〜能力者への道６・脱猪〜
俺達は一瞬理解が遅れた･･･いや出来なかった
今日は不可解なことだらけだった、突然襲われた街々、見えない奴らの目的
鋼鉄製の扉を破壊した謎の集団、そして･･････それらを遥かに上回るショック
「･･････ははっ、気のせいだよな･･･ポケモンが喋るなんて」
『現実を見て、僕はキチンと喋っているよ』
「･･･莫迦な、イノムーが喋った!!」
「わ〜･･･かわいいｖｖ」
一人だけずれた発言をしたのはミカンだった、周りがじろりと睨んだ
･･･とにかくどういうことだ、通常の２倍以上の巨大イノムーに対し、マツバが前へ進み出た
「･･････何故喋れるのかはこの際だ、どうでもいい･･･ひとつだけ聞こう。
･･･君は奴らの味方か･･･?」
『･･･違う･･･それだけは言える』
「･･･そうか、ひとまず礼を言おう。 ･･･奴らをのしてくれたことに、だ」
「マツバ･･･!! 何をのんきなことを言っている、奴らが目覚めるぞ!!」
イブキがせかすように言った、そうだ･･･気絶している間に何らかの対処をしなければ!!
近くに縄がないか辺りを見回してみるがどこにもない、逃げるならば今の内にだ
だが、ぐずぐずしている間に･･･奴らがよろけて立ち上がった、あれだけの突進をくらって･･･驚異的な回復力だ
「くそっ･･･一体何だったんだ、今のは･･･!!?」
『･･･ぐずぐずしている場合じゃないな、決断を。
僕と一緒に来て欲しい、そして君達を安全な場所へ連れて行く。
そしてしばらくの間、君達はそこで身を隠して貰う･･･。
･･･その案内のため、先導のために僕はここへ来たんだ･･･!!』
「どういうことだ･･････まさか貴様が電話の主か!!?」
『･･･電話？ 何の話さ、それよりも早く決断を･･･奴らが完全に眼を覚ますぞ!!』
だが既に此処にいた灰色の服を着た４人の男達は立ち上がっていた、しかもポケモンも無事だ
リーダー格と思われる１４、５歳の女の子が不機嫌な顔をしている、相当頭にきているようだった
「･･･ゆ・る・さ・な・い、全員でやっちゃって〜っｖｖ」
「ハッ、ギャロップ『ほのおのうず』!!」
「オラオラ、ウツボット『マジカルリーフ』だよっ!!」
「ハリセーンッ!! 『みずでっぽう』をぶちかませっ!!」
「『ねんりき』だ、バリヤード」
一斉攻撃、避ける間もなく直撃･･････するはずだった
だが一切の攻撃はイノムーが盾となって防いでくれた、何故･･･ここまでして俺達を助ける
『･･･君達は必要な人間だ、だから･･･僕が体を張るだけの意味はある。
能力者の攻撃･･･「こらえる」と「まもる」だけじゃ限界がある･･･決断を･･･早く･･･』
「キャハハハッ･･･情けない、ポケモンを盾にして、自分達だけ助かろうっていうのｖｖ
･･･やっぱりこの程度よね、ジムリーダーも･･･こんなんじゃ誰一人、ジーク様にかないっこないわ･･････皆ねｖｖ」
『･･･た･･････の、む･･･駄目でも良･･･い、決断を･･･ああっ!!』
奴らの攻撃の半分はイノムーの弱点だ、耐えきれなくなってきたのだろう･･･声が途切れてきた
敵ではない･･･だが味方という保証もない、誰もが他の人の動きを見ているだけだった
だが･･･そんななかでミカンが一歩前へ出た
「私はついていきます、ここまで私達のために体を張って･･･皆さんは恥ずかしくないんですかっ!!?」
･･･ミカンが泣いている、体を張るイノムーに対する涙と･･･俺達の莫迦でふがいない行動に･･･
やがて俺も前へ出た、続いてアカネ、ツクシ、シジマ、イブキ、最後にマツバも出た
『あ･･･り、が･･････とう･･･皆、僕･･･の、体に捕ま･･･って･･････こ･･･こを一･･･気に抜け出、るか･･･ら』
「･･･わかった、従うよ」
「う〜〜〜ん、し・ぶ・と・い・な〜ｖｖ 次でト・ド・メにしましょｖｖ」
奴らが力を溜めだした･･･勝負は一瞬、俺達がしっかりとしがみついた
イノムーがそれを確認すると、奴らに向けて超がつく程の猛突進をした
だが奴らも莫迦ではないようだ、先程とは段違いのハズのスピードだったがそれをかわしたのだ
あのまま倒せなかったということは･･･奴らの追撃が来るハズ･･･
「同じ手は食わないよ･･･あ、ジムリーダーも一緒かぁ･･･丁度良いやｖｖ
そのまま技をくらえば皆を殺す手間も省けそう･･･じゃ、トドメのい・ち・げ・きｖｖ」
･･･奴らは確実に俺達も殺す気だ、イノムーに張り付いたのは間違いだったのか
イノムーは急に方向を変え、奴らの方に向き直った･･･そして自信たっぷりに言った
『･･･それはどうかな、皆しっかりとつかまっててよ!!
僕の最強技を見せてやるよ･･･「じしん」!!』
圧倒的な一撃だった、俺達が今までいた建物は一瞬で潰れた･･･奴らもろともに、もう追っては来れないだろう
大地はひび割れ二度と修復は不可能だろうと思われた、これは『じわれ』にも匹敵･･･いやそれ以上だ
かつて、『地面』タイプのエキスパートがこれほどの一撃を出したことがある、と聞いたのはいつの話か･･･
かくして俺達は奴らの追っ手から逃げ切ることが出来た、町はもう･･･どうにもならなかった
ボロボロのイノムーに回復アイテムを使うために俺達はいったん降りた、休憩も兼ねてだ
･･････が何故か彼の身体はアイテムは受けつけず、自然回復を待つと、イノムーが言った･･･夢じゃない
確かに喋っているのだ、それだけは揺るぎない事実･･･イノムーが言った
『これからは「そらをとぶ」を使える人は使って欲しい。
僕の身体に乗せてあげたいのだけど･･･体がどうにも･･･ね。
でも出来ない人は無理せずまた僕につかまって･･･』
「う〜〜〜ん、君の体はもうボロボロだ、こちらは出来る限り相乗りにするよ」
「そやな、『飛行』のエキスパートさんもおるしな」
結果
イノムー（先導）･･･シジマ
ピジョット･･･ハヤト（持ち主）、ツクシ
トゲチック♂･･･ミカン（持ち主）
トゲチック♀･･･アカネ
ハクリュー･･･イブキ（持ち主）、マツバ
「な〜んでミカンちゃんが二匹やねん、ハヤト〜ォ?」
「仕方ないんだっ、俺の手持ちはもうこれしか体力が残っていなくて･･･」
「シジマ殿は何故乗らないのだ、私のハクリューならもうひとりくらい･･･」
「すまんが･･･飛行ポケモン嫌いでな、タイプ相性以前に合わんのだ」
『じゃあ、出発だ･･･シジマさん気にしなくて良いですよ。 僕は大丈夫ですから』
そう言って皆が出発をし始めた、いくつもの街を通った･･････だが
壊滅した街々にはあの灰色の服の男達、襲われた人々の姿はもう見えなかった
･･･しばらく走っていると、シジマがイノムーに聞いた
「そういえば･･･お主の名はあるのか･･･?」
『僕のですか? 僕の名前は･･････』
「う〜〜〜ん、どうしてんだろ〜なぁ･･･ハヤトとかさ」
「あら知り合い? ･･･あ、あの警察官か･･･そういえばジムリーダーだったっけね」
ただいま『いー島』から『にー島』へのルートの途中･･･
ゴールドはまだ気がかりらしい、正確に言えばクルミの安否が気になるのだろう
ジョウトの人々はいったい今･･･どうしているのだろうか
レッドがう〜っとうなった、レッスン１の『自覚』について考えているらしい
クリスなどもつられてう〜んと考える、これは意外と難しいことだった
「あ〜駄目だ･･････まるきり思い浮かばねぇ」
「そうですねぇ、私から捕獲を取ったら何が残るのかしら･･･」
「どこが他人と違うか･･････成る程、何故ここで皆挫折をするのかわかる気がするな」
「そういうグリーンはなにかあったのぉ〜?」
「いや全然だ」
難航しているようだ･･･シショーが皆に近づき、海面すれすれを飛んだ
『･･･例えば「俺は他人よりポケモンが育てるのが巧い」と、それを「自覚」にする。
次に「俺は水ポケモンを育てるのが特に巧いようだ」･･･これが「想像」。
これらの「自覚」と「想像」の両方が本来の能力と一致して初めて「覚醒」する、これが基本だ。
だから「自覚」と「想像」がいっぺんにすむ人もいる、だから皆頑張って欲しい』
「･･････才能本当にあんの、俺･･･」
こういうことに頭を使うのが苦手らしい、レッドが早くも挫折した
シショーはため息をついてレッド達に言った
『実はね、この辺りの海域･･･「ナナシマ」付近は通常のトレーナーでは海流が速すぎて「なみのり」出来ないんだ』
「!!? それ本当かよ」
「なんだ知らなかったのか、レッド･･･だから『シーギャロップ号』があるんじゃないか」
『その通り、だけど君達はなみのりが出来る･･･もっとも僕が海流の遅い所を選んではいるけど･･･。
それでも並のトレーナーじゃ移動は不可能だ･･･わかったかい?』
レッドが呆然とする、シショーが更に近づいて耳元で言った
『ちょっとは「他のトレーナーとは違う」って･･･「自覚」出来たかい?』
「えっと･･････ああ」
『よろしい、「自覚」で大切なのは自信を失わないことだからね･･･。
さ･･･見えてきたよ、あれがしばらくの拠点となる「にー島」だ!!』
続きを読む
戻る