〜能力者への道25・暴懐〜




 オニドリル軍団の襲撃の真の目的、それは・・・・・・ゴールド誘拐だった


 連係プレーはオトリ、実際はゴールドと皆を分断させる計算されたもの・・・


 そして敵の思惑通りにそれは動き、案の定ゴールドは大オニドリルに連れさらわれてしまう


 それを追うイエローとシショー、残されたレッド達とオニドリル軍団との決着


 ・・・本当に彼らを操るトレーナーは居ないのか、ゴールドを誘拐して何の意味があるのか


 ・・・・・・ところで皆さん、山頂へ行くこととか忘れてませんか・・・










 ひゅるるるる・・・と上空にいたオニドリルが地面に落下する、それをクリスが狙って捕獲した
 レッドが晴れた上空を見上げ残った敵が居ないか、確認している

 「これでおしまい・・・かな」

 「司令塔を失った今、俺達の敵じゃなかったな」
 

 ・・・・・・バトルシーンカットですか、決着とかで盛り上がるシーンじゃないんですか?
 山道には100体以上ものオニドリルが横たわっていた、もう復活もしないし仲間が増える様子もない
 連係プレーを失ったオニドリル軍団は確かにレッド達の敵ではなかったようだ、ブルーがオニドリル軍団の数を集計する


 「・・・えーと、そこらに横たわっているのは全部で127体、捕獲したのは12体ね」

 「普通に多いな、でも経験値は大分稼げたな」

 「早くイエローさん達を追いかけましょうよ」

 と、クリスが急かした・・・確かにのんびりとはしていられない
 そこへゴールドの相棒達がレッド達へ向かって走ってきた、かなり心配そうな顔をしている
 レッドがよしよしと頭を撫でてやる、それを後目にグリーンが言った


 「あの大オニドリル、おそらくコイツらの巣に向かっているんじゃないかと思うのだが・・・」

 「そうね、方向としては山頂方面・・・もうイエローとシショーの姿も見えないし、どうする?」

 「そんなの簡単だろ、案内してもらえばいいんじゃないか」


 レッドはそう言うとクリスから、先程捕まえたオニドリル入りのボールをひとつ受け取った
 皆は成る程と言った顔だ、捕獲したのは12体・・・数は充分すぎる程だろう
 

 「えーと、じゃあ1人ひとつずつで・・・ブルーさんは鳥ポケモンはもう平気なんですよね?」

 「ええ、まぁ・・・じゃ、この子借りるわね」

 「俺はいい、リザードンがいるからな」

 ブルーが受け取るとシルバーもクリスからさっとボールを取った、今まで以上に愛想がない・・・
 クリスも自分のを1体選んで取り、残りは自分のパソコンへ転送した

 「・・・ホント便利だな、その携帯転送・・・」

 「はい、今は研究所がないのでマサキさんの回線に繋げてあります・・・ただし一方通行ですけど」

 
 ・・・レッド達がオニドリル入りのボールに手をかけたが、中でがたがたと暴れている
 かなり・・・・・・嫌な予感がする、皆がボールからオニドリルを出した・・・


 『グェーッ!!!』

 「え・・・ちょっと何なのよ!?」


 出したオニドリルが構わず暴れ出したのだ、それこそ手が付けられない程に・・・ボールにさえ戻せない
 必死で逃げる3人、グリーンはこの状況を的確に冷静に判断していた


 「・・・今の状態は危険だな。
 ただでさえ凶暴なオニドリル、それも使命に近い何かを先程まで遂行しようとしていた連中だしな。
 そして怪我、周りに転がっている仲間・・・この状況を見て、暴れない方がおかしいというものだ
 さらにプラスすると・・・捕獲者はクリス、つまり『交換』して手に入れたポケモンだ。
 捕獲したてで交換したばかりのポケモンはスグには懐かない、トレーナーの常識だな」

 「冷静に分析してる場合かっ! アンタも男ならね、この状況見たらすぐにか弱い女の子を助けなさいよ!」

 「か弱いか?」

 「か弱いわよ!」


 手おいの獣程恐いものはないと言うが、今の彼らには見境がない・・・かといって手持ちポケモンを攻撃するわけにはいかない
 混乱して凶暴性を増したオニドリル達から必死に逃げ回り、そしてようやくボールへ戻すことに成功した
 ちなみにグリーンは何の手助けもしていない、ブルーがグリーンに文句を言いに歩み寄っていく途中で・・・


 ・・・・・・ようやく気がついたのだった、『3人』しか追い回されていなかったのに・・・
 オニドリルを受け取ったのはレッドとブルーとシルバー、そしてクリスだ・・・つまり『4人』なのだ
 常識的に考えれば『捕獲者』であるクリスが追い回されていないことになるが・・・・・・違った 

 「・・・みんな何しているんだよ、そんなんじゃ先に進めないだろ」

 「・・・・・・アンタこそ、なんで襲われないわけ?」

 「というか、俺の方が不思議だよ、そっちこそなんで襲われているんだ?
 コイツ、おとなしいじゃんか・・・なんか手荒く扱おうとしたんじゃないのか?」


 見ればレッドのオニドリルだけが、暴れずにただじっとしていた
 いや・・・それどころかレッドにすり寄っているではないか、皆はただ唖然としている


 ・・・・・・一体どうなっているんだろうか


 「う〜ん、ニックネームは捕獲者じゃないから無理かな・・・できれば正式にコイツ欲しいかも」

 「あ、良いですよ、まだいますから。 ニックネームならもう一度私と交換しましょう、何にしますか?」

 「え、いいの? んじゃ・・・・・・『オニ』で、『二』にアクセントな」


 ブルーとグリーンはただその様子を見ていた、何やら表情が険しい
 ・・・どうやら、同じ事を考え、また同じ結論に達したようだ





 ・・・・・・あれがレッドの『トレーナー能力』だとしたら・・・・・・





 「そんな能力ってあるの・・・?」

 「可能性は大いにある、一時期レッドに手持ちポケモンを総て預けたことがあった。
 その中に景品として手に入れたばかりの『ポリゴン』が居た、そしてレッドに懐いた。
 その後俺の元に帰ってきても懐き度は変わらなかった・・・今の状況と殆ど同じだろう?」

 「本人は気付いていないみたいだけど、でも能力者じゃないのにあり得るの?」

 「まだ能力として完全に『覚醒』していないんだろう、あとはあいつが気付けば良いんだ」


 ・・・グリーン達の思案なぞ知らずに、レッドは新しい仲間を歓迎していた
 ブルーがレッドに声をかけた、その『オニ』とクリスと一緒にこっちへ来た


 「なんだよ、早く先へ行こうぜ」

 「ねぇレッド、アンタのトレーナー能力って『ポケモンの懐き度』に関係する能力じゃない?」

 「・・・はぁ?」

 「心当たり、ない?」

 
 レッドは戸惑っている・・・それは当然だが、でも確かに心当たりはある・・・でも・・・
 




 ・・・・・・5分程経っても、ウンウンとレッドは考えこんでいる・・・そんな様子にブルーが段々イライラしてきたようだ
 ・・・そして7分42秒経過してから・・・ブルーがキレた


 「あ〜っ!! 男らしくない! しっかりしなさい、アンタの能力はそれで決定、想像しなさい!」

 「え、いや・・・だって間違えてたら・・・」

 「ごちゃごちゃ言わない、自信を持つのも能力者修行の内でしょ!!」


 ブルーの剣幕にレッドは観念し、目を瞑ってほんの少し想像してみることにした





 ・・・心当たりはある、あとはこれが能力だ、と強く自覚する・・・自信を持って・・・










 「・・・・・・ウソ、何なの、これ・・・」

 「予想外だな」

 
 ブルー達が騒がしい、そっとレッドが眼を開けてみて見る・・・・・・皆顔が引きつっている
 そしてジリジリと後ずさりまで・・・全くワケがわからないんですけど
 理由を尋ねようとしたら、先にブルーが言った


 「あ、アンタ・・・見えてないの?」

 「見えるって何が?」

 「自分の身体、見れば一発でわかるわよ・・・」


 ・・・・・・まさかツノとかキバが生えてきたんだろうか、おそるおそる自分の手を見てみると・・・


 「・・・・・・マジで?」

 「本人が驚いているなら、ドッキリとかでもなさそうだな」

 「綺麗って言うか、ちょっと不気味よね・・・」




 ・・・・・・俺の身体が・・・光ってる!!?





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