〜能力者への道39・青泉〜




 上空に現れたフリーザーは・・・紛れもない本物だった


 何故、彼らが『一度出会った者の目の前に現れなくなるのか』?


 彼らは捕獲されることを望まない、その為には多くの人々が居る中では決して現れないのだ


 しかし、そんなフリーザーがレッド達の目の前に現れた


 これは好機だと、皆が捕獲に望む


 途中で何故『そらをとぶ』で島の中央に行かないのかの理由も判明


 しかし、もたついている間に・・・フリーザーが再び飛び去ろうとした


 好機を逃したくないレッド達は、迷っているのにも関わらず・・・その後を追いかけ始める


 一方、イエローは『森林地帯』を抜け、『砂漠地帯』へと足を踏み入れた


 そして・・・道案内の必要もなくなり、邪魔者としてイエローを始末しようとする兵士達だったが・・・


 謎の砂嵐に流砂、思わぬ足止めをくらってしまう・・・・・・










 「・・・うわぁ、進みにくい」


 此処は『ちー島』、第4エリア・・・『岩場地帯』


 イエローは『何だか不思議な気分』状態から脱していた、それは大体『岩場地帯』に来てからだろう
 しかし、来たのは良いが・・・もの凄い量の灰がドサドサと降ってくるのだ
 まるで雪のように、おかげで足がスッポリとハマり・・・身体の3分の1が埋まってしまっている
 体が小さいイエローにとっては進みにくいことこの上ない・・・ほとほと困っているのだった


 「・・・『ドドすけ』でも出そうかなぁ?」

 
 しかしこんな灰の上だ、まともな走行は期待出来そうにない
 それに・・・・・実は既に『岩場地帯』の終わりがもう見えているのだ
 距離的にはあと20m・・・・・・しかし灰が邪魔して、かなり遠くに思える


 ・・・『何だか不思議な気分』状態でも、頭はそれなりに働いていた


 イエローが歩いて見て、わかったこと・・・この『ちー島』のそれぞれのエリアの配分だ
 島全体を『10』とすると『海岸地帯』で2、『森林地帯』で4、『砂漠地帯』で3ぐらい
 要するに、『岩場地帯』なんて殆ど無いのだ、それとも砂漠化や何かが進んだのだろうか?
 ・・・となると、『中央地帯』はどうなっているのだろう?
 本当にちっぽけなエリアには違いないが・・・まだ誰も見たことがないと言われているのだから、何があるのかわからない
 

 「(・・・どうして皆、来れなかったんだろう?)」


 イエローが心の中で思った疑問はもっともだった


 『森林地帯』だって、『ゴーストポケモン』対策のポケモンを連れてくれば良いのだ
 それでも道には迷うが、いざとなったら無理して空を飛べばいい


 『砂漠地帯』だって、出会えなかったが・・・『ナックラー』や『サボネア』、『サンド』程度のポケモンしかいないのだ
 もちろん、レヴェルはそこそこ高いが・・・『飛行タイプ』のポケモンがいれば・・・攻略は簡単なはずだ


 『岩場地帯』なんて論外、此処には元からポケモンが住める程広くはない
 まぁ居たとしても・・・『ゴーリキー』やら『ゴローン』程度だろう


 ・・・・・・いや、その前に『ちー島』一帯の『海流』や『気流』が問題なのだろうか?
 そんなものは『シーギャロップ号』のような大型のエンジンを積んだ船なら、難なくクリアー出来る
 レッド達のように・・・昔ながらの『なみのり』でこの島に来る方が珍しいのだ、今はそういう時代なのだから・・・


 それなのに、誰もこの島の『中央地帯』を見たことがないなんて・・・ちょっと不自然な感じがする





 「・・・む〜〜〜、それにしてもどうしよう」


 いい加減、進むこと自体に疲れてきた・・・いや、もう動けない・・・
 あともう少しで、『対の人』に会えるのに・・・・・・身体が完全に灰に埋まって、ハマり込んでしまったのだ


 途方に暮れ・・・パタッと灰の上にうつぶせに倒れ込んだ
 それでも容赦なく灰は降り積もる、このままだと灰で生き埋めだ





 その時だった


 ・・・・・・何かが灰に埋もれたイエローのえりを引っ張り、灰から身体を引きずり出した
 イエローが「ふぇ?」っと間抜けな声をだした、助けてくれた何かがイエローを『中央地帯』へと運んだ










 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・


 『ちー島』、第5エリア・・・『中央地帯』


 


 『中央地帯』に着いたと、イエロー気付いて・・・最初に見た光景は、今朝の夢と全く同じモノだった


 灰色に染まり上がった世界の中で、唯一・・・美しい青色をした泉が湧いている
 そしてその泉で・・・・・・あれ?


 此処から夢とは違った・・・





 その青い泉に沈み、水浴びをしている・・・背の高い男の人が1人居た


 ・・・その光景は夢以上に幻想的だった、青い泉は波紋を立て・・・・・・男がこちらを振り返った
 そして、イエローが最初に出た言葉が


 「・・・何をしているんですか?」


 ・・・だった、見慣れるはずがない男性の水浴びを見て、気が動転していたのだろうか
 そして男はそれに答えてくれた

 
 「『禊』と言う、『穢』を水の霊力によって濯ぎ清める行為だ。
 水に浸すことにより、純粋無垢な身体に戻せるという・・・・・・。
 此処の泉は霊力が高く、あらゆる怪我や病を癒す力があるというがな・・・」

 「『みそぎ』・・・『けがれ』ですか?」

 「我らの罪のイメージは『穢』、『罪は償える、洗い流すことが出来る』とな。
 ・・・もっとも、俺の『穢』は落とせるモノではないがな」

 「・・・・・・落とせますよ、きっと」


 イエローの言い方がおかしかったのか、男の張りつめた空気が・・・和らいだ気がした
 男が泉から上がろうとする、どうやら『禊』は終わったらしい



 そしてイエローが今更ながら気付いた





 ・・・・・・見ず知らずの男の人の水浴び・・・っていうか、裸見ちゃった!!?


 イエローが本当に今更ながら、慌て始めた
 いや・・・確かにこの男の人は以前から知っている気はする、でも本当は初対面のハズなんだ
 なのに、ボクは・・・・・・とんでもない失礼をしちゃったんじゃ・・・!!?


 イエローの思案に関係なく、男が泉から出ようとする・・・更にイエローが硬直した


 ・・・・・・水浴び=(多分)全裸・・・今出てくる=今まで泉で隠れていた部分・・・・・・丸見えっ!!? 


 キャーキャーと叫びだした、しかもイエローの方へと向かってくるのだから、尚更だ
 イエローがそうかと言わんばかりに、目をつむって後ろを向いてしゃがみこんだ・・・これなら大丈夫・・・・・・多分





 「・・・何をしているんだ?」

 「・・・・・・へっ?」


 突然前の方から声がして、イエローが反射的に目を開けてみた・・・・・・男の人の足が見える
 後ろを向いてからわずか2秒も無い、当然服を着る時間も無かったはず・・・ですが?

 
 まっ・・・・・・回り込まれたぁ!!?


 イエローが再び後ろを向こうとして、ようやく・・・気付いたのだった


 「・・・あれ? 服着てる?」

 「何か期待したのか?」

 「いえ・・・・・・別に」


 イエローの顔が思わず赤くなった、もの凄く恥ずかしい・・・が、疑問にも思った
 ・・・と、いうことは・・・服を着ながら水浴び、『禊』をした・・・というのだろうか?


 ・・・・・・でも、服が濡れていないのはどうしてだろう?


 「不思議か?」


 頭上から降ってくるような低い声に、ふと顔を上げてみた・・・・・・が、男の顔が見えない
 太陽が目に入る、すなわち逆光の所為もあるかもしれない、でも・・・・・・


 「(この人、身長がもの凄く高いんだ・・・)」


 イエローの身長は130cmあるか無いか、対してこの男は・・・2m、下手するとそれ以上かもしれない
 ・・・・・・となれば、イエローとの身長差は80cmはある、見上げても見えることのない顔・・・
 ただ声の調子や感じから、少なくとも・・・自分に敵意を持っているわけではなさそうだ


 「・・・あなたはボクの、『対の人』・・・『破壊』の能力者さんですか?」

 
 男はしばし沈黙をしていたが、口を開いた


 「『破壊』の対にあるものは・・・『再生』だ」

 「じゃあ、『癒し』の対って・・・何でしょうか?」


 男が一呼吸おいて、答えた


 「『災厄』」










 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・


 『ちー島』、第2エリア・・・『森林地帯』


 イエローが『対の者』と出会った頃、レッド達はまだ『フリーザー』を追いかけている最中だった


 「待てぇ!!」

 
 先頭を走るゴールドが『バクたろう』に次々に技の指示をして放つが、ひとつも当たらない
 皆はそういったことをせず、むしろ技を放たずに・・・ただ後をついてくるだけだった
 それを不満に思ったのか、ゴールドが皆に文句を言った


 「何してんッスか! 早くしないと、本当に逃げられちまいますよ!!?」

 「ああ、本当に逃げる気があるならな。 もうとっくに、俺達をまいてるさ」

 
 どういうコトだろう? では、このフリーザーは逃げる気がないと?

 
 「アタシね、フリーザーとの追いかけっこを始めた時に、『印』をつけるチョークの『色』を変えたのよ」

 「・・・はぁ?」

 「それでね、一回も・・・色を変えた『印』があるところに、来てないのよ」

 「・・・・・・はぁ?」

 
 どういうことだろう、それと本気で逃げないフリーザーと何の関係が?

 
 「つまり、もう迷ってないのよ。 確実にアタシ達は『出口』に向かってる!」


 ゴールドが急ブレーキをし、「それ本当ッスか!!?」と訊いた
 シショーやグリーンがそれにうなずいた

 
 「本当に逃げる気なら、もう俺達はまかれている。 だが、フリーザーはそうしない。
 むしろフリーザーは俺達に合わせて、前を飛んでいる。 時々振り返り、俺達がいるかどうかを確認しながらな
 普通、逃げようとするのに・・・こういった飛び方をすると思うか?」

 『考えられるのはひとつ、理由はわからないけれど「僕達を導いてくれている」ということ!』

 「・・・・・・えぇっ!!?」


 途端、フリーザーが急上昇をし始めた
 皆が驚いている間に、あっという間にその姿が見えなくなった


 「・・・・・・あれ? 俺達を導いてくれるんじゃなかったんッスか?」

 『違うよ。 もう「導く必要が無くなった」んだよ、ホラ・・・」


 シショーが指し示す方向に、光が差し込んでいる・・・間違いない、出口だ
 皆がその方向に走った、ようやく抜けられた・・・・・・ゴールドがはしゃぎながら、言った


 「よっしゃあ! 一番乗りィっ〜♪」

 「わてが一番乗りや♪ 負けへんで〜」


 ・・・・・・え?


 ゴールドがザッと森を抜け、その横に居る・・・・・・妙な男を見た
 

 「いやぁ、よーやく・・・こん森を抜け出られませたわ。 ほんま、しんどぃわぁ」

 「・・・・・・誰だ、アンタ!!?」


 皆がその後に続いて森から抜け出てきて、ゴールド同様その男の存在に驚いていた
 そんな様子を面白そうに見ながら、パイプを取り出しながら・・・謎の男が言った


 「・・・ひどいなぁ、わては森ん中で・・・ずぅっと皆はんの後についておったやないか

 「・・・・・・何だって!!?」





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