〜能力者への道51・闘八〜




 クリスVS雪山男のヒョガン!


 能力を持たないクリスは、トリッキー(?)なヒョガンの『特能技・氷箱』によって苦戦する


 そして『氷箱』内部ではヒョガンと氷・炎ポケモン以外は総て凍り付いてしまうという


 『なみのり』の攻撃と『れいとうビーム』の効果も加わり、クリスとエビぴょんの身体は凍り付いた!


 しかし、クリスは死の境で立ち直り、ヒョガンを『キックボクシング』で撃破した


 残るバトルは・・・・・・ゴールドVSシルバーであった










 話を、時間をまたさかのぼる
 




 「・・・・・・シ・・・ル、バー・・・」

 「そうだ。 お前の相手はこの俺だ」

 
 ゴールドの目の前に立つそのライバルの姿を、じっと凝視した
 ありえない
 そんなバカな
 あのシルバーがどうして
 俺達を・・・・・・裏切ったっていうのか・・・
 そんな思いがゴールドの頭の中でうずまいた、そして答えを出した


 「テメェ・・・偽者だな! シルバーの姿なんか借りやがって!! ぶっ飛ばす!」

 「偽者? 俺が、か?」

 「そうだ! テメェなんかシルバーじゃねぇんだよ!」


 ゴールドの憤怒の形相、盛大な怒鳴り声・・・それらをシルバーは一笑した


 「・・・くだらん」

 「んだとォ!!?」

 「じゃあ訊くが、お前が俺の何を知っていると言うんだ?」

 「!!?」

 「お前がそこまで言うんだ、この俺が『偽者』だと、言い切れるその根拠は何だ?」


 あくまでも冷静な言葉、その口調、仕草・・・何をとっても本物そのものだ
 それ故にゴールドも動揺を隠せない、心の底から信じたい・・・・・・
 ・・・だが何処かで本当にシルバーは俺達を裏切ったという考えを捨てきれぬ自分が居る
 ゴールドはぶんぶんと頭をふった、そんな考えをそこから追い出すかのように


 「シルバーが俺達を裏切るわけねぇ、だから・・・テメェは偽者だ」

 「まだわからないのか? 
 それとも・・・目の前のことから目をそらしていたいだけなのか。
 ・・・オーダイル、あの莫迦の頭を冷やしてやってくれ」


 そう言うと傍らにいたオーダイルがごく弱い水流を放ち、ゴールドの顔面に当てた
 頭からびしょ濡れになったゴールド、しかしその目は怒りで満ちていた


 「・・・『ともしび温泉』に泊まった日のことを覚えているか」

 「・・・・・・」

 「俺はその時に『勧誘』されたんだ。 そう、ディック様にな・・・」






 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 湯船に入ってきた謎の男、仮面の男以上のプレッシャー・・・そして何より・・・


 「貴様、何故俺の名を・・・・・・」

 「知ってるよ、そりゃ。 初めまして、『四大幹部』がディックです」


 ・・・・・・こいつがディック・・・!!?


 あの先輩トレーナーであるレッドとグリーンのタッグをうち倒した男・・・!
 仮面の男以上・・・いや、あのジークにも匹敵するプレッシャーを・・・こんなへらへらしたヤツが、か!!?
 それに、そんな男が何故こんな所に・・・しかも外にはまだ他の皆が居るというのに!!?


 「・・・あ〜、良い湯加減だねぇ」

 「ふざけるな! いったい何の用だ!!? まさか俺に何か・・・」

 「・・・・・・あっ、そうか。 ただ温泉につかりに来たんじゃなかったんだっけか」


 ディックと名乗る男があはははと笑った、洞窟内の温泉なのでその声がよく響いた
 ・・・・・・いけない、油断も隙だらけに見えるが・・・そう甘いヤツでもない
 1人でいては危ない、皆の所へ急いで戻ってこのことを知らせなければ・・・・・・!!


 「まァ待ってよ、シルバー君」

 
 ディックの制止の声を聴かず、シルバーがそのまま去ろうと駆け出し始めた
 仕方なしに、ディックが言った


 「動くな」


 ビシィッと金縛りにあったようにシルバーの身体が硬直した
 汗がぼたぼたと落ちる、決して風呂場が蒸し暑いだけじゃない・・・


 「自分から用件を訊いておいてさぁ、そのまま行っちゃうってどうなのよ」

 「・・・・・・俺に用件とは、いったい何なんだ・・・!」

 「ん、それは・・・・・・」





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「もういい、それ以上喋んじゃねぇ・・・!」

 「・・・・・・」


 ゴールドの声が震えている、握った両拳から血がにじみ出ている・・・
 シルバーは沈黙している


 「テメェはそいつにビビって・・・軍門に下った次第、ってか!!?」

 「・・・・・・ビビリとは違うがな。 その通りだ」

 
 あくまでも冷静な声、怒りに満ちたゴールドとは正反対の声だ
 

 「ゴールド、『ゲーム上の正義』を知っているか」

 「・・・・・・」

 「いかに相手がどんな夢を持ち、信念を携えようと・・・勝つのは常に正義を誇称する者達だ。
 じゃあ、その『ゲーム上の正義』とはいったい何なのか。
 人々を傷つけるモンスターを倒す者達が正義そのものなのか、それは違う。
 ゲームをプレイしているという自覚がある者が、その『正義』なんだ。
 それ以外の者は『正義』を邪魔する者として倒されたり、あるいは正義を誇称する者達に服従する。
 簡単な話だろう? だから俺は、ゲームをプレイする方へ回ったんだ・・・・・・」

 「腐れ組織が言ってるゲームのご高説なんざ、聴きたかねぇよ・・・」

 「・・・話は最後まで聞け。 
 俺はゲームをプレイする方へ回るわけだが、それには条件があった。
 それは・・・・・・」





 「お前を始末すること」

 「俺を始末すること・・・」


 2人が同時に言った、「・・・だろ、当たりだな」とゴールドが鼻で笑った
 言動の先を読まれていたことにシルバーは驚いた
 だがゴールドはかけられた水のおかげで少々冷静になってきたようだ


 「・・・わからいでか。 じゃなきゃ、裏切ったテメェが何で俺の前にいるのかが説明つかねーだろうが」

 「そうか」

 「そうか、じゃねぇーだろうがよォ!」


 ゴールドが手にボールを持ち、『バクたろう』を出した
 シルバーがフッと笑った


 「いつかの・・・・・・『マダツボミのとう』と同じか。
 ・・・いつまで経っても成長しないな、お前は。
 『相性は気合いだの根性とは無関係に存在する』・・・忘れたとは言わせないぞ」

 「るせー、ならおんなじセリフをそっくり返してやらぁ。
 『研究所で仲よかったワニノコに戻ってきてほしい』。 ・・・だから!
 『こいつが戦いてえってんなら、それで勝つしかねぇ!!』
 ・・・・・・どうしてもっつーんならよォ、俺はテメェを止めねぇよ。
 だけど、俺は今のテメェになんざ負ける気もさらさらねぇ!!」


 ゴールドとシルバーが互いににらみ始めた・・・


 「相性をまともに考えず、くだらん感傷ごときに惑わされるお前に俺が負けるとでも?」

 「はんっ、決まってんだろ!
 ・・・少なくとも、今のテメェは俺よか弱ぇんだよ・・・」

 



 「「決着をつけてやる」」
 
 



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