終わりだ、ジャチョ」

 グリーンが卑劣な幹部をにらむと、そいつは手をあげた
 
 ジャチョの見えないハガネール
 そいつの身体は通常のものとは違い、異常に細く長いものだったのだ
 まるで長い鎖、しかし硬度は通常以上・・・・・・それが正体
 能力者の特典により、その姿形が影響し何かが違ったポケモン

 パイプやチューブが潰れなかったのはその上を踏み潰して進めるほどの質量を持たなかったこと、そのなかを通れる身体のサイズだったこと
 首絞めで彼女自身も気づけた、通常のハガネールでは尾の先でもこんなに綺麗に入るわけがないというところでだ
 ボイナも細い身体をばねのようにして、まるで普通の蛇のように跳ね上がっていたからだ
それこそ縦横無尽に跳ね回るのは並大抵の蛇でも不可能だが、ジャチョはパイプやチューブを軸に・鉄棒に見立てるようなアクロバティックな「大車輪」という遠心力で強引に可能にした
たとえ重量はなくても硬さと勢い、それと「かみくだく」があればパイプやチューブをふっ飛ばし砕いていくのは何とか可能だろう
 
 また通常サイズならば効きにくいふぶきも、細い身体が災いして全体に吹き付けられ・冷風が行き渡った
 視認は出来ないが、いくつかの節々は凍りついているだろう

 手をあげたジャチョは、それを身体の正面で交差して舌を出した

 「タネがわかって勝ったつもりかァ!? まだ俺のハガネールはきぜつしちゃいねーぜェ! ヒャ、ハッ!」

 「だが、もう貴様は俺達には勝てんさ」

 「諦めが悪い男は嫌われるわよ〜?」

 ジャチョは気づいていない
 マーキングは成功していた

 血の臭いによって

 ステルスは姿が視えなくなり、音も聞こえなくなる驚異の能力
 しかし、臭いまでは隠しきれないことに気づく
 ブルーのフェロモンという能力名、それのおかげで至れた
 ニドちゃんが追っていたのは臭い、ニドリーナは種族的にも穏やかな性格で戦いを好まない為にそういった外敵を察知する感覚が♂より過敏だ
 パイプやチューブを切断したのは隠れられなくすること、そこまで細かくなって地面に落ちていれば細いハガネールであっても破片が動き居場所がわかってしまう
 ・・・それを恐れるような見た目以上に頭がキレる慎重なトレーナーなら、次に近づいてくるのは天井からぶら下がるように・と読んだ


 タネは割れた
 しかしジャチョもすぐに、わずかに香る血の臭いに気づくだろう
 それにジャチョもハガネールも、まだ見えないという実力の底を見せきってはいない

 だが、戦いの決着は近い


 ・・・・・・


 大きくはない沼のキューブ
 しかしその沼に沈んでいる草木が腐敗し、それ全体から嫌な臭いを放っている
 こんなものに浸かっていたら病気になる、そんな毒の沼と言って差し支えないところを泳ぎ回って攻撃する影があった
 その影を狙い撃ちしようと、旋回し攻撃の機会をうかがうヨルノズクが1体

 沼の端に互いに対峙し、睨みあう人影2つ

 「自然界に人間の言う完璧なものはないんだよ。それはポケモンも、能力も同じさ」

 「完璧は安心よ。マイナスの可能性に不安もおぼえることはないもの」

 そこにいたのはダイゴ、そして腕輪2つを持った女性
 女性はオレンジの目で彼をにらみ、長い髪を撫でた

 毒の沼にいたのはナマズンだ
 ナマズンのなみのり、毒の泥を混じらせたそれをヨルノズクに浴びせかかる
 それをはがねのつばさによる硬質化で、なみのりを引き裂いて難を逃れる
 しかし、勿論その技は沼に潜むナマズンへのダメージにはならない

 「あの美しい宝石も無垢ではつまらないもの、そこに欠けることで宿す光がある。
 あなたやあなたのポケモンにも弱点があれば、もっと魅力的になると僕は思うよ」

 「うまいこと言ったつもり? しょうがないわね〜、じゃあ教えてあげる」

 すらっとした健康美を持つ女性が微笑み、伸びあがった身体と腕のおかげでへそがちらりと見えた
 そして技の指示をする

 「ナマズン、れいとうビーム」

 「ヨルノズク、サイコキネシス」

 タイプ不一致同士のぶつかり合い、女性がわずかに競り勝った
 パァンと沼に波紋が生まれ、ヨルノズクのサイコキネシスで照準がゆがんだのかれいとうビームはかすめるだけで終わった
 わずかでもようやくダメージらしいものを与えるのを彼女は静かに見て、ちょっと首を傾げたダイゴがつぶやいた

 「弱点を教えてくれるんじゃなかったのかい?」

 「あたしが強すぎて、付け入ったり釣り合う男がいないの。そんな寂しい女なのよ、別に男も欲しくはないけど」

 そのセリフ、媚びない健康美な彼女が言うとなかなか様になる
 彼女の物言いにダイゴが微笑んだ

 「でもそれなら、僕があなたを負かせてあげたら、もっと違う魅力や一面を見つけられそうだ」

 「意外とサドね、あなたも」

 可愛げのない大人達の、沼よりはさらっとした、でも毒より濃い舌戦
 そうして空と沼、相容れぬ互いのポケモンの隙と距離を窺い、反撃の手段を講じる

 「・・・どんな隙も油断も生まれないわよ。あたし、クロムの『パーフェクトボディ』は揺るがない」

 「そう言ったものほど、そうではなくなるから気をつけた方がいい」

 「おぼえておくわ」

 パーフェクトボディ、その名前とヨルノズクのあやしいひかりをどんかんのナマズンが何も無しに防いだところから察しはつく
 どんな補正効果や状態異常も効かない、常時しんぴのまもり+自分だけくろいきり・・・そんなところだろうか
 健康美で自称付け入る隙がないクロム、彼女らしいといえばらしい能力だ

 だが、それは「自他によって変われること」も潰しているともいえる
 そういった完璧は確かに寂しい


 ナマズンが再びなみのりを起こし、ヨルノズクは何故かそれに突進していく
 無謀か、それとも策か


 ・・・ちなみに互いにサドだった時、少しでも立場が弱くなった方がマゾ側に立つという
 そんな風に、うまく出来ているらしい・・・そう変われるのだ
 
 
 ・・・・・・


 鍾乳洞キューブにて回復を済ませ、次に跳んできたキューブは一畳ほどの広さしかなかった

 跳んできたレッドは困惑し、とりあえず周囲の壁にぺたぺた触れた
 狭い、狭すぎる
 こんなところでバトルなんて出来るんだろうか

 「お主まで来たか」

 レッドが声のした方を見ると、壁がモニターになっていてキョウが映っていた
 画面が切り替わるとトウド博士、確かマスクオブアイス事件にいたイツキの姿も確認出来た

 「あれ、お前らも戦いに来たのか?」

 「そうなんだけどぉ〜、最初からここに閉じ込められちゃってさぁ〜」
 
 「どういうことだ? 時間稼ぎ?」

 「最低でも5人揃わないと相手してくれないそうだ」

 キョウとイツキにそう教えられ、レッドは驚いた
向こうの指定でそうならば、大した自信家だ
 ちなみにトウド博士は寝ていた、敵陣のど真ん中だというのにこちらも余裕だ
 
 時間が惜しいというのに、レッドはぐっと拳を握った
 

 突然、天井から怒号が響いた

 『あー、もぉつまんなぁ〜い! 全っ然5人来ないしさぁ、何なのこのランダム転送ひどくない??』

 『あああああのすすすみません、もももう少し待ってみみま』

 酷く甲高い声とおどおどした声に、レッドはその目を見開いた
 この声の主らが、その自信家なのだろうか
 若い、いや同い年くらい・・・・・・

 『待てないっ! いいよ、ここに来たんだから自信あんでしょ!? がっかりさせないでよね!』

 レッド達のいる一畳キューブの床が、ヴィイイインと光り出した
 転送の兆しか、と気づく前に待機キューブから4人の姿が消える

 ・・・

 ひゅんと跳ばされてきた4人がみたのは、今までで一番広いキューブだった
 下手するとどこぞの1丁目がすっぽりと入ってしまいそうなくらい、部屋という広さではない
 ただ天井は床面積に比べて高いものではないが、それでも5階建てくらいの高さはありそうだった
 飾りも遮蔽物らしきものも無く、壁までがかなり遠いのが良く見える

 「おい、起きろトウド博士。向こうさんもようやく戦る気になったようだぞ」

 「んむぅ・・・どこここ」

 「へぇ〜、これがキューブかぁ。ひっろすぎぃ〜」

 「それで、敵はどこだ?」

 キョウが周囲を警戒し、目を凝らすように遠目で見る
 流石忍者、目標にすぐ気づいて指を指す

 「あっちぃ〜?」

 イツキが両掌を額に乗せ、う〜んと眉をひそめながら見てみる
 広いには広いが、遮蔽物はないから方向さえ分かれば何となくそれらしい影がわかった
 向こうもこちらに向かってきているようだが、こう広いと徒歩だと少し時間がかかる
 それに向こうは急いでくる気は毛頭ないらしく、ほんのわずかに声が聞こえるくらいで、あくまでのんびり歩いている
 おかげでレッド達もここのキューブについて、色々話し合える

 「こう広いとどんなバトルになるんだろ〜? てか広いだけぇ〜?」

 「あ、俺が戦ったのは鍾乳洞とか音叉とか変なキューブもあったぞ」

 「何それ、どんだけ無駄なお金使ってんのぉ〜」
 
 「ククク、道楽も過ぎると毒だな」

 「でもまぁ、少しそらをとぶには狭いかな」

 トウド博士が天井を指差し、首をごきと鳴らした
 確かにこの高さだと空を飛ぶポケモンには若干不利かもしれない、それは水棲ポケモンにも言えることだった
 床は通常リーグでも使用されているバトルフィールドと同じ材質、しかしキョウの鍛え抜かれた眼力曰く薄っすらとつぎはぎが見えるらしいので警戒が必要とのこと
 そんなことを話している内に、ようやくここの主がのったりのったりと歩いてきて、声が聞こえるくらいになった

 「っあ〜、マジでうざ〜、なにこつチョーあり得ないんですけど、マジでうわ、サイアクなんすけど、マジマジこれどうなのよ??」

 「あああああのあのすすすみませんん」

 傍らの男の子を無視して、ポケギアに語りかける濃いメイクのギャルがそこにいる
 言うより早くメールを打つ彼女はかなり不機嫌そうだ

 「ああああのそそそそろろそろたた戦いの準備を」

 「はぁ? ったく、まだいいじゃんよぉうざ〜、ほんっとあんたうざ〜、声大っきくなったのはいーけどうざ〜のには変わんないのね〜あーもーうざ〜」

 「すすすすすすみませ」

 「うっざ〜、うじうじ謝ってんじゃないわようざ〜、なんでこんなんと・・・うざ〜」

 あきれてため息つきながら、うつむく間も彼女のメールを打つ指は止まらない
 キョウ達3人もあきれている、こんなのが相手になるのかと
 ただレッドは驚愕していた、目を見張っていた

 あのおどおどした喋り方、女の子にも見える気弱を体現したような容姿・・・・・・ゴールドが話していたのと一致する
 
 「・・・まさか、『再生』の能力者か?」

 レッドのつぶやきに3人が振り返り、そして敵2人を見た
 そこで彼女のメールを打つ手も止まった

 「・・・・・・へー、こいつ知ってるんだ」

 「あああああのあなたたとおあ会いしたことはないんですが、そっそそのすすみませんっそそその通りです」

 再生のるーくん、本名かは不明
 以前、重傷で瀕死の状態だったクリスを回復させた驚異の能力者

 その隣にいるギャル、この流れからして・・・・・・まさか・・・

 「そ。あたしが『破壊』の能力者。こいつの傍にいっと右手首がずくんずくんうずいてうざ〜んだよねー、ほんっと何の因果でこんなやつと対なわけよ」

 「すすすすみませっ、ほんっとすみませ」

 「うざ〜つってんの! 少し黙ってろ」

 るーくんがしょんぼりとしてしまい、目をつむって破壊の能力者は頭をかいた
 それから片目だけ開けてレッド達の顔ぶれを見渡して、またため息ついた

 「つっまんね〜、うざ〜、イイ男いないしさ〜。マジありえねーし、これ」

 「なんだとぉ〜、僕のどこがイイ男じゃないっていうんだ〜」

 イツキがむかっと怒るが、破壊の能力者はつまらなさそうなジト目でそれを見てそっぽを向いた
 そしてあからさまに、盛大なため息をつくのだ

 「うざ〜。あんたのどこがイイ男なのさ、全っ然好みじゃねーし。あたしもっとタフなワイルドで強くて肉食系なのがいいんだよねー」

 「なにぉ〜」

 「よせ、イツキ」

 キョウがたしなめるが、イツキはむきーっと食ってかかる
 破壊の能力者は鼻で笑い、首を傾げて睨む

 「せめてさー、もう少し筋肉つけてよネ。そうそう、幹部十二使徒のバンナイさん! あれくらいの男になったら考えてあげてもいーよー」
 
 「バンナイ?」

 破壊の能力者がちょっと頬を染め、うふっと笑うのを見てそういうのがタイプなのかと思う
 彼女の言うバンナイという名前に、レッドは「ああ」と口にした

 「バンナイってあのバンナイ? 毛皮着た大男」

 「そーそー! って、なんであんたみたいな小豆モヤシがバンナイさんのこと知ってるのよ」

 「え、いやさっき倒してきたから」

 さらりとレッドが言うので、皆の反応が遅れた
 そしてその場にいた全員が驚愕し、何人かが驚きの声をあげた

 「超実戦派の白虎組の幹部、重量級イノムーの荒々しい猛進からくる『重戦車』の呼び名は高いけど、その反面氷系トレーナー能力の双璧アイスバーンを戦況に合わせて駆使する勇将こと『氷争官』のバンナイさんよ!? なんであんたみたいな小豆モヤシが倒せるのよ!?
 あんたが『特能技、アイグクリーク』破れるわけないじゃない」

 「あぁ、特能技出す前に倒しちゃったな」

 あっけらかんと言うもので、ほーっと周りが感心するような息をつく
 るーくんは凄く目を輝かせ、味方がやられたというのに嬉しそうに見える
 凄いことなのか、と今更思ってレッドがるーくんに話しかける

 「どんな特能技なの?」

 「ええええええああのですね、こここ」

 「へー、あんたがバンナイさんをねー・・・ふーん」

 破壊の能力者がふぅんと頷き、つぶやく
 レッドのことを見る、その目は今までとは違ったものになっていた
 
 「他には、どんな相手と戦ったのよ?」

 「え、幹部候補2人とあとクレトってやつだけど」

 「そっか。白虎組の2人も倒したのか、やるじゃん」

 破壊の能力者はポケギアを天井に掲げた

 「バンナイさん割とタイプだったんだけどな。こんな小豆モヤシに負けてるようじゃ考えちゃうなー。
 ・・・・・・・・・・・・ま、そこそこやるってのは認めてやってもいいわ。てなことで本気でやってあげる」

 ピッとボタンを押すと、このキューブ全体が振動した
 足に力を入れ、踏ん張っていると・・・・・・天井が割れていく

 大きなキューブが展開し、天井が開けて青空が見える
 このキューブは海の上ではなく、海の上にあったようだ
 
 「やっぱり」

 トウド博士がそうつぶやく、彼は空から氣を貰う能力者だ・・・キューブの壁に阻まれていても海の下と上では体感的に違うのだろう
 ごうんごうんとその後も展開が続き、1丁目がすっぽり入りそうなキューブは更に倍いやそれ以上の広さになった
 
 「なんと!」

 「うわ〜、広いねぇ〜」

 突然の屋外、びゅうううううと強く吹く海風が冷たい
 何も無いキューブが空も海も兼ねた、どんなポケモンでも充分に戦える環境がそろったといえる

 「もひとつ、サービス」

 破壊の能力者がポケギアのボタンをもう一度押すと、今度は上ではなく下から音が聞こえる
 すると、床からべりべりっと派手な音を立てて何かが突き上げてくる
 急に足元から出てくるので、レッド達は少しよろめきながらそれから逃げる

 出てきたのは厚さ60cm、幅は2mに高さ3mはありそうな鉄の壁だった
 キョウが見たつぎはぎはこれらがせり上がってくるところを隠していたようだが、このフィールドにそういった鉄壁が70以上ある
 これほどの厚さだ、物理技では厳しすぎるし炎攻撃も高レベルでないと突破は不可能だろう

 「あんたらの為のサービスだから、好きに使っていーよ。このフィールドもそう」

 複数の鉄壁に阻まれ、破壊の能力者も再生の能力者も姿が見えなくなってしまった
 それでも声が聞こえる方とさっきまでいた方向は一致しているし、4人いれば四方をそれぞれ警戒し見張っていられるから不意打ちもない

 「では、これらの鉄壁ありがたく使わせてもらうとしよう」

 「え〜、僕には邪魔だなぁ〜」

 慎重なキョウは既にボールを握り、イツキは頭の後ろで腕を組んで余裕そうだ
 押し寄せては引く波の音や風が少し耳触りになってきた、攻撃してくる音を聞き誤らないといいけどとレッドは不安を感じる

 「使用ポケモンは1人1体、相手のチーム全員倒した方が勝ちでいいよ。変にごちゃごちゃしたルールだとうざ〜しね」

 2対4
 ・・・・・・どんな能力者でも数の利で充分に押せるはずだ
 
 問題なのは4人のコンビネーション

 「エーフィ」

 「ネイティオ」

 「ベトベトン」

 「カイリュー」

 背中合わせでそれぞれ四方を警戒しながらレッド、イツキ、キョウ、トウド博士がポケモンを出した

 ・・・タイプ被ってる!?
 もう少し示し合わせてから出せば良かったか、とちょっと後悔するが仕方ない
 恐らく皆が自分の能力に一番合っているポケモン、実力を出せるポケモンを選んだはずだ

 ふざけたギャルに気弱成年というあの2人は見た目ほど、生半可な相手ではない
 それも込みで、この面子なら負ける気がしない・・・そんな希望があった
 
 レッド達がポケモンを出したのを見届け、戦う意思を確認した
 再生と破壊は相手がどんなのを使ってこようが、最初から決まっているパートナー1体をそれぞれ出す

 「はははははハピナス!」

 るーくんが、再生の能力者らしいポケモンを出した
 タマゴうみによる回復とHPの高さが驚異のポケモンで、まず一撃や二撃で落とすことは出来ない

 破壊の能力者がポケギアをポケットにしまい、代わりにボールを出した
 高波がフィールドの端を水浸しにし、風がうなる
 トウド博士は南の空を見上げて首筋をかき、「少し離れたところに雨雲が見える、荒れそうだよ」と告げた


 「レアコイル」

 出してきたのは変哲のないレアコイル
 破壊の権化と言うべきポケモン、凶暴なギャラドスやらバンギラスを想像しただろう
 レアコイルの特攻は確かに高いが、少しインパクトに欠けているように思える

 破壊の能力者がレアコイルを出す前から、フィールドのある端っこを目の端で見ている
 もとは大きなキューブの天井を開き、展開させたバトルフィールドだ
 直方体を平らで綺麗な真四角や丸状に出来るわけもなく、どことなく不揃いな平面になっている
 そういったところ、特に出っ張りが大きなところが気になっているようだ

 「・・・レアコイル、あの端うざ〜から」

 たるそうに指差すと、レアコイルの個々の連結部分に間が開く
 △状になって、その出来た穴をフィールドの端に向けてピカッと光った

 レアコイルの△型の穴から、光線が噴き出した
 そして、音もなく・・・・・・フィールドの端は跡形もなく消滅した

 「「「「!!!!」」」」

 あの技ははかいこうせん、なのか
 レアコイルがただ個々の連結を少し離しただけ、技のモーションといえるものはそれだけだった
 エネルギーを溜める時間、その後の反動も見られない
 攻撃速度もあまりに速い、言葉も出ないほどに
 レアコイルが光った次には避けること、一瞬でも躊躇えば直撃するだろう

 あれが、破壊の能力・・・・・・有無を言わさぬ慈悲も与えぬ一瞬の攻撃

 「あたしの名前、教えておいてあげる。
 『カータ』っていうの」

 「ぼぼぼぼぼ僕は、ええ・・・る! ルネですすすっ!」

 破壊のカータ
 再生のルネ

 「その辺の鉄壁さ、サービスつったけど、ごめんねぇ」

 レアコイルの砲身が、レッド達の方向を向いた

 「散れ!!」

 キョウが叫ぶと、レアコイルが光った

 「どんなものも全然盾になんないから」
 
 レアコイルが放つ光の軌道
 そして光が消えた後・・・・・・その軌道上にあった鉄壁、フィールドは文字通り無くなっていた
 ただ光の軌道上分だけ、それ以外は一切の余計な破壊はされていない
 軌道からはずれていた鉄壁部分は残り、奇妙な一角の跡がくりぬかれた状態で残っている

 「うざ〜、避けるの早〜。でも、そうでなきゃ待ったかいないもんね〜」

 「あわわわわわわ、あやややりすぎですよぅ!」

 「うざ〜、へーきだって。さいしゅーてきにあたしらのいる場所だけ残しとけばだいじょーび」

 この破壊の力があれば、わずかな足場を除いて他すべてのフィールドを破壊することも可能だ
 だけど、それじゃつまらない
 待ったかいがない

 散開して、この広いフィールドのあちこちにある鉄壁の裏に隠れ移動して機会をうかがっている4人

 「まずは4人の内、一番うざ〜なやつから狙っちゃおうかな」

 破壊の能力者は当たりをつけて、レアコイルに攻撃する方向を指示した
 本気出すとか出さないとか関係ない
 破壊の能力というものは威力を下げることが出来ない、攻撃方向と範囲しか調節出来ないのだ

 一度破壊すると定めたら、もう取り返しがつかない

 また光と共に、しかし音もなく鉄壁とフィールドに一直線に穴が開く

 攻撃の軌道上、その鉄壁の裏側に・・・・・・誰かの靴が片方だけ残っていた


 

 
 To be continued・・・
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