〜能力者への道59・集五〜
ついに明かされた『The army of an ashes cross』の上層部
玄武組、青龍組、朱雀組、白虎組に分かれた『幹部・十二使徒』
『四神王』こと『四大幹部』とその側近、『四高将』
会議の議題は3つ
1、『幹部候補、セイルス』の部隊が『災厄』の能力者の確保に失敗したこと
2、『幹部候補、ジン』の敗北と『組織強制脱退』の件
3、これより1週間後、カントー本土を襲撃するとのこと
とうとう動き出した組織、果たしてレッド達は対抗出来るのか
一方、時間も場所も戻って・・・2の島で、ブルーが自らの状況を話す
その話の後、レッドとブルーはポケモンセンターへ
その時話した、『2の島へ帰って来られる』かどうか
一番不安なのがイエロー、『なみのり』も『そらをとぶ』も出来ないのだ
そして、イエローのいる孤島・・・・・・そんな彼女に、誰かが声をかけた
場所は変わって、ここは『鍾乳洞』
此処に苦悶の表情を浮かべ、倒れている青年がいた
その青年の名はグリーン、ジャバーとの闘いで負傷しその場に崩れ落ちてしまったのだ
・・・・・・
何かおかしい、そう思った時だった
グリーンはいきなりガバッと起き上がり、その眼をこすった
「・・・いかん、寝てた」
寝てたって・・・・・・ちょっと、あなた・・・
グリーンはあくびをし、その後身体を動かした
変な所で寝た所為だろうか、体中の骨がごきごきといった
・・・・・・その運動でようやく・・・背中、先ほどのバトルの傷から生まれる激痛に気がついた
「・・・・・・大したことじゃ無さそうだな」
いえ、血がだらだらと流れ出てますが
グリーンはふぅとため息をつき、鍾乳洞の外へと歩いた
出口は簡単に見つかり、その外は海に面していた
ポケギアを取り出し、現在地を確認する
・・・2の島からも3の島からも離れた位置にある、どうにも中途半端な場所だ
しかし、行くとすれば2の島だろう・・・おそらく、皆はもうそこを目指しているはずだ
「ゴルダック」
腰のボールを海へ放り投げ、ゴルダックを出した
その背中の上に立つと、陽の高さを見た・・・・・・迂闊、2時間は寝てしまったようだ
「急いでくれ、2の島へ」
ゴルダックが海を泳ぎ抜ける、その先を見据えて・・・
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
場所はせわしく巡り、変わる・・・此処は2の島、ポケモンセンター内
メンバーの回復を終えたブルーと、ギャラの検査待ちのレッドが待合室にいた
ブルーのポケモンはブルーが能力に目覚めたことにより、身体的な異常が出るかと思ったが・・・いらぬ心配だったようだ
総てのポケモンは正常で、手持ちポケモン本来の『特性』も失われず、変化も起きてはいなかった
・・・となると、問題はレッドのギャラだけだ
「お待たせしました、トレーナー・レッド様。 トレーナー・レッド様。
手持ちポケモンのギャラドスの検査が終わりました。 窓口までお越し下さい」
館内アナウンスが響く、とはいっても・・・レッド達以外にこのセンターにいる人間はいないのだが
レッドとブルーはジョーイさんがいる窓口まで歩いていった
「検査は終わりました」
「はい、で・・・ギャラの具合はどうですか?」
「・・・初診の通り、精神的な疲労や肉体的疲労がたまっているようです。
聞き難いのですが、このギャラドス・・・以前、ドーピングのような薬を与えてはいませんでしたか」
覚えがあるも何も・・・R団の薬物投与実験に、ギャラは使われていたことがある
そのことをジョーイさんに伝えると、「やっぱり」とつぶやいた
「薬物投与やドーピングをしたポケモン、特に違法の薬を与えたポケモンは身体に悪影響が残ることがあります。
もちろん、100%安全な薬があるわけでもないですが、R団の薬物投与実験なら・・・先ず間違いはないでしょう。
おそらく、そういったトラウマや薬が・・・このギャラドスの精神を脆くし、疲労がたたってか・・・悪影響を・・・」
・・・・・・まさか、こんな事態を招くなんて
「治るんですか」
レッドがそう聞くと、ジョーイさんは言った
「この辺りの海流では、野性にかえし鋭気と休息を与えるのは難しいかと思われます。
また、ポケモン預かりシステムに預けても、そういった効果は得られないでしょうね・・・」
「じゃあ、どうすれば・・・」
「・・・・・・当ポケモンセンターで、しばらくお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「!」
唐突な発言、そして申し出だった
「此処の施設でしたら、何とか・・・ある程度は治せるかもしれません。
もちろん、野性にかえす程の効果があるとは思えません。
・・・それでも、この子を・・・このままの状態で連れて歩くよりはいいかと思われます」
「じゃあ、お願いします」
レッドもまた、即答だった
ブルーが「ちょっと、いいの!?」と言った
「ああ。 だって、ギャラの身体を第一に考えるべきだろ?」
「そりゃそうだけど・・・」
「というわけです。 ジョーイさん、お願いします」
「わかりました、最善の努力と最高の治療を致します」
・・・ギャラをそのまま2の島のポケモンセンターに預け、レッドはポケモン転送装置の所へ行った
ギャラを預けたわけではないが、実質上では手持ちは5体・・・この先、何があるかわからない
というわけで、手持ちの補充にきたのだった
転送装置のパソコンをパコパコとうち、操作し・・・自らのボックスを呼び出した
「ええと・・・レベルが高くて、なおかつ・・・育て甲斐のありそうなヤツ・・・・・・」
「・・・へー、結構ボックスの中・・・ポケモンがいるじゃない」
ブルーがレッドのボックスをのぞいて言った、確かに・・・レッドがこれまで捕まえてきたポケモンが勢揃いしているのだから
レッドはしばらく画面を眺めてから・・・・・・決めたようだ
・・・シュンッとボールが転送され、装置からそのボールを取り出し、そのまま放った
中から出てきたポケモン、それは・・・・・・
「・・・あ」
「よろしくな、『ニドオ』」
それは『ニドリーノ』だった
ブルーが訊ねた
「・・・なんで、この子を選んだの?」
「タイプ的にと、レベルは40台でたぶん即戦力になって、育て甲斐もありそうだから」
「へー」
このニドリーノは言わずもがな、マサラを初めて出たあの日につかまえた・・・あのニドリーノだった
久し振りに外へ出られたのが嬉しいのか、辺りを走り回りキョロキョロと見ている
「・・・・・・んで、なして『ニドオ』なわけ?」
「ホラ、ニドラン系って2種類いるだろ。 ♂と♀で。
『ニド』じゃどっちがどっちだかわかんないし、だから・・・・・・」
じゃあ、ニドラン♀系は『ニドメ』なのか・・・・・・
・・・レッドのネーミングセンス、抜群とは言い難い
「・・・お、ポケモン図鑑が反応してら」
レッドの図鑑を見れば成る程、画面に『ニドオは「おんがえし」を覚えたい・・・』と出ている
この能力はボックスから出しても発動するらしい、となると野生で捕まえても覚えると推測出来る
・・・レッドが『ニドオ』に技を覚えさせると、ポケモンセンターの外へ出るぞとうながした
ニドオがレッドのそばへトコトコと寄ってきた、さすがは『ポケモンが良くなつく』能力・・・
「・・・そういやさ、アンタ・・・『なみのり』はどうするのよ?」
「ん? ああ、『ゴン』も覚えるし、別にいいかなーって」
・・・・・・外へ出て、シショーの居る元へ歩いている途中だった
ブルーは何やらかちゃかちゃとレッドのポケットから音がしているのに気がついた
それを訊くと、レッドはポケットから色んな道具を取り出した
「『たからのはま』で拾ったんだ、すっかり忘れてた・・・」
「『きんのたま』に『ハイパーボール』、『おうじゃのしるし』に『メタルコート』・・・。
よくもまぁ、こんなに・・・泳ぐ時とか重くなかったの」
「いや、全然」
まったく、どういう筋力に体力してんだか・・・・・・ん?
「レッド。 この道具、売っちゃってもいい?」
「え、それはちょっと・・・」
「莫迦ねぇ、これでイエロー用のポケギアを買ってあげるのよ!
これから先、またこんな事態が起こるかもしれないし、あったにこしたことはないでしょ」
ナイスアイディアだ、だが・・・その前にイエローを迎えに行くとかしなければならない
「善は急げよ」と、ブルーはレッドの道具を取り上げ、ショップへ走って行ってしまった
大方、ポケギアの値段を値切って・・・・・・差額は彼女のものになるだろうが
レッドは一足先にシショーのいる浜辺へ戻ることにした
・・・戻ってみれば案の定というか、まだ誰も帰ってはいなかった
ただ独り寂しそうに、シショーがポツンと海を眺めているだけであった
別に足音を殺して忍び寄ったわけではないが、シショーは後ろのレッドの気配に気がつかなかったようだ
すると突然、ニドオはシショーの姿を見るやいなや、いきなりシショーの元へ突進した
不意をつかれ慌ててよけるシショー、しかしニドオはその攻撃をやめない
そこでようやく、シショーはレッドが戻ってきたことに気づいたようだ
もちろん、何故自分が襲われているのかはまったくわからない
『どうだった? ギャラは? っていうか、なんで僕が襲われてるの!?
足下のポケモンは何? レッドのポケモンなワケ!!?』
「んー、ギャラはしばらく此処のポケモンセンターに預けることにした。
それで、代わりの補充メンバーのニドリーノの、ニドオ」
レッドは止めようとしたが、何となく楽しそうだったのでやめておいた
妙に仲がいいのか悪いのか、しかし・・・まぁ少なくともこれでシショーは寂しくないっと
『そういう問題かねぇっ!!?』
レッドの心の中を読んだのかはわからないが、シショーは思わずそう叫んでいた
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
「ご乱心! ご乱心!」
「応戦準備・・・・・・って! 勝てるわけないだろ! このお方によォ!!?」
時間は少々ずれる、ディック達の会議が終わった頃・・・
此処は『The army of an ashes cross』のとあるアジト支部、此処では今・・・・・・そのアジト支部壊滅危機に陥っていた
その騒動を起こしているのは・・・・・・
「ストライク、道を斬り開け」
隻腕のジンだった
彼の能力に立ち向かえるだけの戦力はこの支部には無く、ただひたすらこの暴君に対して防戦一方である
・・・しかし、何故彼はこんな所を襲撃しているのだろうか 単なる『逃げるが勝ち』という屈辱的な敗北の腹いせだろうか・・・?
確かに、時間的に考えればジンは負けて腕を斬り落としてから、すぐに此処を目指した・・・という計算になる
だが、腹いせならばもっと別な対象だって考えられるハズだ
それとも、彼には別の目的があって・・・・・・此処に来たのだろうか?
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
この知らせは会議をちょうど終えた『四大幹部』達にすぐに届いた
しかし、その3人の反応はもの凄く淡泊だった
「・・・あ、やっぱり。 そろそろじゃないかって、思ってたんだよねぇ」
ディックの言葉はまるで、それが起きることを予知していたかのようだった
それどころか、のんきにチェスの駒をいじって遊び、寝転がっていた・・・・・・あ、いつものことか
しかし伝令の方は、もちろんわけがわかならい・・・・・・更に、ジークまでもが・・・
「当然の権利だな、まぁ・・・彼処は不運だったのさ」
「あーあ、ジンが壊した分の請求。 何処に持っていけばいいのかしらね?」
まったく話が見えてこない伝令、そんな様子を見てか、ディックが応えてくれた
「・・・・・・彼処にはね、ジンのもうひとつの『相棒』がいるんだよ」
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
鋼鉄の扉、この格納庫の向こうに・・・・・・
ジンが自ら、その扉を斬り壊した
暗い部屋の中に、隙間から明かりが差し込む
・・・・・・そこにあったものは・・・
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
「まるでポケモンの『コドラ』を思わせるような、大型で超重量でありながら、美しい流線型のフォルム。
その装甲の厚さの前には銃弾さえ効きやしない、いんや・・・バズーカ砲でも無理だねぇ。
更にスーパーカー並のエンジンまで積んであって、とても常人には扱えないときたもんだ。
かつてはそいつで戦場を駆け巡り、共に生き抜いてきた相棒。
・・・まさにジン専用の愛車、世界最強の装甲二輪車」
「・・・・・・その名を、『グローア』という」
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
グォングォンとエンジン音が辺りに響く、そして思い切りアクセルをふかした
・・・・・・もはや残骸と屍だけになった建物など、興味はない
グローアはその封印を解かれた巨体を、外の世界へと飛び出していった
ジンと黒いストライク、そして『グローア』はこの日を以て、完全に組織から離脱した
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
「問題は、両手でさえ手に余る・・・あのじゃじゃ馬を、右手一本になったジンが乗りこなせるか、なんだけどね」
「いらぬ心配だ、ディック。
確かに初めは長年のブランクと共に苦戦するだろう、しかしそれによってジンは『新たなる力』を手にする」
「今、ジンに必要なのは『隻腕となっても、戦い抜き勝ち上がる力』。
その為には今まで以上の鍛錬と、右腕の強化を図る必要性がある。
その点で言えば、隻腕で・・・・・・あの『グローア』を乗りこなせれば申し分ない力が。
・・・いえ、それこそ有り余る力を手にするでしょうね」
「・・・・・・レッド一行も大変な人を、寝た子を起こしちゃったわけだ」
ディックがひょいっと『僧正』の駒を持ち上げてみせた
そして、それを・・・思い切りガッツーンと音を立てチェス盤に置いた
「・・・・・・『グローア』は、世界初の・・・水陸両用車なんだよね」
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