〜能力者への道47・闘四〜




 早くも敵を倒したシショーは途方に暮れていた


 訊けば、皆は散り散りに孤島へと飛ばされてしまったという


 となれば、合流は難しい・・・・・・あとは皆が無事に戻ってくることを祈るばかりである


 レッドとバウの闘い、タイプ相性的に有利だったはずのニョロとマッスグマ・・・だが、レッドが押され始めた


 彼の持つトレーナー能力の応用で、「かんぽうやくやきのみ」を拾って回復することが可能だったからだ


 そして決定的なダメージをニョロが受けてしまい、残るはブイのみ・・・


 一方、グリーンは謎の攻撃に苦戦していた










 「ハッサム、『メタルクロー』!」

 「ガルーラ、『すてみタックル』!」


 互いに距離を取って、更に相手に向かってお互いが突進し始めた
 ・・・もちろん、このままぶつかればグリーンの方が負けるだろう
 こちらの方が技の威力が低いため、呑み込まれ・・・ハサミごと、ハッサムの身体が壊れるかもしれない
 だからグリーンの狙いは実は上の『鍾乳石』にあった
 ぶつかるかどうかのギリギリでハッサムを跳躍させ意表をつき、石を鋏み(はさみ)斬り、鍾乳石の餌食にする
 ・・・今度はこちらが地の利を活かしてやるつもりだった


 ・・・・・・だが、いきなりだった


 相手のガルーラが突然、『すてみタックル』中に急ブレーキをしたのだった
 予想もしなかった・・・此方の意図が読まれたモノと思い、グリーン達の指示や動きも止まってしまった
 

 そして次の瞬間、グリーンとハッサムの身体が後方へと思い切り吹き飛んだ
 鍾乳洞の壁に背中を強打し、立ち上がろうとして・・・その場に崩れた
 ・・・・・・本人には見えないが、グリーンの背中は砕けた鍾乳石で血まみれだった・・・苦痛で顔がゆがむ


 「(・・・莫迦な、まるで・・・『すてみタックル』をモロに食らったような衝撃・・・!)」

 「ははん、驚いているようだな。 だが、まだまだだぜ」


 ジャバーがにやりと笑って言う


 「・・・いいか、物体には『エネルギー』が宿っている」


 身体は未だに「く」の時に折れ曲がり、グリーンは思うように動けない・・・ハッサムも同様にだ
 ジャバーがシュッシュと拳で空を突きながら、話を続けた


 「お前らの言う『特殊攻撃』なんてのがイイ例だ、ありゃ炎だか水のエネルギーやらの固まりだもんな。
 なら『物理攻撃』には無いのか、いやあるんだぜぇ。
 ・・・そう、俺のトレーナー能力は『遠当て』!
 『自分のポケモンの物理攻撃に宿るエネルギーを放出させる』ってもんさ」
 

 ・・・・・・厄介な能力だ、しかも強い・・・


 だから『れんぞくパンチ』を遙か天井の鍾乳石に当て、まるで雨のように振らせた
 先ほどの『すてみタックル』も同様、少々いきおいをつけてそのエネルギーだけを相手にぶつける


 ・・・・・・この能力の利点は今はふたつある


 ひとつめは『技を与えたときの反動がない』こと、『すてみタックル』はお互いがぶつかり合うから反動がある
 しかしこの場合は相手にぶつかるのはエネルギーだけで、本体はぶつからないので・・・反動はあり得ない


 ふたつめは『中・遠距離攻撃』が可能になったことだ、お互いのポケモンは『近距離攻撃型』ポケモンだ
 直接自身のキバやツメをぶつけなければ威力なぞない、そのためには相手の懐に入らねばならないリスクがある
 それが『近距離攻撃』、だが当たれば一撃で決まる可能性だってある
 逆に『中・遠距離攻撃』の場合、何らかのエネルギーを放出し、相手にぶつけるのが基本だ
 近距離攻撃とは違い、離れた所からの攻撃が魅力だが、反面避けられる可能性も高い
 そう、ヤツは近距離攻撃を中・遠距離攻撃に転換できるのだ





 「(ヤツの能力は近距離攻撃と中・遠距離攻撃を使い分けることが出来る。
 対して俺のハッサムの技は近距離攻撃が中心・・・・・・ならば!!)」


 グリーンが身体にムチ打ち、ハッサムと共に立ち上がった!
 ジャバーは「来いよ」と言わんばかりに、クイックイと手を動かした


 ハッサムがガルーラの懐に入り込み斬り裂こうとした、だが通常の『れんぞくパンチ』によって阻まれる
 体勢を整えるためか、ハッサムが後退する瞬間を狙って能力を発動し、『ピヨピヨパンチ』を放つ
 その衝撃とっさにを受け流し、そのまま上に飛んでまたガルーラに斬り込んできた


 「(やはり放出したエネルギーは前方にしかいかないようだな・・・)」

 「(・・・・・・読めたぜ、ヤツの狙いが! 『れんぞくぎり』か!!)」


 成る程、俺のガルーラの最強技『すてみタックル』の威力は120のタイプ一致で180・・・持たせた道具で『198』か
 対して『れんぞくぎり』は相手に斬りつけるごとに威力が倍になる大技、現在2回で・・・威力は20!
 10→20→40→80→160→320・・・6回目には確実に此方を上回るか・・・





 ガルーラとハッサムの攻防が続く、グリーンは指示をしていないが間違いなく『れんぞくぎり』を放ち続けている
 5回斬り込んできた瞬間に、ジャバーが動いた!


 「『すてみタックル』!」

 「『れんぞくぎり』!」


 ハッサムの両の腕が淡く光る、それには威力360ものエネルギーが宿っている・・・
 ・・・やはりというべきか、ジャバーは『すてみタックル』のエネルギーだけを放ってきた
 だが、今はこの程度のエネルギーなぞ軽く斬りとばせる・・・ハッサムがそのエネルギーの塊に突っ込んでいく!





 「・・・・・・勝負を急ぎすぎちゃねぇか?」

 「何・・・!!?」


 なんと、ガルーラ自身も後から突進してきた・・・・・・





 そして今までのバトルの中で、一番の轟音が鍾乳洞に響いた










 「・・・・・・これが俺の『特能技』さ」


 ・・・とっさに、技を受ける瞬間にハッサムが『れんぞくぎり』を『まもる』に切り替えた
 そのおかげで直撃はまぬがれたが、総ての衝撃は受けきれず・・・・・・今度はグリーンがぶつかった壁が砕けた 


 グリーンとハッサムはがれきに埋まり、動くことはなかった
 ジャバーとガルーラがそれに、ザッザと歩み寄っていく・・・完全に息の根を止めるためにだ


 「冥土の土産に教えてやる。 トレーナー能力で放出された打撃エネルギーってのは、ふつうの攻撃よりも進む速度が遅いんだ。
 進む速度が遅い、ならばそのエネルギーに追いつけないかどうか。
 ・・・そう、エネルギー放出しない『すてみタックル』で。
 追いつくのには刹那のタイミングが必要だったがな、成功だよ。
 一度放出した198のエネルギーに追いつき、それを更にまとうんだ・・・すてみタックルの上から。
 単純に198+198じゃねぇ・・・・・・ヘタすりゃそれ以上かもしれないがな。
 これが俺の特能技、『ダブルインパクト』・・・っと、もう聞こえてないか」


 ボリボリと頭をかき、ガルーラに『ピヨピヨパンチ』の指示を出した
 その拳は、エネルギーの塊はがれきに埋まったグリーンに・・・・・・





 ドゴォオオンと衝撃音が響いたが、息の根を止めることは出来なかった
 その拳は倒れたはずのハッサムが受け止めたからだ、グリーンも立ち上がった
 ・・・これにはジャバーも驚いたらしい

 
 「莫迦な、俺の『ダブルインパクト』を食らって・・・立てるはずがない!」


 たとえ、『まもる』で衝撃がやわらいだといって・・・あの深手で立ち上がれるわけがない!
 ジャバーはザッと後方に下がった、しかしグリーンは動かない・・・
 ただヒューヒューと細かく息をするだけで、ハッサムも満身創痍だった
 だが、そんな状態で・・・グリーンが息絶え絶えに言った


 「・・・・・・も、う一度、放っ、て・・・みろ・・・・・・」

 「な、何だと!!」

 「でき、な、いの・・・か・・・・・・?」

 「死に損ないメが! ・・・お望み通り、くれてやる!」


 ガルーラが再び『ダブルインパクト』を放つ体勢に入った、しかしグリーンは動かない
 ジャバーの指示と共に、ガルーラが最初のエネルギーを放ち、それを追いかけ始めた


 「今一度食らえ、『ダブルインパクト』ォッ!!」


 ガルーラがエネルギーに追いつく・・・・・・しかし、グリーンはその場からまだ動かない





 ・・・・・・呼吸を整えろ、息を乱すな・・・常にポケモンとあれ






 形無き敵を切り裂け、勝つんだ・・・今こそ、解き放つんだ・・・





 「破壊の鋼爪・・・『ディス・クロー』!」










 瞬間の出来事だった
 ハッサムの両腕が今まで以上に強く光り、そして交差して相手を・・・エネルギーの塊ごと斬り裂いた


 『ダブルインパクト』時は通常の『すてみタックル』の2倍以上のエネルギーを身にまとっている
 エネルギーは攻撃だけでなく、厚い防御にもなる・・・・・・しかし、ハッサムはそれを斬り裂いた 





 交差に斬り裂かれたガルーラ、その衝撃でジャバー共々・・・テレポートの光で姿を消した





 ・・・と、グリーンはここまで覚えていた


 そこで・・・意識が途絶えた、背中から・・・・・・大量の鮮血を流しつつ・・・










 シングルバトル決着 〜フィールド・鍾乳洞〜


 グリーン&ハッサム♂VSジャバー&ガルーラ♀

 かろうじて勝者グリーン、だがここは『引き分け』とみなす・・・・・・


 ジャバー『遠当て』・・・打撃エネルギーを放出する出来る。
 そのため、すてみタックルなどの技の反動を受けない
 近距離攻撃を遠距離攻撃にも転換するので、間合いの外からの攻撃が可能。

 グリーン『???』・・・詳細不明


 使用した特能技

 ジャバー『ダブルインパクト』・・・使用ポケモン・ガルーラ

 すてみタックルのエネルギーを放出し、そのエネルギーに更にすてみタックルで追いつく
 通常のエネルギーの倍は越え、まとったエネルギーは厚い防御ともなり・・・その突進を防ぐ術はなかったハズ


 グリーン〜破壊の鋼爪〜『ディス・クロー』


 詳細不明


 







 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「・・・トレーナー能力、ですって!!?」

 「ええ、今からみせてあげるわ」


 ブルーがフッと笑った、そう・・・この能力に気づいたのは





 ・・・・・・昨日の夕方、シショーからの休憩時間の時だった

 
 アタシはクリスと一緒に、海のポケモンを倒し捕獲する特訓をしていた
 そこで出てきたのは『まきつく』主体のドククラゲとメノクラゲ軍団
 そして『スパーク』のような特殊攻撃を扱う、チョンチーだった
 この激しい海流の中生息する、なかなかレヴェルの高い相手だった


 アタシの使用ポケモンはぷりり♀とカメちゃん♂


 ・・・・・・そして倒している内に、あることに気がついたのだった


 それは、倒したドククラゲ達の8割以上が『メロメロ状態』になっていたこと
 ・・・そのバトルでは『メロメロ』なんて使わなかった
 ♂ならわかる、でも・・・・・・♀ポケモンも含めてだった





 「・・・そう、アタシの能力は『手持ちポケモン総てに特性・メロメロボディを追加する』こと。
 この能力で・・・・・・アタシはあなたを倒す!」


 するとどうだろう、いきなりルキが腹を抱えて笑い出したのだ


 「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・ハハハハァ、おっかしいvv 何それ、勝てっこないじゃ・な・いvv
 だって私のペルトーネは♀ポケモンでしょ、そっちも♀じゃないのぉ〜〜〜vv」

 「恐いの、負けるのが?」


 ブルーのその自信満々の口調に、ルキがカチンときたらしい
 しかし、確かに相手の言う通りではあるのだが・・・・・・


 「ム〜〜〜、何よそれぇ!! 私が負けるって言・い・た・い・の〜〜〜ぉ!!?」

 「ええ、そうだけど?」

 「ペルトーネ!!」


 相手が素早く上へと跳躍した、あの体勢から察するに・・・『特能技・ラッキー☆クラッシュvv』だろう
 しかしブルーは何の指示も与えない、威力は先ほど見ての通り・・・知っているはずなのに、だ


 「『ラッキー☆クラッシュvv』!!」


 ペルトーネが落下してくる、攻撃態勢は整っているといえよう・・・・・・


 「ぷりり、『ころがる』!」

 「!!?」


 ブルーが相手の技のタイミングを見極め、その行動の指示した
 ぷりりの身体が丸くなって、ゴロゴロと転がり・・・そのまま攻撃をさける
 そして旋回し、攻撃対象を見失った相手にそのままぶつかり・・・・・・相手がはじき飛ばされた


 「ああっ!」

 「『攻撃は最大の防御』、ってね」


 ぷりりがブルー元に戻ってから転がるのをやめた、相手はまだ起き上がってくる・・・しぶとい


 「ペルトーネ、『いばる』!」


 『こんらん』させるのが目的か、しかしぷりりは平然としていた
 いや、むしろ・・・・・・状態異常になっているのは向こうの方だった
 

 「・・・・・・え?」

 「・・・やっぱりね、『把握』通りかしら」


 ブルーの言葉に、ルキが自らのポケモン図鑑を開いてみた
 ・・・・・・そして目の方も見開かれた


 「嘘でしょ〜〜〜ッ!!? 何で、ペルトーネが『メロメロ状態』になってるのよ〜〜〜ぉ!!?」

 



 8割以上がメロメロ状態になったドククラゲ、カメちゃんは海上の足場目的だったから、戦うことは殆どしなかった
 相手も攻撃対象にしてはこなかった・・・ということは、ぷりりが・・・・・・♀ポケモンをも魅了したということになる・・・のか


 そして、アタシは『想像』し・・・・・・『覚醒』したのだった

 
 その後はクリスとポケモン交換をして、確かめた


 ・・・・・・ボールは軽い衝撃と共に手の内から弾かれたのだった





 「さぁ、終わりにしましょう・・・もう一度、『ころがる』の攻撃!」


 ぷりりがゴロゴロと辺りを転がる、その速度はどんどんと上がっていく・・・
 一方では、ルキがじたばたとペルシアンに指示を出してはいるが・・・思うようにはいかなかった


 ・・・・・・速度が充分に乗った所で、ぷりりはペルトーネを吹っ飛ばした


 ドシャリと地面に落下した瞬間に、ルキの身体が淡く光り出した・・・テレポートの光だ


 「・・・アタシのトレーナー能力名、そうね・・・『フェロモン』にでもしておきましょうか。
 『異性同性関係なく打撃攻撃してきた相手を魅了する、特殊なメロメロボディを手持ちポケモンに与える』力。
 まだ『把握』しきれていないし、昨夜のことも全部確かめられなかったな・・・」


 ルキが思い切り悔しそうな顔をして、消えていく・・・ブルーがウインクして言った


 「本物の魅力ってのはね、元々男女なんか関係なく通じるものなのよ。 言ったでしょ、『魅せてあげる』って・・・」










 シングルバトル決着 〜フィールド・草原〜


 ブルー&ぷりり♀VSルキ&ペルトーネ(ペルシアン)♀

 勝者ブルー 敗者ルキ


 使用したトレーナー能力

 ブルー『フェロモン』・・・異性同性関係なく打撃攻撃してきた相手を魅了する、特殊なメロメロボディを手持ちポケモン全員に与える。
 ただし、異性なら60%強で魅了できるらしいが、同性はまだ15%前後だとか?
 まだ完全に『把握』していない。

 ルキ『ラッキー☆ヒットvv』・・・威力40以下の技は総て急所に当たる。
 それは連続攻撃でも対応される。
 『ねむりごな』のような、状態異常を引き起こすなどの急所に当たることのない技には影響がない。
 

 使用した特能技

 ルキ『ラッキー☆クラッシュvv』・・・使用ポケモン・ペルトーネ

 空中に高く飛び、その落下速度と高速の『みだれひっかき』による技。
 一撃一撃は40以下なので、総て急所に当たる。 その威力は鉄でさえ、砕く。
 ただし、高く飛んでいる間などに避けることは可能。
 『いばる』と併用して扱えば、ブルーはもっと苦戦していたのではないだろうか。
 




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