〜能力者への道71・組合〜



 森に住む野生ポケモンに襲われ、逃げ惑う2人の女の子


 その窮地に現れたるは、我らがゴールド!


 あっという間に野生ポケモン達を一蹴、レッド達も到着して・・・無事に保護


 マヨちゃんと一緒にいた謎の美少女をゴールドは懲りずにナンパ、勿論玉砕は目に見えて・・・・・・


 「はい」


 ・・・・・・迷いのない返事、ついにゴールドが彼女GET!!?


 主人に無事の保護とやむを得ない一晩のキャンプ報告と、謎の美少女について訊く


 結果は予測通りか、「そんな人は知らない」という・・・しかも、彼女はここ最近の記憶を失っていた


 怪しむ皆、純粋な彼女とそのひとときを楽しむゴールド


 果たして、これから先どうしたらいいのだろうか


 誰も知り得ない


 星は空を滑り、夜が更けていった・・・










 ・・・・・・朝から、夢でも見ているのだろうか
 文法的におかしい、そう・・・これはまだ夢なんだ


 「俺、ゴールド&クレアの特製朝食『きのみスペシャル』ッス!」


 夢だ、これは
 何故なら、あのゴールドが俺達よりも朝早く起きて・・・・・・朝食まで作っているなんて!!?


 「味は5種類! 材料はこの森で採取した天然のきのみ! ・・・残念ながら、パンは買い置きしてた市販のものですけどね。
 だけど、クレアが料理を手伝ってくれたんで、絶対に美味いッスよ!!!」

 「や、やだ、ゴールドさんっ! 私はただ、火加減を見ていただけですってば」

 「いんや、クレアがそうやって見てたんだ。 それだけで、絶対に味が違う。 美味いに決まってる!」


 ・・・夢じゃないらしい、この妙に豪華な朝食は


 正確に言えば、ゴールドのエイたろうが採取したきのみを、食べられるものとそうでないものを判断・・・キマたろうがその味を判別
 ウーたろうがそのきのみを判別した味ごとに別に砕き、ニョたろうが汲んできた水とバクたろうの火で煮詰めてジャムにしたらしい
 確かに出来たてのジャムは美味しそうだし、赤・緑・青・ピンク・黄色の5色も綺麗だ


 でも、なんというか・・・・・・


 「なんか、あのいちゃいちゃっぷりを見てたら・・・お腹いっぱいになってきたわ」

 「同感」

 「目も当てられん」

 『いいんだけどねぇ・・・別に、ジャムは』

 
 昨夜から2人がそのいちゃいちゃっぷりは衰えることを知らず、むしろ底無しに上昇中だ
 それに反比例するかのように皆のテンションは下がり気味・・・逆に色んな意味で燃えている人もいるようだが


 ・・・・・・まぁそれはともかくとして、皆はそのジャムを中心にして座り、朝食を食べ始めることにした 
 買い溜めしておいたパンは一時的にバクたろうの火のそばに置かれ、ほんのりと温かく柔らかくなっていた





 「うわっ、このジャム酸っぱい!」


 ブルーが黄色のジャムをたっぷり塗ったパンを一口かじって、そう叫んだ
 見た目が一番鮮やかなものだったので、つい手が伸びてしまったのだが・・・失敗だったか
 主な材料は『ナナシ』『イア』などだ


 「・・・・・・んー」


 だが、そうやって食べ続けている内に・・・その評価は変わった
 この強烈な酸味がなかなかに後を引くのだ、何だか病み付きになりそうだ
そのパンを総て食べ終えると、すぐ隣にいたグリーンの緑色をしたジャムが目に入った


 「あら、それは何味? ていうか、一口ちょうだい」

 「同じジャムはまだたっぷりとあるだろう」

 「イヤ。 人が食べているものの方が、美味しそうに見えるの」

 
 グリーンが「なんだそれは」と反論し、ブルーはそんな抵抗をはね除け・・・素速くそれをむしって、あっと言う間に口に入れた
 してやったり・・・上機嫌で咀嚼をしていると、それから・・・・・・見る見る内にブルーの顔色が変わった


 「にっが〜〜〜〜〜ぁッ!!

 「自業自得だ」


 主な材料は『チーゴ』に『ドリ』
 ・・・・・・それにしても、どうしてこんな味を好き好んで食べるのか
 ブルーは水を飲み、口に苦味が残らないよう洗い流そうと・・・


 「・・・後味はさっぱりしてるのね?」

 
 これも何だか意外な感じがした、苦々しいのに後味はさっぱりだった
 言ってみれば、抹茶のような味だろうか・・・


 「でもさ、この味わいはジャム・・・パンに付けなくてもいいわよねぇ」

 「人の好みは、それ好きずきだろ」


 グリーンとブルーのやりとりを見ながら、レッドはピンク色のジャムを塗ったパンをもふもふと食べていた
 このジャムの材料は『モモン』『マゴ』、甘いきのみを中心に作られた・・・まとまな味のものだった
 別に甘党というわけではないのだが、各色ときのみの味の関係を知っているので・・・無難な味を選んだのだ


 『・・・なんか悲しいよ、僕』

「ま、仕方ないんだよな・・・シショーはジャム食べられないし」


 そんな残念そうな顔をして、ジャムの材料が余ったきのみをそのまま食べていた・・・
 レッドはやや同情しつつ、シショーの背中をぽんぽんと叩いた


 「美味しいね、このジャム」

 「うん。 すっごくおいしい!」


 シショーの方からふと顔を別方向に向けると、イエロ−とマヨちゃんが赤いジャムをべっとりと付けて食べていた・・・
 主な材料は『クラボ』『フィラ』『ズリ』、かなり辛いきのみで作られているはずなのだが・・・大丈夫なのだろうか
 そんな視線に気づいたのか、イエローがレッドに赤いジャムをたっぷりと付けたパンを勧めてくれた


 「おいしーよ、おにいちゃん!」

 「(・・・・・・うん、もしかしたらあまり辛くないのかもしれないな)」


 そう思い、レッドはそれを受けとり・・・大きく口を開け、ぱくりと一口で食べた





 ・・・・・・声にならない悲鳴を上げ、レッドが思い切り・・・がぶがぶと水を飲んだ


 『・・・えっと、その・・・・・・大丈夫?』

 「へー、レッドさんにも子供っぽい所はあるんですねぇ」

 「おにいちゃん、なさけないよ〜?」

 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」


 先程まで甘いものを食べ続けていた所為もあるが、それにしたってもの凄い辛さだ
 辛いと言うより舌が熱い、熱いと言うより舌が痛い・・・


 レッドが激辛ジャムに悶えているのを見て、並んで座っているゴールドとクレアは笑っていた
 作った当事者の2人はどれ程のものなのか知っているから、余計におかしいのだろう


 ・・・目の前にいる、楽しそうな2人をじっと殆ど無意識に見つめているのはクリスだ
 今朝から・・・いや、昨夜から・・・・・・どうもあまり機嫌が良くないらしい
 

 「(・・・・・・)」

 「・・・あれ? おい、クリス??」


 不意にゴールドに名を呼ばれ、はっと目が覚めたのか・・・手に持っていたパンを反射的に口に入れた
 その途端、クリスの目が白黒し・・・ゴールドは額に手を当てた


 「あちゃー・・・それ、『思いっ切り渋いから気をつけろ』って言おうとしたのに。 せっかちだな〜」

 「・・・・・・もっと早く言いなさいよ」


 クリスが食べた青いジャムの味は渋く、材料は『カゴ』や『ウイ』だ
 そのきのみ自体が固く、ジャムには向かない味であろう・・・


 皆が食べているのを羨ましそうに見ながら、シショーがぽつりと言った


 『・・・そういやさ、きのみの味でポケモンの内面や外見が変化するんだよね』

 「コンテストとかのことか?」

 『うん。 あまい味は「かわいさ」、しぶい味は「かしこさ」。
 すっぱい味は「たくましさ」で、からい味が「かっこよさ」・・・しぶい味が「うつくしさ」だったよね』


 その時、女性陣の耳がぴくりと動いた


 「でもさ、たかがきのみだろ?」

 『そうとも言えないさ。 ほら、僕の外見・・・変化してない?』


 急にそう言われても、あまり変わっていないように思えるのだが・・・
 むしろ、シショー自身は最初から毛並みも良く、全体的にバランスがとれた身体をしていると思う
 そんな風に言うと、シショーは『え〜っ』とまた残念そうな顔をした

 
 「むしろ、俺はレッドの顔が引き締まったように見えるのだがな」

 「マジで?」

 「あー、『からい味』を食べたからッスかねぇ?」


 同時に、女性陣が各々・・・青やピンク色のジャムをばくばくと食べ始めた
 男性陣は唖然としている、まさか本当に真に受けたのか・・・デザートや口直しをしているだけなのか
 最も、その心理はわからなくもなかったのだが・・・
 

 『・・・・・・言いにくいよね』

 「ああ」


 訳知り顔な2人へ対して、レッドがその理由を問うた


 「簡単な話・・・」

 『きのみの味にも相性があって、下手な組み合わせだと・・・その効果を打ち消しちゃうんだよね』


 成る程、そういうことか・・・・・・


 ・・・ゴールドが隣に座っているクレアを心配そうに見た


 「そういや、クレアは『きのみスペシャル』・・・ジャムは食べたのか?」

 「いえ、何だか食欲が沸かなくて・・・」


 そう言えば、昨夜もそんなことを言って、何も食べなかった気が・・・

 
「ふーん?? ま、クレアにゃ何色のジャムも必要無ぇよな、絶対。
 だって、そのまんまで充分・・・俺好みで可愛いし、綺麗だもんな」
 
 
 クレアの顔がかぁっと赤く、熱くなった・・・ゴールドもこれは少々照れ臭かったらしい
 自身の頬をぽりぽりとかき、クレアの方は昨夜のことも思い出したのか・・・ずっと顔を下に向けていた
 

 それを見ていた周囲の皆は、何だか・・・いきなり、急にまたお腹いっぱいになってしまったのだった・・・





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「・・・あ、きのみみっけ♪」

 「んん? おお、向こうの方にも落ちてるぞ」


 マヨちゃんが「わーい」と言いながら、森に落ちたきのみを拾い集めている
 レッドやシショーが「あまり遠くへ行っちゃ駄目だぞ」などと注意を促し、彼女は元気良く返事をした


 朝食を食べ終えた皆は、朝一番のシーギャロップ号に乗るべく・・・3のしま港へと向かい始めた
 本当は主人自身が迎えにきたいところなのだろうが、残念ながら最初の便はクチバ発なのだ
またマヨちゃんは昨日投げてしまったきのみを採りなおしたいというので、こうやって歩きがてら・・・皆もそれを手伝っている
 おかげで持ってきたかごの中はきのみで一杯になり、マヨちゃんの顔は見るからに明るくなった


 「・・・最初の便は何時?」

 「9時45分。 今の時刻は8時半過ぎ」

 『微妙じゃない?』

 「間に合うさ。 何事も無ければ、な」


 意味深にグリーンがそう言うと、ゴールドもそう同意した


 「・・・なんたって、虫取りは早朝が基本ッスからね」


 同時に周りの茂みから、虫ポケモンが一斉に飛び出した
 クレアと、見るからに弱そうなマヨちゃんをまずは狙ってきた・・・が


 「ネイぴょん、『ドリルくちばし』から『みらいよち』! カラぴょん、『ほねブーメラン』に『ボーンラッシュ』!!」


 クリスの指示で次々にその野生ポケモン達が撃沈していく、見事・・・鮮やかな攻めだった


 「腕を上げたわね、クリス」

 「能力者にもなれたしな」

 「はい! でも、まだまだこれからです!」
 

 クリスは嬉しそうにそう言い、次から次へと出てくるポケモン達を攻撃・・・珍しいのは的確に捕獲していく
 そんな戦闘っぷりを・・・・・・クレアが羨ましそうに見ていたのには、誰も気づかなかった


 そして、背後から誰かがその後をついてくることも・・・まだ気づかなかった





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「・・・9時27分、ね」

 『間にあった〜』


 それにしても・・・早朝とはいえ、森の中で遭遇した虫ポケモンの数は半端ではなかった
 そのおかげで皆のポケモンは疲労し、早くポケモンセンターに行って回復させてあげたいぐらいだ
 

 「んー・・・ねぇ、これならポケモンセンターに行って来る時間ぐらいはあるんじゃないの?」

 「そうだな。 俺達もこのまま2のしまへ行くのだし、その前に回復ぐらいはさせておきたいところだ」
 
 「賛成ッス」

 
 船の入港・出航まで時間は15分程ある、回復だけなら全員合わせても10分程で済むだろう
 いや、むしろこうして行く行かないの議論をしている時間が惜しい・・・


 「クレア、悪いんだけど・・・俺達、ポケモンセンターに行って来るから、マヨちゃんをしばらく頼む」

 「出航までには戻ってきますから、お願いします」

 「わかりました。 いいですよ、いってらっしゃい」


 クレアが手を振りながら、にっこりと微笑みつつ言った
 それは皆に対しての言葉だったのだろうが、ゴールドだけ異様に盛り上がっていた・・・


 「じゃ、マヨちゃんは私としばらく待ってましょう」

 「ねぇ・・・おねえちゃんは、これからどうするの?」


 クレアはマヨちゃんの、その言葉に思わずどきっとした
 

 覚悟はしていた
 この先、果たして皆と共に旅を続けていけるのだろうか
 記憶が無い自分は、ただ足手纏いになるだけではないのか
 

 「・・・・・・どうしようかなぁ・・・?」


 クレアは物静かに、悲しげに声を絞り出した
 マヨちゃんもその声に驚き、感化され思わず・・・「ごめんなさい」と呟いていた


 「・・・ううん、大丈夫よ」


 彼女ははっとして、目一杯元気そうに言った


 いけない、お姉ちゃん失格だ・・・


 ずっと一緒には居られない。 うん、わかってる
 だから・・・せめて、居られる時はずっと笑顔でいよう
 小さいマヨちゃんまで不安にさせてはいけない、泣き顔にさせてはいけない


 そうだ・・・チケットの無い私はここでさよならするのかもしれないのだから・・・


 だから、目一杯・・・楽しんで、笑わせてあげよう





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「なっ・・・レッドさん、それマジのマジですか!?」

 「ああ。 マジのマジのマジ中のマジだ。
 クレアちゃんに俺のチケット、譲ってやるって言ったんだよ」


 ポケモンセンターでの回復を終え、一同は早足で港へと向かっている途中での事だった
 マジとは本気のことである・・・変に連発した会話だったが、それは衝撃的な発言で周りの皆を驚かせた
 勿論、一番驚いたのはゴールドだった


 『・・・いいの?』

 「ああ。 俺にはプテがいるし、当座はそれで大丈夫だろ」

 「それでも、俺達とは最初から最後まで一緒に行動出来なくなるんだぞ?」


 そうだ、確かにそういったデメリットも充分に考えられる
 しかし、レッドは一度言ったことは決して曲げないタイプだ、そう・・・武士に二言は無いように


 「・・・俺さ、考えたんだよ、充分に」

 「何をですか?」

 「記憶を無くしちゃった女の子の気持ち」


 どんなにそれは悲しいことだろう、と


 「俺は途中途中で単独行動になっても構わない。 一応、戦えるだけの力は持ったつもりだし、それで過剰に溺れているわけでもない。
 ・・・だから、俺は平気だ。 心配はご無用です。
 でも、あの子には・・・皆、それにゴールドが絶対に必要だと思うんだ」


 どんなにそれは心細いことだろう、と


 「せめて、彼女の記憶が戻るまで・・・皆と行動を共にさせてやってほしいんだ」


 どんなにそれが救いになるだろう、逆もあり得るかもしれない


 「これからすぐに、彼奴らとの最終決戦が始まるわけでもないしさ?
 その点では、俺達はまだまだ力不足は否めないし・・・能力者になったことで、漸くその実力差も改めてわかったし」


 能力者になり、対等の立場上での戦闘も経験したからこそ・・・理解出来た
 どれ程の高みに、相手が佇んでいるのかを
 そして、まだ彼らは強くなる
 ここにいる皆と同じように、放っておけば底無しに・・・・・・


 レッドの言ったそれらの言葉に、クリスの胸がチクッと痛んだ


 「どうだろう。 駄目、かな・・・・・・?」
 

 一旦立ち止まり・・・不安げに周囲を見回し、おそるおそる訊いた
 皆もその足を止め、くるりとレッドの方を向いた


 「どうもこうも・・・」

 「アンタが一度言いだしたら聞かないのも、長い付き合いでわかってるわよ」

 「いいんじゃないですか? ボクは賛成です」

 「わ、私も・・・・・・良いと思います」

 『空の旅なら、僕がついていくよ』


 皆の言葉がレッドの胸に染み込んでいき、最後にゴールドがその手をがしっとつかんだ


 「・・・本当に、有り難う御座います!」

 「大事にしてやれよ、クレアちゃん」


 レッドがそう耳打ちをすると、ゴールドが力強く「オッス」と言った


 早く、クレアに・・・このことを知らせてあげたい
 それにもう目の前に乗船口が、クレアと船員に自分のチケットを見せているマヨちゃんの姿が見えていた
 その2人が皆に気づくと、大きく手を振った・・・時刻は9時40分過ぎだ


 皆が先を急ごうとするのを、またレッドが止めた


 「ん〜? 今度は何よ、まさかそのチケットを落としたとか??」

 「違うって。 ホラ、あの子・・・」


 レッドが指差し・・・そのすぐ先にいたのは、日本人形みたいな色白の女の子だった
 色鮮やかな着物を着て、ずっと港を・・・船の方を見つめているのだ


 「・・・気になってンだけどさ。 もしかして、あの子・・・船に乗りたいんじゃないかな、って」

 「・・・・・・どうしたいんだ?」

 「ちょっと、事情訊いてくる。 もしかしたら、チケット落としちゃったのかもしんねぇし」

 「はいはい。 じゃ、クレアの分のチケットだけ先に渡して。
 つーか、もう他にあげるチケットも無いんだから、そう言う事情ならば、すぐにジュンサーさんに知らせるのよ」


 レッドが「わかってる」と言いながら、チケットを預け・・・その女の子の元へと向かった
 皆が「お人好しよね」『優しいんだねぇ』「お節介が過ぎないか?」「格好良いです、普通の人じゃ出来ませんよ」などと言っている 


 「もしも遅れても、レッドはどのみち『そらをとぶ』で、2のしまにて合流するんでしょ?」

 「あ、そうか」

 「なら、俺達もさっさと先を急ごう。 時間が・・・」


 きびすを返し、グリーン達がクレアの居る方へ向かおうとした時だった


 突然の出来事だった
 派手にズボッと音がしたかと思うと、次の瞬間・・・レッドがグリーン達の視界から消えた
 グリーン達がその方を振り向いたがもう遅い、そうして皆が其処へ駆け寄るのと同時に・・・・・・全員がクレアの視界から消えたのだった


 「!!!??」

 「あ、あれ? おにいちゃんたちは??」


 訳がわからないのは、乗船口付近で最後までそれを見ていた2人だった
 この目ではっきりと見えるのは、あの色白の女の子の姿だけ・・・背筋がぞくっと寒くなった気がした


 ・・・・・・いけない!!


 皆に何かがあったに違いない、間違いなく・・・


 「・・・マヨちゃんは此処にいて」

 「で、でもぉ〜・・・もうすぐふねが・・・」


 そう、出航の時間が迫っている・・・クレアはマヨちゃんの肩をがしっとつかんだ


 「ゴールドお兄ちゃん達は大丈夫。 だけど、私はちょっと様子を見てくるからね」

 「え? え??」

 「船員さん、マヨちゃんをお願いします」


 クレアはそう言って、一目散に皆が消えた場所へ走って行った
 マヨちゃんもそれを追おうとしたが、船員さんがそれを止め・・・出船の汽笛と共に、船の中に連れて入った


 「おねえちゃ〜〜〜ん!!」

 



 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 ゴールドはクレアが此方に来るのが見えると、すぐさま叫んだ


 「来るな!」


 それでも、クレアは走り続け・・・・・・其処で見たものは・・・


 首から下の胴体が間抜けにも、すっぽりと地面に埋まってしまった皆の姿だった
 勿論、こんな光景は絶対に一度も見たことがないクレアは驚いた


 「これは・・・・・・?」

 「なんだ。 まだ残っていたの」


 色白の女の子がそう言い、その足下には『ダグトリオ』が居た
 どうやら『あなをほる』か『特能技』・・・・・・刺客なのか


 「逃げろ、クレア! ここは俺達に任せて!!」


 「で、でも・・・説得力無いです! そんな恰好じゃ」


 確かに


 「・・・データにあったトレーナーは全員、こうして身動きがとれないの。
 見たところ、あなたはポケモンを持っていないのよね?」

 「・・・・・・」


 その通りだ、クレアはポケモンを持ったことがない
 しかし、このままでは・・・皆が・・・ 


 『ポケモンなら、此処にいるよ』


 パタパタと上空から羽ばたき、現れたるは・・・・・・


 「「「「「「シショー!!?」」」」」」

 「そっか。 飛行ポケモンには、この技がきかないものね」


 シショーがクレアの周りを旋回し、やがてその細い腕の上に止まった


 『・・・どう?』

 「シショー、早くクレアを逃がしてやってくれ!!」


 ゴールドの悲痛な叫びに対し、クレアは色白の女の子を睨みつけた


 「私は・・・・・・」


 脳裏に浮かぶのは不安と羨望





 「・・・私は戦います!」

 「「「「「「!!!!!!!!!!!!??????」」」」」」

 「面白いの。 喋るヨルノズクに初心者トレーナーの組み合わせなんて」







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