〜能力者への道42・頑張〜




 『災厄』が敵へ向けて『音のしない「はかいこうせん」』を放つ、そして島は・・・目の前のモノが消えた


 恐るべき力、しかし・・・・・・不思議とその本人とポケモンは恐くはなかった


 名前も告げずイエローの元から去り、あとには謎だけが残った


 一方、同時刻にゴールド達と接触していた男は、『災厄』の『音のしない「はかいこうせん」』を感知する


 鼻息の荒いゴールドに忠告と『流離士・キョウユ』という名を残し、本人曰くこの島から出ていった


 その後、グリーンが無鉄砲な行動が目立つゴールドを殴った、これからの勝手な行動を戒めるために


 そんなやりとりのあと、またフリーザーが目の前に現れる、道案内の続きなのか・・・・・・


 ・・・・・・ようやく『中央地帯』でイエローと合流、そしてフリーザーは『災厄』の者の元へと飛び立っていった










 「・・・・・・と、いうわけなんですよ」

 『「破壊」の対は「再生」で、「癒し」の対は「災厄」かぁ・・・勉強不足だったな〜』


 無事にイエローと合流できた皆は『ちー島』を離れ、『2の島』へと向かう最中だった
 海流は『ちー島』から『2の島』へと流れているので、それに乗りもの凄くスピードが出る
 ・・・しかし、もうすぐ日も暮れる・・・そこで今日のところは2の島付近に存在する『ぬー島』で休むことになった


 ・・・・・・イエローは散々皆に怒られて、今まであったことを総てを話しているのだった
 大方の説明が終わり、ブルーが『カメちゃん』の上でイエローと向きあった


 「じゃあなに? アンタの『対の人』の顔とか名前とか、外見的特徴はなにひとつわからなかったわけなの?」

 「ええ、まぁ。 向こうはもの凄く身長が高くて、それにちょうど太陽のせいで・・・顔は逆光で見えなかったんですよ」

 「・・・・・・意味無いわ、無さ過ぎ。 格好良い人かもわかんないわけね」

 「あ、でもポケモンは可愛かったですよ。 アブソルっていうんですけど・・・ボクに懐いてくれて。
 声は低い良い声だと思いますよ、それと・・・外見的特徴なら、全身に包帯巻いていて、それと『灰色の服』を着てました」


 ・・・・・・えぇっ!!?


 それって・・・・・・もしかして・・・・・・


 「(・・・なんか頭痛くなってきたわ)・・・んで、それ以外は?」

 「え? ・・・そうですねー、ボクは名乗ってないのに向こうはボクの名前を知ってたみたいです
 それと、誰かに追われていたみたいですよ、その人達を追い払うためにさっき話した『音のしない「はかいこうせん」』を使ったみたいですし。
 テレポートで逃げたとか言ってましたから、多分・・・・・・あの組織の方々かと・・・」


 イエローの声が徐々に小さくなっていく、どうやらようやく・・・気付いたようだ





 『災厄』の者は、『The army of an ashes cross』のメンバーなのではないか、ということに


 ここで考慮しなければいけないのは、その『The army of an ashes cross』に追われているという事実
 つまり彼は『組織から抜け出した者』であり、重大な何かを知ったか何かで・・・連れ戻すか、始末するために追われているのではないか?


 しかし、彼が『The army of an ashes cross』のメンバーだったと言ったわけでもない、ただ『灰色の服』を着ていただけなのだ
 彼らに追われているのだって、『災厄』の力が恐ろしすぎるからなのかもしれない


 どのみち、今のレッド達ではわからないのだった





 「・・・困ったわねー、これからまた・・・その対の人に会ったら、アタシ達はどうすればいいのかしら?」

 『んー、戦えば勝ち目は無いだろーしねぇ・・・』

 「・・・・・・そうだな、出来れば『キョウユ』共々、二度と会いたくないな」


 皆がうんうんと考えている、どうしてこう・・・変で強い人達が次々に現れるんだろうか
 そろそろ対処方法なんかを考えるのが面倒臭くなってきた、いや本当に・・・・・・


 ここでまた・・・『災厄』の者について、イエローが疑問に思ったことをシショーに訊いてみた


 「ねぇ、シショー。 『災厄』さんはひとりぼっちなんでしょうか?」

 『?』

 「・・・知っての通り・・・ボクの能力、『トキワの癒し』は10年ぐらいに一度、使い手が生まれるんですよ」

 『・・・ああ、そうか。 ということは、それに応じて「災厄」の能力者もいなければならないね』

 「ですよね、でも・・・・・・多分、あの人しか使い手がいないと思うんです。
 それに・・・ボクとしか『共鳴』しないのかどうか、『ワタル』さんだって『癒し』の能力者なんですしね」


 ・・・確かに、あの『災厄』の能力者が複数人数居るとなれば、かなり恐ろしいことである


 『僕的には、「癒し」の能力者が複数人数居るのに対して、「災厄」の能力者が1人しかいないのは・・・正しいと思う。
 「音のしない『はかいこうせん』なんかの話を訊くと、そう思えるんだ。
 ・・・つまり、1人しか居ない分・・・複数人数居る「癒し」の能力者を束にしたぐらいの力を持っているのかもしれない。
 それとイエローとしか「共鳴」しないのかはわからないよね、もしかしたら「癒し」の力を持つ者全員に反応するのかも・・・』

 「もしそうだったら、あのワタルにも会ったことがあるんじゃないかしら?
 ・・・・・・それなら、イエローの名前を知っていてもおかしくはないかも・・・」


 ブルーの横やりにハッとなった、『災厄』の者とワタルが会ったコトがある・・・・・・大いに考えられることだ
 しかし、これらは総て推測の域を出ない・・・・・・真実を知るのはまだ当分先の話であろう





 「・・・・・・話についていけねぇ」


 ゴールドがぽつりと漏らした、殴られた頬が見事に真っ赤に腫れ上がっている・・・
 冷却シートも殆ど役には立っていないようだ、見るからに痛々しい


 「あれ、ゴールドさん・・・どうしたんですか、その顔?」

 「・・・今頃ッスか」

 「あー・・・そうか、今度はこっちの話もしなきゃいけないのか」


 イエローはきょとんとしている、グリーンはバツが悪そうにそっぽを向いている
 レッドはぽりぽりと頭をかきながら、イエローが居なかった時に起きたことを総て話し始めた・・・・・・










 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・




 
 「・・・無様だな」


 清潔な大部屋、此処はいわゆる病院という所・・・ただし、『The army of an ashes cross』専用のだ


 この大部屋に、『ちー島』での任務に失敗した兵士達がベットの上で横たわっていた
 ・・・かろうじて生きてはいるが、もう二度と戦えまい・・・・・・


 「素晴らしい力だ、『災厄』・・・! それに比べ、貴様らはどうだ・・・」

 「う、ぅぐっ・・・お、許・・・し下さ・・・・・・い」

 「黙れ、処分を下す」


 息絶え絶えに許しを乞う兵士達、『幹部候補・セイルス』が動く・・・・・・





 「ヒャ、ハッ! ちょっち待てや、セイルスちゃんよォ・・・」


 突然、大部屋の中に男が現れた、セイルスの目が見開かれる


 「・・・ッ! 『ジャチョ』・・・・・・貴様、戻っていたのか!」

 「ああん? ナニ、その態度ォ? 『幹部候補』が『幹部』に逆らってイイのかぁん?」

 「・・・・・・」


 部屋の中に入ってきた男は異質そのものだった


 頭はスキンヘッドで絶壁頭、醜く歪んだ唇から肉厚で長い舌がだらりとぶら下がり・・・それに隙間無く両側にリングがはめ込まれている
 眼は不気味に光り、舌に付いている同じデザインのイヤリングが統一感を出している
 身長は236cmだが、異様な胴長と短足でしかも超絶な猫背のため、視線の高さは150cmほどだ
 服装は上着はメタルジャケットだけで、貧相にやせ細った身体がむき出しである
 ズボンは膝下ほどしかなく、靴はスリッパに近い・・・左腕には『黒い腕輪』、それの宝珠に小さく『巳』を彫られていた





 「・・・何の御用ですか、ジャチョ様」

 「ヒャ、ハッ! それでイイんだよ、目上の人は立てるもんだ」


 ジャチョという男は大部屋に並べられたベッドをひとつひとつ点検するかのように、中を練り歩いた
 セイルスは静かに、その男の動きを・・・一挙一動をじっと見ていた


 「ヒャ、ハッ! ・・・・・・これが『災厄』の力、ねぇ。 おーんもしれぇじゃねぇかよォ!
 普段ならこういう『幹部候補』にゃレヴェルが高すぎる任務は、オレらが引き受けるんだがなぁ・・・。
 オレらが『オーレ』地方なんかに行ってるから、『幹部候補』なんかに回されたんだろーな。
 しかも、本人じゃなくて部下にやらせる・・・・・・相手の力量を見抜けない莫迦が、組織を潰す原因になりかねねぇなぁあ?」


 明らかにセイルスへの当てつけである、だが的を得ているので何も言い返せない
 ・・・だが、腕を組んだわずかながらに震えている

 
 「・・・御用件は、それだけですか?」

 「ヒャ、ハァッ!? んなワケねーだろーが、テメーにおーんもしれぇコトを言いに来てやったんだよ」

 「・・・・・・何でしょうか?」

 「アイツが動き出したぜぇ」

 「!!!」

 「ヒャ、ハッ! テメーのお気に入りだろ? オレってば、部下思いでやさしーっ!」

 
 ジャチョが舌をでろりと動かし、自らの身体を揺すった・・・
 ・・・・・・セイルスがしばし考えこんだ、ジャチュが顔をのぞき込んだ


 「ヒャ〜、ハァ? どした? お気に入りなんだろ、なぁ?」

 「・・・アイツが好きなわけではないです、戦っている姿が美しく・・・ただ好きなだけですよ」

 「ヒャ、ハッ! そかそか、んならイイんだ・・・んざ、オレは帰るか」


 と、スタスタと大部屋の扉の前まで歩いた所で、ぴたりと止まった
 セイルスが「まだ、何か?」と訊くと・・・ジャチュが振り向いて笑いながら言った


 「そそ、忘れてた。 ・・・・・・こんな楽しいこと、お前にゃ勿体ないから・・・オレがやる」





 次の瞬間、大部屋にいた兵士達の身体がギシギシときしみだした


 「あ、があがっあああああああ・・・」


 声にならない悲鳴が大部屋にこだまする、ベッドごと兵士達がもちあがり・・・骨が砕ける音がした
 ・・・・・・これが『幹部・十二使徒』であるジャチョの『トレーナー能力』とポケモンの実力・・・・・・


 「お前は『ランクダウン』ですまそうと思ってたんだろ、腕輪取り上げればイイと思ってたんだろ?
 ヒャ、ハッ! 甘いんだよ、任務失敗者には・・・・・・苦痛を、死に等しい快楽を・・・」


 その言葉が終わるか否かに、セイルスの身体も持ち上がった


 「!!?」

 「当たり前だ、お前も同罪。 ヒャ、ハッ!」


 セイルスの身体がぎしぎしと言い始め、そして・・・・・・










 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「・・・グリーンさんも、キレたりするんですねぇ」

 「そうそう、止めんの大変だったんだぜ」

 「・・・・・・」


 イエローに今まであったことを告げ終えた頃、ちょうど『ぬー島』が見えてきた
 やはりその大きさは小さく、『ちー島』とは比較にならない
 皆が『ぬー島』に上陸し、ゴールドがぼそりと言った


 「・・・まーた、ちっちぇえッスね」

 『しょうがないよ、もう日も暮れるし・・・どのみち「2の島」には行けないし』

 「ゴールド、私達が寝るには充分すぎるでしょ。 贅沢言わないの」


 クリスの言う通り、ちー島に比べたら小さいが・・・学校の2〜3教室分はゆうにあった
 ぬー島の中央には『きのみ』がなっているし、『1の島』で手に入れた食料だってある
 ・・・少なくとも、海に落ちない限り死ぬことはないだろう・・・と思う


 『・・・・・・そういえば、皆お腹は減ったかい?』

 「んー、まだ平気かな。 あれば食べられるだろうけど、今は平気」

 「同じく」

 「アタシも」

 「ボクもです」

 「俺もかな・・・?」

 「・・・・・・」

 「私も大丈夫です」


 シショーの問いに、皆がほぼ同じ答えを言った
 その答えを聞き、シショーがしばらく考えて・・・言った


 『じゃ、丁度良い。 夕飯の支度はもう少し先にして、自由時間にしようか』

 「・・・わざわざ言う必要はあるのか?」

 『う〜ん、まぁね』


 シショーの言葉に「?」と皆が思ったが、『自由時間』というのは嬉しいことだった
 

 『んじゃ、僕はちょっと用事があるから・・・皆も適当に何かしていなよ』

 「あ、はい。 シショーの用事って何ですか?」

 『ヒミツ』


 そういうとシショーがバサリと軽やかに飛んでいった、皆がそれを見送ると・・・各々自由時間を過ごすことにした











 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 自由時間を設けた理由は、特に意味はない


 ただ、このところ・・・気落ちする事しか起きていないような気がするのだ





 再度復活したやもしれぬR団、ファイヤーの酷い状態での失踪、キョウユとの出会い、フリーザーを取り逃がす事など・・・


 特に目標のひとつでもある『伝説のポケモンの捕獲』は酷い・・・情報を得て、目の前にいたのにも関わらず、取り逃がしてしまった・・・・・・


 皆も表には出さないが、内心は深く考えこんでいるに違いない・・・


 ・・・・・・このままでは、底なしに自信を失うことになる


 


 日が落ちた頃に、用事を終えた(?)シショーがぬー島に戻ってきた


 


 ・・・ほんのわずかな自由時間、消極的だが何か皆で楽しいことをして・・・少しの間・・・それらの出来事を忘れて欲しかった


 しかし、帰ってきたシショーが見たのは驚くべきものだった





 「どうした、それで終わりか!!?」

 「・・・いえ、まだッス!」

 
 ゴールドがこの辺りの海流を相手に寒中水泳をし、グリーンがその指導にあたっている
 シショーの眼が真ん丸になって、その様子を見ていると・・・また驚いた

 
 「そんな体力、運動能力じゃ、バルー以上の敵、キョウユには勝てないぞ!」

 「んじゃ、もっとやってやるッス!」

 『(!!?)』





 また別の声がした
 シショーがそちらを振り向くと、ブルーとクリスが何かの特訓をしている


 よく見れば、この辺りの海域にすむポケモンを相手にトレーニングをしているのだった
 ブルーがポケモンを的確に倒し、クリスが捕獲の特訓をする・・・・・・






 「・・・大丈夫か、イエロー、シルバー?」

 「はい、レッドさん・・・」

 「・・・・・・」


 この3人は・・・レッドがイエローとシルバーを指導しているようだ
 狭いあの島で、足場の悪い状況・環境下においてのをバトルを想定したものだろう
 ・・・流石にレッドの方が強い、しかし2人は臆することなく戦いに挑んでいく・・・・・・





 『(・・・ははっ、僕は何て莫迦だったんだろう)』


 皆、強いじゃないか


 皆、障害を恐れることなく、ひたすらに努力しているではないか



 

 皆、強いじゃないか





 ・・・・・・頑張れ、皆・・・・・・その意気を忘れずに、これからも一緒に頑張ろう・・・





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