〜能力者への道35・灰島〜
レッド達はサニーゴの集合体、『島もどき』で一命を取り留めた
イエローの頭痛、不思議な夢
その頭痛は薬を飲んでも治らない、熱はないから風邪ではなさそうだ
そこでシショーは推測した、これは・・・『「共鳴」なんじゃないか』と
イエローのトレーナー能力『トキワの癒し』と対になる能力者・・・
この先にある『ちー島』に居る可能性が高い、そして一行はその島へとたどり着いた
何もかもが灰色に染まり、誰もが避けて通る島・・・『灰色の島』に・・・
「・・・不気味、としか言いようがないな」
グリーンがぼそりと言った、確かに、そうとしかいいようがない
此処『ちー島』の海域には常に、出身不明の『灰』が降り続ける
海域に入った途端、『灰の洗礼』を受けてしまった・・・要は、身体が、服が灰まみれになってしまったのだ
「全く、長居はしたくないわね。 服が汚れちゃうわよ・・・ケホッケホッ!」
『でも、それだけじゃない。 長くいれば、灰で肺をやられてしまうよ』
「シャレッスか?」
『・・・・・・』
「シショーの言う通りだ、ブルー、なんか・・・『マスク』みたいなの、持ってないか?」
レッドがそう言うと、ブルーがリュックサックの中から人数分のマスクを取りだした
前回に引き続き・・・ブルーは救急箱を持っている、これはニシキからの餞別でもらったものだった
配られたマスクを装着すると、幾分か呼吸が楽になった・・・全く、とんでもない島だ
「・・・・・・ああ、そうか。 暖流がここを通ってんなら、灰も流れる。
俺が朝、うがいした海水がジャリジャリしていたのは、そのせいかぁ・・・」
『・・・ここら辺の海水でうがいしたの?』
「知ってたら、やりませんって」
ゴールドが眉をひそめ、苦笑いしながら言った
しかし・・・確かに、この灰は厄介だ
降り続ける灰で、海はどろどろに濁り、本当にポケモンが住んでいるのかと疑いたくなる
それに『ちー島』、灰一色で・・・これから・・・もうすぐ上陸するのかと思うと、嫌になる
・・・・・・そして、イエローの対になる能力者の存在
・・・やれやれ、今回もまた、楽な話じゃなさそうだ・・・
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
『ちー島』、第2エリア『森林地帯』
「・・・奴は居たか?」
「いや、この付近には居ないようだ・・・」
灰色の島に灰色の服を着た兵士達、その人数は10人を超えた
この島はただでさえ広い上に、この灰が・・・視界をさえぎる、ゴーグルを付けても無駄だった
辺りに散開していた者達も集まり、各自が見つけた手がかりを伝え合った
「・・・まずいぜ、この森。 以前来た時より、複雑に入り組んでやがるぜ。
このままじゃ、先へ進むことが出来やしねぇぜ・・・」
「ふん、『いあいぎり』をすれば良い話だ。 『カモネギ』!」
男が『いあいぎり』の指示を出した、カモネギが近くの木を切り倒した
切れ味も抜群、そう切るのは難しくはなさそうだ
「こうやって進めば、道なぞ関係ない。 違うか?」
「・・・チッ、それは俺もやったぜ。 だがな、俺は迷路を普通に進むことを推したいぜ」
「何故だ?」
「ぜ」が必ず語尾に入る男が、懐からコンパスを取り出した
・・・・・・磁針がクルクルを回っている、止まることを知らぬように・・・
「わかっただろう、この森は『磁場』なんだぜ・・・下手に進めば、迷い死にだぜ」
「・・・・・・だが、この『森の迷路』に出口はあるのか?」
「そんなことより、これ、見ろよ」
また別の男が話に割り込んできた、その手には『とけないこおり』があった
・・・選ばれた存在、と名乗るだけのことはある。
そのアイテムが何を意味しているのか、一目で理解した
「・・・面白い。 この島に『フリーザー』が居る、と・・・」
お互いが、はぐれぬように装備している発信器と受信機を見た
・・・・・・磁場の所為か、うまく作動しない・・・先程までは何の影響もなかったのに・・・
こうなっては仕方ない・・・全員で行動する以外、無いだろう
「指令通り、奴を始末し・・・『フリーザー』を我らの手で捕獲する!
異存はあるまいな、では行くぞ・・・何よりも此処の野生ポケモンには気をつけろ・・・」
この集団のリーダー格と思われる男が、言った
この先に何があるのか、そして・・・彼らが畏れる、この島の野生ポケモンとはいったい・・・?
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
レッド一行、『ちー島』到着・・・第1エリア『海岸地帯』
「・・・うわっ、海岸まで灰色だよ・・・」
ゴールドが驚きの声を上げた、灰が降り積もって下の砂地が見えない程だ
そして一歩、歩くごとに足跡が付く
・・・ゴールドはそれが面白いのか、さっきから走り回っている
『やれやれ・・・元気だねぇ』
「ああ、そうだ。 シショー、訊きたいことがあんだけど・・・」
レッドがシショーに「さっきの『共鳴』についてなんだけど」とつけ加えた
周りの皆は、『ちー島』の海岸を歩き、地理確認をしている・・・
今現在、この辺りにいるはレッドとシショーだけだ
「『共鳴』って、頭が痛くなるだけか?」
『いや・・・色々あるらしいよ、でも「パターン」はあるらしい。
ひとつはもっともポピュラーな「頭痛」、イエローがそうだね。
あとは・・・その能力に関連深い身体の一部が、うずき出したり、激痛がしたりするらしい』
「関連深い・・・って?」
『ホラ、例えば・・・「声に出したポケモンへの指示が必ず伝わる」っていう能力があったとするだろ?
その能力に関連深い身体の一部、この能力の場合は「のど」だね。
「共鳴」して、激痛が走るとすれば・・・この部位になる、というわけだ」
「・・・成る程、他には無いの?」
レッドの更なる質問に、シショーがう〜んと考えこんだ
そして『あとは「頭痛」と「身体の一部に激痛」が同時に起こるぐらいだと、思うよ』と言った
「・・・そっか、ありがと。 俺もここら辺、『フリーザー』の手がかり捜しに行って来るよ」
レッドが駆け出していこうとするのを、シショーが引き留めた
「何?」と訊くと
『・・・昨夜のことさ、レッドのあの一言がなければ、「島もどき」は見つからなかった。
皆を死の危険にさらして・・・僕の責任だ、本当に有り難う』
レッドが頭をぽりぽりとかいて、「そんな、たまたまだよ。 大げさな、それに俺達は簡単に死なないし」と笑って言った
「・・・んじゃ、改めて、行って来るな」
『うん、30分後には此処に、戻ってきてね』
レッドが「わかってる」と言って、灰砂地を駆け出していった
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
・・・じゃあ、あの・・・昨夜聞こえた声は、いったい何だったんだろうか?
『共鳴』ではない、ではあの声の正体は・・・・・・意識がもうろうとしてたし、幻聴だよな
・・・・・・でも、なんでだろう・・・・・・
・・・あの声、俺は・・・何処かで聞いたことがある気がするんだ
・・・・・・それに・・・今日の俺、なんか変だ・・・イエローに対して、もの凄く甘い気がする
これから激戦が始まる、いや・・・もう始まっているんだ
だから、多少厳しくして、心身を鍛えた方が良い・・・それはわかっているハズだ
・・・なのに、今日に限って俺・・・・・・いったい、どうしちまったんだ?
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
そして、レッドの苦悩は・・・これだけでは、すまされなかった
30分はあっという間に、経過し、皆は上陸地点に戻ってきた
・・・・・・ただ1人、戻ってこなかった
「・・・・・・イエローが、行方不明だって・・・?」
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