〜能力者への道19・朝湯〜




 ・・・ともしび温泉で一泊することになったレッド一行、そこで起こったハプニング・・・


 ゴールドののぞき・・・それは未然に防がれたが、顔を見ていない女性達は誰がのぞいてきたのかで不毛な論争が


 ・・・何故か攻撃対象はレッドとイエロー、ブルーは散々に言いたい放題・・・これにはイエローも怒りだした


 ・・・・・・仕舞いには男湯に直接聞こうなどと言う始末、長い間論争していた所為でイエローは湯当たりに


 当のブルーはこってりと絞られて、厄日なレッドは早々に寝ることに・・・長い1日がまた終わろうとしていた


 ・・・・・・そして独りシルバーは『入った気がしない』といい、もう一度温泉に浸かりにいったが・・・


 ・・・そこで謎の人物、少なくとも仮面の男以上の威圧感を持つ人物と接触する、シルバー自身は初対面だったのだが・・・








 

 「・・・気分は最高ね〜」

 「出発までまだありますから〜・・・」

 「なんだか贅沢ですね・・・いい湯だなぁ」


 ・・・昨夜『ともしび温泉』前で野宿したレッド一行、今は早朝
 言葉の語尾がのびているということは温泉につかっている・・・つまりは朝風呂だ
 だがキチンと出発には間に合わせるように、3人は早めに起きてきたのだった
 ・・・しかし、早起きの苦手そうなイエローまでいる・・・・・・おそらくブルーにでも無理矢理にか、誘われたからであろう
 しかし、イエローとクリスも朝風呂は嫌いじゃないので・・・眠い目をこすりながら一緒に来たのだった


 最初は無理矢理だったが、入ってみれば・・・来て良かったと思う・・・眠たげな体が目覚めるようだ
 そして・・・やはり他に客はなく、ブルー達の貸し切り状態はまだ続きそうだった
 ・・・・・・のんびりと風呂に入っていると、おもむろにブルーがイエローに頭を下げた


 「昨日は本当にゴメン・・・悪ふざけが過ぎたわ」

 「へ? ブルーさん、ボクに何かしましたっけ?」

 
 イエローはきょとんと聞き返した、ブルーとクリスは顔を見合わせた


 「・・・・・・覚えてないんですか?」

 「だから何をですか?」

 クリスの言葉にイエローが首を傾げる、どうなっているのか・・・まさか覚えていないのか
 湯当たりのせいとは思えないのだが、反応からして・・・昨夜の記憶が曖昧になっているようだ


 ・・・・・・微妙な空気が流れた、3人ともどういう反応をすればいいのかわからないようだ・・・


 一番困っているのはイエローで、必死で何があったのか思いだそうとしているようだ
 それを察知・・・先読みし、ブルーは先手を打った


 「良いのよ、無理に思いださなくて・・・大したことじゃないんだから」

 「あ、そうなんですか・・・良かったぁ」

 「(・・・・・・いいのかしら、これで・・・?)」

 
 2人がニコニコしながら、うなずきあった・・・クリスだけが複雑な表情をしていた
 ・・・ブルーが髪を洗いに湯船から出て、イエローもそれに続いた


 髪を洗っている時に、また・・・隣から声が聞こえた
 最初はシルバーかなと思った、他に朝風呂をしそうな男が思いつかなかったから・・・
 ・・・・・・でも、違った・・・


 『おーい、そろそろ時間だよー』


 ・・・・・・この声って・・・まさかとは思うんだけど・・・


 「・・・シショーですかっ!!?」

 『そうだけど・・・何か問題が?」

 「・・・あるに決まってんでしょーが、とりあえず水・・・お湯は平気なの!!?」

 『うん、いやね・・・街まで往復したら汗かいちゃってね。
 ・・・たまには水浴びぐらいしないと・・・流石に僕も気持ち悪くて・・・』

 「(・・・何しに行ってたのかしら?)」


 何処かずれている気がするが・・・それより時間って・・・あ、忘れてた
 ・・・・・・出発の時間・・・・・・クリスが慌てて防水加工の時計を見た


 「・・・・・・時間までまだ30分はありますけど?」

 『うん、余裕はあった方が良い・・・正確に言えば30分34秒ね。
 それとなんだか・・・これ言って出るまでに時間がかかりそうだから、念のため』

 「・・・よくわかるわね、そんなこと」

 
 実際ブルーの性格上から、早めに言っておいた方が良いのは・・・本当に良い判断だ
 それを言うのも兼ねて、風呂に入りに来たとシショーが言った


 「シショーは時間がわかるんですか?」

 『ホーホーの時の名残でね、正確な体内時計は今も健在だよ』

 「へぇ・・・あ、それよりシルバーは? アイツ風呂好きだから・・・入ってないの?」

 『・・・いないねぇ』

 「そう・・・珍しいわね」


 シルバーの風呂好き、温泉好きは・・・筋金入り・・・らしい
 もちろん、こういう所での朝風呂も好きだと思うのだが、具合でも悪いのだろうか


 『・・・そういえば昨日の夜・・・様子が変だったっけか』

 「・・・・・・シルバーの様子が?
 そういや、いつ風呂から出てきたのかしら・・・アタシは説教のあとスグに寝ちゃったんだけどね」

 『そうだね、午前0時過ぎかな? 僕は基本的に夜行性だからね、出てくるまで待ってたんだけど・・・。
 ・・・風呂から出てきて・・・なんだか様子が変で、顔色も悪かったよ。
 一応何かあったのか聞いたんだけど・・・何も言わずに・・・スグに寝袋に入ったよ』

 
 ・・・・・・風呂で何があったというのだろう、朝早く起きたからまだ会っていない
 髪についたシャンプーも洗い流すと、もう一度温泉に浸かった・・・シショーが言った


 『じゃ、僕は出るよ・・・急いでね、あと25分05秒』

 「「「・・・はーい」」」





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 シショーで言うところの、16分47秒の遅刻後・・・女性陣が温泉から出てきた


 「遅い! 早めに出発と考えていたのに・・・ギリギリだな」

 「何をやってたんッスか?」

 「乙女のヒ・ミ・ツ」


 ・・・またそれか・・・皆がため息をついた
 しかし、これ以上何かを言っても無駄だろう・・・そう判断しておこう 


 『・・・ま、これで全員揃ったかな?』

 「んじゃ、出発ッスね!!?」


 ゴールドが張り切って先頭に立った、レッドも今日は体調は良さそうだった
 ・・・皆が歩きだしたところで、シショーがそれを止めた・・・


 『渡しておきたいものがあるんだ、今朝早く買ってきたんだけど・・・』


 そう言って・・・皆にそれぞれ布製の何かを手渡した 


 「・・・なんですか、これ?」

 『パワーアンクル、皆を鍛えるために用意したものだ・・・女性はそれぞれ0,5kg。
 男性は個人でバラバラだけど・・・皆、それぞれの両手足につけるんだ』

 「こんなもの・・・どこで買ってきたんだ?」

 「(これを買いに朝から、街まで行ってたみたいね・・・ごくろーさま)」


 ・・・・・・重さは以下の通り・・・・・・


 レッド・両手足3,5kgずつ

 グリーン、シルバー・両手足2,0kgずつ

 ゴールド・両手足1,5kgずつ

 女性全員・両手足0,5kgずつ


 『それぞれ各個人の体力と筋力に合わせてみた。 ・・・例の腕相撲大会をもとにだけど。
 重りが少ない人もいるが、慣れてきたら徐々に増やしていくよ・・・女性もね』

 「・・・大した重さじゃないッスね、これ」


 ゴールドがパワーアンクルをはめて、両手足を動かしてみている・・・
 皆も同様につけてみるが・・・そのなかでレッドだけ異様に多い、全部で14kgだ


 「レッドさんだけ多くないですか・・・重り」

 『いや・・・決して多くはないはずだ、レッドならだけどね』

 「・・・不公平だよなぁ、俺が男子のなかで一番少ない!!」


 どうも重りの量がスティタスだと・・・ゴールドは勘違いしているようだ
 そのままシルバーに話を持ちかけたが、返ってきた返事は・・・

 「・・・そうだな」

 と素っ気ないものだった、なんだか調子が狂う・・・ゴールドが言った


 「お前・・・なんか様子が変だぜ?」

 「別に」

 「いんや・・・ゼッテェいつもと違う、どうしたんだよ!!?」

 「別に」


 ・・・やはり様子がおかしい、ブルーも尋ねてみたが返事は同じだった
 やがて皆が準備をし終えると・・・温泉を過ぎたところにある砂浜へ向かった





 「この先に・・・『ともしび山』があるんだな」

 「そうッスねぇ、お・・・修行やってる」


 この辺には武道家が多い、皆が朝の修行に精を出している・・・それなりの実力者なのだろう
 ・・・なるべく目を合わせないように、海へと向かった・・・が


 「待てっ、勝負しろ!!」


 案の定声をかけられた、そのトレーナーの空手家はゴーリキーを出した
 ゴールドがぴくりと反応したが、周りに押さえつけられて・・・皆はその場を立ち去ろうとした


 「・・・逃げるのか、臆病者めっ!!」

 「なんだとぉ・・・よっしゃ、しょ・・・」


 ゴールドの口がグリーンに抑えつけられた、レッドが言った

 
 「悪いけどさ、急いでいるんです・・・すみません」

 「腰抜けめ・・・戦わねば強くはなれんのだぞ!!」

 「・・・・・・」


 レッド達はなみのりポケモンを取りだした、素早く乗って・・・海へと出た
 ゴールドは暴れて・・・口を抑えていた手をどけ、当の空手家は怒って・・・2人同時に言った


 「どうして戦わないんですか!!?」

 「何故戦わんのだっ!!?」





続きを読む

戻る