〜能力者への道49・闘六〜




 <・・・勝ちたいか?>


 唐突に響いた頭の中の<声>、そして与えようという『力』


 そして条件として、レッドは完全な能力者になることを要求される


 夢である『ジムリーダー』にもなれないかもしれないし、皆に迫害を受けるかもしれない


 しかし、それでもレッドは皆の平和な日常のために・・・その力を得ることを了承する


 砂浜を駆け抜け、<声>と共に叫び放て・・・・・・『特能技』!










 「・・・・・・勝った」


 もうすでにあの『幻聴』は聞こえない、試しに頭をポカポカ叩いてみたが・・・変化ナシ
 砂浜に横たわっているのはバウとフーディン、機密保持のための『テレポート』の光が発し始めた


 「『大恩の報』・・・か」


 もの凄い威力だった・・・・・・のだろうか、少なくとも彼らを一撃で倒すだけの威力はあったらしい
 名称からして、何だろう・・・『おんがえし』の強化版なのだろうか
 レッドの能力は『ポケモンのなつき度に関する』ものだから、その点ではピッタリとも言える
 通常の『おんがえし』と同じように、相手へ向かって突撃する・・・違うのは『トレーナーも一緒に』という点か



 

 横たわり、テレポートの光で輝くバウが息絶え絶えに言った

 
 「テメ・・・こ、んな技隠・・・し、持っ、てたの・・・かよ、正々、堂々じゃ・・・ねぇな」

 「・・・全く、よく言うよ」


 レッドがはぁとため息をついた、こっちだってボロボロだ
 ・・・バウが息を整え、にやりと笑って言った


 「・・・・・・消えるまでの間、お前の質問に答えてやる。
 負けたんだから、正々堂々と嘘なんかつかねぇぞ・・・」

 「本当か!!?」


 そうだ、訊きたいことは山ほどあるんだ・・・腕輪とか、四大幹部の能力とか
 だがしかし、今はそれらよりも優先すべく質問事項があった


 「飛ばされた皆は何処に居るんだ?」

 「知るか」

 「オイ、話が違うだろ」

 「わからねぇことを答えられるわけねぇだろ。
 だがまぁ、この『ナナシマ』海域の孤島にそれぞれ飛ばされたみたいだぜ」


 範囲が広すぎるじゃないか


 バウが思い切り嫌な発言をした後、その姿が消えた・・・・・・なんつー無責任な
 レッドがぼりぼりと頭をかき、ボールの中の『ギャラ』を見て言った


 「・・・・・・一旦、『2の島』に戻ってみるか」


 彼処ならばもう誰かがいるかもしれないし、『圏外』になりかけているポケギア以外の連絡手段もあるかもしれない
 とりあえず向かってみよう、そう思い・・・レッドが地図を取り出そうとポケットに手を入れたときだった
 ・・・・・・ポケモン図鑑のライト部分が、チカチカと点灯しているのに気がついた


 「あれ? これは・・・・・・」





 




 シングルバトル決着 〜フィールド・たからのはま(浜辺)〜


 レッド(エーフィの『ブイ』♂&ニョロボンの『ニョロ』♂)VSバウ(フーディン♂&マッスグマ♀)

 勝者レッド 敗者バウ


 使用したトレーナー能力

 レッド『なつき度に関する能力(名称未決定)』・・・ポケモンがよくなつく能力・・・?
 『おんがえし』の威力は常にMAXか・・・?
 もちろん、完全に『把握』していない。
 
 バウ『捨てる神有れば拾うおれ有り』・・・『ポケモンの腕の数だけアイテムを持たせることが出来る』能力。
 しかし、どちらかといえばマッスグマの『落ちているアイテムを自由に拾い、自由に捨てる』能力の方を使用しているらしい。
 複数のアイテムを持たせるのは、トレーナーとしてのレヴェルも必要になるからである。
 ポケモン中最多の腕(?)『カイリキー』を使わないのは、トレーナーとしてのレヴェルがまだ低めからだとか。


 使用した特能技

 レッド『大恩の報』・・・使用ポケモン・ブイ

 トレーナーがポケモンと共に敵へ突撃する技。
 その詳しい威力、効果は不明。 『おんがえし』の強化版・・・?










 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「・・・チュチュ、大丈夫?」


 もうどれだけ逃げ回っただろうか、未だに何故相手が自分の隠れている場所がわかるのかも不明だ
 イエロー自身もへとへとで、ズズッと樹の幹によりかかりずり落ちた


 「・・・・・・負けたら、ボクどうなるんだろう」


 何処かへ連れさらわれて、洗脳とかされてしまうのだろうか・・・・・・それはずいぶん前に見た映画の話だ
 考えたくはないが、一番現実的なのは・・・・・・ゲーム・オーバー・・・殺されることだ
 まさかそこまではしないだろうとは思う、だけど・・・やっぱり発想はそちらの方に傾いてしまう


 「・・・いけない」


 イエローが自分の頬をバチバチと両手で叩いた、弱気になっちゃ駄目なんだ
 無事にレッドさんやシショー、皆の所に帰るんだ
 ・・・・・・その為にはあの敵さんに勝たなくてはいけない、どうやって・・・


 「簡単な話、相手の『かなしばり』を食らわなきゃいいんだよね」


 だけど、かけられた『かなしばり』の効果がきれるまでには必ず彼女がイエローの居場所を探し当ててしまう
 どんなにうまく隠れても、なんだかあっという間に見つけられてしまうのだ


 「もうひとつは、チュチュの『とくせい』なんだけどな・・・」


 チュチュの特性は『せいでんき』、物理攻撃をしてきた相手をたまに『まひ』状態にするものだ
 さすがに相手の『かなしばり』でも、ポケモン自らが持つ特性までは封じることは出来ないはずだ
 ・・・・・・しかし、相手の技は主に『特殊攻撃』だから・・・望みは薄だ


 「・・・・・・あれ? もうひとつ、忘れてるような・・・」


 そう、あれは確かバルーさんとの戦いでふと思ったことだっけ・・・・・・


 イエローが必死でそれを思い出そうとする、思い出せれば・・・もしかしたら勝てるかもしれない!





 「・・・見ィつけたぁ」

 「・・・・・・あ、見つかっちゃいましたね。 じゃ、ボクはこれで失礼します」

 「・・・あ、そうなの。 気をつけてね」





 ・・・・・・妙な間が空いた後、相手がグワッと襲いかかってきた
 イエローが頭を抱えて、その横をチュチュが走って逃げ出した


 「うわーん、やっぱりごまかせなかったぁ」

 「当たり前でしょ!」


 チュチュの『かなしばり』状態はまだ解けていない、このまま逃げ続けるほか無い
 しかし相手はしつこく追いかけてくる・・・・・・当然なのだが


 <・・・しょうがないなぁ>

 「何処に逃げたらいいんだぁ〜!!?」

 「逃すか!」

 <・・・・・・駄目かぁ、全く私の声が聞こえてないや>


 しかしまぁ、この状況じゃ無理もないだろう・・・逃げるだけでいっぱいいっぱいなのだから
 

 <・・・・・・というか、まだ・・・私の声が聞こえるレヴェルまで達していないのかな?>


 それじゃあ問題外である、助けようにも助けられるものじゃない
 <声>の主がうーんと考え始めた・・・


 その頃、イエローは追っ手からまた逃げることに成功していた・・・ただし、『かなしばり』をまたかけられてしまったが
 自分もまさかこんなに足が速いとは思わなかった、どちらかと言えばトロい方かと・・・


 「(・・・火事場の莫迦力かな?)」


 少々用法が違う気がするが、この際それは放っておくことにしよう
 走った所為で心臓がバクバクいっていて、とてもじゃないがものを考えるのは難しい


 「えっと、えっと・・・何を思い出そうとしてたんだっけぇ!!?」


 思い出そうと必死になれば成る程、その記憶が遠ざかっていく気がする・・・
 イエローがうんうんとうなっている・・・





   対の人よ 対なる人よ

   あなたを想い ただ 愛しさつのるばかり

   傷つかないで ただ あなただけが傷つくばかりで

   癒してあげます それしか 今は私は出来ないから

   傍らにいてあげます 心休まる時を過ごせるように

   あなたと共に 私はいたい

   あの日 結ばれるはずだった あなたと私を離した・・・・・・










 ・・・・・・心臓の高鳴りが静まってきた、気持ちが落ち着いてきたのだ・・・ハッキリとわかる
 イエローは不思議に思った、さっきまでゼィゼィ言っていたのに


 <たとえ私の『歌』を頭で感じ取ることがなくても、身体はそれに応えてくれる。
 ・・・落ち着いて、思い出して・・・あなたの『勝機』を・・・>

 「(・・・・・・そうだ、バルーさんの戦いの時、思ったこと・・・)」


 バルーさんの持ちポケモンは『ラグラージ』と『カイリュー』
 一緒に戦って勝機を見いだしてくれたゴールドさん、トドメはボクがしたんだっけ・・・
 それから、それから・・・・・・





 瞬間、イエローの中で何かがはじけた


 「・・・そっか、そうだよ。 うわぁ、何で今まで気づかなかったんだろ!」


 何かを思いだしイエローがそれを喜んでいたが、ピタリと固まった


 「(・・・・・・でも、ボクに出来るんだろうか)」

 <大丈夫、あなた自身とあなたのポケモンを信じてあげて>


 ・・・・・・何だかよくわからないが、誰かに勇気づけられたみたいだ
 イエローが再びバチバチと頬を叩くと、足下のチュチュを見た
 体色、瞳の色から『かなしばり』状態は・・・・・・あと1分ないハズだ





 「今度こそ、逃さないわよ!」


 タイミングよく、相手の女性とスリーパーが草むらから飛び出してきた!
 しかしイエローとチュチュはもう逃げない、ぐっと身構える・・・


 「逃げないの? なら、これで終わりよ!
 スリーパー、『ほのおのパンチ』!!」


 『ゆめくい』や『あくむ』なんかじゃなかった、だがヘタに食らえばこちらの負けだ・・・
 タイミングは一瞬、それまで・・・・・・信じるんだ、ボクとチュチュを!
 チュチュもスリーパー目がけて走り出した、ダメージで少々身体がヨロけながらも





 そして両者が激突した
 チュチュが地面にどさりと落ちた・・・・・・










 スリーパーの拳が固まっている、いや・・・・・・スリーパー自身が固まってしまっているのだ
 ・・・チュチュがむくりと立ち上がった、相手は呆然としている


 「スリーパー!!?」

 「・・・・・・やっぱり、そうだったんですね」

 「!!? まさか・・・」

 「『特能技はポケモンの技の内に入らない』、すなわち・・・あなたの『かなしばり』の対象にもならなかった」


 バルーさんのポケモンで気づいたのだ、彼の特能技は『天氷震撃』・・・4つの技の複合したものだった
 しかし、ラグラージとカイリューはそれぞれ技4つ・・・つまり技をめいっぱい覚えていたのだ
 これがあれっと思ったことだった、そして気づいたのだった・・・
 能力者とパートナーの個性の融合である『特能技』は、その特殊すぎる効果や威力から・・・正規の技として扱われないことに


 


 「・・・名前はまだ決まってないんですけどね、何だかイチかバチかって感じもありましたけど」

 「(まさか、こんなおチビちゃんに・・・!!?)」


 チュチュの体色が、瞳の色がスゥッと元に戻っていく・・・『特殊なかなしばり』がとけたのだ
 イエローが言った


 「『10まんボルト』!」

 「うわぁあああ・・・・・・」


 相手のトレーナーにまで届いた電撃、ようやく放てた技だった





 でも・・・・・・やっぱり一撃じゃ倒せなかった、この人達は本当に強い・・・
 しかし相手は『まひ』状態になったし、体力だって互角ぐらいにはなっただろう
 このままトドメといきたいところだが、その前に相手の身体が光り出した


 「!!?」

 「私の名前は『シール』」

 「・・・・・・え?」

 「悪いけど、今日の所はこれまで。 次こそ、あなたを・・・・・・始末する」


 そう言い残して、シールという女性はその姿を消した
 このまま戦い続けても、互角かそれ以下になってしまうという判断からだろうか
 ・・・・・・『引き際を知っている』、彼女はこれから・・・まだまだ強くなれるだろう





 「・・・・・・とりあえず、ボクの勝ちかなぁ」


 早速、イエローはチュチュに手をかざし、回復を始めた


 「・・・ごくろうさま、チュチュ」

 








 シングルバトル決着 〜フィールド・密林〜

 イエロー&ピカチュウの『チュチュ』♀VSシール&スリーパー♂

 勝者イエロー 敗者シール


 イエロー『トキワの癒し』・・・HPが1でも残っていれば体力を回復させることが出来る。
 だだしPPは回復しない、回復にはある程度の時間がかかる、同時回復はまだ出来ない。
 レベルアップで能力者によるダメージも回復可に、バトル中でも出来るようになった。
 完全な『把握』まで、あと少しか・・・?

 シール『能力封印』・・・相手の『トレーナー能力』を使用不可にする。
 ただし、『特能技』は封印出来ない。


 使用した特能技

 イエロー『名称不明』・・・使用ポケモン・チュチュ
 
 詳細不明。


 シール『かなしばり』・・・使用ポケモン・スリーパー

 自らのトレーナー能力と併用することで、ひとつだけでなく相手ポケモンの総ての技を使用不可にする。
 ただし効力は永続ではなく、2〜5ターンできれてしまう。





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