〜能力者への道2・到着〜
「はぁっ、はぁ・・・ううっ・・・」
「ランクダウンだ、この程度で済んで良かったな」
ブレイドの腕から赤と白の腕輪が落ちる、やっとここまで上り詰めたのに・・・
残ったのは青の腕輪のみ、降格処分・・・
「・・・さてと、降格した以上・・・貴様の上に誰かつけねばならんな」
「(く、屈辱だ・・・『幹部候補』から転落か・・・)」
とそこへノックが聞こえた、ジークが「入れ」と言うと女が入ってきた
・・・いや正確には女のような男だ
身長160cm程で、薄いピンク色の長髪・・・しかも腰まであった
顔立ちも女性そのもので、言われなければ男性だと気付かないだろう
かの・・・いや、彼の腕輪は三つ・・・今まで同期だった、幹部候補だ・・・
そして奴は俺様の存在に気がついたようだ、屈辱的な体勢の俺様を・・・
「なんだ・・・ブレイドか、おや腕輪が・・・降格処分か」
「丁度良い、セイルス・・・コイツを引き取ってくれ。 実力は一応ある」
「なっ・・・こんな奴に」
そこまで言ったが・・・俺様はセイルスに顔面を蹴られた
うめく俺様に、セイルスは囁くように言った
「この組織じゃ階級は絶対だ、従え・・・」
「・・・・・・わかりました」
「頼んだぞ、俺も忙しいのでな」
「これが・・・いー島」
『小さいだろう』
「・・・冗談みてぇにちっちぇッスね」
夕暮れ前に着いたいー島は・・・本当に小さな無人島だった
島の大きさは・・・大体教室1つ分くらいだろう、あるのは砂浜に島の中心に十数本の細い木が生えているだけ
今が満潮時だというから・・・もう少し広くなるかもしれないが、でも小さいことには変わりない
『ここで今日はキャンプだ、修行は明日から始めよう』
「キャンプって・・・ギリギリだろ」
「じゃ、女の子は林の中ね。 林の中は男の子は立ち入り禁止よ」
「ちょ・・・まてよ」
言っているウチに波が絶対来ない安全地帯を取られてしまう、さすがブルーと云った所か
渋々砂浜にテントを張る男子4人、砂の濡れ具合を見て場所を決めたようだ
女子3人は林といっても木が殆ど無いので・・・『いあいぎり』をすれば寝るには快適な空間になるようだ
「・・・・・・沈まねぇ? ここ・・・」
「多分・・・大丈夫だと思う」
「仕方ないだろう、姉さんが決めたんだから・・・」
「・・・・・・日が暮れるぞ、急がないとメシ抜きだ」
『う〜ん、いつの時代も女性は強いモノだねぇ』
夕飯は・・・作る場所がなかった、なのでカントーで買ってきた弁当で済ませることにした
これもシショーの指示したことで、他にも日持ちする食料を買い占めてきたのだ
しかしジョウト襲撃の混乱で、非常食などの食料品は争うようにして皆が買っていた
レッド達が行った頃には少々遅かった、それでもギリギリ・・・最低限の分は確保出来た
・・・缶詰はとっておいて、生鮮食品・・・いわゆる日持ちしない食料から先に調理する
そして少しだがこの島では果物も採れ、出来た夕食では結構お腹が一杯になった
「・・・ふ〜食ったぁ〜」
「やれやれ・・・忙しい一日だったな」
『明日は早い、もう寝た方が良い・・・』
「シショー、イエローはもう寝てま〜す」
ブルーの言うとおり、イエローは既に夢の中のようだ
「・・・ZZZZZ・・・」
「風邪引きますよ、イエローさん」
「寝かせとけ、シショーの回復やらなんやらで疲れてんだ」
「優し〜いのね、レッドは」
「莫迦、当然だろうが」
「ど〜かしらねぇ〜・・・何かあるんじゃな〜い?」
「いい加減に変な勘ぐりはよせ、お前ら・・・レッド、運ぶの手伝え」
グリーンとの共同作業・・・ブルーが横でからかっていたが、どうにかテントまで運んだ
・・・皆も欠伸をし、それぞれのテントへと寝に帰った
・・・・・・本当に長い一日が終わろうとしていた
『寝静まったようだね・・・』
皆が寝たのを確認すると、シショーは暗い夜の空を飛んでいった
そしてそれを物陰から見ていたのは・・・
「・・・・・・どこ行くのかしらね〜、ウチのシショーは」
ブルーだった、やはり何かあるようだと、女の直感で寝袋の中でメタモンとすり替わっていたのだ
ブルーがカメちゃんを出すと、こっそりとシショーをつけようとした時・・・後ろから手が出てきた
思わず叫びそうになるのをこらえ、後ろを見ると・・・いたのはグリーンだった
「なによ、おどかさないでよ」
「別に驚かすつもりはなかったが・・・やはり、何かあるようだな」
「ええ、皆も甘いわよね〜、結局どうして喋れるのかも聞かなかったし」
「・・・ああ、ところでアイツをつけるのか?」
まあカメックスが出ている時点でそうなのだが、早くしないと見失ってしまう
「ええ、アンタも?」
「ああ、ついでだ、お前のカメックスに乗せてってほしいんだが・・・」
「いいけど・・・・・・襲わないでよ? 夜の寂しい海、男女二人っきりの環境だし」
「誰が!!」
グリーンの顔がよりいっそうけわしくなる、こういう冗談が通じない奴なのだ
「・・・冗談よ、早く乗って、見失うわ」
「ああ、そうする・・・」
シショーは相変わらずパタパタと空を飛んでいる、海流の影響はさほど無い・・・二人はゆっくりとその後をつけた
夜の海はきれいなものだ、ある意味ロマンチックといえよう・・・だが二人、特にグリーンは先程の冗談で機嫌を損ねている
尾行が騒がしく楽しくては問題だが、ここまでくるとブルーの方もつまらない
しかしこちらから何か言うのも嫌だし、尾行が気づかれる恐れもあるので・・・黙っていることにした
とそんなとき、いきなりグリーンがブルーを押し倒した・・・
ブルーの方は大慌てである、小声でグリーンに訴える
「〜〜〜〜〜〜っ!!! やっぱりアンタのその気が・・・!!」
「静かにしろ、あの島に人影が見える」
「・・・・・・え?」
ブルーが体勢を変えて見てみる、シショーがその先にある島に降り立っていた
そしてそこには成る程、確かに人影らしきものが・・・良く見えないが・・・
シショーはその人影のようなモノに近づいていく、どうやら会話しているようだ
小声なので聞き取れないが、互いの仲はかなり親密なようだ
「やはり裏に人の存在がいたようだな・・・」
「ポケモンが喋るなんて考えられないモノね・・・ねぇ、いい加減上からどいて」
やはりこの体勢はかなり気になる、幾らグリーンにその気がないとはいえ・・・年頃の女性には、かなり恥ずかしい
「そうだね、早くどいてあげなよ・・・二人がラブラブなのはわかったからさ」
「「!!!!??」」
島にいる誰かから声をかけられた、しかもこんなに暗いのに・・・
なおも島の誰かが「お〜い、こっちへ来なよ」と声をかけてくる・・・グリーン達は起き上がった
・・・見つかったのなら仕方がない、カメックスがその島へ向かう
「ははっ、ヨルノズクは元々夜行性。 その眼にかかれば、どんな暗い所でも誰がいるのかぐらいお見通しだよ」
「別にラブラブじゃないぞ」
「って・・・そこから!!? 論点ずれてるでしょ!!?」
ブルーのツッコミはもっともだ、他にもっと訊きたいことは山ほどある
グリーンは「そうだったな」とぼそりと言い、改めて訊いた
「お前・・・いや、お前達は何者だ!」
月明かりがさぁっと・・・その人影を照らし出した・・・暗く見えなかった顔が見えてくる
・・・と同時に二人が同時に驚きの声を上げた
「「ああっ! あなたは・・・!!?」」
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