〜能力者への道６９，５・弐島〜
レッド達はシーギャロップ号に乗り、短い船旅を満喫することにした
最も、そういう風に楽しめる状況では無いのだが･･････
甲板で皆がその海の先を見ていると、レッドだけが１人離れて考え事をしていた
イエローがそれに気がつくと、とことことその傍に寄った
「どうしたんですか？」
「あ、いやさ･･･ギャラのこと」
イエローが「ああ」と肯いて見せた
そう、あの時すぐにポケモンセンターに行き、その様子を訊いてきたのだ
しかし、ジョーイさん曰く「もうしばらくかかりそうです。 治らないわけではありませんから、安心してください」
･･･と、言われてしまったらしい
これにはレッドもショックを受け、少々落ち込んでいるようだ
「元気を出してください、レッドさん。 そりゃ･･･ボクには心の傷までは治せませんけど･･･」
「あっ、ああ！ イエローは気にしなくて良いって！ うん!!」
このままではレッドではなく、逆にイエローの方が落ち込んでしまう
慌てたレッドはもうひとつ、あまり重要では無いが･･･もうひとつの悩みを打ち明けることにした
「･･････レッドさんの能力の、名前ですか･･･」
「そー。 折角だし、やっぱ付けたいじゃん？」
レッドの言葉に、イエローも「それもそうですね」と同意した
何しろ敵の組織が能力者１人を倒し、『おんがえし』を手持ちポケモン全員に覚えさせることが出来る
なかなか良い能力なのでは･･･と、レッド自身がそう思えてきたから、尚更なのだ
「いつまでも『ポケモン懐き』じゃ変だもんな」
「？ そうですかぁ。 ボクはそのまんまでもいいですけど」
イエローがそう言うと、ますますレッドは頭を抱え込んだ
やがて、レッドとイエローの周りに皆がなんだなんだと集まってきてしまった
「なになに？ ついに告は･･･もがっ」
「何か悩みか」
ブルーの言葉をグリーンが遮り、レッドは自身の能力の名前について話した
そして、それに「同じく考えてほしい」と言ったは･･･ゴールドだった
「いやぁ〜、俺も能力名決まってないんスよ。 何か、格好良いのないッスかね？」
「･･･そういえば、クリスさんは？」
「あ、私は『再技想起』っていう、正式名称があるって聞きました」
さらにクリスの場合、能力の発動の際が引き替えるのは･･･おじさんと同じキノコではないという
なんでも･･･技を思い出させたいポケモンに関する簡単なクイズを出し、それに正解しなければいけない
何故、そういう風な面倒臭い『引き替え』にしたのかと本人に訊いてみる
すると、おじさん曰く「これはもう本人の資質によるもので、ある意味どうしようもない」のだという
･･･話は本題に戻り、レッドとゴールドの能力名の議論だ
「レッドのはあれ、『懐かれまくり』。 ゴールドは『人工孵化法』で良くない？」
『いいね、それ』
「「ふざけるなーーーッ!!!!??」」
ブルーが「ワガママねぇ」とぽつりと洩らしたが、そういう問題じゃないと思う
･･････そうこうしている間に、高速で進む船は『目的地・３のしま』の目前まで来ていた
レッド達は慌てて、「何か他に無いのか!?」と皆に訊きまくっている
別に、今すぐに決める必要はないのだが･･････どうもそのことを失念しているらしい
皆もそう急かされると、良い案も出そうで出ない･･･
すると、今まで黙っていたグリーンが口を開いた
「レッドは『サマー・オーラ』、ゴールドは『インポッシビリティ』というのはどうだ？」
その案を２人は噛みしめる様に頭の中で反芻し、考えた
「･･･なぁ、それって俺が夏生まれだからか？」
「そんなようなところだな」
「なんか、格好良いッスね！ カタカナだと！」
どうやら、お互い気に入ったらしい･･････グリーンはふっと微笑んだ
それから２人はウキウキと甲板を下りて、下船の準備をしに行ってしまった･･･
残された皆が、シショーがグリーンにそれぞれの命名の理由を聞いた
『･･･いや、ゴールドのは英語で「不可能」って意味じゃないの？ 能力と関係無いでしょ』
「わからんのか？ 『サマー・オーラ』、『インポッシビリティ』だぞ」
『サマー・オーラ』→『夏・気』→『懐き』!!!
『インポッシビリティ』→『不可能』→『孵化・能』→『孵化能』!!!
「「「『えぇぇえぇえぇぇぇぇーーーーーーッッッッ!!!!????』」」」
「･･･半分は冗談のつもりだったのだがな。 まぁ、本人達が気に入ったのだから良いんだろう」
いいのか、いいのか、いいのか、いいのか･･･それで･･･
ていうか、レッド達も気づけよ！
グリーンはそう言うと、自分もすたすたと下船する為に甲板を下りていった
真実を知った皆はただ唖然と、到着の汽笛が鳴り響く今でも･･････その場で固まっていたのだった･･･
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