〜能力者への道37・霊霧〜




 イエローが行方不明になった


 対の者の意識を無意識に感じ、取り込んでしまい・・・その者の元へと向かってしまう


 ・・・・・・その姿を見つけた、セイルス直属の兵士達


 彼らは何か思い当たることがあるのか、イエローの後をつけ始める


 レッド一行も森の中へはいるが、この森は・・・レヴェルの高い『ゴーストポケモン』の住処だった


 それだけではない、コンパスも利かぬ磁場、樹々が生い茂った天然の迷路・・・


 イエローは、兵士達は、レッド一行は無事に森を抜けることが出来るのだろうか?


 ・・・・・・そして、『中央地帯』に待つモノは?


 その行く末を見守るかのように、『岩場地帯』より飛び立ったのは・・・・・・『フリーザー』・・・・・・










 「・・・全員いるか?」

 「うぃッス!」


 レッドを先頭に『森林地帯』へと入った皆、グリーンが一応点呼を取った
 ・・・・・・とりあえず、今は全員いるようだ

 
 「・・・森の中は、そう灰が降ってこないのね」

 「そうですね、マスクなんかいらないぐらい・・・」


 と、クリスがマスクを外そうとするのを、シショーが止めた
 「何でですか?」と訊くと、代わりにグリーンが答えた


 「いいか、『ゴーストポケモン』達が対象物に幻覚を見せようとする時に、使われる手段は2つある。
 ひとつめは、『技による幻覚』。 『さいみんじゅつ』や『ゆめくい』などが代表例だ。
 もうひとつは・・・『エネルギーや何かを媒体とした攻撃ではない攻撃』だ」

 「・・・はぁ、何ですか? それ・・・」

 「『ゴース』の周りにある『霧』が良い例だ。 もっともアレは『霧状をした何か』だが。
 ・・・ああいう霧自体が、幻覚を見せたり、対象物を操る力を持っている。
 その霧を吸わせることで、それらの症状を引き起こすことが出来るんだ。
 ・・・・・・それは技とは言えない、『氷ポケモンの自己耐熱システム』に近いモノだ。
 故にマスクはつけておいた方が良い、余計なモノを吸わないようにな・・・・・・」
 
 『そうだね。 そういうのに気をつけて、ゆっくりと前へ進もう』

 「・・・そうね。 ついでに無駄かもしれないけど、10歩歩くごとに近くの樹に『印』付けましょ」

 早速ブルーがカリカリと、手近な樹にチョークで印を付け始めた
 ・・・その他の皆は、それぞれが各方向を確認し合うことになった
 すなわち、何処から攻撃を受けてもいいようにと、死角封じの為にだった


 ・・・・・・灰色の森を、進んでいく・・・





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 この場所に向かってくる気配が・・・・・・1人、2人・・・・・・ヨルノズクを含めて『20人』


 ・・・俺に『敵対心』を持っている者は、10人か・・・


 残りからはその気配を感じない・・・・・・そしてその中に、いるのか・・・?





 ・・・・・・俺の『対の者』が





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・










 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 おかしいなぁ・・・変だな、この森・・・誰もいない・・・


 ・・・シショーは野生ポケモンがいるって言ってたけどなぁ、さっきから全然出会わない


 ・・・・・・皆、眠っているのかな?





 ううん、違う





 きっと・・・・・・





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「・・・あのガキ、妙だな」

 「ああ、まるで『此処に心非ず』って感じだぜ」

 「好都合じゃねぇか、尾行に感付かれる心配がゼロなんだからな・・・」

 「でも、歩くの遅すぎだよな・・・イライラする!」


 ・・・・・・大のおとな10人が、わずか13歳の女の子1人を1時間以上、後をつけている光景
 先ず間違いなく、犯罪ですよ・・・・・・しかもかなり光景的に間抜けです


 そんな間抜けで格好付けの兵士達のリーダー格の男だけが、何も喋らなかった・・・
 クルクルと回るコンパスを見ながら、ずっと思案している・・・・・・


 「(おかしい、この森・・・まさか・・・!!?)」









 
 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 ・・・レッド達が森に入って、2時間が経過しようとしていた


 「・・・あ、また『印』」

 「またかよ、うわぁ・・・『ゴーストポケモン』の罠にかかっちゃった?」


 ゴールドが出来るだけおちゃらけて言うが、それなら話は笑い事ではない
 先程から、どうやら・・・同じ道をグルグルと歩いているようだった
 もう既に・・・罠にハマってしまったようだ


 ・・・まだ昼過ぎぐらいだが、少なくとも・・・日没までにはイエローを見つけ、この森から抜け出さなくてはならない
 何故なら・・・夜が来れば、それこそ『ゴーストポケモン』の思うつぼ・・・本領発揮の時間だからだ


 「妙だな」

 『妙だね』

 「ああ、妙だ」

 「何がッスか?」


 レッド、シショー、グリーンがぼそりと言った
 一方の皆は何故そんなことを言ったのかわからない、ただブルーは何となく理解している顔だ


 「ねぇ、何が妙なんッスか?」

 「え? ああ、この森には『ゴーストポケモン』がいねぇな・・・と思ってさ」

 「はぁッ!!?」

 「え? どういうことなんですか、それ!!?」


 ゴールドとクリスがレッドに詰め寄る、その迫力にたじろいだ
 ブルーが同じ質問を、グリーンにした
 ・・・・・・こっちの方が、早くて確実で正確な答えを言ってくれそうだからだ


 「・・・先ず、『霧が無い』ことだな」

 「ああ、あの『ゴーストポケモン』の霧ね。 そういえばそうね・・・」

 「ああいった霧は、誰の目にでも・・・絶対見えるモノだ。
 それなのに・・・此処が『ゴーストポケモン』の住処なのに、まだ一度もそれらしきモノを見ていない」

 『それとね、さっきから僕が「みやぶる」で、辺りの気配を探ってみたんだけど・・・。
 ・・・何もいないんだ、姿を隠した「ゴーストポケモン」も、何も・・・虫の1匹もね』

 
 え? ちょっと待って下さい、ええと・・・アレですか


 ・・・あれだけ『恐ろしい』と言われてきた『この森のゴーストポケモン』が、この森に1体もいないとでも?


 『うん、そうなんだ。 以前来た時には、もの凄い『霧』が森に漂っていたもの。
 ・・・それなのに、今日は全く無いんだ』

 「・・・あ、でも『道には迷いましたけど』?」

 「・・・この森自体、樹々が入り組んでいて『天然の迷路』っぽいじゃん。
 それと・・・『磁場』の所為だろうな、おそらくだけど・・・なぁ、グリーン?」


 レッドがクリスの質問に中途半端に答え、グリーンに正答を求めた
 ・・・ため息ひとつ吐いて、グリーンが答えてやった


 「この辺りような強烈な磁場は、時に人の感覚をおかしくさせる。
 例えば、平衡感覚を失ったり、頭痛がしたり・・・実例は幾らでもある」

 『だから、道に迷ったこと自体は・・・「ゴーストポケモン」とは関係ないと思う。
 普段はそのことと併用して、人を罠にハメるんだろうけど。
 もしかしたらだけど、イエローの「夢遊状態」も・・・そうなんじゃないのかな?
 「対の者」の意識が、この辺りを包む強烈な磁場によって、増幅された。
 その為、イエローは他に類を見ないまでに・・・「共鳴」に反応してしまった』

 「成る程・・・そうだったんッスか」


 ゴールドも一応納得したようだ、しかし・・・・・・此処で思わぬゴールドからのツッコミが!


 「・・・んじゃ、もう『ゴーストポケモン』を倒して、正しい道なんかに進む・・・みたいなことは出来ないんッスね?
 幾ら罠じゃないっつても、道に迷った事実は変わんないでしょうが、んで・・・こっからどうするんッスか?」


 ・・・・・・信じられない! あのゴールドがこんなツッコミをするなんて!!?


 しかし確かにそれはゴールドの言う通りであって、元来た道を戻ることすら不可能な状況だ
 ゴーストポケモンの脅威は去ったが、また一難・・・今度は動くに動けない


 ・・・・・・皆が思案している中、ふとブルーが上を見上げてみた


 「・・・・・・えーと、んー・・・・・・?」

 「なんだ、どうした・・・?」


 グリーンもひょいっと顔を、視線を上に上げて見た・・・・・・硬直・・・・・・
 その様子を不思議に思い、皆も次々に顔を上げていき・・・・・・そして同じように硬直した


 皆が同時に言・・・叫んだ


 「「「『「「「ああっ!!? 『フリーザー』居るっ!!?」」」』」」」





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