〜ぷろろーぐU・カイソウ〜




 『ザ・ザ・ザ・・・ガガー・・・・・・んじガ・・・ス・・・・・・トち・・・ザ・ザ・・・』


 「・・・ねぇ、いい加減うるさいからラジオ止めて」

 「・・・・・・ああ」

 レッドが雑音混じりのラジオを力無く止めた、皆表情が暗い・・・
 ラジオを止めた所為でそれがハッキリとわかった・・・沈黙が続く





 「・・・一度話を整理しよう、順番にだ」

 「レッドの意見に賛成だ、最初は俺とレッドだ」










 「・・・死んでもらう・・・だって!!?」

 「どういう意味だ!!」

 青年が頭をかいた・・・大欠伸ついでに間の抜けた返事を返した

 「言い方が悪かったなぁ・・・要するに俺とポケモンバトルしてくれればいいの」

 「ポケモンバトルだって!!?」

 「・・・フン、いいだろう、受けてたつ!!」

 グリーンがボールに手をかけるのを、また青年が制した

 「勘違いしないで、バトルはバトルでも『2対1』ね。
 要するに二人まとめてかかってきてよ、その方が面倒臭くないからさ」

 「「!!!!??」」

 二人は顔を見合わせた・・・コイツ正気か?
 仮にもポケモンリーグ準優勝者と優勝者が相手なのに・・・よっぽどの自信家なのか、莫迦なのか・・・
 だが勝負を受けた以上、引き下がるわけにもいかないだろう

 「わかった、後悔させてやる・・・行け! カイリキー!!」

 「オッケー、行け! ピカ!!」





 「・・・さっきまで二人で模擬戦をやっていたものだから、体力が満タンなのはこの二匹だけだったんだ」

 「レッドさんのピカは天下一ッスからね、グリーンさんのカイリキーだって・・・敵いっこ無いッスよ・・・ソイツ」

 ゴールドの表情が少しだけ明るくなった、がレッドの表情は今まで以上に暗くなった
 そう・・・そんなレッドさん達が負けたんだなんて、信じられるはずがなかった










 「へぇ、ピカチュウにカイリキーかぁ・・・じゃ、俺はコイツだ」

 奴がウエストポーチからボールを取りだした、出てきたのは『ブラッキー』だった

 「そして・・・試合開始の合図はコレね」

 奴が鈍い銀色を放つコインを取り出し、指ではじいた
 ピインといい音がして・・・青空に吸い込まれていった、余韻を残して・・・





 ・・・チャリンとコインが地面に落下した、先手は奴だった


 ブラッキーが一瞬の内に幾重にも分身して俺達を囲った、もの凄い分身の数だった

 「『かげぶんしん』か、ならばカイリキー! 『みやぶる』だ!!」

 グリーンが瞬時に指示を出した、カイリキーの目が一瞬キラリと光った
 そしてすぐさまに、ある分身一体に向けて『クロスチョップ』を打ちに行った・・・んだ


 だが・・・次の瞬間に・・・『クロスチョップ』を打つ前に・・・カイリキーは『きぜつ』していたんだ





 「・・・ちょっとレッド! アンタは何してたワケさ!
 グリーンがやられた所を黙って見ていたってこと!!?」

 「ブルーさん、落ちついてください、話はまだ終わっていないんですから」

 「いいよ、イエロー・・・そう、俺は何も出来なかったんだ」

 「・・・正確には何もしなかったワケじゃないが・・・レッドの話を聞いてやってくれ」

 グリーンが静かにそう言った、レッドがポツリポツリと話を続けた


 「・・・俺は奴のブラッキーが『かげぶんしん』したのを見て、スグにピカに『でんげきは』の指示を出したんだ」

 「ええと・・・確か必ず当たる技でしたよね?」

 イエローの相づちにレッドがうなずく、周りはシンとしている・・・

 「そう、いくら『かげぶんしん』をしていても・・・必ず当たる『でんげきは』は確かにあの時は正解だったと俺も思う」

 「ただ・・・ちょっとの間、充電をしなきゃいけないんだ。
 と言ってもわずか2秒程だ・・・まぁ電気技とかに限らずに、どのタイプでも必ず『ため』の時間があるんだ・・・」





 「ピカ、『でんげきは』だ!」

 だが・・・いくら指示してもピカは固まったままだった、青年は大欠伸(何回目だろうか?)をしてポツリと言った


 「・・・君のピカチュウってさ、『きぜつ』してても技使えるの?」

 「!!!!?」


 そしてピカも・・・何もしないままに『戦闘不能』となった 
 ・・・・・・わずか10秒足らずのバトルだった





 「・・・グリーンとレッド、両名とも不合格、あ〜あ、無駄な時間使った、面倒臭かった。
 だから別の人にやらせたかったんだよなぁ・・・別に期待してなかったけどね」

 「・・・・・・不合格?」

 「お前は何を言っているんだ!!?」

 「・・・言うの面倒臭い」


 俺達がキレる前に・・・上空から岩が降ってきて、青年の頭に直撃した
 上を見ると・・・フライゴンに乗った女性がいたんだ

 
 「面倒くさがってんじゃないわよ、そのくらい良いでしょうが!!」

 「イタタタタタタタ・・・」

 直撃した岩には血がべっとりと付いていたよ・・・今考えればあの女性流のツッコミだったんだ
 青年はうずくまって、しばらくの間・・・痛がっていたけど・・・


 「タタタ・・・あ〜、痛がんのも面倒臭いや」

 とか言って立ち上がったんだ、顔面流血で・・・

 「・・・アンタねえ・・・こっちはとっくに終わっているわよ。
 相変わらずとろいわね、仕事も何も!!」

 「性分だしね・・・こっちも終わったよ、二人とも不合格。
 ・・・自分のポケモン出すの面倒だからフライゴンに乗せてってよ」

 「ちょっと、お前ら一体何なんだよ!!?」

 俺がそう言うと身内の世界に突入しつつある二人がこちらを振り向いた

 「「だから、不合格だって」」

 「一体何なのか説明してもらおうか」

 「ん〜説明するの面倒」

 とソイツがジャンプして・・・3mは上空のフライゴンの足につかまった
 そして赤髪の女性に蹴り落とされそうな勢いでツッコミを受け、漸く名前を言ったんだ

 「・・・・・・ディック、『The army of an ashes cross』の四大幹部が一人」

 「アタシはリサ、同じく『The army of an ashes cross』の四大幹部の一人よ」

 「・・・『The army of an ashes cross』・・・?」

 「『灰十字の軍』・・・?」

 
 奴らは上空へと上がっていった、追おうと思っても飛行ポケモンは皆・・・模擬戦でやられてたしな
 
 「待て!! 貴様らの目的は何だ!!?」

 グリーンがそう叫ぶと・・・奴らはにやりとして言ったよ


 「もっと知りたければオーキド博士に聞きなさい」










 「そう言って・・・奴らは何処かへと飛んでいったんだ」

 「垂直飛びで3mって・・・何者ッスか!!? ソイツは・・・」

 「ただの面倒くさがりじゃ・・・なさそうだな」

 ゴールドとシルバーが討論を始めるのを後目に、ブルーが尋ねた

 「・・・ねぇグリーン、その赤髪の女性ってさぁ。
 白っぽい灰色で白黒のまだら模様のコートを着て、下はだぶだぶのズボン。
 そして・・・髪と同じ色の赤いTシャツを着てなかった?」

 「・・・・・・あまり詳しくは見ていないが、そんな感じだったが?」

 「・・・決まりね、イエロー」

 「ええ、名前も『リサ』、フライゴンに乗っている時点で・・・ほぼ間違いないと思います」

 「? ・・・まさかイエロー達が戦った相手って・・・」

 レッドの言葉にブルーがうなずく、ブルーがため息をついて言った


 「今度はアタシ達が語る番のようね」





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