〜能力者への道40・茶筆〜




 イエローは灰に埋まりつつ、『岩場地帯』を進む


 そして思う疑問、何故・・・誰も『中央地帯』に来たことがないのだろうと


 それぞれのエリアに居る野生ポケモンは確かにレヴェルが高い、しかし・・・それなりの対策は立てられるはずだ


 ・・・だが、今はそんなことはどうでも良いのだった


 何故なら、次々に降り注ぐ灰でイエローが完全にハマって動けなくなったからだ


 途方に暮れているイエローを救ってくれたのは、何者だったのか


 そして出会うのこと出来た・・・背の高い『対の者』、その男の能力は・・・・・・『災厄』


 一方、フリーザーを追うレッド達が気付いた・・・俺達は、もう迷ってないと


 何故捕獲されることを望まぬフリーザーが、レッド達を導いてくれたのか


 そして見つけた出口・・・だが、謎の男がいきなり飛び出した










 「・・・お前、何者だ!?」

 「あんさんらに名乗る名前はございません、っと」


 男がパイプを吹かしながら、言った・・・この男は本当に、いったい何者なんだ!!?


 その男の容姿は・・・一言で言うと、鉛筆・・・いや『筆』だった
 身長が異様に高く、そしてひょろりと細い・・・服も茶色の和服に靴は革靴で・・・茶一色だった
 もじゃもじゃの茶色の髪・・・そして、えりあしだけ異様に長く、その髪を後ろで束ねていた
 奇妙な刺青が顔から胴体まで続き、ひも付きサングラスをかけていた
 ・・・・・・そう、総てを引っくるめて見ると、正に『筆』そのものといった感じだった


 「・・・貴様、俺達の後をずっとついていたと言っていたな? それは本当か?」

 「嘘ついてどないすんのや。 わては旅から旅へと根無し草。 そないやってたら、たまたまこの島を見つけたんや。
 そしたらたまたまあんさんらを見つけてなぁ。 なんやら面白そうな集団やてと、きょ〜みもったんや。
 ・・・それでその後ろをトコトコ歩いてたんやけど・・・あんさんらのだ〜れもわてに気付かんやった」

 「(・・・・・・何だ、この男・・・ふざけているのか? たまたま・・・この島を見つけただと?
 今まで、この島に来てから・・・ずっとだと? 莫迦な、あり得ない・・・そして誰も気付かなかったなんて!!)」


 グリーンの表情がぴくりと動いた、まさか・・・コイツが俺達の監視役・・・『尾行者』か!!?





 しかしそれは『あり得ない』と判断した


 もし仮にコイツが『尾行者』だとすれば、完璧だ・・・正に適任者と言えよう
 何故なら奴は・・・・・・『あり得ない存在』なのだから、しかし何故今名乗りを上げる?
 俺達に尾行者だと、名乗りを上げて・・・何になるというのだ?
 

 考えられるのは・・・『俺達を始末する』と、故に姿を隠す意味が無くなったと・・・そういうことなのか!!?
 だとすれば、マズイ・・・・・・俺達は絶対に、万のひとつにも生き延びる可能性もなく・・・倒され、殺されるだろう


 どうする・・・逃げることは可能か、否か・・・・・・スグにでも行動に移さないと・・・!





 「別にあんさんらを殺すなんてせぇへんよ、安心しぃ」

 「(・・・読まれた!!?)」

 「どーしてそうキンチョーするんや? わてはただの旅人で、だ〜れも気付かへんから・・・出てきただけなのに」

 「はぁっ!!? 誰がテメェなんぞに緊張するかよ!! なぁ・・・み、皆!!?」


 ゴールドが皆を見ると、全員が確かに緊張していた・・・いったい何故?
 こんな軽そうな男が、どうして・・・・・・?


 嫌な緊迫状態が・・・始まった










 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「・・・『災厄』ですか、じゃああなたがそうなんですね?」

 「・・・・・・ああ」


 イエローが改めてその・・・背が高すぎて、イエローが小さすぎて顔が見えない男の容姿を見た


 先ずは大きな黒い革靴、これはブーツと言った方が良いのかもしれない
 そして・・・・・・おそらく全身に直に巻かれた包帯、少し汚れて・・・色が付いている
 顔が見えないのが少々残念だが、あとは服かな・・・


 裾や膝の部分がボロボロになっている黒の長ズボン、上の服は着ていない・・・包帯が代わりなのかな?
 そして男が羽織る、ロングジャケット・・・よく服の種類はわからないのだけど、色は・・・・・・あれ?


 「・・・上着、灰まみれですね?」

 「元々この色だが、何かあるか?」


 ・・・・・・灰色の服・・・・・・もしかして、あなたは・・・・・・





 突然、イエローの目の前に・・・ポケモンが現れた
 どこかで見たことがあるような、無いような・・・・・・何て言うポケモンだっけ?


 「『アブソル』だ」

 
 男がそれに答えてくれた、ああそうか・・・・・・この子が『岩場地帯』でボクを拾ってくれたのか
 アブソルがイエローのことをじっと見ている、ええと・・・何か顔についているのだろうか?
 そして・・・そのままイエローにすりよってきた、その仕草が何とも愛らしい・・・


 「・・・気に入られたようだな」

 「か、可愛いですね。 アブソルかぁ・・・」

 
 イエローもアブソルに負けじと、頬をすり寄せる・・・何だかもの凄く幸せな気分だ
 ・・・男がその様子をじっと見ている、それに気付いたのかイエローが慌てた

 
 「す、すみません! つい、可愛くて・・・」

 「構わん、アブソルも久し振りに心が通じる人間と出会えたようだしな」

 「? こんなに可愛いのに、心が通じない人しかいなかったんですか?」


 男がふっとため息をついた、そして・・・・・・


 「『アブソル』、通称『災いポケモン』。 彼が現れると、必ずその地で災害が起こったという」

 「え・・・そうなんですか!!?」

 「しかし、その実体は違った。 アブソルは、災いを『呼ぶ』のではなく、『感知』していたのだ。
 その為、人々にそのことを伝えようと、彼は山を降り・・・街へ行く。
 だがポケモン自体が居るのは珍しくない、それどころかアブソルが来るたびに警告に気付かず・・・災害が起こる。
 そして・・・・・・アブソルは『災いを呼ぶポケモン』になった」

 「ひどい・・・完璧な誤解じゃないですか」


 イエローがきゅっとアブソルを抱きしめた、アブソルもそれを嫌がらない
 

 「確かに誤解だ、しかし今でもそれは人々に言われ続けている。 だが、嘘は時に本当になる。
 永く言われ続け・・・アブソル達は『災厄を本当に呼ぶ』ことが出来るようになってしまった」





   嘘も言い続ければ、やがてその嘘は本当になる
 

   人々はアブソル達の警告を受け取らず、常に迫害を続けてきた


   そして・・・・・・アブソル達はいつしか本当に、『災厄を呼び寄せる存在』となってしまった


   人々は口々に言う、『そら見ろ! やっぱりそうじゃないか、お前達は居てはならない存在なのだ』、と


 


 「・・・ごめんなさい」

 「何故、お前が謝る・・・」

 「だって皆の所為で、アブソル達が・・・なら、ボクだって謝らなくちゃダメなんです」


 イエローがぽたりと涙を落とした、その優しさが他の者達にあれば・・・アブソル達は救われたのに
 しかしこれだけでも、アブソルは救われる・・・少なくとも、目の前にいる子だけでも


 アブソルがイエローの顔にすり寄り、ぺろりと目尻をなめた
 イエローがきょとんとしていたが、やがてくすぐったそうな顔をしてきゃわきゃわ笑った


 「(・・・・・・『トキワの癒し』・・・か)」

 「くすぐったいてっば、もう。 あははは・・・」










 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・


 『ちー島』、第3エリア・・・『砂漠地帯』





 砂嵐が轟々とうなる中に、1体の鳥ポケモンが飛び込んだ・・・


 そのポケモンがひとたび風を起こすと、一瞬で・・・その砂嵐が消えた
 辺りに残されたのは、いとも優しき涼しい風・・・・・・もちろん、フリーザーの仕業だ





 ようやく治まった砂嵐、その中から人間達が出てくる・・・・・・


 「・・・ハァハァ、ようやく抜けられたか!」

 「許さねぇ、絶対に奴をぶっ殺す!!」


 兵士達は殺気立って、『中央地帯』へと向かう





 ・・・・・・フリーザーは何を望んでいるのだろうか?





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