〜能力者への道70・焚火〜
『幹部候補・サックス』の始動・・・・・・?
レッド一行はキワメ婆さんの薦めにより、同じ島内に居る能力者の店へ行くことにした
いったい、どんな能力者がどんなことをしてくれるのだろうか?
レッドはギャラの体調が気になったが、先に其方を優先させることに・・・不安は募る
ゲームセンターの隣にあったその店の看板らしきものには『わざおしえおじさん』とあった
中に入れば変態臭い科白を言っている張本人が・・・・・・とてつもなくうさんくさかった
商売内容は「キノコ」と引き替えに手持ちポケモンの忘れている技を思い出させてあげること
そしてオシオおじさん曰く、その能力の才能がクリスにもあるということ
驚愕する皆、クリスは早速『自覚』、『想像』、『覚醒』をさせてくれるよう頼むことに
その後、ゲームセンターの主人から・・・・・・あのマヨちゃんが『3のしま』で行方知れずになったことを聞く
途方に暮れる主人に、レッド達はマヨちゃんを捜しにその島へ行くことを告げる
主人のポケギア番号を登録し、いざ・・・シーギャロップ号で『3のしま』へ!!
「こわいよぅ、おねぇちゃん」
「大丈夫、大丈夫よ」
陽も暮れ、森の中は次第に夜の闇を帯びてくる・・・明かりなど何一つ無い、暗闇
その中に6,7歳の少女と15,6歳ぐらいの女の子がいた
「(・・・どうしよう、わたしの所為で・・・この子が・・・)」
2人はポケモンを持っておらず、共にこの『きのみのもり』に迷ってしまったのだ
加えて、此処の虫ポケモンに襲われ、追われて・・・女の子は少女を連れて逃げ回った
それがいけなかったのか、出口には一向に辿り着かず・・・・・・更に暗くなり、状況は悪化していた
「こわいよぅこわいよぅ、おとうさんおかあさぁぁあぁあん」
「ごめんね、ごめんね・・・泣かないで・・・」
少女は泣き出し、女の子の方もその目にうっすらと涙を浮かべていた
このままではマズイ、とにかく・・・出口を探さないと
その時だった
茂みからがさがさと音を立て、少女の泣き声を聞きつけたのか・・・野生ポケモンが姿を現した
アリアドス3体にイトマルが10数匹、スピアー4体にピジョンが2体・・・更にこの森の主がスリーパーまでいた
2人は恐怖で身体が固まり、少女は泣きやんだ・・・・・・そして、その少女は籠に入っていたきのみを投げつけた
その野生ポケモン達の主食であるきのみを投げ、それを向こうが食べている間に・・・今まで逃げ続けることが出来たのだ
虫ポケモンやピジョンはその手が通じ、今の内に2人はまた逃げようとした
だが、彼女達の前に・・・・・・スリーパーが立ち塞がった
「・・・!」
スリーパーの『ねんりき』が2人を襲った、とっさに女の子は少女をかばい・・・宙に浮き、その頭を樹にぶつけた
女の子がぐったりとその場に倒れ、少女は泣き叫んだ
「だいじょうぶ? しっかりして、おねぇちゃああん!!」
更にきのみを食べ終えた虫ポケモン達も彼女達に迫った、もう少女の手には・・・投げるきのみが手元には無い・・・
女の子は頭を抑えながら、必死に少女をかばった・・・少女も彼女にぎゅっとしがみついた
・・・この子は、わたしが護る・・・!!
いっせいに野生ポケモンが彼女達に襲いかかった
その時だった
「オラオラオラオラァッ!! ウーたろう、ニョたろうのダブルで『ばくれつパンチ』!」
バシィッと凄まじい音がしたかと思うと、乱暴にその野生ポケモンを蹴散らしその人は現れた
力強い暴風のように、雄々しい雷のように・・・さっそうとその人は現れた
その人が彼女達に気づくと、ニッと笑って言った
「大丈夫か? ええと、マヨちゃんと・・・」
「そ、それよりっ、後ろ!! 危ない!」
やはりというべきか、むしタイプやエスパータイプには『ばくれつパンチ』では効果が薄かったようだ
その彼女達の救い主の背後から、怒りのボルテージマックスの野生ポケモン達が一気に襲いかかってきた
・・・・・・その人は振り向き、慌てず騒がず言った
「遅いッスよ、先輩達」
その言葉と同時に、あんなに怒り狂っていた野生ポケモン達が一気に撃沈した
野生ポケモン達の後ろには百戦錬磨の風格を持った、如何にも強そうなポケモンとトレーナーが居た
ゴルダックとつり目の男の人、ピカチュウを肩に乗せ傍にはニドリーノを連れた男の人
『ゆびをふって』いるピクシーを連れた女の人に、ネイティを持った女の子・・・それとヨルノズクが1体
「先へ行くなと、あれだけ言っいてだろうが」
「そうよ、アタシのピッくんの耳がなきゃ、アンタもとっくに迷子だったんだからね!」
「いいじゃないッスか、こうしてマヨちゃん『達』は見つかったんだし。
森の中じゃ炎ポケモンは厳禁だって、そっちの約束は護りましたよ?」
「そういう問題じゃないでしょ、莫迦」
『駄目だよ、皆の言うことは聞かなきゃ。 ・・・あれ? 2人居るの?』
「?? ま、いいや。 ・・・イエロー、彼女達の怪我を看てあげてくれないか」
そう男の人に言われ、黄色の髪をした少女が彼女達に寄って・・・「大丈夫ですか、もう心配いらないですよ」と言った
その優しげな声に、少女・・・マヨちゃんが再び泣き出してしまった・・・
同時に口々に周りから注意されていたその人が、それから逃げるように彼女達に近づいてきた
「怪我とかは大丈夫ッスかね?」
「多分。 大きな怪我もないし、毒の心配も無さそうです」
「・・・で、此方のお嬢さんのお名前は?」
その人にそう聞かれ、マヨちゃんと共にいた女の子は答えた
「・・・えっと、クレア・・・と、言います」
「クレアちゃん、か。 可愛い名前ですね、どうでしょう? 僕とお付き合い願えませんか?」
周りが口々に「あの莫迦」「またナンパなんかして!」『口調変わってない?』と言っている
彼女が迷わず、口を開いた
「はい」
ナンパした本人を含む皆は硬直し、素直にそう答えた女の子の目だけが星のように輝いていた
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
『見つかったのかねっ!!?』
「はい。 きのみのもりの最深部にて、マヨちゃんを無事に保護しました」
『良かった、良かった・・・』
電話の向こうで泣き崩れる声がした、レッドは電話をマヨちゃんと交代してあげ・・・その元気な声を聞かせてあげた
その電話口で何度も何度も「無事か」「駄目じゃないか、1人でそんな所へ行っちゃ!」との声がする
「おべんとうに、えいようまんてんのきのみをいれてあげたかったの」「でも、みんななげちゃった・・・」
と、マヨちゃんが森に入りしたことを必死で説明した・・・主人は嬉しくもあり、必死で叱った
マヨちゃんは安心したせいか、ぐすぐすとまた泣き始めてしまった・・・向こうも涙声のようだ
レッドは再び電話を代わり、話し始めた
「すみません。 大分、発見が遅れてしまって・・・なんかトラブルが多くて。
それで、其方へ帰れるのは明日の朝一番になりそうなんですが・・・」
『飛行ポケモンはいないのかね?』
「居るにはいるんですが、マヨちゃん自身が長時間の飛行に耐えられるかどうか・・・。
シーギャロップ号も今日の運航は終わっていますし、夜の森で・・・あまり夜目が利かないこともあります」
『うう・・・それで? それでどうするんだね!?』
「其方が宜しければ、今夜は此方で夜を過ごして・・・明日の朝一番の船で『2のしま』に送りたいのですが」
向こうはうんうんと思案しているようだ、出来れば早く・・・その無事な姿をこの目で見たいのだろう
しかし、確かに夜の森は危険だし、3のしまから2のしままでのルートもほぼ途絶えている
このまま再び、マヨちゃんを危険な目に遭わせたくない・・・・・・
『わかった。 君達を信用して、マヨを預けよう・・・』
「有り難う御座います。 もう一度、マヨちゃんと代わりますね」
主人はマヨちゃんに「周りの人達を信用して、今夜一晩は其処で泊まりなさい」
「風邪を引かないよう、暖かい恰好をするんだよ」「何かあったら、すぐ飛んでいくからね」と幾度も幾度も注意を繰り返した
マヨちゃんもうんうんと繰り返し肯き、最後に「おやすみなさい」と言った
レッドは気になることがあり、主人にもう1つ訊きたいことがあると言った
『んん? なんだね・・・』
「実はマヨちゃんと一緒に、15歳ぐらいの女の子を見つけたんです。
名前はクレア、腰までくる長髪の色は紺色で瞳もそんな色で。 ・・・・・・整った顔立ちの、綺麗な子です。
マヨちゃんと一緒に行動し、ずっと傍にいて護っていてくれたようなんですけど。
・・・名前とか、何か心当たりはありませんか?」
主人は「そんな子は知らない。 しかし、是非その子にもお礼を言いたい」と言った
レッドは曖昧に笑って、もう一度謝罪をして、電話を切った
電話に代わってあげても良いじゃないか、そう思うだろうが・・・
・・・・・・その当の本人は、ラブラブ真っ最中だった
たき火の傍で、ゴールドと並んで座り・・・語り合っていたのだ
勿論、周りに目や耳など一切いっていないだろう・・・
周りは信じられない光景を見ている気がした
何故なら、ゴールドのナンパが・・・・・・成功し、しかも向こうの方が夢中なのだから
『世の中はまだ、解明されない謎に満ち溢れているんだね・・・』
「頭の打ち所が悪かったんでしょうか」
「ホンット! 信じられない、どうしてあのゴールドが!!」
「・・・クリス、もしかして妬いてるの?」
「違います!」
レッドとグリーンがその2人と離れた所に、もう一つたき火を作った
どうにも入り込めない世界が出来上がってしまっているからだ、皆もそれに賛同して従った
「・・・・・・どう思う?」
『ゲームセンターの主人も知らない女の子が、マヨちゃんを護ったってこと?
別に不自然じゃ無いと思うよ、僕は。 別に此処は立入禁止区域じゃ無いんでしょ』
「どうかしら。 マヨちゃんはともかく、ポケモンも持たずにこの森にいること自体が怪しいわよ。
しかもあの子、自分の名前とマヨちゃんとの行動以外・・・記憶が無いんですって・・・?」
先程まで居たイエローがテントの中から出てくると、その話に加わった
マヨちゃんが疲れ眠たそうだったので、一足先に寝かせてきたのだった
「はい。 マヨちゃんの話によると、そうらしいです。
どうも、ボク達が来る直前に現れた野生ポケモン達に襲われた時・・・頭を打ったみたいなんです」
「大した外傷じゃ無かったらしいが、それこそ『頭の打ち所が悪かった』んだろうな。
それこそ、その言い分が本当ならばの・・・話だが」
「治る見込みは?」
「ボクはそういう専門じゃありませんし、やっぱりちゃんとしたお医者さんに診て貰って方が良いですよ」
確かに、打ち所が悪かったにしても何にしても・・・身元がわからない以上、これ以上の関わりは避けた方が良いのかもしれない
マヨちゃんを護り続けていたのも事実だが、その所為でこの森の最深部まで来てしまったのも事実なのだ
そのマヨちゃん曰く、森に迷い始めて・・・最初に野生ポケモンに追われていた時、同じく追われていたあのお姉ちゃんと知り合ったんだそうだ
何か、レッドやグリーン達には・・・実にタイミングが良すぎるような気がしてならないのだった
「森を出たら、専門の医者に診せるのが得策だろうな」
「でもねぇ、マヨちゃんはその『クレアお姉ちゃん』に懐いてべったりだし」
「あの莫迦は別の意味でべったりですからね!!」
クリスはバギッと手に持っていたマキの小枝を勢いよく折った
レッドはその剣幕にたじろぎながら、頭を抱えてぽつりをつぶやいた
「・・・どうしたもんかなぁ、これから」
『この森を出たら、別れなきゃいけないんだよね。 ゴールド、わかっているのかな?』
「でも、クレアさん・・・すっごく楽しそうっていうか、嬉しそうっていうか・・・」
「本気で恋しているんでしょうね、きっと・・・」
「引き離せるのか、お前達には・・・・・・」
グリーンがそう静かに言うと、皆はうっと詰まった・・・
話は終えた、結論も出た
これから自分達が何をすべきで、何をしなければいけない旅なのかもわかっている
・・・だけど・・・
皆はゴールドと並んで座るクレアの顔を見た
とてもじゃないが、悪人には見えず・・・・・・本気で1人の異性に恋をした人の顔にしか見えなかった・・・
ゴールドもまた、その場限りの顔には見えない・・・切なくなるような、幸せに満ち溢れていた
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
「・・・クレアはポケモンを持ってねぇんだっけか」
「おかしいですか?」
「いや、おかしくねぇって! 全然っ!」
「・・・良かったぁ。 ゴールドさんに変って言われたら、どうしようかと思ってた」
既にゴールドの方は呼び捨てだが、クレアのその言葉にゴールドは少々顔を赤らめた
言動から仕草、その顔立ちまでもが可愛らしくて・・・何だか護ってあげたくなると言えばいいのか・・・
つまり、ナンパした本人もが・・・・・・メロメロなのだ
口調も普段のものに戻ってしまっているが、クレアは一向に気にしない
純粋にゴールドのことが好きなのだ、そしてそのゴールドもクレアに惹かれていた
「・・・こほっこほっ」
「ん? どうした、クレア」
同時にゴールド自身もたき火の煙で咳き込んだ、煙が人のいる方へ寄ってくるとは本当だったのか
長い棒きれでマキのある位置を調整し、風向きを考えてゴールドとクレアは座る場所を変えた
「それで、他にどんな冒険をしてきたんですか!?」
「お、おおっ! そうだなぁ・・・」
興奮気味にきらきらと目を輝かせて、ゴールドが今までに体験してきた冒険談を聞き入るクレア
ゴールドは嬉しそうに、その話を面白おかしく彼女に伝えた
「・・・んで、この3のしまに来たら、暴走族に遭ってよ。 イエローさんがそいつらをぼこぼこにしちゃったんだよ。
いや、もう強いのなんのって! 流石は四天王事件が解決者の1人だよなぁ」
「それでそれで?」
「クレアとマヨちゃんがいるこの森に入ったら、性懲りも無く組織の能力者が現れてさ。
でもよ、其奴は情け無くて情け無くて。 自分の能力を扱いきれてないでやんの。
自分の能力の弱点をグリーンさんに見抜かれて、逆ギレしちゃって・・・ちょーっと可哀相だったかな。
でもまぁ、案外しぶとくて・・・・・・それで来るのが遅れちまったんだよ。 怖かったろ?」
クレアは少々沈んだ顔を見せたが、その首をゆっくりと横に振った
それから、目一杯明るい顔で言った
「怖くなんかないです。 だって・・・」
「でもよ、遅れたその所為でクレアは記憶を失っちまったんだぞ? 責めようとは思わないのかよ」
「もしかしたら、わたしには最初から記憶が無いのかもしれません」
突然の発言だった
ゴールドは虚をつかれ、やがて顔色を変えた
クレアはそれに気がつき、それでも・・・ゆっくりと言った
「最初から、こういう状態だったのかもしれないんです。 逃げてる時は夢中で、記憶が無いことを気にしなかったから・・・。
だから、ゴールドさん達を責める気はありませんし、むしろ感謝しているんです」
「感謝? どうしてだよ、記憶があったって無かったって・・・俺や皆には会えたんだろう?
だったら、記憶があった方が良いに決まってるじゃねぇかよ!?」
クレアは微笑みながら・・・晴れた、満天の星空を見上げて言った
「だって、今までの記憶が無い分だけ、わたしはこれからゴールドさんや皆と過ごした時を憶えていられるじゃないですか」
「・・・・・・クレア・・・」
儚い、儚すぎる・・・・・・なんて儚い存在なのだろう
自身の記憶が無いことを恐れず、ただそれに感謝しこれからのことを考えている
そして、それはこれからゴールドや皆と過ごして得られるものを、より多く憶えていられるからだという
「・・・・・・何話してんのかしら。 イチャイチャしちゃって、まぁ」
「ブルーさん、ちょっと・・・」
イエローが小声でブルーに注意した、どうにも2人の様子が気になってしょうがないらしい
女性陣はともかくとして、男性陣は案外平然としていた・・・
応援するわけでも茶化すのでも無く・・・お湯で溶かしたインスタントコーヒーを飲みながら、静かに座っている
「・・・・・・うらやましいのか?」
グリーンがぼそりとそう言うと、ブルーがぎろりと睨んだ
それはあたかも、「気になって当然でしょうが」と言わんばかりに・・・
『ブルーも、クリスも・・・あんまり見てると、失礼だよ?』
「わ、私はあの莫迦が変なことをしないように見張ってるだけです!」
「そうよそうよ、ただでさえ純真なあの子が・・・莫迦に汚染されたら、大変じゃない」
「酷い言われ様だな、ゴールドも」
レッドがコーヒーに砂糖を入れながら、苦笑を交えて言った
「むしろ、ゴールドはそう言うことに関しては、この中じゃ一番真面目な方だと思うぞ?」
「冗談でしょ、あれが?」
「そーですよ、ナンパ莫迦なのに!」
「だからだよ」
レッドがぽつりと言った
「だから、彼奴は真面目な奴なんだ」
「はぁ?」
「・・・ま、放っておこうぜ。 もう子供じゃないんだから」
「子供じゃないから、不安なんです」
クリスがそう言うと、レッドは「まだ見えてないんだな」と言った
その言葉の真意がわからず、皆はふっとその2人に・・・一瞬だけ注目した
ゴールドはクレアにつられて、その星空を見上げた
綺麗だった
そして、その頭上を珍しい流れ星が空を滑っていった
「お、流れ星だ。 クレア、何か願い事したか!?」
「ゴールドさん」
この状況下もあってテンションが高めのゴールドはクレアに名前を呼ばれ、ふとその顔を下に向けた
とんっ
軽く、小鳥がついばむような・・・軽く、一瞬にも満たない行為だった
しかし、紛れも無くその感触は・・・・・・はっきりとわかった
クレアは少し照れながら、笑って言った
「愛情表現の仕方も忘れてなかったみたいです」
ゴールドはその自身の手で、自身の唇に触れた・・・・・・ほんの少しだけ身体が震えた
「・・・熱っ」
クレアのその声にはっと目が覚め、その方を見た・・・・・・どうやら、たき火の火が此方に寄ってきているようだ
ゴールドは長い棒きれを手に取り・・・照れを隠すように、思い切り乱雑にがしゃがしゃとマキをいじくり回した
その度に灰と煙が舞い上がり、2人の周りへと寄ってくる・・・
「お、おかしいなっ! ひ、火が寄ってくるみてぇだ!!」
「・・・・・・そうですね・・・」
うまく舌が回らない、寄ってくる火の所為か・・・身体が熱い・・・
一瞬だけ注目し、その一瞬に起きた出来事を全員が目撃した
「・・・・・・」
「あー、何ていうか・・・」
「な、なんなのあの子わ・・・!?」
「ぼ、ボクは寝てましたっ。 だ、だから何も見てません・・・ZZZZZ・・・」
「嘘・・・・・・」
『困ったねぇ』
夜は更け、朝が来るまで陽は昇らない
これから先、どうしたらいいのか・・・否、どうしたらいいのか
ただ2人の行く末を、誰が指し示すことが出来ただろうか・・・否、誰に指し示すことが出来ただろうか
答えは知ること無く、ただ明日を待つだけだった
星空にまた、流れ星が滑っていった・・・
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