〜能力者への道53・闘十〜




 シルバーVSゴールド・・・廃墟フィールドにてついに始まった


 巧みな地形利用、圧倒的なタイプ相性差に翻弄されるゴールド


 そしてシルバーが放つ『うずしお』、フィールドは底なし沼と化し・・・ゴールドは土中へ・・・


 ・・・・・・ゴールド抹殺任務完了をディックに告げるシルバー、2人の闘いは終わった


 ・・・と思った瞬間、ゴールドは迷いを吹っ切り土中より復活した!


 水流を電気分解する『かみなりパンチ』、続けて『オーバーヒート』で本当の勝敗がつく


 ・・・・・・一方、ディック達の方で何やら・・・そのディックの悪巧みが露見した模様


 そこで明かされたディックの計画、その真実が・・・・・・シルバーの暗殺だった


 シルバーに差し向けられた刺客の名は・・・『幹部候補』が最強の男、ジン!










 ・・・・・・ディックがタツミに人を集めて貰い、計画を実行に移してから、1時間が経過した時のことだった
 すでにこの頃にはレッド達はちょうど、それぞれの刺客と闘い始める・・・そんな頃合いだった


 ジークが独り、暗い廊下を歩いている・・・・・・
 不意に声がした、まだ若い青年のものだ


 「ジーク様、お話があるのですが」

 「・・・何用だ、『フリッツ』」

 「ディック殿が兵を動かしました」

 「・・・・・・個人の兵をどう動かそうが、俺の知ったことではない」


 だが、そのことが・・・気になるのは事実だった
 

 カントー襲撃には早すぎるし、ましてやホウエン地方を狙うなぞ以ての外だ
 しかしそれ以外の地方はほぼ制圧は完了している、何らかの用事でも思いついたのだろうか
 




 「動かした兵の数と、階級は分かっているのか」

 「動かした兵の数は『6』と記録されています。
 階級は皆『小隊長クラス』以下、そして『青の腕輪』を持たぬ者達です。
 そして気になるのは彼らの行き先でしょう、それは・・・・・・『2の島』」

 「2の島、か・・・・・・」


 確か・・・レッド一行が其処へ向かっていると、『尾行者』からの報告があった
 『尾行者』の名は『アンド』、いざとなればそこらのトレーナーに化けることが出来る能力者だ
 決して見つかることのない男だ、会うたびに顔が違う・・・尾行にはある意味うってつけの能力だ
 階級は『小隊長クラス』・・・確かディックの指示で動く者だったな
 

 ・・・・・・ディックの放った刺客
 レッド一行を潰す目的ではないな、ヤツはそれ程莫迦じゃない
 まだ能力者としての実力が皆無な者達など、『幹部候補』の1人や2人で事足りる
 だが、それをしないということは・・・・・・潰す以外の『目的』がある、ということだ


 思いつくとすれば、それは・・・・・・





 「・・・フリッツ、至急・・・『幹部候補』以上の者達、総ての所在地を突き止めろ」

 「・・・・・・わかりました、善処致します」
 

 ・・・フッと青年の気配と声が消え、暗い廊下に静寂が戻ってきた・・・
 ジークは元来た道を戻り始めた、もちろん・・・・・・ディックに会うため、だ


 「・・・全く、彼奴は・・・!」


 レッド一行へ差し向けた刺客、ディックのその目的は・・・・・・





 修行
 レッド一行の能力者・トレーナーレヴェルを上げるために・・・だ!






 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・




 
 「・・・・・・なんだ、そこまでバレてたんだ?」

 「・・・どういうつもりだ、ディック」

 「わざわざ彼奴らを成長させるために? それこそ『面倒臭い』ことじゃないの?」


 リサがため息をつきながらディックに問う、確かにそれは『面倒臭そう』なことだった
 何よりそういうのを好まないのが、ディックの性分であるはずなのに、だ・・・


 「・・・・・・気まぐれ、かな?」

 「わざわざジンをシルバーの刺客に選んだ選んだ理由は?」
 
 「・・・そうね。 確かに能力者にもなってない、あれ程度なら・・・別の幹部候補でもいいのに」

 「・・・・・・んー、ぶっちゃけ言うとね。 この任務、絶対に失敗させたくないから、かな。
 逆に訊くけど、ジン以上の能力者って・・・すぐに思いつくかい?
 彼はもう『幹部候補』の器じゃない、俺達『四神王』にも匹敵する力を持ってる。
 それは事実であり、くつがえせない真実・・・・・・」


 確かに、ジンに勝るとも劣らない能力者・・・とくれば、どうだろう・・・
 ディック達、『四神王』・・・あとはタツミ達、『四高将』ぐらいのものだろうか
 兎に角、彼はそれだけ強い・・・・・・だが決して、高みの称号へと上がってこない存在


 「ってゆーかさ、ジンが『上』に来ない訳って・・・ジークが原因じゃん」

 「・・・あ、そうよねー。 ジーク、アンタの所為なわけね」

 「・・・・・・フン」


 ジークがフイとそっぽを向いた、ディック達がやれやれとため息をついた
 ・・・・・・タツミが、とりあえず・・・作戦の全貌を話して欲しいのですが、とディックに言った
 ディックが「面倒臭い」と言おうとした時、全員がぎろりとにらみつけ・・・渋々と紙に書き始めた





 レッドVSバウ・・・フィールド・たからのはま

 グリーンVSジャバー・・・フィールド・鍾乳洞

 ブルーVSルキ・・・フィールド・草原

 イエローVSシール・・・フィールド・密林

 クリスVSヒョガン・・・フィールド・洞窟

 ゴールドVSシルバー(偽)改め『アンド』・・・フィールド・廃墟

 シルバーVSジン・・・フィールド・???





 「このさ、『アンド』・・・コイツ、あのバルーの戦いの後、アンタが指示したんじゃなかったっけ。
 『任務・レッド一行を尾行するように』、って」

 「そうだよ」

 「尾行させていた理由は、彼奴らの動向を調べるため。
 それと、『シルバーに化ける際、ボロが出ぬよう・・・仕草などを覚えさせる』ためだな?」

 「ピンポーン、流石ジーク・・・大正解。
 ついでに言えば、アンドが向こうで癖とか覚えさせている間、こっちも色々調べてたのよ。
 シルバーの過去を、出来るだけ・・・ね。
 なんせ闘わせる相手がゴールドでしょ、過去とかの話が合わなきゃバレるからね。
 それと過去は大体アンドの口から言わせた、先手を取って・・・少々違ってても、向こうが訂正してくれるように」


 確かに、ゴールドVSシルバー(偽)の戦いでは、ひっきりなしに・・・色々と過去の話を引き合いに出していた
 それはアンドが本物のシルバーになりすますため、無意味・・・必要以上に言ったのだろう
 それが原因でバレたワケではないが、ゴールドは充分に騙すことが出来た・・・


 


 「・・・お前、まさか・・・最初っから彼奴らをレヴェルアップさせるために、お膳立てのために・・・尾行をさせていたのか!!?」

 「そうだよ」

 「信じらんない・・・」

 「それと、これは・・・『玄武』の意思でもあるんだ」

 「「「『玄武』!!!!!!???」」」
 

 ディックがにこにこしているのに、皆がため息をついた・・・
 ・・・・・・いつか夜道で刺されるぞ・・・と、皆が思った
 

 「それでわかった。 ジンは『玄武』系の配下だからな、お前では動かせるわけはない」

 「・・・・・・ディック、頼むから・・・あの『玄武』を巻き込まないで」

 「私からもお願いです。 後々が大変ですから・・・」

 「えー?」


 ディックが不満そうな顔をした、皆の額に思い切りしわが寄った
 ・・・・・・だがまぁ、少々気にかかることはまだあるが・・・一応は理解した
 この妙な作戦について、が・・・・・・











 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「・・・・・・う」


 シルバーが倒れながらも砂をつかみ、黒いストライクの顔面に投げつけた
 苦しむストライク、それで少々狙いがずれ、技は不発に・・・・・・
 

 ザシュッ


 シルバーの下腹部が浅く、横一文字に斬られた・・・・・・ぐらりと身体が崩れかかる
 ・・・が、こらえ・・・足を無理矢理動かし・・・必死で逃げる


 背中を向けるたびに、相手は浅く浅く・・・致命傷にならない程度でシルバーを斬り裂く
 よろけるよろける・・・壊れたオモチャのように、よろけるよろける・・・





 「俺の能力は『スピリッツ・ザ・リッパー 〜斬り裂き魔〜』!!
 名の如く、『きりさく』に対し・・・超特化した攻撃的能力・・・!」


 にげるにげる・・・壊れたオモチャのように、にげるにげる・・・
 背中を見せるたびに斬り裂かれ、筋も骨も斬られつつ・・・必死で逃げます、生きるべく


 「『レヴェル1・「きりさく」のPPが常に99となる』」


 その身を隠すべく、岩の陰へと逃げました
 その岩あっさり斬れました、その身もあっさり斬れました
 その場から逃げました、逃げられるだけ逃げました


 「『レヴェル2・「きりさく」が急所に必ず当たる』」


 ああ、なんてことだ
 もう逃げられない
 後ろに乗り越えられぬ大岩が
 その身の前に立ち塞がった
 黒き身体に輝く刃
 その刃は斜めに振り下ろされた
 左肩から
 右の下腹まで


 黒い黒い
 赤い赤い
 綺麗な綺麗な
 鮮血が鮮血が
 流れ流れ
 地を地を
 染めた染めた





 「『レヴェル3・我がストライクの間合い内ならば、「きりさく」は必ず当たる』」
 
 
 何人たりとも何人たりとも
 我が刃から我が刃から
 逃れられぬ逃れられぬ
 生け贄の羊よ生け贄の羊よ
 我が欲望を我が欲望を
 満たしたまえ満たしたまえ





 シルバーの身体はもう息をしているのが不思議なぐらいだった
 肩から腰までの傷は明らかに致命傷、助かる見込みは・・・・・・もう無い
 

 覚悟なんて決めたくなかった


 ましてや死ぬ覚悟なんて


 最期にもう一度だけ・・・会いたかった


 皆の顔が走馬燈のように、あの・・・・・・笑顔が最期に浮かんで





 消えた










 次の瞬間だった


 上空から現れた・・・謎の人影


 その数・・・・・・4つ


 黒き獣、ジンは問うた


 「貴様ら・・・邪魔をするか」


 人影4つ、答えた


 「もちろんだ」

 「是非、我らと手合わせ願おうか」

 「それと、こいつは死ぬ前に・・・このアタイらが預かるよ」

 「大事な大事な戦力だからね、これからの・・・」


 黒き獣は笑った


 「殺死合うか」





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