〜能力者への道29・巣谷〜




 イエローとシショーは『こうそくいどう』で王オニドリルを追うが、相手は手強く・・・なかなか追いつけなかった


 そんな状況を脱するべく、シショーは『賭け』に出た


 王オニドリルが一瞬だけ、翼を休める・・・その瞬間に更に『こうそくいどう』をして、一気に間合いを詰めるというものだった


 ただしこの作戦は一度きりで、次はない・・・これ以上速度を上げると、イエローの身が保たないからだ


 ・・・・・・そして作戦決行、見事に王オニドリルに追いつくことができたが・・・一瞬のゆるみで、身体を掴み損ねてしまう


 イエローの頑張りで尾羽を掴み、必死で離れまいとするが・・・相手はイエローを振り落とした


 その一瞬で、一瞬だけ思考は読み取れたが・・・墜落するイエロー、そしてそれを助けたドドすけ


 その後レッド達もイエローに追いついたのだった・・・・・・それにしても、ゴールドは生きているんだろうか・・・










 「・・・うわぁ、レッドさん、『能力者』になったんですか!?」

 「そう、なんか『ポケモンの懐き度に関係する』ものらしいんだけど・・・」

 『(・・・最初はレッドか、ちょっと予測がはずれたな)』

 イエローはレッドが能力者に慣れたことに、素直に感心して声を上げた
 それが恥ずかしいのか、レッドは頭をぽりぽりとかいた・・・
 シショーも話しに入り、色々と3人で話していた時、ブルーが口を挟んだ
 

 「ちょっと、シショー・・・能力者になる際の『発光現象』のこと、言ってなかったでしょう!」

 「あ、そうそう・・・おかげで、こっちは何事かと大騒ぎしたんだぜ?」

 『へ? 発光?』


 ・・・妙な声だった、シショーの声はまるで・・・何も知らないかのようだった
 その声の違いに気付いたのか、グリーンも話に入ってきた


 「・・・知らないのか?」

 『・・・・・・うん、聞いたことがない。
 そもそも、能力者になったかどうかを判断する方法は、「他人と交換」して確かめるのが普通なんだ。
 わかりやすいし、2人以上いればいつでもできるからね・・・発光現象なんて、それこそ初耳だよ』


 ・・・・・・シショーにも知らないことはある、それは当たり前のことだ
 じゃあ、レッドの身に起きた発光現象は・・・・・・一体何だったのだろうか?


 ・・・ともかく、そのことは一端、後回しにしなければいけない
 何故なら・・・ゴールドを完全に見失ってしまったからだ


 とりあえず、イエローはシショーと追いかけている時の話をした
 その時、色々驚きの声があがったのは、当然と言えよう


 「・・・アンタ、良く生きてたわね」

 「でももの凄く恐かったですよ、もの凄く・・・」

 「・・・・・・イエローって、結構タフなんだな」

 『・・・そうだね』

 「それより・・・ゴールドは無事なんでしょうか、少なくとも・・・目は回していると思うんですけど」


 ・・・・・・確かに、イエローを振り落とす時に、王オニドリルは大分無茶な飛び方をした
 ゴールドは・・・・・・その存在を忘れられていたに等しい、哀れ・・・

 「それより、何を、王オニドリルから読み取れたんだ?」

 
 ・・・・・・グリーン、『それより』って・・・『それ』扱いって・・・


 「ええと、一瞬でしたし、完全には読み取れませんでした。
 一応、ゴールドさんは食べられることは無いようです、むしろ・・・歓迎していたような」

 「「「「『歓迎?????』」」」」

 「はい、ええと・・・断片的に、読み取ったんですけど。
 『・・・コイツ・・・・・・サエ、・・・レバ・・・・・・ハ、・・・デキ・・・。 ツレテイカネバ・・・ワレラガ・・・ヘ・・・』って」

 「・・・・・・良くわかんないわね、何なのかしら?」


 ブルーがうーんと、考え出した・・・だが確かに、断片的とは言え・・・『食用目的』ではなさそうだ
 では、一体何のために・・・ゴールドを連れ出したのか?
 ・・・『サエ』・・・・・・『ゴールドさえ、いれば』・・・とでも、入るのだろうか
 では、ゴールドが居て、何が起こるのか・・・・・・まさか生け贄とか?


 ・・・・・・恐い考えになってしまった、ともかく・・・早めに助け出すに、こしたことはないようだ


 『イエロー、彼らの巣の位置は・・・読み取れたのかい?』

 「あ、はい。 それはキチンと読み取れました。 この先の山頂付近、谷の合間だそうです・・・」

 「・・・近いな、急ごう」


 目指すべき山頂まで、あと少し・・・・・・日も傾きだした、急がないと・・・





 ・・・レッド達は再び、山道を歩きだした


 イエローの『トレーナー能力』で、『オニ』の思考を読み取り、完全に巣の位置を把握することができた
 ただその位置が厄介で、下手に飛ぶと見落とす可能性があるらしい・・・まさに『隠れ巣』なのだ
 仕方なしに・・・もう山頂まで、そう距離もないので歩くことになったのだった
 オニドリル軍団とのバトルや、ジェットコースター以上の恐怖やなにやらで、皆はへとへとだったが、途中のお喋りは楽しかった


 「・・・イエロー、その羽って・・・?」

 レッドがイエローのリュックサックから、大きくはみ出た物体を指して、言った


 「あ、そうです、これ・・・あの王オニドリルの『尾羽』です」

 「大きいわね・・・普通なら40cmぐらいでしょ? これは1m近いじゃない」
 
 「・・・これだけでも、どれだけ元が大きいか、予測がつくな。
 この尾羽を見たら、じいちゃんが喜びそうだ」





 ・・・・・・歩くこと30分足らず、レッド達は岩の壁にぶつかった
 この岩はポケモンの技『かいりき』で動かせるもので、この先に・・・何かが居るのだ
 しかし、今はそれどころではない・・・『オニ』によるとこの近くの谷間に、巣があるのだという


 「・・・長かったわね、此処まで来るのに」

 「そうだな・・・巣はこの下か?」


 レッドが切り立った・・・深い谷底を見下ろした、ビュウッと強い風が顔に当たった
 ・・・・・・成る程、確かにこんな所に降りてみようと考えるヤツは、そうはいまい
 谷底は見えず、鳥ポケモンを使って降りるのも、ためらうような・・・ある種の恐怖感があった


 「さて、誰が降りる?」

 グリーンが事無げに言った、そして皆がお互いの顔を見合わせた

 「・・・ア、アタシは嫌よ!!? こんな危ない所、降りるなんて!」

 「ちょ、ブルー、ゴールドが心配じゃないのか!」

 「そうだけど・・・ならレッド、アンタが降りなさい」

 「俺!!? グ、グリーンはどうなんだよ」

 「俺は構わんが・・・1人では何かあった時、対処できない。
 ・・・俺以外だと、他には・・・シショー、ついてこれるか?」

 『いいよ、あと・・・もう1人ぐらい、選んでおこうか』





 ・・・・・・こうして、上で『待機組』、下で『調査組』に分かれることになった


 上で『待機組』・・・レッド、ブルー、イエロー


 下で『調査組』・・・グリーン、シショー、クリス、シルバー

 
 調査組は一通りの注意事項を述べてから、グリーンはリザードンを出してクリスと相乗り
 シルバーはヤミカラスを出した・・・シショーは先程の墜落の後遺症も無いようで、降りられる
 ・・・この谷は、ある程度の大型か、レヴェルが高いの鳥ポケモンでなければ、降りることができない


 「・・・じゃあ、後は頼んだぞ」

 「「「「いってらっしゃ〜い」」」」


 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・


 ええと・・・・・・1人、多いですよ?


 待機組は3人のハズ・・・・・・皆が一斉に、余計な声の主の方向を見た





 「・・・んで、グリーンさん達は、これからどこ行くんッスか?」


 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・


 全員が、一斉に叫んだ


 「「「「「「『ゴッ、ゴォ〜ルドォォッッ!!!!!!!???????』」」」」」」





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