〜能力者への道65・人後〜



 グリーンVS金髪男が『パークル』


 そして、グリーンの敗北と瀕死・・・そこへキワメ婆さんによって救われた


 今一度、キワメ婆さんの家へ上がり込み、事の次第を説明する


 その後、明かされた『わざマシン』の仕組みと製造元


 大企業が『シルフカンパニー社』!!


 それからそれらの利権を、ある条件付きで『ポケモン協会』へ譲り渡したという


 いったい、何が起こったのか・・・『能力者の歴史』とは?


 話は順序があって、お次は『究極技』の秘密について


 最高威力『1350』を誇るが最強クラスの技、その実態


 並のトレーナーはおろか、歴代リーグチャンピオンでさえ使いこなせなかったという


 果たしてレッドやブルー、グリーンは扱いこなせるようになるのか


 しかし、そんな3つの究極技が内の2つも・・・あのパークルによって破られた


 『トレーナー能力・理力』の力とは?


 そして、シルバー同様にその姿を消したグリーンの行方は・・・・・・!?










 「・・・・・・こんな所にいたの・・・」





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ 





 「な・・・っ!?」

 『いつの間に・・・・・・それとブルーまで!』


 グリーンとその手持ちのポケモンが消えた、そしてそれを見た瞬間にブルーは彼の行方を追いにいってしまった
 皆もその後を追いかけようとしたが、キワメ婆さんがそれを強く制止した
 

 「ああッ!? 止めんじゃねーよ、これが・・・放っておけるかよっ!」

 「そうですよ! ただでさえ・・・シルバーが・・・・・・」


 確かに、この状況はあまりにも似過ぎていた・・・昨夜の出来事と
 昨夜のことが生々しく頭の中に浮かび上がっているに違いない、故に早く捜しに行きたかった
 しかし、キワメ婆さんは首を振った


 「・・・逆にあの2人がいなくなったこの状況の方が、これからの話には都合が良さそうだよ」

 「・・・・・・どういう意味なんだ? それは・・・『能力者の歴史』とも関係してるのか?」


 レッドがそう訊くと、キワメ婆さんはこくりと肯き、もう一度座り直した
 皆はまだ戸惑っていたが、レッドに促されて・・・やがて皆もまたそれに従った
 今のグリーンがそう遠くに行けるとは思えない、ここはブルーに任せるしかない
 それとそう、キワメ婆さんがいう「あの2人がいない方が都合のいい話」も気になった
 『能力者の歴史』とグリーンが関わっていそうなことは想像できるが、何故ブルーまで入るのかわからない
 ともかく、今は話を聞いてから・・・それからこの家から飛び出せばいい


 「・・・どんな話なんだ?」

 「お望み通り、21年前のシルフカンパニー社とポケモン協会とのやりとりさ。
 ・・・『わざマシン』の技術及び利権を譲り渡すがその条件とは・・・・・・」


 ごくりと皆はつばを飲み込んだ、ただシショーだけは何故かその顔を背けていた


 「『能力者の存在を広く世間に認めさせ、一般トレーナーと同じだけの権利を与える事』。
 そして、『出来る限りの人達にトレーナー能力の普及と推奨を認める』だった」

 「「「「!!!!!!!!????」」」」


 衝撃的な事実がまたしても発覚した
 まさか、あのシルフカンパニー社がそんな条件を提示するなんて・・・信じがたい話だ
 加えて、ポケモン協会はその条件を呑んだということだ・・・!


 「ちょ、ちょっと待って下さい! え、えっと・・・」

 「わかっておる。 何故、シルフカンパニー社がこのような条件を出したのか。
 また、条件を呑んだのならば、おヌシらが何故『能力者』というものを今まで聞いたことがなかったのか?
 きちんと説明するわぃ、慌てるでない。 髪の毛二つ分け逆立ち二重人格風少女」


 クリスが慌てた様子をキワメ婆さんが抑えた、が・・・そう言いたいのはレッド達も同じなのだ
 ただ、シショーの顔色といえばいいのか・・・それは全く変わらなかったのだが
 いやむしろ、『話さなければいけないのか』といった神妙な顔つきだった


 「・・・先ず、シルフカンパニー社が何故、能力者のトレーナー人権を求めたのか。
 それは、わざマシンを作ったのが能力者であったからさ


 レッド達はもう何も言えなかった、叫びたい程に


 「皆まで言うな。 きちんと、説明してやるさ。
 そもそも、ポケモンの脳に特殊な電波を直接送りこむという発想は何処から来ているのか?
 ・・・そう、あたしのような能力者を基にして、考案され開発したものなのじゃよ」

 「あァっ!? ば、婆さんも能力者ぁッ!!?」

 「当たり前じゃ。 そうでなくては、どうやって他人のポケモンに『究極技』を伝授できると思うんじゃ?
 この手の能力者は案外、多くいるもんさ・・・心当たりは無いのかぃ」

 
 そういえば、『ともしびやま』のふもとに『だいばくはつ』を教えてくれるという人がいた
 ・・・・・・実は、あの人も能力者であったと?


 「あたしのようなタイプ、ポケモンに技を教える能力者は基本は皆一緒なんさ。
 『発動型』であり、大体が手のひらから念波、いや電波を出すことが出来るというね。
 後の理屈はわざマシンの仕組みと同じ、いや・・・向こうの方が此方を真似てるのか」

 「・・・つまり、能力者のその・・・原理を科学的に説明し、商品化したってことですか?」

 「そう。 勿論、シルフカンパニー社はわざマシンを開発し、その協力してくれた能力者兼科学者の功績を讃えた。
 わざマシンの普及は、それの開発に貢献した『能力者』という存在を世間に広めることと一緒だった。
 ・・・能力者というのは、ポケモンと人間が共存や共闘をし、また共に繁栄し始めた頃から存在していたんさ。
 が、自身のその異端の力から・・・能力を持つ者や一族は自ら歴史の影に潜み、表舞台の光を浴びることを拒んでいた。
 故に一部の者しかその存在を知らず、大きな力を持ちながらも・・・その力を活かすことは無かった。
 大勢の者達と違い、少なからず何かにおいてその大勢の者達より勝っているものがある少数の者達は必ず迫害される。
 今回のわざマシンを制作した能力者だって、少しでも一般トレーナーとの共存への道を作ろうという思いがあったからこそさ。
 迫害されたくない、それでもされる立場はいつの時代でも存在する。 それが悲しいかな、人間って生き物なんさぁ・・・・・・」


 キワメ婆さんは悲しげにふぅとため息をついた、確かに・・・その通りかもしれない


 他人より何かが優れていれば心の何処かで安心できる、それは優越感というものだ
 それが満たされない時、子供はイジメにはしり、大人はその者を迫害をする
 能力者もまた一般トレーナー相手においては、特典により・・・ポケモンバトルでは後れをとることは無いに等しい
 欠点が無いわけではない、しかしその存在は一般トレーナーから見れば羨望と恐怖を感じずにはいられまい
 昔はどうだったのかはわからないが、今ではその違いから迫害されるに違いない
 それを知っているからこそ、能力者は自ら歴史の影に隠れていったのだ 


 レッドはあの幻聴を、<声>の言葉を思い出していた


 「・・・しかし、シルフカンパニー社はそんな能力者の存在を明るみに出してしまった。
 わざマシンの開発に貢献し世に広めたことは認めるが、能力者のその存在まで広まってしまったのは・・・まずかったんだろうね。
 ・・・やがて、その影に生き続けてきた能力者の立場を、ポケモン協会に訴える者が現れ始めた。
 そして、その訴訟には話の中心である能力者達やその一族達も加わった。 大体が若く、まだ思慮の浅い若者が中心だったかの。
 まぁそりゃそうさね、赤い血の流れる同じ人間だもの。
 周りの人達とは違う力はあるけれど、そんな周りの人達と同じように生きる権利はあるものねぇ・・・」


 当然だ。 
 更に彼らの不思議な力を、わざマシン同様に解明していったら・・・ポケモンの歴史は大きく変わっていくに違いない・・・
 そして、世論は動いた


 「わざマシンと生態系の崩壊を警告した時期も重なったのもあるだろう。
 シルフカンパニー社を筆頭に、全能力者達にトレーナー人権を与えることとトレーナー能力の普及を条件に譲り渡すと迫った。
 その背後には光を望む能力者達と数多くの群衆が居た。 また、考古学を始めとするある高名な学者のグループもそれを望んだ。
 ポケモン協会といえど、まともにぶつかりあって、勝てる相手ではないのは明白じゃった。
 ・・・・・・ポケモン協会は折れ、その条件を呑むこととなった」


 トレーナー人権。
 その最大のものはリーグ挑戦権、ジムリーダー試験受験資格の2つだろう
 リーグ挑戦権を得ることは、一般トレーナーならば・・・ポケモンを1体でも持てばいい話だ
 ポケモンさえ持っていれば、誰でもポケモンリーグには参加することが出来る
 しかし、ジムリーダー試験受験資格はジムバッジ7つ以上を持ち、その実力をリーグ入賞によって示さなければいけない
 中にはジム自体が家業であり、現リーダーが自身の子供の素質を見極め、ポケモン協会へ書類提出及び審査によってその資格を得る者もいる
 最も受験資格は持っていても、ポケモン協会がリーダー交替や引退を認め、空席が出来なければそれも無駄なのだが
 実際、ジムリーダー試験受験資格を得ていても、一生その機会に恵まれなかった人は大勢居る


 ・・・それはともかくとして、ポケモン協会が恐れていたのはこの2つの権利だったのだ
 そう、能力者と一般トレーナーでは・・・実力とその底が違う
 能力者がトレーナー人権を得て、リーグに挑戦すれば・・・一般トレーナーの立場はどうなってしまうのか
 試合形式をとるあの場でまともにやりあって、勝てる相手ではない
 そして、協会が認めた今のジムリーダーは90%は、実力こそあれど一般トレーナーなのだ
 これではジムリーダー試験受験資格も簡単に得られ、一般トレーナーよりも高い確率で合格出来るだろう
 能力者がジムリーダーになればどうなるのか
 予測でしかないが、力を持ち始めた能力者達が一般トレーナーを逆に迫害し始める可能性があった
 自分達より弱い者を迫害する、それは支配という方が近いかもしれない
 能力者は誰にでもなれるわけではない、故にそういったことが起こりうる出来事だと、ポケモン協会は考えていたのだ


 だが、世論はそこまでは考えもしなかった
 それ故に、この後の悲劇はより一層に深くなってしまったのだ
 

 「・・・ポケモン協会は能力者にトレーナー人権を与えた。 が、同時に幾つか制限を設けることとした。
 それは勿論、リーグ挑戦権とジムリーダー試験受験資格の2つの権利の見送りだ。
 不満もあったけどね、結局は押し通すことになった。 能力者達からは不満は出なかった、むしろ認めてくれただけでも充分だっんじゃよ。
 それに幸い、次のポケモンリーグまで2、3年の猶予もあったし、それまでに対策を取るつもりだったんじゃろ」

 「・・・・・・まぁ、仕方無いよな。 そりゃ・・・」


 ゴールドが肯いて見せた、これは誰にでもわかる理屈だ
 新しいものを受け入れるまでには時間がかかる、この問題の場合は尚更だろう





 しかし、能力者にトレーナー人権を認めてから、わずか7ヶ月後のことだ


 予想を超えた数の人達が能力者とポケモン協会の指導の下に、内に秘めたるトレーナー能力を目覚めさせていった
 能力者の存在とその力の研究も進み、様々なことが新たに判明もしていった
 何事もなく、このまま彼らが周りに溶け込んでいける・・・そんな兆しが見え始めていた頃だった


 「ポケモン協会は手のひらを返したように、全能力者から再びトレーナー人権を剥奪し、全面的にトレーナー能力の普及を禁じたのさ」

 
 それは血も凍るような発言だった
 一度はその存在を認め、漸く光を浴びた彼らを・・・再び突き落としたのだ


 「その声明と共に、当時のシルフカンパニー社の経営陣や能力者は総辞任した。
 それから元々能力者の存在をよく思っていなかった者達による新たな経営陣が発足され、ポケモン協会のその声明に率先して賛同した。
 わざマシンのおかげでその名は知れ渡っていたからねぇ、商品は放っておいても売れるようになってた。
 また様々な新製品も好調に開発、販売してたから経営陣交替には何の問題もなかった。
 シルフカンパニー社はこうして大企業となり、今の社史には能力者の一字だって記録に無いことじゃろうて。
 ・・・人間とは不思議なもんさ。 ポケモン協会がここまで強く施行したからには、きっと何かが能力者にあるのだと。
 そして、能力者の存在を認めさせる者達の先頭に立っていたシルフカンパニー社でさえ、能力者の存在を否定し始めた。
 得体の知れない恐怖を感じた群衆達、つまり世論はひっくり返っちまったんさ・・・」


 再び、能力者達は光から影の身となった
一度は権利を認めたポケモン協会、そして群衆を動かしたシルフカンパニー社
 この大きな2つが、同時に能力者の存在を強く否定したのだ・・・世間は混乱した
 学者グループは反発したが、たかがその個人の力は知れている
 いつしか、そんな学者グループも沈黙してしまった・・・それから坂道を転がるように話は動き、止まらなくなっていた
 まだまだ・・・能力者の存在を恐れていた者達は少なくなかった、やがて非難の声はどんどん高まっていく
 今まで能力者の権利の主張に力を入れていた人達も、そんな周りに圧倒されていった
 

 キワメ婆さんが遠くを見るように、ふっと息をついて言った


 「・・・・・・そして、悲劇は起こった。
 一度世間に出てしまった能力者、個人ならともかく・・・その一族が再び完全に歴史の影に戻るのは相当時間のかかることじゃった。
 能力者達は一度光を浴び、もう影に戻れなくなっていた者も多くいた・・・。
 その住処に石を投げつけ、群衆達や隣人は行き場のない彼らに立ち退きを迫った。
 また周りは、大人達は『能力者』や『トレーナー能力』というものを口にしなくなった。
 忘れるべき過去として、それでも優れたわざマシンやその他の技術は歴史上に残してね・・・。
 それらの技術はポケモン協会が総て管理することとなり、表向きの歴史にはそれらを開発したのはあくまで『一般人』としておる。
 能力者達、その一族はその理不尽さが、この1年間が嘘にしか思えなかったろぅ・・・。
 元々強大な力を持つトレーナー、戦えば勝ち目は無い・・・その存在は危険過ぎる。
 行き過ぎた考えを以て、彼ら過激派は・・・何もかもが凍り付くような行為、『能力者狩り』を始めおったんじゃ」


 「「「「!!!!!!!!!!!!」」」」


 そんな莫迦な話があってたまるものか
 幾ら何でも一方的過ぎる、たった7ヶ月の間に何が起きたというのだ


 「胸くそ悪ぃぜ、オイ・・・! ポケモン協会は、何を考えてやがんだッ!!」


 ゴールドがダンッと壁に拳をぶつけた、ぐらりとボロ屋が揺れた
 レッドもはらわたが煮えくり返るような思いだった、どうしてこんなことが起きてしまったのか
 イエローとクリスは顔が真っ青で、しかしそれはそうだろうと思う
 誰だって、とてもじゃないが・・・まともに聞いてはいられない話だ・・・


 「・・・その思想はどんどん広まり、またポケモン協会も何故かそれを制止しようとする意志が殆ど感じられんかった。
 そして、その『能力者狩り』はある能力者一族を中心に広がっていった・・・」

 「ある・・・一族?」
 
 「そうさ。 『トキワの癒し』なんかは地域と深く密着していたし、その危険性も殆ど無いことから、まぁ無事で済んだ。
 だが、古来より代々受け継がれ、最も多くの人々が同じ能力名を持ち、皆が共通した能力を持っていた一族があった。
 それはポケモンに知性を与え、そのパートナーの刃を以て様々な力を示すがその能力。
 個人差はあれど・・・全体的に戦闘向けの能力であり、強く危険なものに見えた。 それ故に、『能力者狩り』の標的にしやすかった。
 矛先は彼らやその一族に向くのは当然とも言えたのぅ・・・」

 「お婆さん、それって・・・・・・!?」


 クリスはハッとして、青白い顔で言った・・・皆にも察しがついた、ついてしまった
 キワメ婆さんはこくりと肯いた


 「そうさ。 その能力者一族が能力名は『理力』。 能力者狩りはいつしか『理力狩り』と呼ばれるようになっていった・・・!」   


 太陽が赤く、その水平線の向こうに沈みかけていた
 間もなく陽は暮れる、グリーンとブルーはまだ帰っては来なかった
 俺達は2人を捜しに行くことが出来ずに、ただ重くのしかかってくる現実を受け止める他無かった


 どうして、グリーンが今まで俺達にその能力について黙っていたのか
 いったい、いつから能力に目覚め、このことについて知っていたのか
 誰にも相談せず、自分自身で総てを抱え込もうとしていたのか
 その一族の生き残りとして、彼は何を考えていたのだろうか


 そして、パークルとの闘いはいったい何だったのだろうか・・・・・・





  ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
 




 「・・・・・・こんな所にいたの・・・」


 ブルーが砂浜で、ヤシに似た樹に寄りかかっているグリーンの姿を見つけた
 赤く夕焼けで染まった海と、その色のグラデーションがとてもきれいだった・・・まるで・・・・・・


 「とりあえず、お礼だけ先に言っておくわ。 さっきは助けてくれて、有り難う」

 「・・・・・・」


 グリーンは何も言わなかった、ブルーがムッとしてその隣に座った


 「・・・アタシね、あの時は恐かった。 得体の知れない恐怖が、どうにも・・・感じずにはいられなかった。
 だから、さっきのお礼は本当に本心からそう思ってるの。 アンタ、わかってる?」


 ・・・相変わらず、グリーンはうつむいたまま何も言わなかった
 ブルーはため息をついた、それから薄暗くなりつつある広い海を見た


 「アンタ、最近無理してるでしょ。 見え見えっていうか、バレバレっていうか。
 ・・・どーして、そうやって1人で背負い込もうとするわけ?」

 「・・・・・・」

 「確かに『人』っていう字は支え合っているわよ。 でもさ、それって間違ってると思わない?
 だって、背の低い方が明らかに背の高い方を一方的に支えてんじゃない。 『入』の字もその位置が入れ替わっただけよね。
 おかしいわよね、不公平でしょ?」


 グリーンは何も言わなかった、ブルーの何かがぷちっとキレた音がした


 ごきゃあぁっ


 鮮やかにブルーのアッパーカットが、グリーンのアゴに直撃した
 ずしゃあっと音を立てて、グリーンは砂浜の上に仰向けで倒れた


 「アンタ、真面目に聞いてる!? いい? 確かに『人』や『入』の字は間違っているわよ!
 でもね、それは2人しかいないからでしょ! 今、アンタの周りに何人いると思ってんのよ!!
 ええ、確かにレッドはお兄さんっぽいけど、リーダには頼りないかもしれない。
 ゴールドはあんなんだし、イエローは危なっかしい所があるし!
 クリスやシショーもまともそうに見えるけど、全然違うけどね!!
 それでもっ、何もアンタ1人でそんな全員を支えてもらおうなんて気はね、こっちはそんな気無いのよ、バカッ!」

 「・・・・・・」

 「どうして、そうやって1人で何でもやろうとするのよ!? アタシ達にも、アンタのことを支えさせてよ!
 ・・・皆ね、どれだけアンタのことを大切にしてるか、わかんないの・・・・・・? ねぇ・・・」


 ブルーは涙目になって訴えた
 シルバーのことを一番、一番ツラく思っていたのは・・・・・・グリーンなのだ
 己の力量が足りなかったばかりに、支えきれなかったことを悔やんでいる
 あの病院で、ブルーの傍に居たのは・・・責めてほしかったからだ
 その恨み言を、総てを自身の所為だと言ってほしかったのだろう
 

 なんて、なんて莫迦で不器用で・・・・・・


 シルバーもそう、皆に何も打ち明けずに・・・何処かへ行ってしまった
 誰も留めておくことが出来なかった、砂のように水のように・・・


 もう、そんなのは嫌なのだ・・・





 「・・・・・・もう、アンタなんか知らないっ! さっさと決着つけて、早く帰ってきなさいっ!」


 何だか矛盾することを押しつけて、ブルーはくるりと来た道を戻って行ってしまった
 グリーンは仰向けになったまま、まだ動かない・・・・・・





 それから数分後、ようやく彼はむくりと起き上がった
 開口一番、グリーンは言った


 「・・・・・・いかん。 寝てた、のか・・・」


 そう言うと、寄りかかって瞑想していたはずなのに・・・どうして砂浜に横たわっているのか、不自然に思った
 グリーンはまた何故か鈍い痛みのはしるアゴを押さえつつ、砂浜に残されていた足跡を見た
 ・・・誰かが様子を見に来たのだろうか、足跡のサイズからしてブルーかクリス辺りだと思うのだが・・・


 「・・・行くか」


 グリーンはゴルダックを出し、『なみのり』で海上を進んでいった
 目指すはパークルが居る場所、それは右眼が疼けば嫌でもわかるだろうと思う


 「・・・・・・」


 パークルの『理』とその『力』に打ち勝ち・・・帰ってこよう、この『2のしま』に


 グリーンは己の感ずるままに、先へと進んだ
 アゴがやけに痛く・・・その痛みは何だか、今のグリーンには心地の良いものだった







続きを読む

戻る