〜裏二/最終決戦〜
シオンタウン郊外
「・・・ラジオ塔に2人、左奥の民家に1人、下水道に1人、イワヤマトンネル前に1人、道に2人、フレンドリィショップとポケモンセンターにそれぞれ1人ずつ・・・」
マツバが額に人差し指と中指を当て、小さく唸る
その前にはムウマがシオンタウンを見据えている
「全部で10人か」
シオンタウンは小さな町だ
最低限の都市機能を働かせるにも少人数で間に合う
逆にいえば大きな都市ほど人数が割かれている、それが当然のことだ
「早いとこ片づけて、他の街へ加勢に行ってやらないとな」
マツバがフッと微笑む
シオンタウンに配置された能力者、トレーナーはすべて把握した
トレーナー能力『千里眼』
手持ちのゴーストタイプのポケモンが視通したものを共有し、感じ取ることが出来る
具体的に言えば「持ち物や人に残る氣・思念といったものの、その繋がりをたどった先を見る」こと
マツバと波長が合い、エスパーポケモンと同じくらい感受性が高く文字通り霊感を備えたゴーストポケモンだから出来ることだ
その追跡は遠く離れた地まで可能で、ゴールドの持ち物を使ってエンジュシティから海に浮かぶうずまきじままで氣をたどったこともある
マツバ自身、この能力は一種の超能力と今まで思ってきた
しかし、『トレーナー能力』と、そう自覚しただけで実際の千里眼染みたことまで可能になった
持ち物なし・もととなる辿る氣も思念もなく、街ひとつぐらい離れた場所の建物のなかであっても氣の位置を視通せる
こちらは望遠鏡+氣に限定した透視+空間認識能力といったところか
ただし、視通す先の距離が遠ければ遠いほど高い集中が必要となり、長く視ていればポケモンにも負担がかかるのでどのみちバトルには不向きだった
「(不思議、いや妙なものだ)」
トレーナー能力、とは本当に何なのか
人間に備わる特性、だけでは説明がつかないほど強力なものもあると聞く
そして、この身に備わるものがトレーナー能力というなら・・・何故俺はジムリーダーになれたのか
ポケモン協会、そして組織
・・・・・・何かしら、繋がりがあるとみていい
そう考え込むマツバがシオンタウンへ向けて歩き、まずラジオ塔を制そうと決めた
「お久し振りです、マツバさん」
声をかけられる前から、背後の気配に気づけていた
シオンタウンにいる9人、とこれで10人
マツバの前を浮いていたムウマが、その声をかけらたのとほぼ同時に影からその声の主にシャドーボールを当てにいった
「っ!」
しゅばっとシャドボは命中し、その声の主がうめいた
ものの、すぐに体勢を立て直した
「・・・流石です、千里眼のマツバさん」
「誰だ、きみは」
ようやくここで振り返ったマツバは、その声の主である・・・女性を見た
太ももにかかるほど長い黒髪、こぼれおちそうなくらい大きな黒目に色白の肌
そして、ここにいる以上・・・やはり灰色の団服を着ている
「私にとってはお久し振りなんです。マツバさんからすれば、はじめましてなんですけど。
・・・尊敬していたんですよ、千里眼の使い手であり美しい街エンジュシティを守るジムリーダーであるあなたに」
「その気持ちは嬉しいが、その団服はいただけないな。
組織の目的を知っていたなら、尚更だ」
マツバは気づいている
シャドーボールは直撃したが、女には傷ひとつついていないことに
「私はあなたのようなトレーナーになりたかった。
ジョウト・ホウエンを旅し、組織と出会い、それが夢ではなくなった。
そして、能力を得ました」
ジョウト地方・カントー本土襲撃、そして征服
あの美しいエンジュシティも、歯牙にかけられた
「でも、決してしたくてしたわけじゃありませ」
「ふざけるな」
それはマツバの、心の底から出た言葉だった
「何がどうであれ、そんなことは俺の知ったことではない。
すべて自分の意思で決めたことだろう。言い訳など見苦しい」
「違います。ただ、私は」
「では聞くが何故、ここにいる。
嫌なら組織を辞めればいい、なのにいるのは上司の命令か?」
「っ・・・・・・」
「命令が何であれ、従うか決めるのはきみだった。ポケモンはそれについてきてくれるだろう。
だが、きみはきみ自身を裏切ったんだ。・・・言いたいこととやっていることがちぐはぐだぞ」
マツバは怒り、そして諭すように彼女に告げた
彼女の言葉や話には嘘はない、しかし・だからこそ始末が悪い
「でも、もう戻れないんです」
「なら、きみは命令に従え。俺は俺に従い、きみを倒す」
彼女の腕には腕輪が2つあった
自分の能力を使いこなす、その証だ
「・・・はい。わかりました」
彼女はネイティオとゴルダックを出した
対してマツバはムウマのみ、そして彼女と向き合った
「でも、もう終わっています」
きゅん、とマツバの周りの空間いや光がゆがんだ
そこから、囲むようにエスパー属性の攻撃が炸裂した
「トレーナー能力、ポウストポウン」
みらいよちに関する能力
レヴェル1、みらいよちのPPを99にする
レヴェル2、みらいよちにタイプ相性を適応させる
レヴェル3、みらいよちの攻撃ターンを操作する
この能力のレヴェル3を使えば、みらいよちの重ねがけも可能になる
方向や出現位置を後から操作移動は出来ないから、話しかける座標、取る距離を事前に決めていたのだ
マツバに話しかける前に、仕掛けておいたのだ
本当は話し合いで終わらせ、技を発動させたくはなかったのだが・・・
「・・・・・・成る程な。確かにやるようだ」
土煙のなかから、マツバもまた無傷で現れた
ムウマが、彼ごと何か薄黒い球体に包み込んだことで難を免れたようだ
「みらいよちか。なかなか面白い」
「マツバさん・・・」
「シャドーボール」
放たれたそれを、彼女のゴルダックが受け止めた
まもるだ
「名前を聞いていなかったな」
「ミサキです」
「ひとつ約束してもらおう」
「・・・何でしょう」
「この戦いが終わったら、きみは何としても組織を抜けるんだ」
「!」
マツバが微笑んだ
「そう決めれば、きみは抜けられる。そうだろう?」
「・・・思ったより性格悪いですね」
「知らないな」
ミサキは早々に言い返すのを諦めた
そういう性格だから、こんなところまで流されてしまったのだ
それでも、ひとつだけ、諦めずに頑張ってきたことがある
強くなりたい、違う
能力を得たい、違う
マツバさんのような人になりたい、そうだ
「でも、その前に命令があります。都市機能の維持を邪魔するものを排除せよ」
「では、やってみろ」
ネイティオとゴルダックが飛び出し、ムウマが10まんボルトを放つ
ミサキはダメージを受けたものの、まだ動ける2体を空と陸に展開させる
「まだ大仕事が残っているんでな。早々に片づける」
「すぐには終わらせません。私にも意地がありますので」
マツバとミサキが同時に叫んだ
「「特能技!」」
To be continued・・・
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