〜能力者への道43・光分〜




 『ちー島』を後にし、次の目的地『2の島』手前の『ぬー島』を目指すレッド一行


 その途中であの『災厄』の者についての議論、及びちー島であったことをお互いに話し合った


 ・・・一方、『The army of an ashes cross』専用の病室にての出来事


 『「災厄」の者抹殺』という任務を失敗したセイルス直属の兵士達がベットに横たわり、傍らには『幹部候補・セイルス』がいた


 その兵士達を『ランクダウン』させようとした瞬間、『オーレ地方』に行っていたはずの『幹部・十二使徒』が『ジャチョ』が現れる


 異様な風貌、セイルスはその雰囲気に呑まれ・・・・・・「アイツが動く」という言葉を聞く


 ・・・・・・話はそれで終わりではなかった、ジャチョの能力とそのポケモンで・・・降格処分を受けるはずだった兵士達に再起不能までのトドメを刺す


 そしてその歯牙がセイルスにも向き・・・・・・


 ・・・ぬー島に着いたレッド一行はシショーから『自由時間』を貰う


 気落ちしてばかりでは駄目だ・・・休ませようというシショーはその間に用事を済ませ、皆のいる島に帰ってくる


 そこで見たのは、障害を乗り越えようと必死で頑張る皆の姿・・・・・・これからも共に戦おうと、心に誓うシショーだった










 「う、くくく・・・」


 「ヒャ、ハッ! いつまで保つのか、オレってば楽しみーっ!」


 ミシミシと空中に浮いたセイルスの身体がきしむ音がする、ジャチョはその横で笑いながらそれを見て楽しんでいる
 ・・・ベッドごと骨を砕かれ、再起不能となった兵士達はとりあえず解放されてはいるが・・・・・・治療をしなければ待っているのは『死』だけである


 ・・・・・・1時間とも思える1分が経過した、セイルスはもう限界である
 その限界の瞬間を迎える寸前だった



 

 「待て、その諍い(いさかい)・・・この『タツミ』が預からせて貰う」

 
 またしても突然に病室に現れた女性、ジャチョとセイルスは目を見張った


 「ヒャ〜、ハ〜ッ! これはこれは『四高将』様の御登場ですか・・・仕方ない」


 ジャチョの合図で空中に浮いていたセイルスの身体がどさりと落ちた、ゲホゲホッとセイルスがむせた
 それをタツミが後目で見て、ジャチョと向きあった


 「勝手な真似は慎んで貰いたいな、いつ戻った」

 「つい先程ですよ、それにしてもこの『「災厄」の者抹殺任務』・・・あなた方がいるならば、何故『幹部候補』なんかに任せたんです? ヒャ、ハッ!」

 「上のやり方に口出しする気か、それに我ら『四高将』は常に『四神王』と共にある」

 「ヒャ、ハッ! 成る程、『四大幹部』と離れられないというわけですな・・・・・・」
 

 タツミとジャチョがぎらりと睨み合っている・・・・・・だが、それも長くは続かなかった


 「ン〜〜〜、イ〜ヤッハーッ! 電波ビンビン、ゾ〜クゾクゥッ!」


 黒い肌にサングラス、髪はドレッド・・・何故か上半身裸で靴も履いていない男が、突然現れた・・・いや、彼だけではない


 「只今戻りました、タツミ様。 『「オーレ地方」制圧任務』終了致しました」

 
 今度は天井に背が届くほどの大男が、これまた何の前触れもなく突然現れた
 ・・・・・・驚くのはまだ早かった、次々に今までに見たことのない者達が病室に集結していた


 その数・・・・・・ジャチョを含めて『12人』、皆がそれぞれ黒い腕輪を付けている





 「・・・そろったか、『幹部・十二使徒』。 皆ご苦労だった、使徒長『ドダイ』・・・手応えと、向こうの『能力者』はどれ程だった」

 「・・・・・・大したことはございませぬ、皆我らの力に怯えるばかりで御座いました」

 「そうか、今日のところは下がって休め」

 「いえ、早速次の任務に移りたいと思います。 御命令を」


 ドダイと呼ばれた大男がタツミの前にひざまずいた、しかし静かな声で・・・タツミが再び言った


 「休め」

 「・・・わかりました、その様に致します。 ・・・それとジャチョ、勝手な行動を取った貴様はしばらく謹慎して貰う」

 「ヒャ、ハッ! それをオレが訊くとでも?」

 「訊かせてやろうか・・・?」


 ドダイの身体からビシビシと圧倒的な覇気、殺気が放たれる
 その凄まじさにジャチョが尻込みをして・・・渋々従った
 ・・・・・・セイルスはその間も指の一本も動かせなかった、動けば何もかも踏み潰されそうなプレッシャーだったのだ
 滅多に顔を見せない『四高将』、『幹部候補』達が狙う次の位『十二使徒』全員集結・・・・・・身体が震える、汗が止まらない


 「(・・・おそらく次の任務は、『カントー地方制圧』! 次に使徒長を筆頭に『十二使徒』が動けば・・・)」





 ・・・・・・カントー地方なぞ、1時間で制圧が終了する


 そしてその十二使徒を遥かに上回る、『四大幹部』に最も近き存在・・・『四高将』・・・!





 カントー地方は終わった、妙な鳥と共に行動する奴らの努力は無意味に終わるのだ・・・


 ・・・セイルスが瞬間に考え事をしている間に、その幹部全員の姿が消えていた
 そして幹部の誰の仕業かはわからないが、セイルス直属の兵士達に完璧な治療が施されていたという・・・・・・










 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 その翌日の朝、レッド一行は『ぬー島』を後にし、『2の島』を目指していた


 「問い5、『レディバ』がレベルアップで覚える技を総て言いなさい」

 「えーと、『たいあたり』・・・だろ、あとは・・・っと。
 『ちょうおんぱ』
 『れんぞくパンチ』
 『リフレクター』
 『しんぴのまもり』
 『ひかりのかべ』
 『バトンタッチ』
 『スピードスター』
 『ぎんいろのかぜ』・・・だろ!!?」

 「残念でした、『たいあたり』から・・・。
 『ちょうおんぱ』
 『れんぞくパンチ』
 『リフレクター』
 『しんぴのまもり』
 『ひかりのかべ』
 『バトンタッチ』
 『スピードスター』
 『こうそくいどう』
 『すてみタックル』・・・でした。
 ・・・『ぎんいろのかぜ』は、レヴェルアップじゃ覚えられないの、常識よ常識」

 「だァーーーッ! もうやってられるか!!」


 と・・・ゴールドがごろりとオーダイルの上で寝転んだ、シルバーが邪魔だと言うと・・・渋々起き上がった


 このクイズ、実はヒマだヒマだと言って、クリスをからかうためにゴールドから始めたのだが・・・出題者は間違えてばかり
 解答者であるクリスがイライラしだし、とうとう立場が逆転してしまったのだ
 それでふてくされたゴールドをたしなめるように、シショーが言った


 『コラコラ、ゴールド・・・基礎知識ぐらいは覚えようよ』

 「・・・んじゃ、シショー。 『マリルリがレヴェルアップで覚える技を全部言って』みて下さいッス」

 『ん、了解。
 Lv.1 「たいあたり 威力35 命中率95 タイプ・ノーマル PP35」・・・省略して言うよ。
 「まるくなる - - ノーマル 40」
 「しっぽをふる - 100 ノーマル 30」
 「みずでっぽう 40 100 みず 25」
 Lv.3 「まるくなる - - ノーマル 40」
 Lv.6 「しっぽをふる - 100 ノーマル 30
 Lv.10 「みずでっぽう 40 100 みず 25」
 Lv.15 「ころがる 30 90 いわ 20」
 Lv.24 「バブルこうせん 65 100 みず 20」
 Lv.34 「すてみタックル 120 100 ノーマル 15」
 Lv.45 「あまごい - - みず 5」
 Lv.57 「ハイドロポンプ 120 80 みず 5」 ・・・これで満足かな?』

 「・・・・・・クリス、解答は?」

 「文句なしの全問正解、ゴールドの負けね」


 ゴールドが悔しそうな顔をして、クリスの問題に答えることとなった
 周りがにやにやと笑いながら見ていると、ようやく・・・・・・次の目的地が見えてきてしまった
 ・・・もちろん、ゴールドは「助かったー!」と大喜びである


 「あーもう、残念。 せっかくゴールドにお勉強させようと思ったのに」

 『アハハハ、また次の機会だね』

 「・・・よし、上陸するか」










 『2の島』・・・『ひとりより ふたりの ゆうぎじま』とある
 島の面積はナナシマの中でも小さい部類に入り、住んでいる人間も民家の数も少ない
 しかし人が少ない割には地方から取り寄せた特産品販売店やらゲームセンターがあったりするものだから、不思議な島である
 此処の島には『究極技』を教えてくれる人がいるらしいが・・・・・・未だかつて誰も教えて貰ったことが無いとの噂だ

 
 


 「おぉー、家だ! 町だ!」


 ゴールドがぴょんっと島の地面に降り立った、皆もそれぞれ談話しながら次々に降りていく
 ・・・・・・目の前に立ち塞がる人々を気にせずに・・・そして、その次の瞬間だった


 「・・・ん? う、うわあああ!!?」

 「「「「「「『!!!!!!!!!!!!!!???????』」」」」」」


 瞬間にレッド達の背後に回り、後ろから羽交い締めにし・・・・・・光となって消えた


 『み、みんなーーーァッ!!?』


 あの光、間違いない・・・・・・『テレポート』だ
 皆が何処かに飛ばされ、取り残されたシショーの前にも、灰色の服を着た女性とニューラがいた


 「あらヤダ、ホントに喋ってる。 突然変異か、誰かのトレーナー能力かしら?」

 
 ハッと振り返ると、素っ気ない団員服を着た女性が大欠伸をして立っている
 シショーがその女性に訊いた


 『皆をどうしたんだ!』

 「あらヤダ、皆の心配なんてしてる場合? この私、『アロ』と『ニューラ』のコンビであなたを始末・・・ガホッ」


 お喋りをしていた女性の身体がニューラごと後方10m程まで、叩き飛ばされた
 ・・・彼女の顔は唖然としているが、頭の中では冷静だった





 ・・・・・・あばらがイッてる、この威力・・・一瞬だけ感じた冷たい感触・・・


 間違いなく『はがねのつばさ』・・・! でもこの威力、あの喋るヨルノズク・・・・・・何者なの!!?


 あらヤダ、待って・・・『はがねのつばさ』?


 


 「ちょ、まさか・・・『はがね』って・・・あの『はがね』のトレーナーが!!?」

 『御託はいい、さっさと倒して皆の居場所を吐いて貰うよ・・・!』

 「(もし、あの『はがね』のトレーナーがこのヨルノズクのトレーナーなら・・・私じゃ敵わない・・・!)」





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・




 
 どぉぉぉん・・・と、派手な音をたててレッドが着地した
 どうやら下は砂浜だったようで、腰を強く打ったが命に別状はなかった


 「アテテテ・・・ん? この砂浜、どっかで見たような・・・?」


 首を傾げているレッドに、灰色の団員服を着た男が近づき・・・言った


 「此処は『たからのはま』。 今からおれは、お前に正々堂々な勝負を申し込む」





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・


 


 グリーンは辺りを見回しながら、見知らぬ土地を歩いていた・・・着地には成功したらしい
 薄暗くじめじめした『鍾乳洞』と言った所か、『スオウ島』では無いが・・・・・・


 そしてお決まりの如く、目の前に男が現れた・・・朱い腕輪がキラリと光っている
 グリーンがいつも通りの口調で、その男に尋ねた


 「・・・此処で何があるというんだ?」

 「バトルさ、命をかけたな・・・」





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 なかなか大きな岩が転がっている・・・広い草原
 ブルーが団員服を着ていて朱い腕輪を持った女の子とにらみあっている


 「・・・キャハハハ、何度でも言ってあげるvv 私にはか・て・な・い・のvv
 それがゲームのシナリオで、絶対な・の・よ。 わかった、オ・バ・サ・ン・?vv」

 「・・・ジョートーよ、やってやろうじゃないの」


 ・・・・・・もの凄く恐い、女同士の戦いが始まろうとしていた





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・




 
 「・・・シショー、みんなー、どこに居るんですかー?」


 うっそうと茂ったジャングル、此処にイエローが1人でいた
 しかも此処は島で、『なみのり』ポケモンのいないイエローでは、脱出しようにも脱出できないのだった・・・


 「・・・どうしよう」


 途方に暮れているイエローの背後から、突然・・・スリーパーが襲いかかってきた
 とっさにピカチュウの『チュチュ』を出したが、見事に攻撃をくらってしまった


 「わああああ・・・」

 「スキあり! スリーパー、『かなしばり』!」


 がさりと樹の上から灰色の服を着た女性トレーナーが降り立った、しかし技をくらったイエローは何ともない
 拍子抜けだが、トレーナーがいる以上バトルは避けられない・・・


 「チュチュ、『10まんボルト』!」


 ・・・・・・しかし、チュチュは硬直している


 「!!? どうしたの、チュチュ!!?」


 イエローがそばまで寄って、思考を読み取ろうとするが・・・出来なかった
 ・・・何度技の指示を言っても技は使えない・・・どうなっているんだろう・・・


 「教えてあげるわ、私のトレーナー能力は『封印』・・・『相手のトレーナー能力を使用不可にする』のよ」

 「!!?」

 「そしてスリーパーの『かなしばり』と併用すると、相手は『総ての技が使用不可となる』。
 そして、それが私の『特能技』・・・・・・ご理解して頂けたかしら?」

 「そ、そんな・・・」


 絶体絶命である





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・




 
 「・・・ここは・・・洞窟?」


 狭苦しい所である、湿気はこもっているし・・・あまり長居はしたくない
 クリスが手探りで前へ進むと、やがて柔らか固い何かにぶつかって・・・クリスがよろけた


 「ガハハハハハ、嬢ちゃんがクリスかい・・・弱そうでラッキーじゃ!」

 「え? あなたは・・・誰ですか!!?」


 灰色の服を着ている時点で、その質問は無意味に近い・・・しかしこの男、一言で言うならば『山男』そのものだ
 むさいヒゲは生えてるし、筋肉か脂肪か区別がつかないぐらいに太っているし・・・狭苦しく暗い所で・・・2人きりとは・・・おぞましい


 「嬢ちゃんが勝てたら、ここから抜け出せばいい・・・儂に負けたら、死ぬか・・・そうだな、嫁さんにでもなってもらうかなぁ?」

 「お断りです」


 どちらかといえば死んだ方がマシである、死にたくないけれど
 この勝負・・・絶対に負けられない・・・





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「あ〜〜〜、此処はどこだァ?」


 砂煙の中・・・ゴールドが辺りを見渡す、先程着地失敗をしてしりもちを付いた所が痛い・・・
 下の地面は砂やら灰やらが混じった・・・妙な土だ、草木の一本も生えていない
 上を見れば自然に出来たような・・・ドーム状になっていて、光が差し込んでいる


 辺りをキョロキョロと見回していると、ポケモン以外の何かの気配を感じた


 「・・・誰かいる」


 おそらく敵、あの組織が差し向けた刺客だろう
 着地の際に砂煙舞い上がり、今まで見えなかった相手が・・・少しずつ見えてきた





 傍らには『オーダイル』、身長は同じぐらい・・・・・・





 「お前の相手は、この俺だ」

 



 ゴールドの目が見開かれる、嘘だ・・・信じられない・・・


 「・・・・・・シ・・・ル、バー・・・?」





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