〜能力者への道9・狂博〜




 「アーーーハッハハハッハハハッ・・・ヒィ〜〜〜ッヒヒッヒヒヒ・・・グァッハハハァッハッハ・・・イヤッヒャッヒャッヒャヒャァ〜〜〜・・・」


 ・・・・・・ここは『はー島』、大きさは『にー島』と同じくらいある


 ・・・ただ違うのは『満潮』時になると島全体が、海面下30〜40cm下に沈むという点だ
 故にシショーはこの島を避けて、少し遠い『にー島』を拠点に選んだわけだ・・・


 そして・・・・・・そんな場所に・・・・・・家が一軒建っていた、その家から莫迦笑いが聞こえてくる
 まあ、こんな所に家を建てるのだから、満潮時のことを想定しているはずだ・・・普通なら
 

 ・・・・・・お察しの通り家は見事に沈んでいます、床下浸水にも程がある・・・家主はどんな莫迦か


 「・・・・・・こんな家に住んでんのか、あの博士はよ・・・」

 鳥ポケモンから降りた男が呆れ顔で呟いた、灰色の服を着ていると云うことは・・・
 玄関先に立ち、必要性があるのか無いのかよくわからない表札をチラリと見た
 ・・・『キリュウ・トウド』となっているのを確認し、ため息をついた・・・マジで住んでんのかよ
 家の中からの莫迦笑いはまだ続いている、呼び鈴を鳴らしたが返事はなく・・・笑い声が返ってくる

 「・・・・・・アッハッハッハハハハハハハハ・・・ガハッボット・・・ゴボバハハガハゴボボ・・・」

 突然の物音で笑い声の調子が変わった、だが・・・家主が出てくる気配はない
 男はイライラしてきたようだ、そして扉を開けてみた・・・そこで見たものは・・・





 ・・・・・・床下浸水している家の床で笑い転げている人間、笑いすぎてイスから転げ落ちたのだろう
 それでもその人物は笑い続け・・・溺れている、男がカァっとなって叫んだ

 「・・・テメェ何やってんだ!! この気違い莫迦野郎!!」

 「ゴババハボボボ・・・・・・ゴバ、ぎゃくじんきゃ?(おや、客人か?)」

 その人物はいきなり立ち上がって、白衣を脱いで絞った・・・眼鏡をかけ、言った

 「いやはや・・・面白いイラストがあるHPあってね、紫とオレンジの段だら模様の鬼とパンダがにらめっこしている絵でね。
 その背景がこれまた・・・ひきがえるとサンショウウオの盆踊りシーンが採用されていて・・・」

 「・・・・・・おいコラ、無視してんじゃねぇぞ、聞いてないぞ・・・そんなこと」

 「・・・・・・あれ、客人だ・・・いつの間に」

 「さっきテメェが『おや、客人か?』・・・とか言ってただろうが!!」

 「・・・ああ、37,582秒前に言ってたね、そんなこと。
 ・・・キミは記憶力抜群だ、それよりもよくわかったね・・・言ってること」


 男に青筋が浮かび上がる・・・人が下手に出てると思って、この野郎めが・・・
 莫迦セイルスからの任務じゃなきゃぶっ殺してるぜ・・・同じぐらいむかつく奴だな
 そんな男の胸中なぞ知るよしもなく、家主がまたパソコンの前に座った
 家主は操作をしながら男に問いかけた、その態度にまたブレイドが腹を立てた
 ・・・どうやらこの家主は人の神経を逆なでするのが得意らしい


 「・・・んで、キミはこの自分に何か用かい?」

 「申し遅れました、私の名前はブレイド・・・ポケモン協会に勤めているものです。
 ニュースをご覧になった通り、現在ジョウトは侵略され、カントー地方も安全ではなくなってまいりました。
 そこで、我が上司であるセイルス様の命により、高名なる博士である貴公を安全な場所へ連れて行くために・・・迎えに参りました」

 「ふ〜ん、迎えに来たの・・・初対面で莫迦呼ばわりしといて、言葉遣いも悪い。
 ・・・誠意がないね、近頃は教育がなってないね」

 「・・・・・・まことに申し訳在りません」

 「ま、座って・・・床に適当にさ、それから話を聞こうかな?」


 ブレイドの額に新たな青筋が浮かび上がる、なんなんだ・・・この莫迦は
 浸水した床に座るのは嫌なのでずっと立ちっぱなしだった、気のせいか奴が笑っている気がした
 やっとパソコンを終了させ・・・改めて家主がブレイドの顔を見て、思い切りため息をついた


 「・・・・・・駄目だ、キミの顔は少女漫画とかには向いてないね。
 少年漫画でもいいとこやられキャラだ、可哀相にねぇ・・・。
 品がないよ品が・・・こんなのに迎えられちゃ行く気がしないよ・・・」

 「・・・・・・まことに申し訳在りません、ですが事態は一刻を争うのです」

 先程からブレイドの眉が、顔がぴくぴくとけいれんしている・・・
 その言葉に家主がにやりと笑った、背筋がぞくっとする笑みはさっきとはまるで別人ようだった
 一瞬だけの笑みの後、家主が鼻息を歌いながら・・・ブレイドに言った


 「・・・・・・そうか、キミ達の組織がジョウトを壊滅させたんだね、猫をかぶんなくて良いよ?
 能力者は能力者同士、わかるもんだよ・・・も〜バレバレね。
 多分キミ達の目的は『論文』でしょ、あの内容を世間に知らされてくないワケだ」

 「・・・わかった、猫をかぶるのは辞めるとしよう。 ・・・これも四大幹部の情報通りだからな」


 ブレイドが指令書の内容を思いだす

 『指令
 身分を偽り「携帯獣氣体成生論」の著者「キリュウ・トウド」を連れてくること。
 ・・・ただし正体に気付く確率は87%、その場合は実力で強制連行せよ
                                                「朱雀」』


 ブレイドがアーボックを出した、だが家主は平然としている・・・それどころかこの状況を楽しんでいるようだった
 

 「アハッハハハハハ・・・良いね、キミの能力!! うん、中々だよ・・・」

 「(・・・なんだ、コイツ? 俺様の能力を見破ったのか!!? ・・・莫迦な)」

 「ううん、でも惜しいな・・・惜しいよ」

 「なんのことだ、貴様は大人しくしてれば良いんだ・・・ケガをしたくなければな!!」


 ・・・急に外が明るくなった・・・パソコンの前にある窓が何故だか不自然に光っているのだ
 いや・・・厳密に言えば外で何かが技を放とうとしているのだ、ひるむブレイドに家主が笑って言った


 「何が惜しいってね、キミが自分より弱い能力者だってことだね。
 ・・・・・・本当に残念でした、さようなら」





 一瞬の閃光の後・・・『はー島』にあった家は跡形もなく消滅していた・・・










 「・・・・・・なんか向こうの方・・・光りませんでしたか?」

 『え? 何のことだい、クリス・・・』

 「ええと・・・気のせいですね、きっと」


 俺達は今・・・なみのりの真っ最中だ、目指すは『1の島』
 もう夕方近いがまだ目的地は見えない・・・・・・大会のせいかな・・・
 シショーはもうすぐ着くよと言った、クリスは未だにあの光が気になるらしい


 が、それも長くは続かなかった・・・何故なら『捕獲』モードに入ったからだ


 なみのりをしているレッド達に寄り添うように浮上してきたのは・・・『カブトプス』だった、中々珍しいポケモンだ
 スグにクリスがネイぴょんを出し、いきなり『ねんりき』をくらわせた
 その影響を受けたのか・・・ギャラのなみのりバランスが悪くなった、クリスの足元がふらつく
 だがそれでもクリスは立ち上がり、ギロリとカブトプスを見て言った


 「『捕獲』します!! ルアーボール!!」


 だが目の前で蹴られたボールはカブトプスの『きりさく』によって、真っ二つになった
 クリスは諦めずに・・・攻撃とボールを投げることを繰り返した
 初めて見る『捕獲』モードにシショーがたじろいだ

 『いつも・・・ああなのかい?』

 「ええ、そうです・・・ああなったら止められませんよ」

 『・・・・・・あれで能力者じゃないのか、すごいね』

 
 もう10分は経ったろうか、が・・・未だに捕獲出来ないようだ、随分と手強いようだ
 やがてカブトプスはまた海中へと戻っていった、クリスがぺたりと座り込んでしまった
 逃がしてしまったのだ・・・落ち込んでいる

 「・・・・・・どうして? ネイぴょんの攻撃+カラぴょんの『みねうち』でギリギリまで体力を削ったのに・・・」

 「あ〜クリス・・・よくあることだ、気にすんな」

 ゴールドの慰めの言葉にカッとなった、クリスが叫んだ


 「あ〜いいわよねっ!! ゴールドはもう能力者だしさ、こっちは必死なのよ!!?
 捕獲以外の取り柄が見つからない私は・・・・・・このままじゃ皆の足手まといになっちゃうじゃないの!!
 だからせめて・・・捕獲だけは・・・捕獲だけは・・・」


 クリスがそのままうずくまってしまった、どうやら・・・泣いているようだ
 ゴールドは周りに助けを求めるが、皆は冷たい目だ・・・必死で謝り続けている


 そんななか、グリーンだけが先程の出来事を冷静に考えていた


 「(確かに・・・あの至近距離から高速で放たれるボールを斬るのは相当のレべルでなければな。
 この海にそんな大物がいるだろうか、ましてや絶滅種で、クリスのボールを見切れる・・・いるはずがない。
 だが実際に総て避けきった・・・体力が1になってもだ、普通に考えればこれはおかしいことだ。
 ・・・となれば、可能性としては・・・・・・フム、どうするかな?)」

 
 可能性を考えている間に・・・・・・一応、当の2人は仲直りしたようだ・・・周りも大分慰めたようだ
 その際に何を言ったのか知らないが、今度はゴールドがへこんでいる・・・散々けなされたのだろう

 
 グリーンが様々なことを考えていると、ふと何かを思いだしたのか・・・シショーに聞いた


 「・・・おい、『携帯獣氣体成生論』というのは知っているか?」

 『ん? 聞いたことはあるけど・・・その著者がカントーにいることぐらいで、内容までは・・・』

 「そうか、いやな・・・じいちゃんが『面白い研究だ』と言っていてな。
 何故だかそれが・・・この戦争の鍵を握っているような、そんな気がするんだ」

 「いったいどんな内容なの?」


 ブルーが聞いたが首を横に振った、どうやら内容は覚えていないらしい
 だが『前提』だけなら覚えているという

 
 「一言で言えば『ポケモンは意志を持ったエネルギーの塊である』というものだ。
 技や進化などのポケモンの総てが・・・それで証明出来る、そういった内容だったようだ」

 「エネルギーの塊って・・・何ソレ、そもそも何で今、それを思いだしたのよ?」

 「さてな・・・何故だか思いだした」

 『・・・・・・気になるね、今度調べてみようか』


 レッドは興味がないのか大欠伸をした、そして・・・


 「ん? 何かが見えるな・・・島かな、島・・・・・・もしかしてアレか?」

 『・・・着いたようだね、目的地「1の島」に・・・』





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