〜能力者への道57・集三〜




 次々に集結し始めた『四高将』、3番手にきたのは『ヒツジサル』が『キョウジ』!


 まるで軽業師のような身のこなし、若くも熟練した体技を会得したリサの部下である


 2番手として、セクハラエロもーろくじいちゃんこと、『玄武』付きの『ウシトラ・タケトリ』


 キョウジとタケトリはもの凄く仲が悪く、ディック付きの『四高将』タツミもタケトリのセクハラに悩んでいた


 そこに直下されたタケトリじーちゃんの言葉の爆弾、3人交えての低レヴェルなバトルが始まってしまう


 ・・・それを止めたは『四高将』最後の1人、ジーク付きの『イヌイ・フリッツ』だった


 一方、『幹部・十二使徒』の方も姿を現しただした


 猪突猛進、価値の無いモノは轢き殺すとの・・・『亥・バンナイ』


 上品潔白、振る舞いも優雅な美青年・・・『子・チトゥーラ』


 同人万歳、黙っていれば可愛い女の子・・・『午・メグミ』


 そして今、『亥』VS『午』の戦いが・・・会議室へ続く廊下にて行われようとしていた!










 「轢き殺ーーーすウゥゥウッ!!!!

 「ごめんあそばせ、お死になさるのはそちらですわ!」


 2人がボールに手をかけた、その瞬間だった

 
 「「!!!!??」」

 ・・・・・・その2人の身体の動きが止まってしまったのは
 この・・・関節部位を『しめつけら』れるという感覚、どうにも覚えがある・・・


 「・・・ゴラァ! 出てこいやあぁッ!!!!

 「やーーーん、スカートめくれちゃうじゃない!
 もうッ! あんたの仕業でしょ、エロへびィッ!」
 

 2人がぎゃあぎゃあと騒ぐ、チトゥーラがやれやれとため息をついた
 廊下の陰から、ご指名された通りの男が身体を小刻みに揺らしながら、姿を現した


 「ヒャ、ハッ! オレの能力ってば役立つじゃん、まさにむてきーっ!」 

 「テメ、独房にぶち込まれたんじゃなかったか!

 「そーよ、そーよ!」

 「ヒャ、ハッ! 全員集合、オレだけ仲間はずれかい?
 もちろん、『会議』に参加するんだよ!」


 しかし、仮にも謹慎中の身であるから・・・必ず、監視役がつく
 会議に参加するジャチョを常に見張っていられる人物、となれば・・・


 「・・・おお、何ということだろう。
 無益な争いはまた無益な争いを呼ぶ、人は皆・・・生まれながらの天使なのに。
 しかし、無益な争い亡くさんが為に・・・また争いを繰り返す。
 おお、稲妻がわたしの不落の塔を貫き、そして大地に根降ろす。
 この哀しみを、愛を、争いを憎む気持ちを・・・・・・あなたに伝えたい・・・」


 何故か涙を流し、自らのセリフに酔いしれながら現れた謎の莫迦っぽい人
 ジャチョと同じように廊下の陰の方から、ふらりふらりと具合でも悪いんじゃないかと思わんばかりにその身体が揺れている
 細いんだか太いんだか、中途半端な肉体で髪の色は水色、瞳の色は黒
 服は雪国で着るような厚手で綿入りの上着とズボン、何故か下はランニングシャツ1枚
 ・・・どうにも中途半端な存在で、更に涙を流しては何かをぶつぶつと言っている
 そして驚くべきことに、その彼の右手にはメモ帳と羽根ペンが・・・・・・じゃなかった
 なんと黒い腕輪に宝珠があり、『卯』と彫られている


 「テメェか、監視役は・・・『幹部・十二使徒』が『卯・ポー』!!!
 ってこたァ、いるんだろ? 仲良しこよしの『青龍組』ならよッ!
 『ディック様のお気に入り』、『・・・



 バンナイがそこまで叫んだ時だった、目の前に現れた・・・その男の気配に気づいたのは


 濃紺のマントをひるがえし、『鉄仮面』をかぶる謎の男
 身長は170cm前後だろうか、マントの内部の肉体は鍛え抜かれていて・・・それは肌で感じることが出来た
 ぴりぴりと放たれる心地よい殺気と威圧感・・・


 「俺を呼んだか」


 まるでボイスチェンジャーで変えたような不自然な声、無機質で男女の区別もない声
 そのぞくりとする声にバンナイは一瞬、たじろいだ


 「・・・チッ! (不気味な野郎だぜ)

 「用がないならば、先へ行く。 お前達も早く来ることだ」

 「ヒャ、ハッ!」

 「おお、我らがリーダー、もちろんですとも。
 『辰』・・・『シ・ショウ』殿・・・」


 大げさなポーズをとり、酔いしれるようにポーはその人の名を言った
 いや・・・・・・ポーはいつも自分に酔いしれているのだろう
 バサリと濃紺のマントをひるがえし、その『シ・ショウ』という人物は廊下の先へカツンカツンと歩いていった
 

 それを見送るように、妙な間が空いた・・・・・・
 その間を最も早く、沈黙を破ったのはポーだった


 「・・・・・・さて、腐れ姫に猛戦士よ。
 あなた方を捉えるそのカセをハズすべためには、悔い改めねばならないのです・・・。
 ・・・その、これ以上の無益な争いを止めると天に召します父に、さぁ誓うのです。
 でなければあなた方を縛る戒めの十字架は、これよりひととき以上は解かれることは無いでしょう・・・」

 「誰が猛戦士だッ! ガタガタとまだるっこしいコト言ってんじゃねぇよ!!
 要するに、動けるようになりたければ・・この無価値女を轢き殺すのを止めるって、言えばいいんだろうがッ!!!!


 「おお、猛戦士は天上よりの言葉を理解したもう様子。
 ・・・その通りのようですな、さて・・・・・・腐れ姫はいかがなされますか?」

 
 ポーの問いに、メグミは「フフン」と鼻で笑った


 「別に、向こうから仕掛けてきたんですのよ。 此方からは手出しする気は毛頭ございませんわ」

 「そうでしたか。 しかし、解放するにはもうひとつ・・・そう、あなたを引き受ける方が必要なのです。
 囚われの腐れ姫を救うべく、立ち上がりし勇気ある1人の紳士が・・・」


 またポーは別の世界へ頭が飛んでいるようだ、流石『キチガイ詩人』と言われるだけある
 しかし、『紳士』とは何者か・・・・・・メグミは何となく察しがついていた


 「・・・ふーん、そこにいるわけですね? アゴ長おじさんが」

 「失敬な! 私の名は『ロイヤル・イーティ』です。
 それにしても・・・ジャチョよ、いつまでもレディーを拘束するのはやめたまえ。
 もっとキミは紳士になるべきだ、そう・・・この私のようにね」


 壁にもたれながら、マイカップで紅茶をすする男が、またしても急に現れた
 ・・・そして一番注目すべきは、やはりアゴだった
 見た目は何よりも先ず『形』から入ったなら、こんな格好になるんだろうなという黒スーツとマントの英国紳士
 髪はスポーツ刈りで、ヒゲはカイゼルひげ、左手にはマイステッキを持参
 帽子として長いシルクハットをかぶっているが、その帽子と顔の長さがほぼ一緒
 それだけ下アゴが長いという、おおよそで20cmはあるかもしれない・・・


 「あなたは囚われた腐れ姫を・・・お救いになるお気持ちはおありですか?」

 「無論、レディーファーストですよ」


 何だかよくわからない言葉を持ちだしてきた、この男・・・本当に英国紳士なんだろうか
 ・・・しかし、そんなのも気にせずにポーは話を続ける
 

 「おお、皆は何という・・・素晴らしい、慈悲深きお心をお持ちなのでしょう・・・。
 では、戒めよ・・・かの2人を解き放ちたまえ・・・」


 ポーが指をぱちんとならすと、その2人は身動きがまた取れるようになった
 もちろん、ポーはただ指を鳴らしただけ、本当はジャチョが何かをしただけなのだが
 ようやく動けるようになった2人が身体をなじませるように動かしてみる
 ・・・バンナイの本音を言えば、此処で全員轢き殺しておきたい
 だが、幾ら俺様でもこれだけの人数の相手は少しきつい・・・ここは心を抑えることにした


 「・・・ふー、ですわ。 ジャチョ、あなた、もう少し優しくやってくださらない? おかげで服が台無しですのよ」

 「ヒャ、ハッ! 知るかよ、そんなこと!」

 「おお、囚われの腐れ姫の機嫌を損ね・・・ああ、熱き血潮があふれ出る・・・」

 「・・・やれやれ、ようやく収まりましたか」

 「ロイヤル、テメェ・・・まだ『紳士ごっこ』やってんのか?
 そんな無価値なことやめろ、そのアゴごと轢き潰すぞ!!!


 「何を言います、午後のティータイムは紳士には欠かせないのですよ」


 なんとこの狭い廊下に、『幹部・十二使徒』が6人も集結した
 ・・・が、これだけの面子が集まっても・・・何だか低レヴェルな言い争いしか聞こえてこない
 そして、そんななかに・・・また2人現れた


 「何をしている、こんな所で」


 突然頭の上から降り注いだ雷のような声、振り返ってみればそこには・・・巨人が居た
 身長は遙か4mはあるだろうか、大柄なバンナイでさえ幼稚園児に見えるほどの体格の差だった
 よく戦国武者が身につける具足をつけ、陣羽織まで着込んでいる
 もう、むしろ・・・ポケモンを扱うより、この本人自ら戦った方が良いのではないか、と思う
 彼の黒い腕輪の宝珠には『丑』と彫られている


 そう・・・彼こそが『幹部・十二使徒』を統べる『使徒長・ドダイ』だった


 その圧倒的威圧感に誰も声が出なくなってしまう、流石のバンナイでも・・・無理だった
 だが、その雰囲気内でも陽気に、明るく声を出している人が居た


 「にゃははは〜、どーした皆! 暗いぞぉ?」


 ドダイの肩から、ひょっこりとほんのりと赤い顔をのぞかせた女性がいた
 その女性が、廊下に集まっている中からある1人を見つけたようだ
 するりとドダイの身体の上を滑り、シュタッと着地し・・・その1人の所へふらふらと歩いていった


 「よー! ぺちゃぱい、元気にしてるかぁ?」

 「なッ、何を言うんですの!」

 「にゃははは〜、やっぱひ気にしてんのね〜」

 「これぐらいが普通なんです! 大きければ良いってものじゃないんですのよ!」

 「にゃははは〜」


 その女性はいきなりメグミにつかみかかり、その酒臭い息をふぅーっと顔面に吹きかけた
 思い切り嫌そうな顔をするメグミ、そして何となく居心地が悪くなった男性陣
 それは、その女性の格好に問題が・・・・・・大ありだった


 身長は160cm弱、すらりと細い身体に・・・何とも不釣り合いな巨乳がくっついていた
 更には上は下着無しのタンクトップ一枚、下の短パンは小学生がはくようなもで、キツすぎてかなりくい込んでいる
 露出度がかなり高めで、生足は太ももまでさらけだし・・・靴下なんてはかずにサンダルである
 顔も可愛いタイプの美人だろう、髪の色は黄色と黒を色分けして染めていた
 酔っぱらっている所為か、ほんのりと顔が火照って、何とも色っぽい感じだ・・・・・・
 

 「いい加減にくっつかないでくださるかしらッ!
 それとも嫌みったらしく、押しつけてくる胸の自慢かしらッ!?」

 「にゃははは〜、冷たいなぁ〜、メ・グ・ちゃ・ん」


 ふっと耳に息をかけられ、ぞわっと悪寒が全身に走った
 ・・・最強無敵かと思われたメグミに、苦手な者が登場したようだ
 周りの男性陣は巻き込まれてはゴメンだ、と言わんばかりに・・・会議室の方へ平和に歩いていった


 「ふふふふふふふふふ・・・」

 「いやですわ〜〜〜、誰か助けて〜〜〜!」


 メグミが思わず叫んだ時、残っていてくれていたドダイがひょいっとその女性をつまみあげた
 その間にとパタパタと逃げ出すメグミ、酔っぱらった女性の方は今度はドダイにからみはじめた
 だが、人間が出来ているドダイは適当に相づちをうつだけ、まるきり無視の路線である


 「うぃ〜っく、にゃははは〜、無視するなぁ〜♪」

 「いい加減、そのからみ酒をどうにかしたらどうだ。
 自覚を持て、『玄武組』・・・『寅・シャララ』」


 女性がうぃっくといいながら、胸の谷間から黒い腕輪を取り出し、何故か足の方にはめた
 そして腰の酒を取って、ぐびぐびっと呑んだ


 「おしゃけ(お酒)はやめられまっしぇ〜ん」

 「ならば、服をどうにかしろ」

 「あらん、ドダイ殿は水着の方がお好みかしらぁ?」

 「・・・・・・全く、仕方のないヤツだな」

 「うふふふふふふ、幹部以上はお堅い人ばっかだかんね〜。
 1人ぐらい、『お色気担当』がいてもいいんじゃ〜〜〜」

 
 それにしたって限度もあるだろう、そしてかなりヤバイ格好すぎる
 ・・・これはもう目の保養を通り越して目の毒、逆セクハラだ


 そして酔いはどんどんまわり、何だかよくわからない言葉を発しだした
 次に大きく広いドダイの背中で飛びはね、ごろごろし始めた
 ドダイはやれやれとため息をつき、そのまま会議室へと向かった





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「ッタク、イライラするぜ・・・何奴も此奴も、轢き殺してぇッ!!!!


 会議室についた幹部達はそれぞれ指定された席に座っていく、バンナイもどかっとその椅子に座ると、両足を机の上に載せた
 その横をぎろりとにらむが、まだバンナイ以外・・・『白虎組』は誰も来ていないようだ


 「いや、もうすでにいる」


 スッと現れた、赤茶色の忍び装束に、鳥をモチーフとした兜を被った・・・忍者が現れた
 顔も何も総てが隠されている、わかっていることと
 ・・・そいつが『幹部・十二使徒』が『酉・クレト』という通り名だけだ


 「カッ! リーダーはどうした

 「ちょうどいい、お前の莫迦力でこいつを引っ張ってくれ」

 
 クレトが指し示した方には、何やら一本の太い鎖がぶら下がっていた
 ・・・どうやらこの先に『白虎組』リーダーがいるらしい、バンナイが舌打ちをした
 ・・・今までのうっぷんをぶつけるかのように、それを思い切り、引きちぎるような勢いで引っ張った


 機械的な音がしたと思えば、突然に鎖の塊がリーダーが座るべき椅子の真上にぶら下がった
 その幾重にも巻き付いた鎖の塊はまるで『さなぎ』のようで、この中に『戌・タスカー』がいるのだ
 だが、何を喋るわけでもない・・・ただ沈黙している


 「もう少し、優しく降ろすべきだ」

 「なら、テメェがやれっつーんだよッ!!

 「力仕事はお前の仕事だ。 我の仕事はリーダーを此処まで運ぶこと、だ」


 此処まで運んでこられるのならば、降ろすことぐらい造作もないことだと思うのだが・・・
 バンナイはそう思っても、口には出せない・・・この部屋での争いは禁じられている
 いや、本来ならば廊下でも何でも禁止なのだが・・・・・・バンナイは気にしない
 逆を言えば、バンナイが暴れるのをためらうような、それほどまでに重要な部屋ともいえる


 特に変わった所はない、ただ長机と椅子が四角形型に部屋の中に並べられているだけだ
 その座り方を、机ごとに並べて書くとこういったものである


 『子、チトゥーラ』/『丑、ドダイ』/『玄武』/『ウシトラ』/『寅、シャララ』(『玄武組』)

 『卯、ポー』/『辰、シ・ショウ』/『青龍』/『タツミ』/『巳、ジャチョ』(『青龍組』)

 『午、メグミ』/『羊、???』/『朱雀』/『ヒツジサル』/『申、ロイヤル・イーティ』(『朱雀組』)

 『酉、クレト』/『戌、タスカー』/『白虎』/『イヌイ』/『亥、バンナイ』(『白虎組』)


 といった感じである、寅の横に卯がきて、亥の横に子が最終的にくる形である
 順にいえば幹部、リーダー、四大幹部、四高将、幹部・・・というものだ
 この『リーダー』というのは『幹部・十二使徒』のそれぞれが方位順に3人づつ『〜〜組』に属している
 その3人の内のまとめ役として、任命されている者のことをそう呼んでいるのだ


 


 バンナイがぐるりと周囲を見回してみる、ほぼ全員の幹部が揃ったようだ
 それにしても・・・・・・チトゥーラが毎回横になるのがもの凄く気にくわない





 「ン〜〜〜、イ〜ヤッハーッ!」
   

 ・・・・・・最後の『幹部・十二使徒』がようやく来たようだ、『朱雀組』『未』が『エース・フライジング・トップ』
 ハッキリ言って名前負けしているといった感じの男だ、変人の極み・・・といえばいいのだろうか
 黒い肌に入れ墨をして、サングラスをかけている
 髪はドレッド・・・何故か上半身裸で靴も履いていない男だ
 話す言葉といえば「イ〜ヤッハーッ!」で、どうして『幹部・十二使徒』になれたのかが不思議なのだ





 「揃ったみたいだね」


 ヒュッと室内に一陣の風が吹いた


 ・・・そして今一度全体を見れば、今まで影も形もなかった彼らが居た


 『四大幹部』、及び『四高将』の姿が・・・





 「・・・時間より早いけど、面倒臭いから、始めちゃおうか。
 <聖二十方位幹部緊急招集会議>をさ」


 


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