〜更なる高みへ/001〜




 「俺についてこい。お前らを鍛え直してやる」


 


 ・・・・・・


 「何なんッスか、アイツは」

 「まぁ、仕方ないだろ」

 ぶつくさと文句を言うゴールドをレッドがなだめながら、皆は謎の男・ガイクのあとをついていった
 正確に言えば、あのグリーンが先陣をきってスタスタとついていってしまったので、仕方なく・・・というわけだ

 「何か思うところがあるんだろ、グリーンにはさ」

 「どーだか」

 しかし、本当にこの男は何者だろうか

 腰まで伸びた黒髪を無造作にゴムでくくり、赤い野球帽を被っている
 体格はかなり良い方で、身長は180cmはあるだろう
 きりっとした眉に意志の強そうな眼、やや偏屈なイメージがつきまとうがそれも悪くない
 常にくわえタバコをしており、先程のブチッとした音はそれを噛み切った際のものだったらしい
 タバコや体格から、歳は20代かそこらというところだろう
 服装は動きやすそうなTーシャツにGパン、大きめのベルトを付けているのがちょっとオシャレだ
 腰にはモンスターボールが5つ、間違いなくポケモントレーナーだろう
 加えて、良く見ればその腰には何故かソムリエエプロンが付けられている・・・
 しかし、何よりもその物腰や言動から、ただ者ではないことがわかる

 『・・・んー、誰かに似ているような・・・』

 「あ、アタシもそう思った」

 そう、ガイクは誰かに似ているような気がするのだ
 それが誰かなのか、先程からレッド達は首をひねっている

 「途中でポケモンセンターに寄っとくか」

 「そのつもりだ」

 何やらグリーンと当のガイクがぼそぼそと話し合っている、内容はごく普通のものだったが
 そして、その会話の通り、途中でポケモンセンターに寄り、皆を回復させたところでまたすたすたとあの2人が先へ行ってしまう
 まだ今夜の寝床の予約すらしていないのに、どうもまたグリーンの様子がおかしいような・・・
 しかし、なんとなくあの2人に何を言っても無駄だろう・・・

 「なんだかなぁ・・・」

 「あ、わかった。誰に似てるって、グリーンにだよ」

 「・・・言われてみれば・・・」

 「あの偏屈そーな所とか、そう言われてみりゃそうッスよね」

 「「何か言ったか?」」 

 ガイクとグリーンがぐるりと振り返り凄んで言うと、皆はぶるぶると首を振った

 「・・・・・・地獄耳までそっくりだ」

 「でも、兄弟じゃないわよねぇ・・・」

 皆がまた首をひねって考えていると、またガイクが振り返り言った

 「ついたぞ。俺んちだ」

 「デカぁ・・・」

 目の前にあったのは豪邸というか、古く大きなペンション風の家だった
 おそらくこの島の中で一番大きいであろうその家は、どうみたって20代の持ち家には見えなかった

 「察しの通り、これはじいちゃんとばあちゃんの家だ」

 がちゃりと扉を開け、ガイクが「まぁあがれ」と促した
 皆がまた顔を見合わせたが、またやはりグリーンが先陣をきって中へ入ってしまうので、それについていくことにした
 

 ・・・中に入るとまたこの家の広さがどれほどのものかがわかる
 見た目は洋風で、玄関で靴を脱がない・・・目の前は広いリビングだった
 ふかふかのソファーにカーペット、まさに絵に描いたようなそこそこな内装だ
 
 「昼はもう少し待っててくれ。それまで、ここでくつろいでてな。荷物はその辺に置いておけばいい」

 「え? お昼をご馳走してくれるんですか」

 イエローが目をきらきらさせながらそう訊くと、ガイクが「ああ」と答えた
 と、同時に2階に続く階段からこの家の主が下りてきた
 その顔を見て、ゴールドが叫んだ

 「あ〜〜〜〜〜っ!

 「何? 誰々?」

 「よく来たのぅ」

 そこにいたのは老夫婦だった

 「育て屋のばあさんとじいさんじゃねぇか! 何でここに・・・!」

 「あ、あの時の・・・」

 ゴールドとイエローが顔を見合わせた、他の人達はきょとんとしている
 
 「ってこたぁ、ここはばあさん達の家かぁ!?」

 「なんじゃ、知らんかったのか。ま、ここは元は別荘みたいなもんじゃがの」

 「ジョウト地方が襲われる前に、ワシらはここに引っ越してきたんじゃよ」

 それは本当に偶然だったらしいが、この育てや老夫婦は不定期でカントー・ジョウト・ホウエン・ナナシマの間を行ったり来たりしているらしい
 それだけ財産家ということもとれるのだろうが、知らない人から見ればまさに『神出鬼没』のような存在だ

 「・・・あ〜、ゴールドとイエローの話からすると、つまり、ガイクさんは・・・」

 「孫だ。ついでに『ガイク』でいい、お前らと歳はそう変わらんからな」

 『えぇっ!!?』

 「いくつなの、アンタ!?」

 ガイクは不満を顔に出さず、平然と言った

 「18だが、何か?」

 ピシッと何か亀裂が走ったような音がした

 「・・・ふ、ふ、ふ、フケ、老けて・・・」

 「悪かったな。放っとけ」 

 「ていうか、タバコ・・・」

 「禁煙パイプだ。最近変えた。タバコじゃねぇよ」

 いや、つまり・・・それはこの前まで本物を吸っていたということでは?

 「育て屋の孫か。なら、育て方不十分って文句言われても仕方ねーよなぁ」

 「先輩! それでも納得いかねーッスよ!」

 ゴールドが食ってかかると、レッドは曖昧に苦笑した 
 そして、ビッとゴールドはガイクに向け指を突きだした

 「大体、育て屋だからって何スか! どーせ、育てるしか能がねぇんだろ!」

 「おい、それは言い過ぎだ」

 ゴールドの物言いにガイクはぽりぽりと首筋をかき、柱時計をちらりと見た

 「・・・今の季節・湿度なら、飯が炊き終わるまであと15分てところか」

 「あ?」

 ガイクがエプロンをばさっと脱ぎ、ソファーの上にかけた
 それから、また玄関の扉に手をかけ、肩越しに言った

 「良いだろう。相手になってやる。だが、負けた後での、泣いてわめいての言い訳は聞かんぞ」

 「・・・ッ! 上等だ、コラ」 

 「おいおい、いい加減に・・・」

 レッドの制止も聞かず、ゴールドはズンズンと大股で歩き、ガイクのあとをついて外に出てしまった
 皆はぽかんとして、そして慌てて外へ出た

 「若いモンは元気があってええのぅ」

 「ほっほっほ、さて、あれからどれだけ成長したんかのぅ」

 育て屋老夫婦もそう言いながら外へ出て、しばしの観戦といくようだ
 が、その顔はもうそれの勝ち負けが見えているような意地の悪い笑みも浮かべていた

 



 ・・・・・・


 「使用ポケモンは1体、交代は無しだ。いいな」

 「当然! いつでもこいや!!」

 既に止められそうな気配は無く、2人は・・・特にゴールドはやる気満々だった
 他の皆はとりあえず、ガイクのあの自信に満ちた「鍛え直してやる」がどれほどのものか見極めるつもりでいた

 「俺はこいつでいく」

 ガイクが出したのは、格闘ポケモンの『ハリテヤマ』だった
 いかにも重量級といった体格で、どうも力比べに持っていきたいのかもしれない

 「そんなら、俺はバクたろうでキメるぜぇ!」

 ゴールドはお決まりのバクフーンを出したが、ガイクは何も言わない
 育て屋老夫婦はほぅと感心し、隣にいたイエローに訊いた

 「あれはあやつのマグマラシが進化したものじゃな。 強いのか?」

 「はい。きっと強いです」

 「ふむ・・・」

 グリーンが一歩前へ出、コインを宙へと指で弾いた
 勿論、これが地に落ちた瞬間にバトルスタートだ





 チャリン


 「おっしゃー、バクたろう、『かえん・・・」

 技の指示よりも速かった
 ゴールドのバクたろうは遥か後方へと突き飛ばされ、ゴールドの横にはガイクのハリテヤマがいた
 本当に、勝負は一瞬だった

 「・・・・・・嘘だろ・・・」

 ゴールドはハッと後ろを振り向き、バクたろうに駆け寄った
 幸い、本当に突き飛ばされただけのようで、戦闘不能までにはなっていなかったようだ

 「勝負ありだな」

 「・・・・・・ッ」

 ガイクがザッザッとゴールド達の方に歩み寄り、そう言った

 「ま・・・まだ・・・」

 「育て不足に加え、バランスが悪い。その根性は認めるが、これではこの先の闘いに勝ち残れないだろうな」

 「な、何を・・・」

 ゴールドは何か言おうとしたが、それをガイクは右手を突きだし制止した
 何やら時計を見てから、さっさと家の方に戻ってしまう

 「昼の時間だ。お前らの食器の準備をする分、多めに時間を見積もらないとな」

 「な・・・ッ」

 ゴールドがぱくぱくと酸素不足のような金魚の顔になり、ガイクが振り向かず言った

 「ゴールドだけじゃねぇ、お前らもだ」

 「!?」

 「腹が減っては戦は出来ねぇ。だから、昼食い終わってから全員叩いてやる。それまでに覚悟を決めておけ」

 ドアを開け放しのままして、ガイクは家の奥の方へとスタスタと先に行ってしまった
 皆が唖然としていると、育て屋老夫婦が意地悪く言った

 「さ、飯の時間じゃぞ」

 「お腹が空いただろう。食堂の方に案内するから、ついてきなさい」

 そう言い、老夫婦の方も中に入っていってしまう
 皆は何を言えばいいのかわからず、とりあえずお言葉に甘えて食事を貰おうとのろのろと中に入っていった
 ゴールドは未だ納得がいかないのか、その場から動かなかったが・・・グリーンに促され、バクたろうをボールに戻し渋々ついていった





 ・・・・・・


 「・・・ようやく来たようね」





 To be continued…



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