〜能力者への道20・招集〜




 ・・・・・・朝風呂に入る女性達、出発前に・・・のんびりと、ちなみにイエローは昨夜のことを忘れていた


 途中でシショーも入ってきて、驚いたが・・・実体は水浴びのようなものだと思えば良かった


 そんな朝風呂だったが、意外にも風呂好きのシルバーが入っていないという・・・少々気になることで


 ・・・そしてやはりか、朝からシルバーの様子は変だった・・・・・・どうしたというのか・・・


 ともしび山に登る前にと、シショーが皆にパワーアンクルをそれぞれに配った・・・鍛えるためらしい


 ・・・・・・海を渡ろうとした時、トレーナーが勝負を挑んできた、ゴールドは懲りずに受けようとしたが・・・










 「・・・まだ気にしてるのか?」

 「当ったり前ッス!! どうしてあの挑戦受けなかったんッスか!!?」


 此処は既に海の上、勝負を挑んできたトレーナーの姿はもう見えなかった
 ・・・確かに勝負を挑まれたのなら、受けるのがトレーナーとしての礼儀だ
 ・・・・・・それぐらいレッド達は知っている、だがあの勝負は受けるわけには・・・いかなかった
 
 「理由は!!?」

 「・・・先を急ぐ旅だから。 それじゃ駄目か?」

 「駄目ッス、納得いきません!!」


 ゴールドににらまれると、レッドはため息をついた・・・そして言った


 「あのトレーナーのため、最終的にはそう言うことだ」

 「・・・もう少しわかりやすくお願いします」

 「ゴールド、もう少しあなたも考えなさいよ」

 クリスに言われ、それもそうかと・・・しばらく考えていたが、まるでわからない
 仕方なしにと、グリーンがゴールドにわかりやすく説明した


 「あのトレーナー、見ての通り一般トレーナーで・・・能力者じゃない」

 「そうッスね、それが?」

 「・・・能力者の特典で一番厄介なのは『引き算が足し算になる』ことだ、わかるな?」

 「ええ・・・まぁ」

 ゴールドが曖昧に言葉を濁すと、今度はブルーが言った

 「あのトレーナーはゴーリキーを出したわね、ゴールドはウソッキーのウーたろうを出したことにしましょうか。
 ・・・そしてお互いが技をくり出しました、相手は『メガトンパンチ』、ゴールドは『ばくれつパンチ』。
 単純計算でノーマル・80VSかくとう・100、タイプ相性で80VS200・・・ここまではいい?」

 「そのくらいなら・・・平気ッス」

 「それじゃ、何が起こるかわかるでしょ?
 この拳と拳の勝負はゴールドの圧勝、そして・・・・・・能力者が勝った場合に、時々起こる『引き算が足し算になる』こと。
 つまりダメージは280、『だいばくはつ』を越える威力がゴーリキーの拳に・・・」

 「・・・・・・あ、まさか・・・」


 ゴールドの顔が段々と青くなる、ブルーはコクリとうなずいた

 「おそらく二度と使い物にならなくなるわ、ゴーリキーの拳・・・」

 「だから俺達はお前を止めたんだ、昨日お前らとバルーの戦いを見たからには尚更だ。
 ・・・・・・正直言えば、あんな危険なものとは思わなかった、能力者の特典が起こす恐怖を感じたよ。
 そう・・・特典効果は能力者だけ、どんなに相手が強かろうと・・・こんなことは起きない。
 あの時止めなければ・・・お前は一生後悔したかもしれない、相手のポケモンを再起不能にするというな・・・」

 「けど・・・それは相手の気持ちを踏みにじってます!!
 だってそうでしょう!!? あのトレーナーの悔しそうな顔!!
 挑戦を断られるのは、どんなに屈辱かどうか・・・きっと向こうは俺より嫌な気持ちだと・・・」


 ・・・皆がシーンと黙った、どちらの気持ちも痛い程にわかる、ゴールドは相手に応えようとしただけなのだ
 だが・・・それは本当に正しい行為だったのか、わからない・・・・・・


 「・・・・・・あ、島・・・山です、ともしび山が見えました!」


 イエローが極力明るく言った、確かになかなかに高い山が見えてきた・・・
 ・・・ようやく着いたのか、ずいぶんと長かった気がする・・・シショーがともしび山を見上げて言った


 『・・・あの山の頂上に、何がいるんだろうね』

 「行かなきゃわからないさ、な・・・皆?」

 「・・・ああ、上陸だ」










 舞台はまた変わる、ここは彼らのアジトの一室・・・『第一会議室』・・・





 「・・・フェっきしょいっ!!・・・あ〜」


 のそのそと・・・この部屋の入り口のひとつから顔をぬっと出した


 その男の図体はそう大きくない、が妙な格好をしている・・・歳は20代には見えない、40はいくかもしれない・・・
 室内なのに深い帽子を被り、目はよく見えない・・・しきりと鼻をすすっている
 服装と言えばパッとしない、よれよれの灰色のスーツ・・・ディックとはまた違うだらしなさだ
 あごひげを生やし、しきりに莫迦でかいクシャミを連発している・・・3つの腕輪がキラリと光る


 「幹部候補がひとり、『ルシャク』様のお見えです!!」

 「ん? あ〜ご苦労しゃ、っくしょい!! ・・・クソ、早く秋になりやが、れっくしょい!!」

 部屋の入り口にいる少年に声をかける、が・・・どうにも締まらない
 ・・・ルシャクは部屋の中を見てみるが、誰もいない・・・入り口の少年に話しかけた

 「・・・おっかしいな、ここで会議がありゅっくしょい!! ・・・あるんだろう?」

 「ええ、確かにあります・・・」

 「あなたが早すぎるのよ、時間15分前よ・・・何、今は花粉症かしら?」

 「あ・・・・・・幹部候補がひとり、『アーシー』様のお見えです!!」


 そう言ってまた、別の扉から今度は女性が現れた・・・がこちらも奇妙な格好をしていた
 ・・・なんたって、灰色のウエディングドレスを着ているのだから・・・ブーケまでしっかり持っている
 髪色は黒と茶が入り混じったような感じで・・・歳は不明、本人はそう言っている

 「・・・おうよ、春は花粉症、夏は夏風邪、冬は風邪・・・俺っくしょい!!
 要は秋しか・・・安息出来っくしょい!! ・・・季節は他に無、な・・・いのしゃっくしゃっ!!

 「汚らしい、口説きがいの無い男だね」

 「へっきしょい!! 誰がお前みたいなっくしょい!! ・・・性悪なんかっくしょしょい!!」

 「あの・・・すみませんが、お席について下さい」

 
 少年が2人の間に割り込んで言った、これ以上の言い争いは耳に悪そうだ
 ・・・2人は予め用意されているイスに座った、もの凄い険悪なムードだ・・・
 少年がおろおろしていると、また誰かの気配・・・・・・察知した少年が言った

 「幹部候補がひとり、『ゼラ』様のお見えです!!」

 「・・・時間前行動ですげい、まことに結構でありうす」

 
 今度はガタイのいい、中年とは思えない大男が立っていた
 褐色の肌に、太っているわけではないが・・・非常に富んだ体つきだ
 それなのに目は細く、ゲジマユで・・・見事なアンバランス・・・


 「・・・ちょっとゼラ、いい加減に滅茶苦茶な言葉使ってんじゃないわよ!!」

 「これはこれは・・・アーシー殿、まことに失礼つかまつっとんじぇす」

 「言っても無駄っくしょん!! こういうヤツっくしょ!! 幹部候補って奴はっくしん!!」

 「あ〜〜〜!! 耐えられない!! かかってこいや!!」


 アーシーが爆発寸前だ、しかも『かかってこいや』とは・・・幹部候補同士での私闘は御法度だ
 2人も面白そうに席を立った・・・明らかに好戦的な態度、少年のおろおろが止まらない・・・そしてまた誰か来た


 「・・・やれやれ、あのクズの所為で会議とはな」

 「えっと・・・幹部候補がひとり、『セイルス』様のお見えです!!」

 「あっら〜〜〜ん、セイルスじゃないの〜〜〜元気してたぁ〜〜〜?」


 先程の2人が一気に退いた、なんだその変貌ぶりは・・・これだから美形と女は・・・
 しかもこの2人は性格はかなり悪い、その代わりにもの凄い美形だ・・・変態同士気が合うのだろうか
 セイルスは軽くひざまずき、アーシーの手の甲にキスをした・・・こういうのが似合う男なのだ
 アーシーはフフッと怪しげに微笑んだ、すっかり機嫌が治ったようだ・・・ゼラとルシャクは呆れてものも言えない


 「・・・フム、4人も来ているっくしょん!! ・・・のか、珍しいなっくしょっい!!」

 「全くでんす、けふ(今日)は入りが良い。 幹部候補は気まぐれが多くてのう・・・」

 「あら、アタシはセイルスひとりいれば充分よ」

 「・・・それは嬉しい、今度お食事でも・・・」


 ・・・・・・もう勝手にやってろ、ゼラとルシャクはそんな心境であった・・・
 もうすぐ時間になろうとしていた・・・確かに今日は珍しく人が集まったようだ
 ・・・ひどい時には誰ひとり、会議に参加しなかった日もある・・・別に興味がない議題だったようだ
 ということは、今日の議題はなかなか興味がそそられるらしい・・・今日の『幹部候補会議』は・・・


 ・・・・・・また誰か来た、いっせいに皆が注目した・・・そして誰もが驚いた


 「俺はどこに座ればいい」

 「・・・・・・はっ、え・・・っとか、幹部候補がひとり、『ジン』様のお見えですっ!!」

 「・・・こいつは珍しいっくしょい!! 奴が来たぜっこっしょい!!」


 誰もが緊張してジンを見た、こんな場所には現れない・・・少なくとも今まではそうだった


 肩まである黒い髪は闇のよう、その黒眼は血に飢えた獣そのもの・・・
 歳はまだ20代にもいってないはずだが、実力は四大幹部にも匹敵すると言われている
 だが何故かまだ・・・幹部候補であり、幹部ではない・・・謎に満ちた男だ
 服装は灰色の純和風な着物、少しはだけた胸元に大きく無数の傷跡が見える
 一体彼は・・・今までに・・・どんな人生を送ったのだろうか


 ・・・・・・そして会議の時間が来た


 


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