〜能力者への道72・足震〜



 ゴールド&クレアの特製朝食、『きのみスペシャル』!!


 ・・・・・・いや、食べる前からお腹いっぱいです


 果たして、本当にきのみの味は人間にも効くのだろうか・・・


 その後・・・3のしま港を目指し、レッド達はきのみのもりを出発する


 途中、マヨちゃんのきのみ拾いも兼ねて・・・・・・野生ポケモン迎撃は此方が引き受けて


 その数は半端ではなく、流石にかなりの疲労をもたらした


 港に着き、出航までわずかに時間があり・・・最寄りのポケモンセンターへと向かった


 帰りの道中で、レッドは衝撃的な発言を・・・「ふねのチケット」をクレアに譲るという


 その発言にゴールドは深く感謝し、決して無駄にはしないと心に誓った


 そんな矢先に刺客襲来!!?


 レッド達は首から下の胴体部分が地面に沈み、生き埋め状態に


 それを遠くから朧気に見ていたクレアはマヨちゃんを船員に預け、よくわからないが・・・ゴールド達を助けに向かう


 また成り行きからクレアは難を逃れたシショーとタッグを組み、皆を埋めた刺客に立ち向かう!!










 「にゃあ・・・」


 大男が海を見つめながら、丸くなって・・・メソメソと涙を流している
 その傍には2人の青年トレーナーが居て、その内1人は計器類を見ながら・・・あきれ混じりのため息を吐いた
驚くべきは泣いている彼の服装が、灰色に統一されていることだった


 「ああ、ミーの可愛い子猫ちゃん達がにゃあ・・・・・・」

 「元気を出してください、『幹部候補・マストラル』様」

 「そうですよ。 この任務を終えれば、いつか会いに行くチャンスが出来ます」


 同時に、慰め合っている2人の内のもう1人が腰の通信機が鳴り始めた
 そこで一旦、慰め言葉を中断し、その受信ボタンを押した


 『定期報告せよ』

 「計器確認、伝説のポケモンのエネルギー反応無し」

 「こちらA−1ポイント、対象を視認出来ず」

 『了解。 引き続き、計器と視認範囲内の海域に注目し続け、詳細を報告せよ』 


 ブツッと通信機の音が止まり、2人はふ〜〜〜っと安堵の息をもらした


 「マストラル様、報告終わりました」

 「にゃあ・・・」


 相変わらず、彼の反応は変わらない・・・2人は小声で語り出した


 「なんでさぁ、俺達がこんなやる気の無ぇ人の下につかなきゃなんねぇんだよ」

 「仕方ないらしい。 マストラル様も、望んでこの任務に就いたわけじゃないそうだから」


 ・・・話に依れば、マストラルは無断で『ミーの可愛い子猫ちゃん達』に会いに行こうとしたらしい 
 勿論、その言葉はブルーやイエロー、クリスのことを示す
 しかし、それは叶わなかった・・・無断というのもまずかったのだろう
 もうすぐカントー襲撃も始まるし、未だに他の地方襲撃後の処理なども終わっていない
 人手が足りないのを知っていて、その上のお堅い人達から見れば『くだらない行動』に激怒し・・・その結果がこうだ


 「・・・で、下された指令が『伝説のポケモンを1体確保せよ』らしいです。
 見つけ、絶対に捕獲するまで・・・給料も何も無しとか」

 「悲惨だねぇ」

 「しかし、本人にとってはそれらより、お目当ての女の子に会えなくなった状況がつらいそうですけどね」

 「自業自得だろ、んなの。 第一、伝説のポケモン探しを打ち切っちゃえばいい話だろ、人手不足なら」

 「無理ですよ、そんなの。 『総ての伝説のポケモン捕獲』は、各地方襲撃より前から決まっていた事項です。
 それに伝説のポケモン探しには、『人海戦術』が最も効果的なんですから・・・」


 そう、マストラル以外の幹部候補や団員もこの任務にあたっている・・・3人1組で、総形500組が各地に配置されているとの話だ
 そこまでして、そこまでの人員を割いてまで総ての伝説のポケモンを捕獲しようというのだ
 更に今の組織には『ポケモン図鑑』と同じ計器類があり、加えて独自の情報通信機能を備えたので・・・どこか1組でもその存在を確認すれば、そのデータが他の組にも配信される
 つまり、誰もが『1度出会った』状態になり、500組が各地でその逆探知が出来るのだ
 

「便利な機械だな」

 「ええ、全くです」

 「・・・で、あれは全く使えねぇな。 腕輪3つの幹部候補のくせによ」

 「聞こえます。 口を謹んで下さい」


 1人が毒づくが、マストラルは未だに放心状態らしい・・・ここまで来ると、哀れを通り越して確かに苛立ちを憶える
 再びため息をつき、ぽつりと空を見上げながら言った


 「俺は、一度で良いからジン様やガイク殿のような方が下につきたかったよ」

 「・・・幻の幹部候補、ガイク殿ですか・・・」


 ここで彼らの言う組織階級について説明しよう


 この組織では腕輪はいわゆる階級章であり、きちんと条件を満たし申請すれば誰にでも手に入るものだ
 腕輪の色は青、赤、白、黒、紫、桃、灰、藍の計8色とされている
 その内、ただの団員が見られるものは基本が青、赤、白、稀に黒色の4種類のみだ


 この組織には実は一般トレーナーにでも入ることが出来て、その時の服装は灰色以外のものを着るのが区別のため、義務づけられる
 その後・・・何らかのトレーナー能力に目覚めれば、皆と揃いの灰色の団員服を受け取り、着ることを許されるのだ
 そして、ここからが本当の組織内での出世がスタートでもある


 先ずは青の腕輪の入手方法だが…これは『そこそこの手柄を立て』、『青龍組』かそれに属する幹部候補に申請し、その功績が認められれば入手出来る
 そう、求められるのは『組織への忠誠』などだ
 赤の腕輪は『特能技を1つ以上を体得し、その能力の必要性が実証された』時、『朱雀組』かそれに属する幹部候補に申請し、認められれば入手出来る
 求められるのは『自身の能力が理解と発展』などだ 
 この2つの腕輪はどちらを先に取得しても構わず、色の違いで権限が変わることもない
 

 青か赤、どちらか1つの腕輪を取得した者は腕輪を持たぬ団員数名を率いることが出来る
 一般トレーナーならば10人以上、これを小隊と呼び・・・故にこのランクは『小隊長』クラスなどと言われる
 青と赤、両方の腕輪を取得した者は複数の小隊を率いることが出来る
 一般トレーナーもそれに比例し30人以上、これを部隊と呼び・・・故にこのランクは『部隊長』クラスなどと言われる


 白の腕輪入手条件は一層に厳しくなる。 腕輪3つで幹部候補、求められるのは『相応の実力』だ
 先ずは部隊長クラスになってから、半年以上の経験を積んだ者でなければ挑戦資格は与えられない
 また挑戦資格を得て、その試練に挑戦するためには青と赤の腕輪を懸けなくてはいけない
 つまり、試練に挑み・・・敗戦すれば、またスタートに逆戻りとなるのだ


 その試練内容とは、『現・幹部候補5人以上、もしくは現・幹部2人以上の観戦下で100人を倒すこと』だ
 詳しく言えば、挑戦者は手持ちから1体のみを選ぶ・・・持たせるアイテムは能力効果を除けば1つだけと決められている
 向かう相手100人はランダムで選ばれた『腕輪1つ以下を持つ者とパートナー1体』と『一般トレーナーと手持ち6体』だ
 その割合は7:3から8:2と、圧倒的に能力者の方が多く・・・ポケモンは最低でも200体は存在する
 戦闘フィールドは観戦する幹部候補達などが選出し、決して挑戦者側に有利な場所なるとは限らない
 またたとえ100人勝ち抜いたとしても、観戦している幹部候補達などの半数以上が不服を申し渡せばアウト、失格だ
 幸い時間制限は無い、時間をかけなければ能力が発動出来ない者もいるからだ
 しかし、途中での降参や降伏は許されず、その為・・・この戦いの後に再起不能となった者も少なからずいる


 ・・・圧倒的に挑戦者が不利な状況ではある、白の腕輪を得る者は確かに少ない
 が、この100人に勝ち抜き得たその自信と経験が、その者を更なる高みへと押し上げてくれる
 そう上の誰もが信じて疑わず、また事実そうなのだから・・・・・・組織創設以来、この試練は不変のままだった


 幹部候補に与えられる権限は、服装の自由化・・・ただし、会議などの際はその色は灰色に限るが
 また、任務もより高度なものとなり、2つ以下の腕輪を持つ者が居る部隊を複数率いることが出来る
 更に任務さえこなせるものならば単独行動も認められ、個人の自由時間なども多くとれるようになるのだ  
 だが、もしも『青龍』『朱雀』『白虎』からの直々の指令をこなせなかった場合は、様々な制裁が待っている
 もしもそれが『腕輪剥奪』ならば・・・どの組の任務だろうが、先ず最初に奪われるのは『白の腕輪』であることは言うまでもない


 失った腕輪は、また同じ条件を満たせば手に入れることが出来る
 だが、ランクダウンには変わりなく・・・・・・その分だけ、活躍の場も失われたりもする


 黒の腕輪などの取得方法は、以後・・・次の機会にまわすことにしよう





 2人はぼそぼそと、思い出話に近い・・・噂話を続けていた


 白の腕輪取得試練には、『タイムレコード』なるものが存在する
 確かに時間制限は無いが、何分で全員を倒すかでその実力や潜在能力を推し量ることが出来るからだ


 その平均時間は1時間半前後といわれていて、能力にもよるが『3時間』以上かかるならば地位が分不相応と言うことで失格になることが多い
 現在の『幹部・十二使徒』にまで昇り詰めた者達は、およそ3、40分前後で試練を達成したという 


 そのタイムレコードの・・・破られることのない最高記録が『13分34秒』・・・
 これを出したのが、そう『スピリッツ・ザ・リッパー』が能力を持つジンだ
 

 更にそれに準ずる記録が『24分56秒』、同じく未だに破られることのない不動の2位
 これを出したのが『ガイク』という名の男だ、しかも今から5年程前の話だから・・・当時は13,4歳だった
 その素質は特に抜きん出たものがあり、1年後には確実に『幹部・十二使徒』になれる者だと称讃された
 しかし、その試練を終え、白の腕輪を受けとる前に組織から脱退してしまったのだ





 「この時に辞めたのは、『幹部候補』になってからだと、嫌でも上やその機密に近づいてしまう為だと言われていますね」

 「つまり、辞めにくくなるってことだろ? だけどよぉ、年齢的には潮時には早ぇぞ」

 「今も在籍していれば・・・絶対に、ジョウト地方などの襲撃に参加していたでしょうにね」


 ガイク脱退は上層部にかなりの衝撃を与え、当時の幹部達は必死に引き留めたという話だ
 また今でもその性格と実力の高さから、上の記録を持つジンより・・・下級団員には人気があり、憧れでもあった


 「・・・ま、何にせよ・・・あれとは比べものになんねぇほどに凄かったよな」

 「口を慎みなさい。 あんなあれでも、とりあえず今は私達の上司なんですよ」

 「・・・・・・テメェもだろ」


 やがて、また定期報告の時間がやってきた・・・・・・





 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・





 「クレア、逃げろッて!!」

 「すみません。 でも・・・私が戦わないと、皆さんが・・・」

 「構うな。 このまま、シショーと逃げるんだ」


 皆が口々にクレアの撤退を求めたが、彼女は頑として聞き入れなかった
 港の方から出航の笛が鳴り響き、やがてその退路も失われた


 「データにあったトレーナーは確保したし、あとは邪魔者のあなたを倒して・・・指定の場所にこれらを届ければ、わたしは青の腕輪が貰えるの」

 「ゴールドさん達はこれとか、ものなんかじゃありません!」

 『見た目は生首だけどね』


 シショーの軽はずみな発言に、クレアがぽかぽかと彼を叩いた
 日本人形みたいな女の子はくすくすと不気味に笑い、やがて袖から扇を取り出した


 「面白いの。 でも、邪魔する人は嫌いなの」


 スッとその扇を閉じたまま下に向け、その後ピッとクレアに向けた
 同時にダグトリオが一直線にクレアに向かってくる、シショーがそれを『はがねのつばさ』で迎え打った
 だが、ダグトリオは『あなをほり』、ぎりぎりの所でそれをかわしてきた
 何処から出てくるのか、シショーは『みやぶる』で察知し、クレアをつかんで『そらをと』んだ
 まさに危機一髪、彼女が先程まで立っていた地面がぽっかりと穴が開いていた


 『大丈夫?』

 「え、あ・・・はい」

 「・・・ポケモンは強いの。 でも、あなたは弱いの」


 地面タイプVS飛行タイプ
 両者とも互いの技はあまり効かない、故に的確な指示や判断がトレーナーに求められる戦いだ
 しかし、クレアは今の今までポケモンバトルをしたことがない
 その戦術も、技の特性も、指示の出し方も何もかも初めて体感するものばかりだ
 更に幾ら何でも、その初戦が能力者相手というのもキツすぎる  


 いや、そうでなくとも・・・この戦いには・・・クレアとシショーには勝ち目が存在しないのだ


 クレアは呆然としていた、始まってからわかる自身の無謀と莫迦さ加減が
 シショーがダグトリオの位置を確認すると、落とし穴の心配のない地点にクレアをそっと降ろした
 

 『・・・さて、これからどうする?』

 「え、えっと・・・・・・じゃあ、とりあえずシショーさんの『憶えている技』を教えて下さい」

 『「そらをとぶ」「はがねのつばさ」「みやぶる」「こうそくいどう」』


 ・・・・・・?


 「それだけなんですか?」

 『それだけだよ。 ポケモンは最大4つしか、技を憶えられないんだ』

 「え? じゃあ、必殺コマンドとかは??」

 『・・・あったら凄いと思うな、僕は』


 ・・・・・・うん、そっか


 「ダグトリオ、『きりさく』」


 ・・・何を、じゃあ・・・どうすればいいんだろ?


 そんなことを話し考えている内に、ダグトリオの『きりさく』がクレアを襲う
 シショーは翼を硬質化させ、それを何とか防いだ
 ゴールドは「汚ぇぞ、トレーナー直接攻撃ばっかなんてよぉ!」と文句を言っている


 「うるさいの。 別に、好きでやってるんじゃないの」


 女の子が座り込み、扇でゴールドの頭をぺしぺしと叩いた
 普段なら「教育的指導」してやるのだが、文字通り手も足も出ないので・・・ゴールドは扇に噛みついた


 「・・・・・・汚いの。 嫌なの」


 ダグトリオが攻撃目標を頭部だけのゴールドに変えた、「げっ」とその周りにいた皆も声を出した
 ゴールドへの攻撃はすなわち、周りの頭部達にもその技の余波が来るやもしれないからだ


 「ダグトリオ、『きり・・・」

 「! シショーさん、何でも良いから『はがねのつばさ』!」


 キンッと恐ろしく鋭い音がしたかと思うと、刹那・・・ダグトリオへの指示も間に合わず、その技は直撃した
 ダグトリオがぐらぐらと脳震盪でも起こしたかのように揺れ動いたが、何とか持ち堪えた
 女の子は信じられないといわんばかりに目を見張り、ぽろっと扇を落としそうになった


 「・・・信じられないの。 さっきとは比べものにならないくらい、速くて硬くて強い技なの」

 「えーと・・・シショーって、こんなに強かったのか?」

 「いや、クレアの指示が良かったからッス」

 
 皆が驚愕する中、ゴールドだけが嬉しそうに誇っていた
 周りは少々苦しそうにため息をつきながら、改めてシショーとクレアの方を見た


 「・・・・・・何者なの?」

 『ポケモンだよ』


 シショーがそう言った


 『こうして喋れるけれど、所詮はポケモン。 人に使役されてこそ、強くなることだってあるんだよ』

 「そうだったんですか。 ポケモンなんですか〜」


 クレアのどこかはずれた発言に、折角格好良く決めたシショーががくっと崩れた
 女の子は口の端を持ち上げ、無表情に笑った


 「ねぇ、知ってる? 人間も、皮膚呼吸をするの」

 「・・・?」

 「ああやって、地面に埋まってるのは身体に良くないと思うの」


 ゴールド達の方に扇を向け、そう指し示した
 確かに、先程から妙に息苦しそうだ・・・まさか、本当に影響が・・・


 『なら、これ以上時間をかけずに・・・倒せばいいんでしょ』

 「あ、そっか」

 
 それもそうだ、クレアは改めてシショーのことを見直した
 しかし、女の子は余裕の表情をしている


 「これから、ある技を指示するの」

 『・・・!!!』

 「?」


 女の子は扇をバッと広げて見せた、図柄は『墨絵のなまず』だった


 もう、何を暗示しているのか・・・おわかりだろう
 ・・・そう、ダグトリオの『じしん』だ
 シショーには効かない、しかし地に足を着けているクレアには効く
 更に、地面に埋まっているレッド達には大ダメージをくらうことだろう
 クレアはシショーの『そらをとぶ』で難を逃れることが出来る、だがレッド達にはそれが出来ない


 そう、この勝負は始めから決まっていたも同然だったのだ
 何しろ、人質が6人もいるのだから・・・・・・しかも、身動きが完璧にとれない状態で


 シショーはクレアにそう説明した、彼女の顔色が見る見るうちに変わっていく


 「ダグトリオ・・・」

 「待って下さい!」


 クレアは叫んだ


 「どうすれば、私はどうすれば良いんですか!?」


 それは悲痛な叫びだった
 急に、怖くなった
 何故か、足が突然震えだした


 『僕に技の指示をして! 技を出す前に、倒すんだ!!』


 あれだけのダメージを与えたんだ、あと一撃・・・先程の威力ならば・・・出来るかもしれない
 シショーが指示を待たずに飛び出した


 「どうすれば、私はどうすれば良いんですか!!?」


 シショーが飛び出した瞬間、彼女は空へ逃れる術を失った
 足の震えは止まらない、答えが欲しかった


 「私は、どうしたら・・・皆を救えるんですか?」


 滑稽だった


 「知らないの」


 女の子は広げた扇を、そのまま地面に向けた


 「わたし、邪魔をする人が嫌いなの」


 ダグトリオが全身全霊の力を振り絞り、先程の3倍返しをするかのように・・・大地を揺らした





 クレアの足下の大地ががくがくと大きく揺れた、もの凄い衝撃だった
 シショーは間に合わなかった、指示も間に合わなかった
 




 「・・・・・・おい、グリーン」

 「わかってる。 しかし・・・」


 レッド達は何のダメージも食らってはいなかった
 むしろ、今までと変わっていなかった





 「・・・・・・おかしいの」


 女の子はぽつりとそう言った


 やっぱり、そうだった


 「あの子、能力者なの」


 レッドやグリーンも、この戦闘を見ていて・・・漸く気づいた


 今まで、女の子のダグトリオが攻撃対象は総てシショーだった
 それは至近距離で見ていたレッドやグリーンが一番よくわかる、確かにそのはずだった
 しかし、その攻撃やエネルギーは総て、クレアに向けられてしまう
 ポケモンが無意識に対象を変更しているのかもしれない、攻撃やエネルギーを引き寄せる能力なのかもしれない
 現に、今・・・『じしん』のエネルギーは不自然なまでに彼女の足下一点へ集中し、その周囲の大地は揺れることはない 
 ポケモンの技で例えるならば、『このゆびとまれ』であろうか・・・・・・


 ・・・・・・手持ちポケモンを持たない能力者・・・・・・


 がくんと急に大地の揺れが止まり、クレアは足・・・ひざから崩れ落ちた
 先程の揺れで大地が砕け、足がそこにはまってしまったのだ
 しかも、彼女がその足の震えはまだ止まらず、最早立つことさえ出来なくなっていた


 「あ、足が・・・・・・」

 「好都合なの」


 攻撃のエネルギーが総て、彼女に向けられるなら・・・狙いを外す心配もない
 確実に、仕留めることが出来るはずだ


 シショーが再び飛び出した、しかし・・・それはダグトリオの『すなかけ』によって阻まれた
 ヨルノズクにとって、この攻撃は確かに痛かった・・・更に状況は悪化したのだった 
 立てず、逃げられず・・・足の震えが止まらないクレア
 たとえ、動けたとしても・・・・・・攻撃とそのエネルギーは不自然なまでに彼女へ向けられる
シショーはがむしゃらに跳ぼうとした、そしてバランスを失い・・・地面に落下した


 女の子は勝ち誇った、手に持っていた扇を彼女に向けた


 その時、何かが弾けた


 「・・・ゴールドさん・・・・・・っ!」


 か細い声だった





 何かがぶち切れるような音がした


 大地が、僅かに揺れた


 女の子とダグトリオがその方へ振り返った、唖然とした
 あり得なかったからだ、その光景が・・・・・・そのセリフが・・・・・・


 「愛の力で復活だぜぇ・・・っ!!


 それは自力で、首から下の胴体部分を地上へと引きずり出す漢の姿だった







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