〜能力者への道28・墜落〜




 ゴールドを誘拐した、大オニドリルを追う、イエローとシショー・・・だが追いつけない


 その圧倒的な飛行能力から、シショーが『王オニドリル』と称する程だった


 ・・・ここでイエローの口から、何故自分が『追う人』に選ばれたのかを訊ねた


 実力ならレッドさんの方が上、追いかけっこならポケモン1速い『ウインディ』を持つクリスさんの方が上


 ・・・なのに、どうしてか・・・・・・シショーがイエローを選んだ理由は、彼女の『トレーナー能力』の『把握』を兼ねて行うためだと言う


 ・・・・・・つまり、飛行中の王オニドリルの『思考』を読み取って欲しいという、無茶苦茶なものだった


 シショーはイエローをムンズと掴み、空中へと運び出す・・・・・・イエローは抵抗したが、無駄だった


 ・・・このままでは追いつけないと、判断したシショーは・・・一応イエローに注意を言ってから・・・










 『「こうそくいどう」』


 ギュンッとシショーの飛行速度が上がっていく、そして少しずつ・・・王オニドリルに追いついていく
 ・・・・・・それにしても、『こうそくいどう』だなんて・・・注意しても無意味だと、思うのですが・・・


 「う〜〜〜わぁぁあああ・・・」

 『・・・もう少し、頑張ってくれ!』


 ・・・・・・凄いぞ、イエロー・・・・・・よく意識があるもんだ・・・絶叫してますが


 少しずつ、少しずつ・・・二人の距離が縮まっていく・・・・・・シショーがイエローの方をチラッと見た


 『(・・・あと一息ってとこだけど、僕はまだ速度を上げても平気・・・だけど、イエローの身は保たないだろう)』

 シショーがゆっくりと息を吐き、静かに・・・真っ正面を見据えた


 ・・・・・・賭けに出よう、今まで『観察』してわかったことに、賭けるしかない


 あの王オニドリル、確かに速いが・・・流石に人を1人運びながら、飛ぶのは大変らしい
 4分間、彼は飛び続けるが・・・その後、一瞬だけ、羽の筋肉の緊張をゆるめる
 ・・・その間およそ、3秒・・・その時だけ、彼の飛行速度はわずかに落ちる・・・


 つまり・・・その瞬間、その瞬間に、もう一度だけ「こうそくいどう」を・・・3秒間だけ!


 それ以上はイエローを支える僕の足、イエローの身体が保たないだろうし・・・この作戦は一度きりだ
 彼の速度が落ちた瞬間に、こちらが加速・・・3秒間で、この間合いを詰める!
 

 この作戦は、まだ彼が・・・僕達をなめきっているから、油断しているから・・・追いつけないと思っているから、可能な作戦だ
 もしも、この3秒間で追いつけず、中途半端に間合いを詰めたら・・・相手は警戒して、さらに速度を上げてしまうだろう
 普通に飛んでは追いつけない、『こうそくいどう』があって、僕は追いつけるんだ・・・
 僕が、追いつけるだけの力を持っていると、相手に悟られてはいけない・・・何故なら・・・





 ・・・・・・オニドリルは『こうそくいどう』を、レヴェルアップで覚えられるのだから
 

 この作戦を、イエローに伝えた・・・・・・顔は見えないが、引きつっているに違いない
 シショーが前の王オニドリルをじっと・・・緊張しながら観察する、羽の動きを・・・一挙一動を・・・










 そして、その瞬間は唐突に、短い3秒間が来た!


 『(「こうそくいどう」)』





 ・・・・・・本当に一瞬だった





 イエローが怖くて、まばたきを無意識にやってしまい・・・次に眼を開けた時には・・・


 『イエロー、早く掴め!』


 イエローがハッとなって見ると、目の前に・・・あの王オニドリルの身体があった
 ・・・・・・本当に、あれだけの遅れを・・・わずか3秒の内にゼロにしたんだ
 

 そして次の瞬間、王オニドリルの身体が急に遠ざかり始めた・・・掴むのが遅かった、気付かれたんだ!
 イエローは無意識の内に、王オニドリルの身体ではなく尾羽をギュッと掴んだ・・・小さく怒りの声が聞こえた

 『グエーッ!!』

 「・・・離しません! 絶対に!」
 

 イエローがしっかりとその尾羽を掴むが、シショーの飛行速度が段々と落ちてきた・・・・・・
 ・・・違う、相手が速くなってきたんだ、きっと・・・「こうそくいどう」を使ったんだ・・・


 そうなると、必然的に速度の差が生まれ・・・シショーが王オニドリルから離れていってしまう
 しかし、イエローは王オニドリルから離れまいとする





 結果、シショーはイエローから足を不意に離してしまい、バランスを失って墜落してしまったのだった


 「!!! シ、シショー!!」

 『僕は平気だ、だから・・・』

 『グェーッ!!』


 王オニドリルが尾羽に捕まったイエローを振り落としにかかった、急上昇や急降下・・・回転までして・・・
 それでも必死にイエローは離さないように・・・頑張っているが、このままでは思考を読み取るどころではない





 ・・・・・・そして、イエローが掴んで離さない尾羽が・・・ブチッと抜けた


 「・・・・・・あ」


 墜落決定


 必死にもがいて、王オニドリルに再び掴もうとするが、その手は殆ど宙をかすっただけだった
 ・・・・・・だが、一度だけ、彼に触れることができたのか・・・ほんの一瞬だけ、『思考』を読み取ることができた・・・


 「・・・良かったぁ・・・・・・シショーの努力、無駄にならなくて」


 ちっとも、良くないですよ・・・この状況・・・・・・


 イエローが真っ逆様に落ちていくのを、シショーが見ると、猛スピードでそれから救い出そうとする
 ・・・・・・が、それは追いつかなかった、翼を酷使しすぎたせいか・・・・・・そのまま、イエローは・・・





 ・・・ダダダッと・・・猛スピードで走る何か・・・・・・そして見事に、ドドすけがイエローの身体を受け止めた!
 これにはイエローも驚いた、あれだけのスピードに追いつけるなんて・・・・・・だけど・・・


 「・・・ドドすけ、ありがとう」

 『どーっ!』

 『イエロー、無事か!?』

 「・・・あ、シショーこそ、落ちましたけど、平気そうですね?」

 『こっちはいいんだ、だけど・・・あれだけ無茶な作戦をやらせてしまったんだ。 何かあったら・・・』


 シショーがうなだれる、やはり無理を承知でやっていたのだ・・・・・・まぁ、無事で何よりだと自分で思う
 そんなシショーに、イエローが明るく言った


 「ねぇシショー、ボク・・・もう絶対・・・二度とジェットコースターに乗りたくありません」

 『・・・・・・だよねぇ、本当にゴメン。 それより・・・・・・足、平気なのかい?』

 「足・・・ですか?」


 ・・・別にイエローの足は平気のようだし、他の怪我らしい怪我は・・・背中が少し痛い程度だし?
 しかし、シショーはイエローのことを言っているわけではなさそうだ


 そして、何気なく、シショーの目線の先を・・・・・・ドドすけの足を見てみた・・・・・・


 「!!? ドドすけ、それ・・・!!?」


 ボロボロだった、イエローは急いで掌をかざし、ドドすけの両足を癒し始めた
 そして同時に、何があったのかも・・・・・・完全に理解した


 ドドすけは、上にイエローがいなくなり、制限がなくなった・・・つまり全力疾走をしたのだ
 ・・・『ドードリオ』系には慣れない悪路、山道を・・・足がずたずたになろうが、ボロボロになろうが・・・
 

 ・・・全てはイエローのために、何があろうとも、すぐに対処できるように・・・おいていかれないように・・・


 そして、その頑張りでイエローは助かったのだ・・・イエローは涙声になっていた


 「・・・ありがとう、本当にありがとうね・・・ドドすけ」

 『どー』





 ・・・・・・ドドすけの治療が終わり、読み取った思考について、シショーに話そうとした時だった
 ・・・下から、声が聞こえる・・・・・・そう、彼らの声が・・・


 「・・・あれ、そうじゃない? ・・・うん、そうよ!」

 「ホントだ。 お〜〜〜い、イエロー、シ〜ショォ〜!!」

 「・・・みんな、無事だったんですね!」


 オニドリルに乗ったレッドを先頭に皆が飛んでくる、イエローは手を振って声に応えた


 ・・・無事、皆との合流に成功したようだ





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