〜能力者への道21・八人〜




 ・・・・・・能力者と一般トレーナーは決して相容れぬことが出来ない、バルーとの戦いで得た経験


 その一般トレーナーが幾ら強くとも、能力者にしか起こせない奇跡に等しいバトル・・・


 もう・・・一般トレーナーとは戦えない、その現実をどう受け止めるべきか・・・そしてともしび山が見えた


 ・・・一方、『The army of an ashes cross』のアジトの一室にて、『幹部候補会議』が開かれようとしていた


 変わり者が多い『幹部候補』、しかも時間帯は朝早く・・・普段なら3人以上いれば大入りと言われる会議に・・・・・・










 『ルシャク』


 『アーシー』


 『ゼラ』


 『セイルス』


 『ジン』




 
 「で、では・・・じ、時間になりましたので・・・会議を始めたいと思います」


 普段ならあり得ない人数、しかもジンまで来ている・・・少年の声がうわずった


 幹部候補同士の私闘が禁じられている理由は、ずばり『力の均衡』にある
 どの『幹部候補』も相当の実力が備わり、まともに戦えば相討ち・・・もしくはどちらかの死が待っているとも言われている
 幹部候補程の手駒は失いたくない、故に私闘は禁じられているというわけだ


 ・・・・・・だがそれはジンを除いての話だった、彼は強すぎる・・・他の誰もがそう思い、畏怖している
 おそらくジンと戦えるのは幹部クラス以上の者・・・ぐらいのものだろう、ずば抜けた存在というわけだ


 ただ彼は人嫌いの気があり、こういった会議に参加したことは一度も無い・・・・・・誰もが好奇の目を向ける程だ
 ・・・・・・故に少年が緊張し、怯えているのだ・・・彼の興味をそそる今日の議題は一体、何なのだろうか・・・


 「ヘイ!! ヘイ!! ヘイヘイヘイッ!! ヘッヘ〜〜〜イッ!!」


 ・・・・・・この声は・・・ジンを除いた皆がその声のする方向を一斉に見た、また1人変人が増えたようだ


 ・・・暗がりの中から指をパッチンパッチンと弾きながら、ノリノリで登場してきた男
 髪は金色、眼は青っぽく・・・アメリカ系の顔立ち、髪は短く・・・スポーツ刈りよりは長めと言ったところ
 服装は至ってラフな格好、灰色で柔らかいタイプのジーンズ生地の上下を着ていた・・・
 長い足を見せつけるように、足をのばしながら歩いてくる・・・・・・ちょっと鼻歌交じりでご機嫌なようだ


 そしてその男はタァンと軽く踏み込み・・・あざやかなバク宙をし、ジンを除いた皆の度肝を抜いた
 ・・・・・・そのまま皆のいる中央の机に頭一点で着地、その体勢でブレイクダンスを踊り出した


 「・・・ノリがシンジョー、ノリがシンジョー・・・人生楽しく元気にいこう!!」

 「・・・・・・莫迦が来たっくしょいやっ!!」


 クルクルと回転しながら円形の机の上を滑っていく、そしてアーシーの前で止まり・・・首の力だけで起き上がった
 ・・・・・・最後に相変わらず机の上で・・・ピッと決めポーズ、いつの間にか花を取ってアーシーに差しだした

 「相変わらずお美しい・・・今度お食事にでも・・・」

 「お断りよ、こんのナンパ莫迦が!!」

 「・・・フッ、そう言ってミーをじらそうなんて・・・控えめな方だ、いや大胆とでも・・・」

 「・・・・・・え〜〜〜とぉ、『幹部候補』がひとり、『マストラル』様がお見えです!
 ですから・・・あ、あの〜〜〜どこでもいいですから、早く着席してください・・・会議が始まりません〜〜〜っ!!」


 少年に泣きが入ってきた、マストラルは指をパッチンパッチンと鳴らしながら、ちゃっかりアーシーの横に座った
 思いっきり嫌そうな顔をするアーシー、その横でニコニコ幸せそうに笑うマストラルと黙りになったセイルス・・・
 ・・・・・・ますます雰囲気が怖くなった、この会議・・・・・・不安だ


 大体静かになってきたので、少年が始めようとしたら・・・・・・どこからともなく尺八の音色が・・・

 「・・・・・・『幹部候補』がひとり、『ネオ』様のお見えで・・・す」

 「・・・遅くなって申し訳ない、拙僧もまだ修行が足りないよう・・・」


 少年はもう逃げ出したい気分じゃなかろうか、声に元気がなくなってきた


 ・・・その姿はまさに『虚無僧』だった、深い編み笠とわらじ以外灰色の服という点を除けばだが
 尺八を吹きながらゆっくりと・・・机へ歩いていく、よく見れば琵琶まで背負っていた・・・


 「これで7人も出席でんすな・・・本当に珍すいなう・・・」

 「8人だ」

 ジンがスッと言った・・・・・・その声に迫力があり、自信に満ちあふれていた
 ・・・どこに潜んでいるのか、ジンが言うならば間違いはないだろう・・・・・・だがどこに・・・


 セイルスがチラリと少年の方を見た・・・・・・まさか・・・この気の弱い少年が・・・・・・


 そしてジン以外が注目するなかで、少年の周りに白と黒の入り混じった霧が生じた
 ・・・誰もが呆然と見ていると、スグに霧は晴れ・・・・・・そこには別人が立っていた


 「『幹部候補』がひとり、『サックス』のご登場〜、みんなぁ〜騙されたでしょぉ〜?」

 「今度はハゲオヤジかよ・・・最っ低な会議になりそうね!!」


 アーシーが言った通り、サックスはハゲた中年、しかもピエロの格好をしている・・・もちろん灰色の
 本人曰く『剃っている』と言うが・・・実のところ誰も信じていなかったりする、
 若々しい口調はまるで・・・幼児向けの番組のお兄さん風、人を小馬鹿にしているような感じだ
 身長はそう高くなく、小柄などこにでも居るような中年だ・・・それ自体が不気味でもあるのだが・・・





 ・・・・・・そして漸く会議が始まった、司会進行はサックスが執り行う





 「はぁ〜い皆さぁ〜ん、今日の議題はねぇ〜」

 「ふざけた口調はヤメな、ジンもいるんだ・・・死にたいのかい?」

 「とんでもないなぁ〜アーシー、おじさんまだ死にたくないしぃ〜・・・・・・わかったよぉ〜。
 今日の議題は元・幹部候補『ブレイド』についてだぁ、手元の資料を見て・・・その後セイルスから言って貰いましょ」


 皆が興味も無しに資料の束を投げ捨てた、資料にはブレイドに関するあらゆるデータが記載されているはずだが
 ・・・・・・仕舞いには燃やす奴まで出た、セイルスが面倒臭そうに立って言った


 「・・・・・・ブレイドはつい先日、任務失敗と隠していた別の任務失敗により『降格』性分を受けた。
 偶然か・・・何の因果かあのクズは私の下につき、それからスグに任務を与えたのだ・・・。
 そして現在、クズはクズらしく・・・行方知れずとなった・・・・・・」

 「任務っつーのはっくしょいっあ!! 何だっくしょんっあ!!」

 「・・・・・・『キリュウ・トウド』博士を迎えに行くと云うものだ」

 「例の『論文』絡みでやんたろすね・・・」
 

 皆がにやりと笑う・・・・・・仲間が行方知れずと云う話なのに、誰も心配そうな顔をしない


 「あ〜あのブレイドねぇ・・・イイ線いってたんだけどね、やけにノリが悪い男だったよ」

 「・・・おそらくは返り討ちであろう、能力修行を怠っていたのだろう・・・哀れな」

 「流石はあの博士っくしょい!! 理論と能力がわかってっくしょいあっと!!」

 「この件は終わりだ、次」


 ・・・・・・どうやら次の議題が、ジンの目当てらしい・・・皆も同様だった
 サックスがにやりと気味の悪い顔で・・・笑って言った

 「次は規律違反者のバルーについて・・・だね」

 「ブレイドが仕留め損なって、降格の原因になった連中を追ってたアレかい?」

 「ど〜も可愛い子猫ちゃんがいっぱいいるって云う、あのパーティか・・・直に会ってみたいな〜。
 ・・・・・・バルーって奴も女の子目当てか!!? 下っ端のクセしてミーを出し抜くつもりだったのかぁ〜〜〜!!」

 
 マストラルの発言は無視された


 「それでどうなった」

 「報告によれば、1の島『ほてりの道』にて返り討ちですね・・・」

 「下っ端だが・・・倒せるようになったのかくっしょちょいや!!」

 「・・・・・・早めに叩いておくべきってんどか、放っておくべきってんどかのう」

 「別にどうでもいいんじゃない? どうせその程度で終わるわよ・・・あの御方のシナリオは狂わないわ」


 ・・・・・・ルシャクのクシャミが個性化してきた、というか・・・あり得ないぐらいまでに
 下っ端だが倒せるまでになった・・・ある意味脅威的な速度で・・・・・・異常か必然か
 ・・・一応決議を取ってみた、結果は『興味はあるが、しばらく放っておく』で全員一致した
 なかなか見所のありそうな敵キャラ・・・だが、他の団員に倒しに行って貰う程ではないとの判断・・・
 これは・・・・・・いわゆるゲーム的な感覚だろう、Lvの低い敵など眼中にはないのだ
 

 「(・・・会いに行っちゃおうかなぁ〜〜〜? 待っててね、ミーの可愛い子猫ちゃん達♪)」

 「それで終わりか」

 「あとひとつ・・・ジーク様より会議に来た者から、これをお配りするようにと・・・」


 そして配られる謎の・・・鈍い銀色を放つ機械





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