〜能力者への道60・集六〜




 ジャバーとの闘いで負傷し倒れていたグリーン、実はただ寝ていただけなのだが・・・


 彼もまた『2の島』へと向かうべく、ゴルダックで泳ぎ抜ける


 一方、レッドのギャラの検査が終了した


 原因はロケット団での違法薬物投与実験の後遺症と判断、まだその傷を心に残していたのだろうか


 その治療をすべくレッドは、ギャラをポケモンセンターに預けることを決意


 補充メンバーとして選んだのは、ニドリーノの『ニドオ』


 浜辺に戻る途中でブルーはレッドの道具を売っぱらって、イエロー専用ポケギアを買う為分かれた


 戻ったはいいが、シショーしかおらず・・・何故かニドオはそのシショーに喧嘩をふっかけていたり


 組織では隻腕のジンが、あるアジトを壊滅させ、かつての『相棒』を手にした


 この世に2つとない、最強の重装甲二輪車『グローア』・・・そして、世界初の水陸両用車だと










 ブルーが鼻歌交じりで、両手に荷物を抱えながら歩いていた
 見るからに上機嫌な様子、その理由は・・・


 「結構、いい買い物だったわね〜」


 財布の中をぱちんと開けてみる、まだ大分お金が残っている・・・
 レッドの道具で売ったモノは持っていても役に立たないモノ、つまり『売るしかないモノ』だけだ
 『きんのたま』2つと『おおきなしんじゅ』と『ちいさなキノコ』だ
 ポケモンの進化の際に役立つ『メタルコート』などは売らずに残しておく、必要になるかもしれないし
 総計1万と5千円ほど、それをイエロー専用ポケギアのお金にし、先ほど買ってきたのだ

 
 「あの子、気に入ってくれるかしら?」


 紙袋の中から、新品のポケギアを取り出して見た
 表面の色は明るいレモンイエロー、もちろんイエローの名前にあわせたのだ
 余計な装飾は一切無し、それはイエロー自身が選ぶものだろう
 電話機能だけでなく、タウンマップやメール&アドレス機能、迷子になっても平気なように衛星ナビゲーター付きだ
 つい最近新発売されたこの機種、特にナビゲーター機能はイエローには必須だろうと考えたが、やはり高かった


 この島のショップは1つしかなく、最近タマムシシティから引っ越してきたという兄弟が経営している
 しかし、島唯一の店だからといって、つり上げた値段でもなく、割と良心的な価格だった
 だが、値切った・・・そして9800円を7235円まで引き下げた
 その差額でまた色々と自分の欲しいものを更に値切って買う、持ちきれなくなるぐらいに買ってもお金はなお余った
 もちろん、この技は仕入れ値を見定める力があるブルーだからこそ出来る芸当だ
 仕舞いには・・・・・・店主の兄の顔には生気というものが全くと言っていいほど無くなっていたという、ご愁傷様でした


 「・・・・・・あの子、今ごろどうしてるのかしらねぇ」


 折角買った新品のポケギア、持ち主となる彼女は今いずこに・・・?





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 タンタンタンタンと小気味よい音を立て、海を滑っていく一艘の漁船があった
 乗っているのはその船の主であろう男と、漁船に似つかわしくない女の子だった





 「どうも有り難うございます、船に乗せて貰っちゃって」

 「いいってことよ、行き先は俺と同じ『2の島』でいいんだな?」

 「あ、はい。 お願いします」

 「おうよッ!」


 男がカジを思いきりきった、船が旋回する
 ・・・短く刈り上げた黒髪、無駄な肉のないたくましい身体
 煙草を口にくわえにかっと笑う顔は好印象、まさしく『海の男』というに相応しい格好
 

 「・・・それにしてもよォ、お嬢ちゃん。 どうして、あんな孤島にいたんだ?」


 男が進路を見ながら、乗船している女の子に訊いた


 「え、えっとですね、その・・・ポケモンバトルしてたんです」

 「へ? なら、相手はどうしたんだ」

 「先に『テレポート』で帰っちゃいました」

 「わりぃヤツだなぁ、こんな女の子を置き去りにするなんてよォ?」

 「はぁ・・・」


 女の子、いや・・・イエローは何て説明したもんかと悩んだ
 まさかジョウト地方を襲撃した人達の仲間が、急にバトルを挑んできた・・・なんて、言ったらどう思われるのやら
 別に男もそれ以上は訊こうとせず、何やら計器類を見ている


 「あ、あの・・・」

 「ん? 何でぃ?」

 「えっと、あの島は・・・何島なんですか?」

 「何島ってぇーと、『いろは48諸島』みてぇな呼び名か何かか?」

 「あ、はい。 そうです」


 とりあえず、2の島に戻れたら正確な情報を皆に伝えられるようにと、訊ける範囲のことは聞いておくことにした
 男はイエローの方に向き合い、言った


 「知らねぇな」

 「・・・・・・え?」

 「確かに俺ぁ、このへんの海を知り尽くしてる男だけどな、あの島の名前は知らねぇ。
 つーか、あの島は『いろは48諸島』とは全く関係が無ぇんだ」

 「それはどういう意味なんでしょう?」

 「まんまさ。 つまり、『名無し』なんだ。
 この『ナナシマ海域』、実はいろは48諸島以外にも孤島、無人島が存在する。
 その数は正確に計測されたことはないが、まぁ・・・100以上かもな。
 よくわからんが、十数年前ぐれぇかな。 その海域内で次々に未発見の島が見つかるようになった。
 発見された島に共通しているのは、『何の生産性も無さそう』ってこと。
 狭いわ、木の実もまともに出来ない、ポケモンだって滅多に住まない。 観光にも使えないのの・・・オール駄目。
 とまぁ、だけども見つけたんだし、名前ぐらいつけてやろうって話が出た。 それが『いろは48諸島』。
 だけど、その後からも次々に見つかったんで・・・つけるのが莫迦らしくなったそうだ。
 今でもまだそう言う島があるらしいが、名前をつけるのは自由って話だ。
 別につける意味もないし、誰かがもうつけてるかもしれないっつっから・・・今じゃ誰もやんねぇなぁ」

 「はぁ・・・・・・そうだったんですか」


 しかし、何でまたそんなに多くの島が見つかるようになったんだろうか
 島って言うのは、海底火山の活動とかで生まれるモノだって、聞いたことがあるんだけれど・・・
 

 「まぁ、お嬢ちゃんがいた島は密林があったし、木の実ぐらいは望めるかもな。
 ・・・どうでぇ、いっちょ島名申請しておくか?
 申請しておけば、島で採れる資源みてぇのはお嬢ちゃんが優先して得られるぞ。 
 最も、こんな海流の激しいところだ。 泳ぐどころか、船さえ来られねぇかもな」

 「え? ・・・・・・あーーーっ、船長さん! 前、前!」

 「ん? どうしたんでぇ?」


 急にイエローがあたふたし始めた、しきりに前方を指さして言った


 「そーじゃなくて、前見て運転しないと、その海流でこの船沈んじゃいますよ!!?」

 「んぁ? ・・・ハッハッハッハッハッハ、安心しなお嬢ちゃん。
 この船はそこらの漁船真っ青のエンジンを積んである上、自動操縦システムってのが搭載されているんだ。
 目の前に暗礁があっても、自動的に避けてくれるように設定されてるし、今は手動じゃないしな。
 ・・・いい天気だな、どうだ、甲板で海の風にあたってみたらどうでぇ?」


 脱力。 どうりで余裕なワケだ
 すでに『2の島』への航路を設定してあるらしい、安心してイエローは甲板の方へ出てみた
  

 


 「・・・うわぁ、いい風ぇ」


 なかなかに心地よい風だ、先を見てみるがまだ2の島は見えてこない
 ・・・男も甲板に上がってくると、イエローにひんやりと冷えたジュースの入ったコップを手渡した


 「あ、どうも有り難うございます」

 「ん。 さっきのことといい、キチンと礼を言えるってのはいいことだ。
 近頃の若いモンはロクに言えやしねぇかんなぁ」

 「へぇ。 でも、おじさんもまだ若いんでしょう?」

 「・・・・・・『おじさん』って言われた時点で、もう若くないんじゃねぇのかな?」

 「あっ、すみません!」

 「ははっ、いいってことよ」


 男はそう言って、自分の分のジュースを飲んだ
 イエローはそう言えば・・・と、思い出したように訊ねた


 「おじ・・・おにいさんは、どうして僕のいた島の近くにいたんですか?
 魚を捕るにしてはちょっと時間が変ですし、あの島に用があったってわけじゃなさそうですし・・・?」

 「ああ、そのことか。 ・・・別に無理して、言い直さなくてもいいからな?
 ・・・お嬢ちゃんくらいの子をな、俺は毎日のように送り迎えしてんのよ。 3の島と2の島の間をな。
 『マヨ』ちゃんっつってな、お嬢ちゃんにも負けねぇぐらいにいい子でな。
 毎日のようにお弁当つくって、2の島で働く父親に届けてんだ。 俺はそのお手伝いってやつだ。
 今日はこれから、そのマヨちゃんを迎えに、2の島へ行く途中でなぁ。
 んで、たまたま、お嬢ちゃんのいる島を見つけたんだ・・・おかしな話だけどな」

 「じゃ、ボクも運が良かったですね」

 「そうだな、って・・・・・・お嬢ちゃん、それは何でぃ?」


 男が持ち歩いていたイエローのリュックを示す、ピョコンと飛び出た大きな羽根・・・
 スッとその羽根をイエローは引き抜くと、男に手渡した


 「・・・ほぉ、察するにこりゃオニドリルの尾羽かぃ?
 しっかし、でけえな。 1mと14,7cmか・・・・・・どうしたんだ、これ?」

 「凄いですね、見ただけで正確な長さを言い当てるなんて。
 ええと、これはですね、『ともしびやま』にいる『王オニドリル』さんの尾羽なんです」

 「・・・ともしびやま! まさか、こんなんがいるたぁ・・・ちっとも知らなかったな」

 「でしょうね。 ずっと住んでるニシキさんも知らなかったんですし」


 突然、ビィービィービィーッと警報音にみたいな音が、操舵室から響いた
 イエローが振り返って見るが、男は前の方を何故か見ている


 「今度は何なんですか!!?」

 「前見てみな、ついたんだよ・・・目的地! それと・・・・・・」

 
 男がダダッと操舵室へ飛ぶように走った、その後をイエローもてこてこ歩いていった
 ひょいっとのぞいて見ると、男は船を自動操縦から手動に切り替えたようだ
 そして、何だかもの凄く楽しそうな顔をしながら、操舵している・・・・・・


 「? どうしたんですか、急に?」

 「負けねぇぞ、左前方注意!」


 ふと見れば、そこにはこの漁船よりはるか大きい船・・・・・・何だぁ!!?


 「『シーギャロップ号』だ、どうやらこのまんまじゃ・・・同時に港到着だな」

 「・・・・・・それが?」

 「2の島は『ナナシマ』の中じゃ一番ちっせぇのよ、もちろん港もな。
 てことは、あんなデカブツが先に港に入っちまったら・・・」

 「・・・え、もしかして・・・?」

 「もしかしなくとも、そうだ。
 デカブツが港の入り口に止まっちまうと、こっちはまた向こうが動くまでまともな上陸が出来なくなっちまうのさ」


 てことは、ヘタすると・・・・・・皆との合流に大幅に遅れてしまう
 いや、でも・・・ちょっとぐらい遠くても、『ぴーすけ』で飛んでいけるかも


 「こいつぁ男の意地の問題なんでな、なぁに・・・負けやしないさ!」





 ・・・何だか妙なことになってきた、だが・・・何の杞憂もしなくて良かった
 何故なら、此方は向こうに比べれば小型船・・・はるかに小回りがきく
 あっという間に速度を上げ、シーギャロップ号を先回りし、先に港に到着した
 それに、シーギャロップ号にはそれ専用の大型の停泊地があり、別に急ぐ心配も無かったのだ


 「だから言ったろ? これは意地の問題だって」
 



 ・・・・・・港に無事到着した漁船からイエローは降り、再び2の島の土を踏んだ
 それから改めて男に礼を言うと、豪快に笑ってかえしてくれた










 ・・・・・・イエローが完全に向こうへ行ったのを見届けると、男は船に戻った
 そして、3の島を目指す・・・本当の持ち主のいる港へ


 「・・・・・・あの嬢ちゃんが、『トキワの癒し』の能力者。
 そして、『災厄』の対となる者の第一候補者か・・・」


 男がごきごきと首を回す、そして大きく伸びをする・・・


 「・・・話したことは皆本当だ、マヨちゃんのことも、毎日送り迎えをしているこの顔の男の話もな。
 違うのは、今日はこの男の都合が悪くて・・・マヨちゃんは『シーギャロップ号』に乗っていったこと。
 流石に顔を合わせちゃマズイ、だから先に港に入る必要があった・・・無断で船と顔を借りたからな。
 それと、嬢ちゃんを見つけたのは故意だったこと。
 一度、見てみたかったんだよ。 ・・・あの『災厄』が選んだ少女って顔をな」


 べりべりと顔がむけていく、いや・・・ラバーマスクだ
 中から出てきたのは無精ひげを生やした、黄土色をした髪と瞳を持つ男・・・


 「変装術をはじめ、尾行術、操舵技術、演技力に変声術。
 総ては『帝王』の為せる技。 そう、この『帝王、タカムネ』様のな・・・・・・」






 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・




 「・・・いい人だったなぁ」


 てくてくと歩きながら、イエローはそうつぶやいた・・・もう陽は夕日に近い
 桟橋を渡り、キョロキョロと辺りを見回す・・・レッドさん達は何処だろう?
 そして目に入ったのは『シーギャロップ号』の乗客、降りてきた人達・・・・・・ 


 「・・・・・・あ、クリスさん!?」

 「え・・・あ、イエローさん!」


 タタタタタ・・・とイエローが小走りにクリスの方へ行った


 「無事だったんですね、やっぱり!」

 「イエローさんこそ、どうしたんです?」


 お互いがどうして『船』に乗っていたのか、訊ねあった
 イエローはあるおじ・・・おにいさんに運良く拾われ、乗せて貰ったことを告げた


 「・・・そうだったんですか。
 私の方は、、『ネイぴょん』のテレポートで、一旦『1の島』へ戻ったんです。
 それから、ニシキさんの家に行って・・・『ふねのチケット』を貰ったんです」


 レッドの予想通りだったというわけか
 なんでも、『ふねのチケット』はクリスだけでなく、レッドら全員分貰ったということだ
 その代わり、『2の島』でのおつかいを頼まれたと・・・クリスが言った


 「へぇ、色々大変だったんですね」

 「ええ。 もう大変でした・・・」





 イエローとクリスが仲良く、レッド達のいる浜辺に到着した
 見れば、グリーンとゴールドはもう先についていた
 しかし・・・何故か、2人は口喧嘩しているようだ
 レッドやシショー、ブルーがイエロー達の帰還に気づき、迎えに来た


 『おかえり、イエロー、クリス。
 よかったぁ、2人ともまともに「なみのり」とか使えないから、心配してたんだよ』

 「はい、何とか無事に・・・」

 「それより、どうしてあの2人が喧嘩しているんですか・・・?」

 「ああ、それはね・・・・・・」





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 グリーンが順調に『なみのり』をしている最中だった、どうにも聞き覚えのある声が耳に入ってきたのは


 「・・・ヘルプッ、ミ〜!」

 「無視だ、ゴルダック」

 
 だが、本当にそのまま無視していくのは忍びない
 一旦、グリーンは止まって、そちらを見た


 「・・・・・・何か用か、ゴールド」

 「酷いッスよ、無視だなんて。 ・・・あ、行かないで下さいってば!
 いや、俺の手持ちにいないんッスよ。 『なみのり』できるポケモン」

 「そうか。 頑張れ」


 そのままグリーンが行ってしまおうとするのを、ゴールドが慌てて止めた


 「いや、そのゴルダックに相乗りしたいんッスけどォ!」

 「こいつは1人乗りだ」

 「じゃ、空飛べるポケモン貸して下さいッス」

 「能力者は交換出来ないんだろうが」

 「う〜〜〜〜〜っ、ともかく! 何とか助けて下さいよ!」


 しばらくの間、グリーンは考え込んだ
 このまま放っておくと、後々恨まれる可能性は高い
 しかし、ここで甘やかしたら、後々奴の為にならない


 よし、仕方ない・・・ここはひとつ、譲歩してやろう


 グリーンが何処から出したのか、長いロープを放り投げた
 受け取ったゴールドは何だかよくわからない、グリーンが指示した


 「そのロープを身体に巻き付けろ」

 「はぁ? ・・・・・・あ、そっか!」


 ゴールドが何をか1人納得したようだ、グルグルとそのロープを身体に巻き付けた
 グリーンはぐいぐいとそのロープごとゴールドをたぐりよせる
 ・・・つまり、何かしら接触しなければいけないのだから、とりあえずこっちへ来い、と
 その為に、その途中で激しい海流に流されないようにと、ロープで安全を兼ねた命綱を・・・・・・


 


 「しっかり泳げよ」

 「・・・・・・はぃ?」


 ゴルダックは今まで通り、何事もなかったように、再び泳ぎ始めたという・・・





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「・・・・・・グリーンさん・・・」

 「スパルタですね」

 「だよな。 んで、一応は無事にたどり着いたんだけど・・・あの通りだ」


 そりゃ口論にもなるわ、誰でも怒ると思うなぁ・・・とクリスとイエローは思った
 というか・・・ゴールドの方も段々と化け物じみてきたようだ、よかったよかった


 「・・・残るはシルバーだけね、どうしたのかしら?」

 『彼はキチンとした「なみのり」ポケモンがいるはずだよねぇ・・・?』


 改めてブルー達は沖の方を見てみる、そして感じた・・・とてつもなく嫌な予感





 そしてその予感は、現実のものとなった





 午後5時39分27秒53





 「・・・・・・シ、シルバアァァァアッ!!!?」

 「な、何があったのよ!? ねぇ、目を覚ましてよぉっ!!」

 『落ち着いて、皆! 急いで、この島の病院に・・・』


 ドククラゲの触手に絡まれ、血まみれとなった板きれに横たわるシルバーの姿
 錯乱する女性達、慟哭する男性達
 総ては現実なのに・・・・・・夢のように、儚く、鮮やかな光景
 忘れることの出来ぬ、苦い苦い・・・・・・


 送り届けたそのドククラゲの姿はいつの間にか姿を消し、その所在はつかめなかった
 そして同時刻、隻腕のジンが完全に組織から離脱したのだった
 

 


 「・・・・・・無事、たどり着いたようだねぇ〜」

 「本当に大丈夫なのかい、シルバー・・・?」

 「・・・信じようではないか、彼らの持つ・・・希望に」


 2の島上空に現れた4つの人影、浜辺での混乱の渦が総て見通せる
 残酷なようだが、これも彼らに課せられた試練
 まだ彼らに姿を見せてはならない、少なくとも・・・今は


 「だがしかし、我らはいつでもお前達を見守っているぞ」





 「「「「我ら、『ジョウト四天王』がな」」」」





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