〜能力者への道38・足止〜




 ・・・『ゴーストポケモン』が生み出す、『霧』の講義


 イエローは未だに森の中、まだ『対の者』には出会えていないようだ


 そしてその後をつける大のおとな10人、任務とはいえ・・・間抜けすぎる光景


 ・・・・・・この森の異変に気付いたのは、兵士達のリーダー格の男


 それとレッドやシショー、グリーンだった


 その気付いたこととは・・・「道には迷ったが、この森には『ゴーストポケモン』がいない」ということ


 あれだけ注意してきた存在が、今日に限っていないと言うのは・・・どういうことなのか


 しかし・・・・・・道に迷った事実には変わりない、このままではイエローを見つけられない


 ・・・・・・そして・・・唐突に現れた、あの・・・・・・










 突如上空に現れた、伝説の鳥ポケモン『フリーザー』
 レッド達は唖然としていた・・・・・・ほ・・・本物なのか?


 「シショー!」

 『わかってる、「みやぶる」!!」


 シショーの目がぎらりと光り、上空のフリーザーにその目を向けた
 上空のフリーザーは動かない、そしてシショーが・・・・・・ほんの2秒程見て、言った


 『・・・なんてことだ。 間違いない、あれは本物のフリーザーだ!!?』

 「「「ええっ!!?」」」

 「本当に、この島にいたのか・・・」

 「というか、どうして・・・アタシ達の前に現れたの!!?」


 そうなのだ、伝説の鳥ポケモンは『一度出会った者には捕まらず、また二度とその前には現れない』ハズなのだ
 ・・・とりあえずこの場には、シショーとゴールド、クリス・・・まだ出会ったことのない者はいる
 しかし、もう既に出会ってしまったレッドやグリーン、シルバーにブルーもいるのだ


 このように出会ったことがある者と無いものが一緒にいる時は、彼らは『姿を現さない』という選択をする


 『その理由は、いや・・・何故彼らは「一度出会った者の目の前には現れないのか」?
 それは「自らが捕獲される危険性を減らしたい」からなんだ。
 通常、初めて見るポケモンには「技」や「特性」への対応が遅れる、この時の捕獲率は非常に低いと言われる。
 しかし、本を読んだりや二度三度出会っていく内に、どんなに相手が強くとも・・・その「対処法」を見いだすことが出来るようになる。
 彼ら「伝説の鳥ポケモン」が恐れるのはこのことなんだ。
 故に彼らはその高い知能で相手の顔を覚え、その者の前には二度と現れようとはしないんだ!』

 「でも、現れたってコトは・・・『捕まりに来た』ってことじゃないッスか! おい、クリ・・・」


 ゴールドが言う前にクリスが素早くボールを蹴り上げていた
 フリーザーのボールの当て所は『額の飾り中央部分』だ・・・もちろん、クリスの狙いでもある


 しかし・・・・・・一瞬の冷風と共に、その蹴り上げたボールが落下した
 その・・・蹴り上げたボールの開閉スイッチに、あの『とけないこおり』が突き刺さっていた


 「・・・フッ、目の前には現れたが、簡単に捕まる気はないらしいな」

 『慌てるな、先ずは体力を削ってからだ!』

 「よし、『プテ』! 行くぞ!』


 レッドが素早く『プテラ』を出し、上空のフリーザー目がけて飛んでいった・・・・・・


 


 ・・・だが、フリーザーの元に行く前に、『プテ』がレッドごと墜落した


 もの凄い音がした、慌ててゴールドとシショーがレッドに駆け寄った 
 見たところ、そう大きな怪我もないし・・・・・・フリーザーの技を喰らったわけじゃ無さそうだ
 「・・・いったい、どうしたんッスか!!?」とゴールドが訊くと、レッドが力無く笑いながら言った

 「ハハ・・・降ってくる灰が、『プテ』の視界をさえぎったんだよ。
 それと意外に風も強い、下手に上空に上がると、俺の二の舞になるぞ」

 「灰が・・・・・・この島の中央には『飛んでいけば早い』と思ってたんッスよ。
 ・・・でもキチンと、そういう理由があったんッスねぇ・・・」

 『そういうこと、僕も注意しなかったのが悪かった』

 「いや、でもシショーはさっき飛んでいたじゃないか」

 『んー、この島の内側に行けば行く程・・・灰の降る量が多くなるって話らしい。
 僕が飛んだのは一番灰の振る量が少ない「海岸地帯」だもの、だから・・・この辺じゃ飛べないと思うよ』

 
 しかしフリーザーはそんな環境下においても、あのように飛ぶことが出来ている
 それは、おそらく・・・『自己耐熱システム』などにより、自らの周りの灰を寄せ付けぬようにしているからだろう


 レッド達が話している間にも、他の皆が地上からフリーザーに攻撃を仕掛け始めた
 ・・・が、攻撃はなかなか届かないし、当たらない
 すぐさまレッド達も攻撃に参加したが、結果は同じだった
 「・・・以前より、強くなってる」とブルーがポツリともらした





 お互いが応戦、防戦を繰り返し・・・・・・段々と焦れてきた


 「(・・・アレを試してみるか? しかし、今はその時期では・・・)」

 「ああっ!!? フリーザーが逃げる・・・」


 確かに、ゴールドが言う通り・・・フリーザーが何処かへ飛び去ろうとしていた
 ・・・それだけはまずい、ここで逃がしたら、イエロー以外・・・誰も出会えなくなってしまう!

 『・・・追うぞ、皆! どうせ道に迷っているんだ、まだフリーザーを追いかけた方が良い!』

 「そうだな、急げ・・・見失うぞ!」


 フリーザーがばさりと飛んでいき・・・その後をレッド達が追いかけていった・・・










 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・


 どのくらい・・・歩いていたんだろう?

 
 ・・・・・ああ、やっと・・・出口が見えた


 会えるのかな、ボクの・・・『対の人』に・・・・・・どんな人なのかなぁ?





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・


 この気配・・・・・・彼女が『対の者』か
 

 だが、その後をつける者、すなわち敵意を持つ者へ・・・・・・足止めを、警告をしなければならぬか


 ・・・・・・この地に足を踏み入れる資格無き、力無き者へと





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・




 
 「・・・おい、出口だ」


 セイルス直属の兵士の1人が言った、他の皆もイエローの目の前に差す光を見た


 「・・・ようやくかよ、あのガキ、足遅すぎだっつーの!」

 「どうする? この森を出たあとも、あのガキに道案内して貰うか?」

 「・・・・・・とりあえず、この森から本当に出るまで、あのガキを見失うなよ」


 話しているのも束の間、イエローがガサガサと森の出口へと足を踏み出した
 そして・・・それを確認し、彼らもその通りに足を・・・この・・・『森林地帯』の出口へ向けた


 


 『ちー島』、第3エリア・・・『砂漠地帯』


 ・・・辺り一面に広がる見通しの良い灰色の砂漠、灰は降ってはいるが・・・そうドサドサと降っているわけじゃない
 意外と進みやすそうで・・・すぐ向こうの方に『岩場地帯』が見えた
 ・・・・・・イエローはその方向を見定めて、歩いていった


 「・・・おい、何にもねぇじゃんか」

 「ああ、思ったより灰の降る量も少なく、見通しも良い。
 これなら・・・道案内してもらう必要もない。 むしろ、あのガキは邪魔になる。
 あの能力の『対の者』なんだろ? あのガキは。 
 なら・・・奴に会わせちゃならねぇ、仕事がやりにくくなるからな」


 10人全員がそれぞれのパートナーポケモンを出した、それぞれ技の指示も溜めも終えた状態だ
 
 「今、あのガキを殺す。 あの状態なら、何も出来ないからな・・・」

 「・・・5年、10年後が楽しみなガキなのに、運が無いぜ。
 あの恐るべき能力の『対の者』じゃなきゃ、長生き出来たのに・・・ま、いいぜ」

 「ご託はいい、早々に始末を付けようぞ。 放て!!!
 









 その瞬間だった




 
 突然、穏やかだった砂漠がうなり・・・・・・『砂嵐』が起きたのだ


 轟々と巻き起こる大量の灰が混じった砂嵐に、イエローの姿が覆い隠されていく
 兵士達は眼を開けていられない、目標を完全に見失った・・・他の皆の姿さえ見えない


 ・・・・・・しかし、それだけでは無かった


 足場が崩れた


 兵士達がくぼんだ砂地に飲み込まれていく、パートナーポケモン達もまた・・・必死で足掻く


 「・・・うぅッ、『ありじごく』・・・か!!?」

 「いや、『流砂』だ! コイツに飲み込まれたら、下手すれば死ぬぞ!」

 「・・・ちくしょう! まさか・・・これが! あの『能力』なのか!!?」


 兵士達の叫びも虚しく、砂嵐の勢いは衰えることがなかった・・・・・・





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