〜能力者への道31・炎鳥〜




 ・・・ゴールドの帰還、それはある意味皆に衝撃を与えた


 そして語られる、王オニドリルに連れさらわれた後のこと・・・


 崖に面して出来た謎の光る洞窟、壁には彫刻が施されていたという


 オニドリル達が住処にした理由、謎の隠し扉にその奥の大部屋


 全てが不可解な・・・夢のような話だった、そしてゴールドはそこからタマゴを持ち帰ってきた


 皆が其方に興味を示している間に、グリーンとゴールドは何やら難しい表情・・・


 ・・・超古代文明的遺跡、謎の洞窟は一体何だったんだろうか・・・その答えを知る術は今はまだ無い


 そして1の島の最後の目的、ともしび山山頂はもう目の前である










 『結論から言う、山頂にいるのは伝説の鳥ポケモン「ファイヤー」だ』


 シショーの言葉に皆がゴクリとつばを飲み込む、ようやく・・・此処まで来たんだ


 ・・・色々なことがあった、昨日『ほてりの道』にて・・・バルーとの戦い、ともしび温泉・・・
 朝、パワーアンクルの配布、一般トレーナーとの諍い
 『ともしび山』にて・・・長年の宿敵組織R団の姿を見たこと、オニドリル軍団の襲来・・・ゴールド誘拐
 レッドの能力者覚醒、ゴールドの帰還・・・・・・本当に長い半日だった


 ・・・そしてそれらは、今のため、山頂を目指している間に起きた出来事に過ぎない


 全ては今のため、この先にいるのは・・・・・・奴らと戦うための重大な戦力・・・伝説のポケモンが居る!


 シショーの言葉を疑問に思い、レッドが口に出した

 
 「なんで、『ファイヤー』なんだ?」

 『確率的、消去法的に言えば、そうなるんだ。
 あれだけ離れた所からでも目撃でき、噴火かとも思えた炎。 間違いなくいるのは、炎系伝説ポケモン。
 先ず「エンテイ」は奴らに捕獲されてしまったからね、残るは「ファイヤー」と「ホウオウ」。
 ・・・「ホウオウ」はまず、こんな山の山頂には居ない。 彼らが住むのはもっと未開で神聖な地だからね。
 此処は開発されすぎている・・・・・・残るはファイヤーのみと、いうわけだ』

 シショーがそこまで言うと、チラリとグリーンを見た
 そうしてからグリーンがシショーの言いたいことを代弁するかのように、言った


 「そして、その『ファイヤー捕獲メンバー』として、山頂に行くのは・・・」


 グリーンが立ち上がり、皆の中から次々にメンバーを指名していく


 「ゴールド、イエロー、クリス。 この3人で行って貰う」

 「「「!!!!!!???」」」

 『皆も知っての通り、伝説の鳥ポケモンは、『一度出会った者は二度と出会えず、捕獲もされない』という性質を持っている。
 この中でまだファイヤーに出会ったことのない人は、この3人以外いないんだ』

 「あ、シショーはどうなんッスか?」


 ゴールドの問いに、シショーがうなずいて答えた


 『僕は彼らに出会ったことはないが、ゴールド達が山頂へ行っている間に、別のことをしようと思っているんだ』

 「なんッスか?」

 『・・・ゴールドの行った、謎の洞窟の調査にさ。 僕の他にもグリーンとシルバーも同行する』

 「? じゃあレッド先輩とブルーさんは何もしないで、此処で待機ッスか?」

 「いーえ、アタシ達にも役目はあるのよ。 ちょっとゴールド、アンタのポケギアちょっと貸しなさい」


 ・・・ゴールドは「変に改造しないでくださいよ」と言って、ブルーにポケギアを渡した
 普通は『壊さないでくださいよ』などだが・・・・・・実際に、何かされたことでもあるんだろうか?
 ブルーはちょっと不服そな顔をし、ゴールドのポケギアにヒモをくくりつけ、ポケギアに付いている妙なダイヤルを回した
 それからボタン操作し、電話登録の中から・・・自分の番号を選んでプッシュした
 すると当然、ブルーのポケギアが鳴りだした・・・ブルーは通話ボタンを押した
 通話状態のまま・・・ヒモ付きポケギアをゴールドの首にかけた


 「・・・・・・あのぅ、これが何か?」

 「通話状態は保っていていてね、それが此処にいるアタシ達への『連絡手段』になるんだから。
 いい? アンタ達が戦っている間、色々なトラブルが起こるに違いないわ。
 そう言った時、すぐにアドヴァイスできるように、戦況がわかるようにするためのものなの。
 常に通話状態にしておくのは、いちいちかけるのも面倒だろうし、相手は伝説のポケモンだからそんな暇はないと思うのよ。
 アドヴァイザーは元『戦う者』のレッドと、ファイヤー捕獲経験のあるアタシという豪華メンバーよ」

 「へぇ・・・あ、でもこんな状態で、会話なんか出来るんッスか?」

 「ええ、ポケギアのダイヤルを回して、感度を最大まで上げたから、平気だと思うわ。
 あとは長期戦になると、バッテリーが心配なんだけど・・・見たトコあと3時間は楽勝ね」


 つまり・・・リミットは3時間という事だ、それ以降は自分達の力でファイヤーに挑まなければならないのだ
 ためしにゴールドが姿勢を真っ直ぐにして立ち、『アー、アー』と言ってみる
 ブルーがにやりとして、自分のポケギアをゴールドに突き出す・・・確かに『アー、アー』と聞こえる


 ・・・・・・でも・・・気になることが・・・


 「なぁに?」

 「別に、これなら・・・ブルーさんのポケギアから、俺のポケギアにかけても・・・同じだと思うんですけど・・・?」

 確かに・・・・・・ブルーが「チッチッチ、甘いわね」・・・と、指を振りながら言った


 「・・・決まっているでしょうが! 電話料金はかけた側にその料金請求が行くのよ!


 ・・・・・・え、ええ〜〜〜〜〜っ!!?


 う〜ん、たかがそれだけのために・・・だが、しかし・・・・・・なんにせよ心強い味方だ、そう3人は思った


 ・・・そういえば、その・・・アドヴァイザーであるレッドの姿がない
 3人がキョロキョロと辺りを見回すと、ちょうどレッドは3人の後ろに立っていた
 何をしていたのか、と訊ねると・・・ムスッとした顔で、言った


 「山頂までの道を、作ってたんだよ。 山頂へは『かいりき』で、岩を動かして道を作んなきゃいけないらしいから。
 ・・・・・・そこまではいいんだけどさ、なしてそれを俺1人でやらなきゃいけないわけ?」


 ・・・成る程、それは確かに・・・・・・姿が見えなかったのはそのせい?
 でもいつから、いなかったのかもさっぱりわからない。 ただ人知れず黙々と作業をやっていたに違いない
 ・・・・・・まぁ大方指示をしたのはブルーで、何故か誰も逆らえないのだから仕方もないか


 そんなことを気にもせずに・・・そうそうと、ブルーがクリスに今、後どのぐらいボールが残っているのかを訊ねた
 クリスのを合わせ、皆が持っているボールをかき集め、その数を集計してみた
 ・・・残存ボール数は、以下の通り


 モンスターボール 23個

 スーパーボール 10個

 スピードボール 5個

 ラブラブボール 2個

 ヘビーボール 6個

 フレンドボール 4個

 レベルボール 2個

 ムーンボール 1個

 ルアーボール 3個


 ・・・計、56個


 


 「・・・いくらか、頼りないわね。 捕獲率がやや高いスーパーボールがあるのはありがたいけど。
 っと・・・これはジムリーダーズへの協会からの支給品で・・・グリーンのおかげか」

 「『ほてりの道』や、さっきのオニドリル軍団にも結構使いましたから・・・・・・すみません」

 「いいのよ。 まぁせめて・・・『ハイパーボール』のひとつやふたつ、欲しかったわね」


 ブルーが残念そうに呟くが、無いものは仕方がない・・・それらのボールは全てクリスに預けた





 これで準備は整った、3人がとりあえずの身支度の確認をして・・・山頂までの残り500mを歩いていった・・・






 『・・・「癒し」のイエローに、「捕獲」のクリス、そしてバトルでは根性をみせるゴールドか。
 偶然とはいえ、ファイヤー捕獲にはなかなか理想的なメンバーになったね』

 「おい、俺達もそろそろ行くぞ」


 グリーンが再びリザードンを出した、シルバーは既に待機済みで・・・シショーは二つ返事で応えた
 無事(?)見送りも終えたことだし、3人は風が吹きすさぶ谷へと歩み寄った


 『じゃあ、あの3人のことは、よろしく頼んだよ』

 「おう、そっちも頑張れよ」


 そして8人は3チームに分かれ・・・それぞれの行動に移しだした・・・・・・










 その時だった、ブルーのポケギアからゴールドのカン高い声が響き渡ったのは・・・!


 皆の動きが止まり、そのポケギアに注目した・・・レッドがブルーのポケギアに叫んだ


 「おい、ゴールド! 何があった、ファイヤーはどうした!」

 「あ、ああ・・・・・・と、とにかく! こっちに来て下さい、シショー達もまだいるんなら、お願いです!」


 ・・・・・・何があったのか、さっぱりわからない


 今・・・ファイヤーに出会ったことがある俺達が行けば、それこそファイヤー捕獲は台無しになってしまうのに


 皆は顔を見合わせ、誰もがそう思ったに違いない・・・・・・だけど俺達は・・・





 ・・・ファイヤー捕獲なんかよりも、ずっとずっと・・・山頂へ向かったあの3人の方が大切だった


 俺達は、ゴールド達の居る山頂へと駆け出していった





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